7つ色モンスターズ

西ノ宮 譲

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復讐するほど暇じゃない

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私には兄がいた  
優秀で運動ができて誰にでも好かれる。
私にとってそんな兄は自慢で誇れる人だった
兄に負けないように私も努力を惜しまなかった
そんな私を彼はいつも見てくれていた。
ずっと昔兄に自分の目標を伝えたことがあった
兄を追い越しそして1番になる。
私がそう言うと頭を撫でて応援の言葉を言ってくれた
私はそれがとても嬉しかった。
私はいっそう努力した。
兄を追い越すためにどんな困難な道でも突き進んだ
そんな兄は交通事故で亡くなった
犯人はまだ学生で盗んだ車で違法運転をしていたところに兄は運悪く跳ねられた
私は奇しくもその時兄と同じ大学のテストを受けていた結果は無事合格
しかし、喜ぶことは無かったむしろ絶望を感じていた
今までの目標を失った私は大学に言ってもただただ漫然と講義を受ける
そんな日々が続いた
大学に通い始めて三年経つと私は研究室に入った
人犯罪心理学と名ばかりの研究室にはこの大学の落ちこぼれ達が集まっていた。
そこには週2~3回顔を出す程度の関係だった
ある日研究室に顔を出すと教授に呼ばれた
また論文の指摘だろうと思った私は足取り重く教授の部屋に入った
「何か用ですか?」
ぶっきらぼうに聞くと教授は真面目な顔で話し始める
「君はお兄さんの事を覚えているかね?」
忘れるわけの無いその質問に苛立ちを隠しながら私は是を答えると
「そのお兄さんを引いた少年を覚えているかね?」
またも同じような内容の質問に私は怒気を含みながら
「忘れるわけ無いでしょう?今更何なんですか?また例の復讐者の心理ですか?悪いですけど私は復讐をするほど暇じゃありませんから」
私の答えに教授は興味深げに続けた
「ああ、そうだったねまぁ単刀直入に言うとその少年が院から出たそうだこれは私の独自の情報網だから誰から聞いたとかは教えられないけれどとにかく例のあの少年が出所したそうだ」
一瞬目を輝かせてしまった私の表情に教授が気づいたかどうかは分からないがすぐに冷静さを取り戻す
「そうなんですか、私には関係ありませんね。」
教授は私の返答を聞くとジェスチャーでそれだけと言った
私はそのまま何も言わず部屋から出ると荷物をまとめて研究室から出ていく
真っ直ぐ家に帰るとベッドに倒れ込むと兄を殺した少年の顔を思い出す。
まだ幼いその顔には人を1人殺めたというのに反省の色は無くむしろ自分の不運を呪っているようなそんな顔をしていたそんな彼が最後に言い放ったのは
「確かに轢いたのは僕ですけど、飛び出してきたのはそっちですよ?」
実証の末兄は急いでいて信号が変わる直前に道路に出てしまった。
そういうことになった。
もちろん納得はいかなかったけれど世間体と相手の提示した額で私の両親は納得した。
そして彼は殺人と窃盗で数年間少年院に入るだけで罪を赦された。
しばらくは、それを許した親や世の中を恨んだけれどいつの間にかそれを受け入れ自分の人生を歩もうと決めた
驚いたのは自分の中に例の話を聞いてからも僕の中に怒りの感情や復讐心といったものが湧いてこなかった、自分は本当に彼を許してしまったんだと思うと夕飯も食べずに眠った
次の日久しぶりに朝早く起きるとテレビを付けた数ヶ月ぶりに見るニュースでは例の事件を取り上げ、コメンテーター達がなにやら話していたその1人がこう言った
「今の日本は青少年の刑罰が優しすぎるんじゃ無いかと思うんですよ。彼はもの盗んで、人轢いて殺してるのに数年反省文みたいなことしてはい終わり、それじゃ死んだ人の家族が納得しないんじゃ無い?」
それを聞いて僕は可笑しくなった
納得してるんだよ。金をいっぱいもらってそれで納得したよおかげで親父の会社は上手くいったし母さんは2人分の大学費用で頭を抱えなくなった。
こいつは何もわかってないんだなと思いながら私はテレビを見続けると本人が実際にテレビにでるそいつは顔にはモザイクをかけられていたが髪を金色に染めてるのだけはわかった。
キャスターが近づき話を聞くとそいつはゲラゲラ笑いながら
「いやー毎日退屈してたっすね、でも学校行かなくてよかったのはラッキーしたマジで、まぁ自分がやったことは悪いと思ってんすけどあれマジで俺だけ悪いわけじゃないんで、え?被害者家族に一言?マジですんませーん」
戯けてそういう彼の背景を見るとそこは見覚えのある場所だったどこか思い出してみると大学に行く途中に通る公園だった。
私の中で何かがざわめくがそれをかき消すようにテレビを消すと少し早いが家を出る。
大学には自転車を使って行っているだいたい15分もこげば着くその途中に例の公園の前を通ると今朝のニュースのせいか人集りとマスコミが数人いた。
1人が私を見つけると何かに気づいたように駆け寄ってくる
「あ!あなた例の事件の被害者の家族ですよね!?どうしてこの辺にきたんですか?もしかして例の少年に一言いいたくて来たんですか?何か答えてくださいよ!カメラ何してんだよ早くこっち来い!!」
私が自転車で行こうとするとカメラマンが僕の前を塞ぐそれを周りの人もヒソヒソと話しながら眺める、ため息をついて自転車から降りるとキャスターが向けるマイクに向かって
「大学の通り道なだけです。一言なんてあるわけないでしょ、私は復讐とかしてるほど暇じゃないんです。それじゃ講義に遅れるんで通してください」
と言うとカメラマンを押し退け自転車に乗り走り出す。
大学に着くが講義の時間はまだ先だった。朝から行くところが無くて研究室に行くとそこに数人の院生がいた。彼らは私を見つけると話しかけてくる
「なぁ朝のニュース見たか?あの犯人ってお前の兄貴殺したヤツだろ、でどうなの被害者の心理ってのは?やっぱり…」
そこまで言ったヤツの言葉を遮るように勢いよくドアを閉めると。
「何にもねえよ!なんなんだよ!お前らうるさいんだよ!興味ないくせに聞いてくんじゃねえよ!何が聞きたいんだよ!?復讐してやるあいつを兄貴と同じ目に合わせてやるって言ったら満足なのか!?そんなことする程暇じゃねえんだよ!!」
怒鳴り声をあげる私を教授が奥から手招きする。
息を荒げ近くにあった椅子を蹴ると奥に入っていく教授は静かに椅子に座るよう促すと立ち上がり部屋のドアを閉める。
「やっぱり色々あったね。君はまぁ私の話をあまり良くは聞かないからこうなることは予測していたんだ。」
後ろの棚からお茶を取り出し入れると私の前に置く
「飲みなさい少しは落ち着く」
私はそれを一口すすると渋さに顔をしかめるそれを教授は笑う
「カモミールティーだよ飲みにくいだろう?人も同じだ見た目や何かで判断して近づいてみると思いのほか外見とは違う犯罪を起こす人っていうのは皆そういう人だ」
カップの中身を飲み干すとそれをコーサーに戻す。
「つまり、あの人たちは私があの少年に本当に殺意を抱いていると思っているんですか?」
教授は首を横に振り
「いや、そう言うわけじゃない彼らは単に興味本位だろうしかしそれを全て受け止める必要はない前に復讐について講義をしたねその時の内容は覚えてるかい?」
首を横に振ると苦笑しながら
「まぁそうだろうね、復讐とは方法の1つで、相手の行いが許せずそれを自己正当化するその行動内では自分の考えは絶対的な真でありそれ以外は絶対的な虚である。
簡単に言ってしまうと極端に自己中心的な行動だね」
教授の言いたいことがわからなかった僕のそんな思いを読み取ったのか
「つまりだ復讐をする人っていうのは現状に納得できず自分の行いを正当化できる人だ君の場合はどんな状況でも受け入れてしまうそういう人物って事さ。」
私は腑に落ちなかったが用は何もしない人と言われただけだった。
私は教授にお茶のお礼を言うと部屋から出る、そこにはバツの悪そうな顔をした院生がまだ数人いたが私はそれを無視して研究室から出た。
講義の最中も周りから数人に声を掛けられるがそれを全て無視すると午後には誰も話しかけてこなくなった。
昼の最後に講義を終えると私は自転車で帰路に着く、しばらく漕ぎさっきの公園の近くを通るとすでに人だかりは無くなっていたが、誰かが公園の中で倒れていた。
私はそれに気づき近くと体を揺すり起こす体には目立った傷は無かった
しばらく揺すると彼は起き上がり頭を抑える話を聞くと彼はこの近くに住むホームレスで水を汲みに来たところ何者かに後頭部を殴られたとの事だった。
とっさに私は例の少年の顔を思い出す。
彼は不意にポケットに手を入れると体中を弄る
どうやら財布を盗られたようだった。がっくりと肩を落とすとゆっくりと立ち上がり足を引きずりながら私に礼を言って何処かへ歩き去る、それを呼び止めると溜息を吐きながら財布から二千円を取り出し彼に渡す。
驚き何度も言いのか?と聞いてくる彼に今度は気をつけてと言い残し私は自転車に乗りその場を去る。
家に帰り昨日と同じようにベッドに倒れ込むと教授の話を思い出す。
復讐は方法の1つ…極端な自己中…本当に自分には無縁なのだろうか
兄の事を思い出す。一緒に遊び、勉強をして、喧嘩もたまにしたでも最後にはわざと負けてくれる兄は本当にいい人だった。
私はそんな兄を目指していたのか、今考えるとなりたかったのかもしれない。
昔の私はもっと自己主張が強かった気がする、今日久しぶりに怒鳴ったが昔はもっと感情を表に出していたように思う。そうだ、それで確か兄にコインを貰った裏表同じ柄で裏しかないコイン、迷ったらそれを投げればいいと言われたっけ。しかし、そんなことを思い出しても今更どうにもならないだんだんと考えるのが面倒になった私は昨日と同じように夕飯も食べずに眠った。
次の日も同じように朝早く起きてしまう仕方なくシャワーを浴び、支度をする、財布を確認すると学生証が無くなっていた最後に出した場所を思い出す。
公園のホームレスを思い出す。
浅く溜息を吐き昨日と同じくらいの時間に家を出ると公園まで自転車を走らせる。
公園に着くと昨日の彼が倒れていた場所を探すが何も見つからなかった。
五分ほど探すとだんだん面倒になってくる。再申請すればいいかと思い自転車に戻ろうとするとどこからか私を呼ぶ声が聞こえる。
辺りを見渡すと昨日のホームレスがどこからか現れる。
「やあやあ昨日はありがとうおかげで仲間との酒盛りに参加できたよ」
そういう彼の息はまだ酒臭かった
「それはよかったですね。」
顔をしかめながら私がそういうと彼は胸のポケットから私の学生証を出す
「これ昨日あんた落としただろ?気づいて取りに来ると思って拾っといたんだ。」
そういうとそれを差し出す私は受け取る財布に戻すと彼はまた話し始める
「そんでよ、もしかしたら誰かあんたの家知ってるかと思って仲間にそれ見せたらよ1人があんたこのあいだここで取材受けてたガキに兄貴殺されてんだって?よかったらよ、昨日の礼に俺たちが…」
そこまでいう彼の話を止めると
「申し訳ないけれどその必要は無いよ、私は復讐なんて願ってないしそんなに暇じゃ無い。昨日のお金は気にしないでくれ。」
そう言うと自転車に乗り大学へ向かうその後ろ姿を彼はジッと見ていた。
その日は研究室によらず大学が終わると真っ直ぐ家に帰る。
公園の前に着くとさっきのホームレスが数人の似たような格好の人達と何かを話していた。私は少し嫌な予感がしたのでこぐ速度を上げるが案の定見つかってしまう
「よぉ学生さん!そんな急いでどっか行くのか?」
私は気づかないふりをしようと思ったが彼がこちらに近づいてきているのが分かると仕方なくブレーキをかける
「いえ、学校終わったんで家に帰ろうと思って。」
私がそういうと何が面白いのか彼は笑いながら
「そうかそうか!学校終わったか!ところでよおめえさん今日の夜空いてるか?」
一瞬何を言ってるのかわからなかったが面倒ごとの予感がしたので
「いえ、今日はちょっと用事が…」
と言うと彼はまた大笑いしながら
「そんじゃその用事終わる頃に迎え行くぜいつ終わるんだ?」
突拍子無く聞かれ他ので思わず
「12時くらいに終わるかもしれないです。」
と答えてしまった。
「わかった!12時だな起きてろよ!」
そう言うとさっきの人たちの元へ戻っていく。
私は急いで自転車のペダルに足を掛けると全速力で走り出す。
家に帰ると鍵を掛けベッドに潜りこむ。
頼むからみんな私を放っておいてくれ、巻き込むのはやめてくれ。
現実から逃れるために私は携帯ゲームに電源をつけると電気もつけずにそれをし続ける。
ゲームをしていると今までのことを忘れられる、兄が居なくなってから私のもっぱらの遊び相手だった。大型の飛龍を大きな剣で叩きのめしていると携帯が鳴る、取る気はないが一応確認すると母からだった。
私はそれを一度見てベッドの端に置くとゲームを再開する両親は兄が居なくなって変わってしまった。母は放任主義だったのが一変して連絡をいちいち入れるようになったし父は仕事ばかりで家には居なかった。
彼らなりの現実逃避なのだと気付いた私はすでに家族との接触をしなくなっていた。
兄が生きていたら、今頃どうなっていたのかと考える家族みんなで夕食を食べ兄の話や私の話母の話を父が聞いてたまに笑い楽しくしていたのかもしれない。
そんなことを考えていると自分のキャラがやられていた。
急につまらなくなり電源を切るとそれを放り投げ天井を見る。
今までに覚えのない感覚が頭を体を駆け巡る、急に体がだるくなる、何もしたく無くなる。
よかった未来はもう来ない、現実逃避をしても意味がないそんな考えまで巡り出す。
布団を頭にかぶる、目の前が暗くなる、闇の中で私は頭の中の考えを1つづつ消していった。最後まで残っていた兄の事も消すと騒がしかった世界が急に静かになる。
その静けさが心地よくてしばらく聞いていた。
インターホンが鳴りドアが何度も叩かれる、私は起きると携帯を見た
時間は12:10を示している本当にあのホームレスは来たのかと思い玄関の窓を覗くと。
そこに彼はいた、どこかソワソワとしていて仕切りに通りの向こうを見ている。
玄関の鍵を開けると出てきた私を見ながら満面の笑みで
「やったやったぞやりとげた。」
彼は嬉々としてそう言うと私の腕を掴む。
寝起きの頭で困惑しながら彼に何をしたのかと聞くが着いたらだ着いたら教えると言うだけで私の腕を引っ張る、落ち着くように彼に言うと私は携帯と財布だけ持ち靴を履く。
その間も彼はソワソワしていた。
私は彼に引かれあの公園に行くとさっき彼と一緒にいた人達が何かの周りに集まっていた。
「よぉ様子はどうだ?」
小声で彼らに声を掛ける
「大丈夫だ早いとこ運んじまおう」
そういう彼らはその足元にある何かを指差す
それは大きな麻袋で、中で何かが蠢いていた。
彼らはどこからか持ってきたのか軽トラックにそれを積み込むと私を隣に乗せ走り出した。
しばらく走っていると海に着くとトラックを止め荷台からそれを下すと
砂浜にそれを運ぶ。
私はとうとう焦れったくなり中身は何かと聞く
彼らは近くに穴を掘りその上に木ぐみを立てながら
「中身見ても騒がないなら開けていいぞ。」
と言う。
私はその袋をゆっくりと開けると中からうめき声が聞こえるのに気づく
ソッと中に手を伸ばすと何かに触れる、それは何か体毛のようでサラサラとしていた。
木ぐみを終えた彼らはそれの近くにその袋を引きずっていく。
と数人がかりで袋をひっくり返す
ゴロンと中身が転がり出ると木ぐみに火を付ける。
目の前にあった…いたのは例の少年だった。
彼は黒い布で目隠しをされ布を噛ませ手足は縄で縛られていた
布越しに何かを言っているが何を言っているのかわからない。
誰かが口についている布を取ると
彼は大声で助けを呼ぶしかしそれは波の音に掻き消されてしまう。
と、彼らの1人が少年に質問をする。
「最近お前が院から出たのは知ってるところでお前どっかの公園で人を襲わなかったか?」
少年は「知らない」と叫ぶが縛られている紐をきつくされると逆のことを言った。
「ごめんなさい!俺がやりました変なおっさんからホームレス襲ったらお金あげるって言われて、俺は昔人殺したからそれだけの度胸あればできるだろって言われて襲いました!」
彼らは顔を見合わせ頷き合うと
「おい坊主、その時そいつの財布パクったか?」
今度は最初から縄をきつくしながら聞くと
「痛い!痛い!盗りました!ホームレスにしては財布の中に結構入ってたから盗りました!」
私はこの少年が本当にあの少年なのか疑わしくなった。出てきた時テレビではあんな態度だったのに目の前のそれはそんな気配を微塵も見えない本当に無力な少年だった。
「おい、坊主その財布今どこにある?」
手が鬱血するほど強く締めながら聞くともう彼は痛みで泣き声になっていた
「親にバレるのが怖くって近くのコンビニのゴミ箱に入れました!本当にごめんなさいだから家に帰して…」
それを聞くとあの公園のホームレスは目を伏せ目から涙を落とす。
1人がギリギリと縄を締めながら大声で言った
「捨てたってか、え!ヤッさんの財布捨てたってか!!てめぇこのガキあの財布がどんなもんか知ってんのか!?あれはなぁてめぇ見てえなガキに遊ばれて死んだヤッさんの娘の最後のプレゼントだったんだぞ!!」
それを耳元で言われ少年が大声で泣き喚きながら謝罪の言葉を繰り返すと
ヤッさん言われている男が縄を締めている男に
「もういい、無くなっちまったもんは仕方ねえ。」
と言った、男はその手を離すと少年に痰を吐きかける。
ヤッさんは彼の前に屈むと顔に付いている布を取り彼の顔を真っ直ぐに見ながら
「おめえは俺の思い出を1番大事なモンを捨てやがった俺はそれが許せねえだがな俺の取られたものはただの財布だだからお前の命はとらねえ…」
少年は泣きながら今度は感謝の言葉を言い続ける。それを頬を引っ叩き止めると彼はまた続けた
「だがなお前は昔もこうやって人の大事なモンを取った。お前はそん時のことを許されたと思ってやがるがとんでもねえ、お前は誰にも許されちゃいねえんだ。」
ヤッさんは彼の前から退くと彼の目の前にいる私に指を指す。
「おめえあいつに見覚えねえか?」
彼は私を見ると一瞬誰か分からないようだがすぐに思い出したの砂浜に頭を擦り付け謝りだす。
「ちゃんと覚えてんだな。そうだ、てめえが数年前に殺した男の家族だ。こいつはなてめえの命をどうこうする権利を持ってんだよだからな、てめえが生きるか死ぬかをこいつに決めて貰う。」
彼はそう言って少年から離れる
私は少年にゆっくりと歩み寄ると肩に手を置く
その瞬間ビクンと体が動ごくが私はそのまま彼に話し始める
「君は私のおそらくこの世で1番大切な人を私から奪った、今からだいたい3年前だ私は兄の大学の受験を受けてた兄はそんな私の応援しにきてくれてたんだ。
その最中に君にはねられた、君が私に最後に言った言葉を覚えてるかい?自分は悪くない、悪いのは飛び出してきた兄だって言ったんだ。
全く君は本当に小賢しい奴だ、昔の私は君をそういう風に思ってたけれどね今は違うよ君は本当にラッキーな奴だって思ってる。
裕福な家庭に生まれて、未成年だからという理由で短い期間で社会に戻れた、こんな国に生まれてこれたこと。君はねそういう環境に守られた本当に運のいい奴なんだなって」
私の言葉を震えながら聞いている少年を起き上がらせる顔に砂を付け顔をクシャクシャにしている。
私はその顔から砂を払ってやる
「そんな運のいい君の命を今私が握ってるでもね正直どうでもいいんだ。」
私の言葉に彼らがどよめき出すがヤッさんの一声で黙る少年には希望の光が見えているのか私の顔を真っ直ぐに見ている。
「君の命…生殺与奪権なんてそんな面倒なこと私はしたくないんだ、正直な私も無理やりこんなところに来させられて挙句にこんなことさせられてうんざりなんだよ。
私は誰にもかまわれたくないんだ。だからね…君の命を」
私は財布から1枚のコインを取り出す。
「これで決めるよ、表が出たら君を生きる、裏が出たら君は死ぬ」
私がそう言うとまた、彼らが騒ぐそれを無視して私はコインを弾くとキャッチする。
少年は祈るように目をつぶっていた彼が目を開けると目の前には
「…裏だ、残念だね君の運は尽きちゃってるみたいだ」
彼らが歓喜の声を上げながら少年を取り囲むと口に布を巻きそのまま海に向かっていく
それをヤッさんは見ている、私は火のそばに行くとさっきのコインを見る
「あんがとうな」
ヤッさんがそう口を開く。
「私は何もしていない。兄がやったんだ」
私の言葉の意味が汲み取れずどういう意味かと聞く彼にコインを見せる
「これはね兄からもらったんです。何かわからないときはこれを弾け、そうすればその答えを俺が出してやるこのコインは第二の俺だ。」
彼はマジマジとそのコインを見る
「兄はね裏表がない人だったでも優しくて人気だった。その兄に任せたんですよ。」
私はそのコインを火の中に投げ込むと拝む
「おいおい、いいのか?そんな事してそれっていわゆる形見だろ?」
拝み終わると私は彼に向き直り笑いながら言った
「いいんです。これで兄との呪縛も解けるかもしれないんです。それに…」
彼らが戻ってくるその腕には濡れて動かなくなった少年を抱えていた。それを火の中に放り込むと彼らは火力を増すためにガゾリンをかけた木片を投げ入れる。
辺りに肉の焼ける匂いが立ち込める、誰が用意したのか酒を取り出すとそれをみんなで飲む。楽しい酒盛りだったが私は明日があるからと先に帰った。
帰りはまさかのヤッさんの運転だった。飲酒運転になりますよ。と言ったが俺は飲んでないと言い続けていた。公園に着くころには空は白んでいた、私は歩いて家に帰るとベッドに倒れ込み眠る。
起きたのは玄関がノックされたからだ開けると警察だった。昨日この近くのとある家で子供が誘拐されたと言う事で捜査をしているとのことだったが私はそれを知らないと言って追い返す。テレビを付けてみるとその報道で溢れていた。それを見ているとあのコメンテーターがまた出ていた
「やっぱりこれって因果応報なんですかね?復讐しようって思って誰かがやったのかはたまた、子供をさらっての身代金目当てなのか、とにかく無事だといいですね」
前回とは違ったコメントに私は苦笑いをした。
とりあえずシャワーを浴びる昨日の海で髪はベトベトしていた。それを感じて昨日の夜のことは夢じゃないことを認識する。新しい服に着替えてさっき着ていた服を捨てる。
新しいコインを財布に入れるとゴミ袋を持って家を出る
自転車に乗りあの公園の前を通るとまた人だかりができていた。
その前を取り過ぎようとすると見覚えのある男が私に近づく。
あの時にマスコミだった。
「あ!この前のお兄さん!今回の事件どう思いますか?何か知ってるんじゃないですか?あなた被害者ですものね!もしかしてお兄さんが誘拐したの?何か答えてよ!カメラマン!遅いよ何やってんの!?」
また、私の前をカメラマンで塞ぐと前と同じように
「あんた失礼な人だな、前も言ったでしょ。私は復讐なんてするほど暇じゃないんだ」


はい犯罪心理学研究室です。
ああ、例のねアレ協力ありがとね
それにしてもうちの生徒アレ、ダメだったね
せっかくお膳立てしたのに結局全部間人任せだもんね
迷惑かけた?あーそういえば財布とられちゃったんだっけ
それじゃそれも報酬に含んであげるから。
いいのいいの、気にしないでよ
君たちと仲良くするとこういう事しやすくなるからさ
やっぱり研究は実例を作った方が立証しやすいからね。
え?今度は誰にするって?うーん目ぼしいのは付いてるんだけど難しいかな
まぁある人を付けてるから大丈夫だと思うけど
あ、うんその子ちょっと頭がね…
そうそう、まぁ彼女がすごい美人だから。
今時で言うところの爆発させよだっけ?
実際別の意味で爆発させるんだけどね
はい、それじゃ報酬は次の週末にそれじゃ
コンコン。
入って、いや、ちょっと君に話があってね
君はお父さんの事覚えてるかね?
実は…
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