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第1章 美少年「月潟北斗」も彼女の主観では「普通」です
1-2 こいつはれっきとした『セドナの娘』です
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そして、私の作った究極にして至高のピザトーストが完成した。
「お父様……?」
「どうしたんだ、朱美……?」
お父様は私のことをうつろな眼で見た。
……嗚呼、なんてこと!
この世界一の美少女である私の宝石のような瞳を覗き込んでも、笑顔を向けられないなんて!
それほどまでに、お父様は傷ついているのですわね!
そう思いながら、私はトーストを差し出す。
「お酒ばかり飲んでいたら体に毒ですわ?」
「……ああ、分かっている、分かってるんだけどな……」
「少しでもご飯を食べないと。……はい、私が作ったトーストですわ?」
「トースト……これを作ったのか、朱美が?」
「ええ」
信じられないといった表情で私の方をお父様は見つめてきた。
フフフ、そうでしょう? まさか10歳の娘が、こんなに素敵な食事を作ってくれるなんて夢にも思わないでしょうから。
嗚呼、お父様はなんて幸せものなのでしょう!
お父様は、私のそんな美しく、慈愛にあふれた笑顔を見ながらフフ……と笑ってくれた。
「ありがとう、朱美」
そういうと、お父様はピザトーストをかじる。
すると、
「があああああ! ぶは! ぐほ! ……ぐあああああ!」
お父様は急に椅子から転げ落ちて、そんな風に全身をびくびくと震わせながら涙を流し始めた。
「こ、これはワサビか……? ひ、ぐはあああ……げ、げは、ぶほ……ぐお! 辛子の衝撃まで来た! 頭が、頭が……ツーンと来る、舌が焼ける! ぶあああああ!」
嗚呼、ワサビと辛子の缶を全部入れた甲斐がありましたわ!
お父様は超絶可愛い娘である、私が作って差し上げたピザトーストを食べながら、歓喜にむせび泣いていた。
(こんな、のたうち回るほど喜んでくれるなんて、作ってあげた甲斐がありましたわ!)
「な、なんだこれは……朱美……」
お父様は歓喜の涙を流しながら私のことを見つめた。
「私の自慢の一品です! 料理名は『ストリップ死神団のカーニバル』! 喜んでくれてうれしいですわ、お父様!」
「こ、これが自慢の一品か?」
そこで私は、優しく慈愛に溢れた眼をしながらお父様の顔に手を当てて呟く。
「ええ……。お父様……お母さまをなくして辛かったのでしょう? 私がお父様を元気づけたいと思ったら、料理と……この笑顔しかないと思いましたので……」
「朱美……」
そういうと、お父様の頬をまた一筋の涙が伝った。
心根の優しい私は、こんな風に人が喜んでくれるのを見るのが何より嬉しい。
お父様にもっと喜んでもらわなくては!
そう思った私は、セドナお父様……元の世界で私を育てるという名誉を賜った義父……のことを思い出した。
(そういやさ。父親ってのは、娘に甘えてもらうのが一番のご褒美らしいぜ?)
(猫に甘えてもらうのは、一番幸せなことらしいな! ……人間たちにとってはな)
そんなことをセドナお父様は言っていた。
つまり『猫の真似をして甘えてくる娘』を父親は一番喜ぶのだろう。
そう思った私は、お父様の膝の上にちょこんと乗り、可愛らしい声を上げた。
「にゃおーーーん」
「あ、朱美? 何やってるんだ?」
そういいながら、私は子猫が甘えるやり方を思い出しながらやってみた。
「ゴロゴロ……ゴロゴロ……」
「は……はは……どうしたんだ、朱美!」
「にゃーん! にゃーん!」
「お、おい……」
お父様、私が猫の真似をして、甘えて差し上げていることが分からないのですわね?
しょうがない、説明してあげませんと。
「お父様! ……今、猫みたいにゴロゴロ言って甘えていますわ、私は! どう、甘えられるのは嬉しくありませんか? ほら、頭を触っていいのですよ!? 私の頭をなでるという名誉は欲しくないのですの?」
そういうと、お父様は一瞬きょとんとした表情を見せた。
……フフ、私が『頭を撫でさせてあげる』という凄まじい名誉を与えられて、幸福のあまり絶句したようですわね。
そしてすぐに、お父様は憑き物が落ちたような顔になり、嬉しそうに笑った。
「……ハハハ! そうか……! わざとおどけて、慰めてくれてるんだな、朱美は……」
そういうとお父様は、私の頭を撫でてきた。
……うん、私が思った通りお父様は猫の真似が嬉しかったのだろう。
「ごめんな、朱美……。今までお父さん、落ち込んでお前に迷惑かけてばかりでさ……」
「気にすることはありませんわ! 弱く哀れな方々を導くのは、強くて美しい私の責務ですから! さあ、可愛い私の頭をもっと撫でてもいいのですよ!」
嗚呼、頭を撫でさせてあげるなんて、私はなんて親孝行な娘なのでしょう!
お父様は、私のその発言を聞いて、涙を見せながらも笑顔を見せた。
「そうだな……。お前がこんな風におどけて、バカな冗談を言って慰めてくれてるのに……これじゃ、天国の母さんに笑われるな。……よし、頑張らないとな……」
おどける? バカな冗談?
私はいたって真面目でまっとうな対応をしただけですのに、変なお父様。
けど、元気が出たなら何よりだ。
そう思って私は、これからのことを笑って話す。
「お父様は、お仕事で大変でしょう? 優しいこの私が、これからは料理を作って差し上げます! だから、お仕事を頑張ってらして?」
「え……料理を……?」
「今日みたいな料理を一杯作りますから、楽しみにしていてくださいね!?」
だが、そういうとお父様は少しひきつった顔を見せた。
「い、いや……。料理はお父さんが作るよ。いままでちゃんと作ってやれなくてごめんな。朱美は勉強と友達と遊ぶことに集中してくれ、な? 洗濯も掃除も、これからやっとくから」
ああ、お父様も素敵な方なのね!
この天才の私が学業に集中できるように、家事を全てやってくださるなんて!
そして、そんなお父様の『素敵なところ』を評価する私の、素晴らしいこと!
「ありがとうございます、お父様! ……けど、少しの辛抱です! この世界にある『無駄な家事』は、全て私が錬金術で解決しますから!」
「……あはは、また冗談を言ってくれるんだな。……ありがとう、朱美」
あら、私は冗談を言っていませんのに。
……まあ、天才はすぐには理解されませんよね。
そんな風に思っていると、ドアチャイムがピンポンとなった。
「ん? 誰かしら?」
「誰かしらって……。北斗君だろ? おっと、もうこんな時間だったのか。早く登校しないとな」
ああ、思い出しました。
私には『月潟北斗(つきがたほくと)』という幼馴染がいたのでした。
元々仲が良かったのですが、お父様がああなってからは毎日のように私を気にかけてくださった、素敵な殿方でしたね。
「はい、今開けますね?」
そういってドアを開けると、
「おはよう、朱美さん。学校行こうか?」
そこには、※ありふれた容姿の少年がいた。
うん、彼が月潟北斗だ。
(※自己評価が高過ぎる彼女にはそう見えていますが、彼の相貌は『超絶美少年』です)
私は彼を見るなり、強い罪悪感にとらわれた。
(嗚呼、可哀そうな方……。私のような天才と同じ学校に通うなんて……。きっと、彼はこれから私と比較されて悩み、苦しみ、傷つくのでしょう? 嗚呼、私はわかっていますわ! 美しい美少女に学問で負けることによる殿方の痛みは!)
私が頭が良すぎる上に優しすぎる性で、これから彼をはじめ多くの人を傷つけるのだろう。
そんな風に思って、私は思わず涙ながらに彼に謝った。
「北斗さん、ごめんなさい!」
「お父様……?」
「どうしたんだ、朱美……?」
お父様は私のことをうつろな眼で見た。
……嗚呼、なんてこと!
この世界一の美少女である私の宝石のような瞳を覗き込んでも、笑顔を向けられないなんて!
それほどまでに、お父様は傷ついているのですわね!
そう思いながら、私はトーストを差し出す。
「お酒ばかり飲んでいたら体に毒ですわ?」
「……ああ、分かっている、分かってるんだけどな……」
「少しでもご飯を食べないと。……はい、私が作ったトーストですわ?」
「トースト……これを作ったのか、朱美が?」
「ええ」
信じられないといった表情で私の方をお父様は見つめてきた。
フフフ、そうでしょう? まさか10歳の娘が、こんなに素敵な食事を作ってくれるなんて夢にも思わないでしょうから。
嗚呼、お父様はなんて幸せものなのでしょう!
お父様は、私のそんな美しく、慈愛にあふれた笑顔を見ながらフフ……と笑ってくれた。
「ありがとう、朱美」
そういうと、お父様はピザトーストをかじる。
すると、
「があああああ! ぶは! ぐほ! ……ぐあああああ!」
お父様は急に椅子から転げ落ちて、そんな風に全身をびくびくと震わせながら涙を流し始めた。
「こ、これはワサビか……? ひ、ぐはあああ……げ、げは、ぶほ……ぐお! 辛子の衝撃まで来た! 頭が、頭が……ツーンと来る、舌が焼ける! ぶあああああ!」
嗚呼、ワサビと辛子の缶を全部入れた甲斐がありましたわ!
お父様は超絶可愛い娘である、私が作って差し上げたピザトーストを食べながら、歓喜にむせび泣いていた。
(こんな、のたうち回るほど喜んでくれるなんて、作ってあげた甲斐がありましたわ!)
「な、なんだこれは……朱美……」
お父様は歓喜の涙を流しながら私のことを見つめた。
「私の自慢の一品です! 料理名は『ストリップ死神団のカーニバル』! 喜んでくれてうれしいですわ、お父様!」
「こ、これが自慢の一品か?」
そこで私は、優しく慈愛に溢れた眼をしながらお父様の顔に手を当てて呟く。
「ええ……。お父様……お母さまをなくして辛かったのでしょう? 私がお父様を元気づけたいと思ったら、料理と……この笑顔しかないと思いましたので……」
「朱美……」
そういうと、お父様の頬をまた一筋の涙が伝った。
心根の優しい私は、こんな風に人が喜んでくれるのを見るのが何より嬉しい。
お父様にもっと喜んでもらわなくては!
そう思った私は、セドナお父様……元の世界で私を育てるという名誉を賜った義父……のことを思い出した。
(そういやさ。父親ってのは、娘に甘えてもらうのが一番のご褒美らしいぜ?)
(猫に甘えてもらうのは、一番幸せなことらしいな! ……人間たちにとってはな)
そんなことをセドナお父様は言っていた。
つまり『猫の真似をして甘えてくる娘』を父親は一番喜ぶのだろう。
そう思った私は、お父様の膝の上にちょこんと乗り、可愛らしい声を上げた。
「にゃおーーーん」
「あ、朱美? 何やってるんだ?」
そういいながら、私は子猫が甘えるやり方を思い出しながらやってみた。
「ゴロゴロ……ゴロゴロ……」
「は……はは……どうしたんだ、朱美!」
「にゃーん! にゃーん!」
「お、おい……」
お父様、私が猫の真似をして、甘えて差し上げていることが分からないのですわね?
しょうがない、説明してあげませんと。
「お父様! ……今、猫みたいにゴロゴロ言って甘えていますわ、私は! どう、甘えられるのは嬉しくありませんか? ほら、頭を触っていいのですよ!? 私の頭をなでるという名誉は欲しくないのですの?」
そういうと、お父様は一瞬きょとんとした表情を見せた。
……フフ、私が『頭を撫でさせてあげる』という凄まじい名誉を与えられて、幸福のあまり絶句したようですわね。
そしてすぐに、お父様は憑き物が落ちたような顔になり、嬉しそうに笑った。
「……ハハハ! そうか……! わざとおどけて、慰めてくれてるんだな、朱美は……」
そういうとお父様は、私の頭を撫でてきた。
……うん、私が思った通りお父様は猫の真似が嬉しかったのだろう。
「ごめんな、朱美……。今までお父さん、落ち込んでお前に迷惑かけてばかりでさ……」
「気にすることはありませんわ! 弱く哀れな方々を導くのは、強くて美しい私の責務ですから! さあ、可愛い私の頭をもっと撫でてもいいのですよ!」
嗚呼、頭を撫でさせてあげるなんて、私はなんて親孝行な娘なのでしょう!
お父様は、私のその発言を聞いて、涙を見せながらも笑顔を見せた。
「そうだな……。お前がこんな風におどけて、バカな冗談を言って慰めてくれてるのに……これじゃ、天国の母さんに笑われるな。……よし、頑張らないとな……」
おどける? バカな冗談?
私はいたって真面目でまっとうな対応をしただけですのに、変なお父様。
けど、元気が出たなら何よりだ。
そう思って私は、これからのことを笑って話す。
「お父様は、お仕事で大変でしょう? 優しいこの私が、これからは料理を作って差し上げます! だから、お仕事を頑張ってらして?」
「え……料理を……?」
「今日みたいな料理を一杯作りますから、楽しみにしていてくださいね!?」
だが、そういうとお父様は少しひきつった顔を見せた。
「い、いや……。料理はお父さんが作るよ。いままでちゃんと作ってやれなくてごめんな。朱美は勉強と友達と遊ぶことに集中してくれ、な? 洗濯も掃除も、これからやっとくから」
ああ、お父様も素敵な方なのね!
この天才の私が学業に集中できるように、家事を全てやってくださるなんて!
そして、そんなお父様の『素敵なところ』を評価する私の、素晴らしいこと!
「ありがとうございます、お父様! ……けど、少しの辛抱です! この世界にある『無駄な家事』は、全て私が錬金術で解決しますから!」
「……あはは、また冗談を言ってくれるんだな。……ありがとう、朱美」
あら、私は冗談を言っていませんのに。
……まあ、天才はすぐには理解されませんよね。
そんな風に思っていると、ドアチャイムがピンポンとなった。
「ん? 誰かしら?」
「誰かしらって……。北斗君だろ? おっと、もうこんな時間だったのか。早く登校しないとな」
ああ、思い出しました。
私には『月潟北斗(つきがたほくと)』という幼馴染がいたのでした。
元々仲が良かったのですが、お父様がああなってからは毎日のように私を気にかけてくださった、素敵な殿方でしたね。
「はい、今開けますね?」
そういってドアを開けると、
「おはよう、朱美さん。学校行こうか?」
そこには、※ありふれた容姿の少年がいた。
うん、彼が月潟北斗だ。
(※自己評価が高過ぎる彼女にはそう見えていますが、彼の相貌は『超絶美少年』です)
私は彼を見るなり、強い罪悪感にとらわれた。
(嗚呼、可哀そうな方……。私のような天才と同じ学校に通うなんて……。きっと、彼はこれから私と比較されて悩み、苦しみ、傷つくのでしょう? 嗚呼、私はわかっていますわ! 美しい美少女に学問で負けることによる殿方の痛みは!)
私が頭が良すぎる上に優しすぎる性で、これから彼をはじめ多くの人を傷つけるのだろう。
そんな風に思って、私は思わず涙ながらに彼に謝った。
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