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忘れちゃいけないスキンケアとムダ毛の処理
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それから1週間後。
「……よし、こんな感じか」
美容院の予約時間は夜遅かったため、ミツキはすでに自室に戻った後であった。
その為、今日が初めてミツキに新しい髪形を見てもらう日となる。
スバルは元々自身の髪をカットするなど手先が器用である。
そのこともあり、美容師から教わった方法を上手にまねて昨日カットしてもらった髪型を丁寧に整えることが出来た。
「おはよう、ミツキ」
「うん、お兄……ちゃん?」
寝ぼけ眼で自室から出てきたミツキは、スバルを見るなり目を見開いた。
「どうだ、髪型変えてみたんだけど似合うか?」
「やば、カッコ……ううん、いったいどういう風の吹き回し?」
「ああ、良い美容院を紹介してもらってさ。それでイメチェンしてみたんだ」
「……ふーん……」
ミツキはそれを聞くと面白くなさそうにつぶやきながら、スマホを取り出して再度メッセージを誰かに送っていた。
「はっきり言って似合わない。いつもの髪型で良いじゃん」
「そうか? 俺は気に入ってんだけどなあ……。ところで最近、友達呼ばないけど何かあったのか?」
「お兄ちゃんには関係……ないでしょ?」
少し口ごもるミツキの態度に少し疑問を想いながらも、スバルはそれ以上聴くことをやめた。
「……そういえば、今日お前試合だったよな?」
「そうだよ。だから帰りは遅いからお兄ちゃんは先にご飯食べてて」
ミツキはバレーボール部に所属しており、現在はレギュラーとして活躍している。
無論ユニフォーム代や試合の交通費などはスバルが稼いだものである。
「ああ。それじゃ、今日のお弁当な」
朝5時に起きて作った今日の弁当は、スバルの自信作だ。栄養バランスだけでなく見栄えにもこだわっている。
メインディッシュはカレー粉をたっぷりと効かせたスパイシーな唐揚げ、そしてトマトとバジルをオリーブオイルに漬け込んで作った酸味の効いたマリネである。
「あと冷凍庫にスポーツドリンク入れてあるから、持っていきなよ」
「……うん、ありがと。じゃ、行ってくる」
そう言うとミツキは弁当とスポーツドリンクをカバンに詰めると、家を出ていった。
「……じゃあ俺も、バイトに行くかな」
因みに今日は建築現場の仕事は休みだが、スバルは休日にも近所の工場でアルバイトをしている。
スバルは夕食の下ごしらえを済ませると、そのまま職場に向かっていった。
「おい、マヒロ!」
『なんだよ、スバル?』
その日の夕方、スバルはマヒロに電話で文句を言った。
「お前の言う通りに髪を整えたのにさ、全然ミツキの奴、喜んでくれなかったぞ?」
『アハハ、お前のスタイリングがダメだったんじゃないのか? ちょっと見せてみろよ?』
「え? ああ」
そう言って自撮り画像をスバルは送ると、マヒロは感心するような声を上げる。
『へえ……。なんだよ、すっげー決まってんじゃん! これでも気に入られなかったのか?』
「ああ……。理由は分かんねえけどさ。やっぱり俺、見た目がまだいけてないのかな?」
『うーん……。まあもう一つお前の顔見てて気になることはあるな』
「なんだよ?」
『肌が正直荒れてるだろ? 一度スキンケアをきちんとしたほうが良いと思うな』
「む……まあ、確かに最近乾燥してきたからなあ……」
マヒロの言葉に納得したように、スバルは頷く。
『後さ、ムダ毛の処理もしっかりやっておけよ。お前時々、ちゃんと髭が剃れてないときあるんだから』
「え? ……ハハハ、寝坊したときについサボっちまうからさ。確かにそうだよな」
スバルは寝坊と言うが、実際にはミツキのお弁当作りや、ミツキの保護者としての書類作成などに手間がかかったことが原因であることが殆どである。
『後、眉毛もちゃんと整えとけよ。美容院でやってもらってないだろ、これ』
「眉毛を切ってくれない店だったんだよ、お前の紹介してくれたとこ」
『マジかよ? そりゃ、悪かったな』
「けどアドバイスサンキュな。多分それを守ったらもっとかっこよくなれるかな?」
『それは間違いないな。眉毛切ったらまた写真送って来いよ。評価してやるから』
「ああ、ありがとな」
そう言って電話を切り、しばらくすると妹が試合から帰ってきた。
「ただいま、お兄ちゃん」
「おかえり、ミツキ。ご飯できてるぞ」
「ありがと。お兄ちゃんは、ご飯は食べた?」
「いや、まだだよ。ミツキと食べたいから待ってたんだよ」
因みにその日の夕食は甘みを強めたホッケのみりん干しと鰹節の出汁をよく効かせた豚汁、そしてスバルお手製の糠漬けである。
「それと、お弁当箱とユニフォーム出しといてくれ、洗っとくから」
「うん……」
「後お風呂も沸いてるから先に入りなよ。その間に夕食温めとくから」
ミツキが洗面所を見ると、すでにきれいに選択されたバスタオルが置かれていた。
「ありがと、お兄ちゃん」
「ところで試合はどうだった?」
「勝ったよ。来週の土曜日が県大会の決勝戦」
それを聞いたスバルは心底嬉しそうに笑みを浮かべた。
「マジかよ、嬉しいな!」
「……ごめんね、また休日にお弁当作らせることになっちゃって」
「気にすんなよ! ……でさ、今度の試合俺も行っていい?」
「ダメ!」
ミツキは大声で怒鳴るように答えた。
「え……やっぱりか?」
「うん、絶対に来ないで! こっそり来るのも禁止だから!」
「あ、ああ……」
ミツキの試合に行くことは、ここ最近強く止められている。
その為、スバルは少し残念そうにしながらもいつものように頷いた。
(まだダメかあ……けど、俺がもっとかっこよくなったら……試合に行くのも許してくれるよな、多分……)
スバルはそう思い直すことにした。
「……よし、こんな感じか」
美容院の予約時間は夜遅かったため、ミツキはすでに自室に戻った後であった。
その為、今日が初めてミツキに新しい髪形を見てもらう日となる。
スバルは元々自身の髪をカットするなど手先が器用である。
そのこともあり、美容師から教わった方法を上手にまねて昨日カットしてもらった髪型を丁寧に整えることが出来た。
「おはよう、ミツキ」
「うん、お兄……ちゃん?」
寝ぼけ眼で自室から出てきたミツキは、スバルを見るなり目を見開いた。
「どうだ、髪型変えてみたんだけど似合うか?」
「やば、カッコ……ううん、いったいどういう風の吹き回し?」
「ああ、良い美容院を紹介してもらってさ。それでイメチェンしてみたんだ」
「……ふーん……」
ミツキはそれを聞くと面白くなさそうにつぶやきながら、スマホを取り出して再度メッセージを誰かに送っていた。
「はっきり言って似合わない。いつもの髪型で良いじゃん」
「そうか? 俺は気に入ってんだけどなあ……。ところで最近、友達呼ばないけど何かあったのか?」
「お兄ちゃんには関係……ないでしょ?」
少し口ごもるミツキの態度に少し疑問を想いながらも、スバルはそれ以上聴くことをやめた。
「……そういえば、今日お前試合だったよな?」
「そうだよ。だから帰りは遅いからお兄ちゃんは先にご飯食べてて」
ミツキはバレーボール部に所属しており、現在はレギュラーとして活躍している。
無論ユニフォーム代や試合の交通費などはスバルが稼いだものである。
「ああ。それじゃ、今日のお弁当な」
朝5時に起きて作った今日の弁当は、スバルの自信作だ。栄養バランスだけでなく見栄えにもこだわっている。
メインディッシュはカレー粉をたっぷりと効かせたスパイシーな唐揚げ、そしてトマトとバジルをオリーブオイルに漬け込んで作った酸味の効いたマリネである。
「あと冷凍庫にスポーツドリンク入れてあるから、持っていきなよ」
「……うん、ありがと。じゃ、行ってくる」
そう言うとミツキは弁当とスポーツドリンクをカバンに詰めると、家を出ていった。
「……じゃあ俺も、バイトに行くかな」
因みに今日は建築現場の仕事は休みだが、スバルは休日にも近所の工場でアルバイトをしている。
スバルは夕食の下ごしらえを済ませると、そのまま職場に向かっていった。
「おい、マヒロ!」
『なんだよ、スバル?』
その日の夕方、スバルはマヒロに電話で文句を言った。
「お前の言う通りに髪を整えたのにさ、全然ミツキの奴、喜んでくれなかったぞ?」
『アハハ、お前のスタイリングがダメだったんじゃないのか? ちょっと見せてみろよ?』
「え? ああ」
そう言って自撮り画像をスバルは送ると、マヒロは感心するような声を上げる。
『へえ……。なんだよ、すっげー決まってんじゃん! これでも気に入られなかったのか?』
「ああ……。理由は分かんねえけどさ。やっぱり俺、見た目がまだいけてないのかな?」
『うーん……。まあもう一つお前の顔見てて気になることはあるな』
「なんだよ?」
『肌が正直荒れてるだろ? 一度スキンケアをきちんとしたほうが良いと思うな』
「む……まあ、確かに最近乾燥してきたからなあ……」
マヒロの言葉に納得したように、スバルは頷く。
『後さ、ムダ毛の処理もしっかりやっておけよ。お前時々、ちゃんと髭が剃れてないときあるんだから』
「え? ……ハハハ、寝坊したときについサボっちまうからさ。確かにそうだよな」
スバルは寝坊と言うが、実際にはミツキのお弁当作りや、ミツキの保護者としての書類作成などに手間がかかったことが原因であることが殆どである。
『後、眉毛もちゃんと整えとけよ。美容院でやってもらってないだろ、これ』
「眉毛を切ってくれない店だったんだよ、お前の紹介してくれたとこ」
『マジかよ? そりゃ、悪かったな』
「けどアドバイスサンキュな。多分それを守ったらもっとかっこよくなれるかな?」
『それは間違いないな。眉毛切ったらまた写真送って来いよ。評価してやるから』
「ああ、ありがとな」
そう言って電話を切り、しばらくすると妹が試合から帰ってきた。
「ただいま、お兄ちゃん」
「おかえり、ミツキ。ご飯できてるぞ」
「ありがと。お兄ちゃんは、ご飯は食べた?」
「いや、まだだよ。ミツキと食べたいから待ってたんだよ」
因みにその日の夕食は甘みを強めたホッケのみりん干しと鰹節の出汁をよく効かせた豚汁、そしてスバルお手製の糠漬けである。
「それと、お弁当箱とユニフォーム出しといてくれ、洗っとくから」
「うん……」
「後お風呂も沸いてるから先に入りなよ。その間に夕食温めとくから」
ミツキが洗面所を見ると、すでにきれいに選択されたバスタオルが置かれていた。
「ありがと、お兄ちゃん」
「ところで試合はどうだった?」
「勝ったよ。来週の土曜日が県大会の決勝戦」
それを聞いたスバルは心底嬉しそうに笑みを浮かべた。
「マジかよ、嬉しいな!」
「……ごめんね、また休日にお弁当作らせることになっちゃって」
「気にすんなよ! ……でさ、今度の試合俺も行っていい?」
「ダメ!」
ミツキは大声で怒鳴るように答えた。
「え……やっぱりか?」
「うん、絶対に来ないで! こっそり来るのも禁止だから!」
「あ、ああ……」
ミツキの試合に行くことは、ここ最近強く止められている。
その為、スバルは少し残念そうにしながらもいつものように頷いた。
(まだダメかあ……けど、俺がもっとかっこよくなったら……試合に行くのも許してくれるよな、多分……)
スバルはそう思い直すことにした。
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