君はペルセウス

湯たんぽぽ

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ボクの日常 (1)

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 「ねぇ、なんでないてるの」

懐かしい声を思い出した。自分でもなんで泣いていたのか、今もよく分かっていない。

「分かんないよ……」

ほらね。あー弱っちい声、大っ嫌い。

「これ、あげる」

ふわふわしてて柔らかい、手触りのいい薄桃色のハンカチ。その感触は頭の中でしっかりと再現……今も触っているかのような感触……。
ちゃっかりこのハンカチ、仮っぱなんだよね……。

「ひろはって、なきむし?」

……確かに当時は泣き虫だった。転んだだけですぐ泣くし、周りで揉め事が起きたら自分には関係ないのに泣いて、怖いーーーーって、1番怖いのはお前だよって突っ込みたくなるくらい大泣きしたり。
ポンっと、頭に小さなおもりが乗った。

「ないただけつよくなるんだって!」

ああ……。
懐かしい声を、思い出していた。


 _____あー、暇。

授業中に書いたノートをぼーっと見つめている。なんか、ノートに見つめられている気もしてくる。頭おかしくなってるんだきっと。元からか。
今日は本を持ってくるのを忘れてしまった。いつもなら休み時間は本を読んで時間を潰している。喉も乾いていないのに水を飲んだり、眠くないのに机に突っ伏したり、何も取り出すものなんてないのに鞄を漁ったり、そんなことしてるよりずっといいじゃん?少なくともボクはそうだよ。
でも、暇だし。目でも瞑って物思いにふけるのも、悪くない……。

「広葉ちゃん!寝てるの??起きて!!」

_____暇じゃなかった。

「何?ボクになんか用?」

机の前で何やら自信満々な様子で栗色の髪の毛をくるくると遊びながら腰に手を置いている。まさか、自慢しにきたのではないだろうか。だとしたら、めんどくさいけど……ちょっと気になる。暇つぶしになる。

「昨日この晴香ちゃん様、白斗様にっ……………!」

白斗って、あの春崎白斗(はるさきはくと)?あの校内屈指のイケイケフェイスで桜の天使だ、薔薇の生まれ変わりだなんだって言われてるあいつか?

「そう、それもあの白斗様!その白斗様にこの晴香ちゃん!!」

「なに、告られたの?」

晴香は誰が見ても可愛いって思うようなアイドル顔で、スタイルも良いし、こんないつも1人でいるようなボクに話しかけてくれるくらいには優しいし、元気だし。そりゃ、モテる。今までだって告られたなんて話何度聞いてきた事か。

「ち、ちがうよ!そんなの……あるわけないじゃん!あるわけないじゃん!!」

ちがうんかい。

「じゃあ何さ、早く言ってよ。もう休み時間終わるよ」

「呼び出されたのぉぉぉぉぉぉぉおお!!」

「うるさ、告られんじゃない?ワンチャン」

春崎と晴香が並んで歩く姿を想像してみた。高身長色白青髪イケメンと天真爛漫茶髪美少女。

「お似合いじゃん」

「おぉー!期待していいかな??いいかな!?」

「明日から天ヶ咲の注目の的だよ。」

「おぉー!期待しときます!」

こんな彼女がいたら毎日がより一層楽しくなりそうだ。

「……ねえねえ」

「ん?」

「広葉ちゃんはさ、男の子とか興味ないの?」

_____ひろはって、すきなこいるの?

「男なんて興味ないよ。ボクは。」

休み時間の終わりを告げる、鐘が鳴った。
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