止まることは許されない

トバリ

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4話

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 今の俺の状況を表すなら『キャパシティー・オーバー』その一言につきる。
少し頭の整理をするためにこの前の話のおさらいをしよう。
 この前の俺は…とりあえず叫びました(星)皆は近所迷惑になるからやめようね(ハート)
 …俺は何をしてるんだ。なんだよハートとかキモい。冷静になってみると激しく後悔することってあるよね。今まさに俺がそうだ。忘れよう。誰にも聞かれてないのだから忘れよう。そうすれば今ここであったことを知ってるのは誰もいない。うん、忘れた。
そうこう脳内で現実逃避をしていると、先に行った優理さんが着て「ほら、さっさとしな」と言ってまたボロい建物の中に入っていった。これ以上待たせるのも悪いので覚悟を決めて入る。-まあ、驚くことなんてもうないだろう。
 入ってみると外で見たよりも中は綺麗だった。
「どうだい?気に入ったかい」
そう、ちょっと自慢するように優理さんは言ってきた。確かに広いし家具とかもしっかりしている。それにグラスや食器が置いてあるのがちらりと見えたがとてもおしゃれだった。どこかの高級レストランに使われていそうなお皿もあった。
「あんたの部屋はこっちだ。ついてきな」
奥の方にあった扉を開けて廊下に出る。絵が飾ってあり、どこかの豪邸に来たような気分になった。
「そういえば、あんたの名前をまだ聞いてなかったね」
廊下を歩きながら話す。
「あ、すみません。俺の名前は…」
言葉につまった。俺の名前は…俺の名前は?
言葉につまった俺のことを変に思ったのだろう。俺たちは長い廊下の真ん中らへんで立ち止まった。
「どうしたんだい?」
心配そうな感じで優理さんが話しかけてくる。
「おもい…だせない」
出た声はかすれていた。俺の名前はなんだ?それだけが頭をしめる。その時、優理さんが言った言葉が俺を助けてくれた。
「じゃあ、あんたの名前を私がつけてやる。まあ、思い出すまでの一時的なものだけど無いよりましだろう?」
悩みこむ優理さんの方を見る。どうしてこの人は俺のことをこんなにも助けてくれるのだろう。ほっとけばいいのに。
「あんたの名前は千(せん)だ」
「千…?」
なんでその名なんだろうと不思議に思ってると由来を言ってきた。タイミングがよすぎでこの人は俺の思考を読んでいるんではないかと思っていしまう。
「今日はあたいがここ…イーリアに着て千日目だからだ。嫌なら自分で考えな」
すごく個人的なものだった。だけど、その名前に優理さんの事が入ってると思うと独りじゃないと思えた。暖かい。
「いえ、これでいいです。…これがいいです。ありがとうございます」
そう言って俺は頭を下げる。
「ふん、顔を上げな千。ほら、さっさと行くよ」
どうやら優理さんは照れやすい人らしい。さっきよりちょっとだけスピードをあげて歩きだす。それを俺は追いかけるのだった-
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