奇病から世界を救ったけど無念死したアラサー喪女研究者は、転生先で第二の人生を謳歌する!?

Nekoyama

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プロローグ

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100年ほど前に突如として現れた奇病。
突然発狂して死に至る病、ザルシアス。

私は王立研究所に勤め、研究生活のほとんどをその奇病の原因を突き止めることに費やした。
昼間は王立大学院の学生の講義を担当しながら、夕方以降は身を削るように研究に没頭して20年。

ついに奇病の原因となる分子を特定した。
この分子の働きを抑える薬を創れたなら、奇病ザルシアスは治療可能な病となるだろう。


この研究成果を世間に発表すれば、後は誰かが薬を開発してくれるだろう。
一刻も早く、研究成果を国に報告しなくては。
私は急いで論文を執筆し、成果申請のために事務局に向かった。

その時、私の意識は突然混濁する。
視界が紫になって、周りの人間が全て鬼に見えるようになってきた。

ああ、これは私が長年研究してきた、奇病ザルシアスの予兆だ。
周りの人間が自分に攻撃を加えるように見えるように錯覚して、発狂してしまう病。

しばらく冷静を保っていられても、数時間後には脳細胞が死に始め、即日で死に至ってしまう。
この成果論文だけ提出したら、その足で研究所の裏山に向かおう。

最期に発狂して人に危害を加えて死ぬなんて、絶対避けたい。
恋愛そっちのけで、彼氏もつくらず、結婚もせずに、研究一筋で生きてきた。

研究成果を発表したら、しばらく休暇をもらって旅行しようと思っていたのにな。
仕方ない。未練といえばいろいろあるけど、時間がなさすぎる。

誰にも知らせず、一人で発狂して、一人で死のう。
そうして、私はひっそりとこの世を去った。


私がひっそりとこの世を去っている頃、王宮は奇病ザルシアスの原因特定の報告を受けて、急いで薬の開発の指示を出した。
と同時に、原因を特定した女性研究者を招集して、報酬を与えようとしていた。

しかしながら、どこを探してもその女性研究者は見つからず。
偉業を達成しながらも忽然と姿を消したその女性は、「実は神の化身だったのではないか?」と噂され、この世界で大いなる信仰を集めた。

数年後には、奇病ザルシアスの治療薬が開発され、薬の開発に関わった研究者らは皆、爵位を賜った。
姿を消した女性研究者には、正式に神の化身の称号が与えられ、街の至る所に彼女の像が立てられた。

人々の信仰は、神力となって彼女に届く。


その頃、この世を去った女性研究者は、輪廻の輪に入るために天界の審判の門の列に並んでいた。
その待ち時間は亡者にはほんの少し、現世では数年間の時間。

彼女が並んでいる時に、現世からものすごい量の神力が送られてきた。
白い亡者の衣装を身に纏っていた女性は、神力をその身に浴びてキラキラと輝き始めた。

それを見ていた審判の門の神様は、急いで天界で最も高位の神様に連絡した。
「亡者がいきなり神化した」と。


「あなたは人ではなくなってしまったので、この世界では輪廻の輪には入れません。」

目の前の天界最高神様が私に説明する。
通常、人や動物は、審判の門をくぐり、現世での行いによって、天国や地獄に行ったあと、しばらくすると魂をリセットされてから転生する。

審判の門は、「人や動物を」裁く場所であるために、人や動物以外は通ることはできない。
私は、なぜ神化してしまったのか、奇病の原因を突き止めたその後の現世の状況と合わせて説明してもらった。

皆を救うことに貢献できたことはとても嬉しい一方で、まさか神の化身だと認定されるとは。完全に計算外だった。

「では天界最高神様、私はどうすればよろしいのでしょう?」


神様会議の結果、私には2つの選択肢が与えられた。

1つめは、神様としてこの天界で働くこと。
2つめは、異世界に転生すること。この世界でなければ、神の特性を持っていても転生できるようだ。

私は逡巡した後、2つ目の異世界転生を選んだ。
研究一筋だった私の人生。神様として崇められるより、普通の人になって、次は恋愛も経験したいし、旅行も楽しみたい。

転生先やら新しい身体は、天界最高神様の補佐官の皆さんが嬉々として、準備してくださった。
待っている間に、彼女は天界の神様たちを補佐してしっかり働いた。
それは人間の感覚で1ヶ月ほど、現世の時間で100年ほどの期間であった。

そうしてようやく、彼女は異世界に送られて転生する。
多くの神様に見送られ、祝福されて、彼女は笑顔で旅立っていった。
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