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過去 Part1

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一条side

「全てを話そう」

 ***

あの日は、冬の寒い日だった

俺は小さい頃に両親に命令され、語学留学に行くことが決定し、飛び立つ前日

ふと、遊びたくなった

旅行の準備は柏木にやらせておけばいいと思って外に飛び出して公園に向かった

ずっと家にいるから、友達は一人もおらず、ほぼ誰とも話したことがなかった。

公園自体は柏木と行ったことがあるから遊ぶところだってところはだいたいわかっていたが、何をしていいかわからず、ただベンチに座って景色と遊具を眺めていた

これが日本にいる最後の日か…

家に帰りたくなくて小1時間ぐらい公園に居ると、4人の家族がやって来た

煩かったし、見かけない奴らだったから、追い出してやろうかとかも考えたけど、家族連れの小さな男の子に目がいった

その子を見た瞬間なんにも色のない人生に色がついた気がした

それと同時にこの子が俺の運命の番だと思った

その子は遊びたいと駄々を捏ねていて両親を困らせていたが、そんな姿ですら羨ましかったし愛おしかった

この子に触れられば…そう思って立ち上がった

その子の目の前に立ち「おい!お前!遊んでやる!」と言って手を引いたが離された「やめて!ゆず!お母さんとお父さんと遊びたいの!あっちいって!!!」と言ってお母さんに抱きつく

一条家の人間が断られるなんて…父親に言ったら即、殺されるのに!言う事聞かないやつなんて今まで居なかったのに!!!!悔しい!

「金なら幾らでもある!遊べ!」と言うけど一向に母親から離れようとしない

金で解決しないことはないって父親から言われたのに…どうして遊んでくれないんだ!

すると、父親が「ご、ごめんね。僕としてはこの妹がなかなか寝付けないし泣き止まないから遊んで欲しいんだけどね…」と言いながら困った顔をした

 人助けなんて嫌いだし、こいつらなんかに要はないけどどうしてもその子を手に入れたかった

 だけど、全くと言っていいほどいい案は思いつかなかった

 とりあえず「おい、お前!この公園で遊んだことはあるか!」と聞くと「うんうん」と首を振る

「俺が案内してやるから!!!遊べ!」

「やっ!」とそっぽを向く

ムカついて強引に母親から離し柏木と遊んだ砂場に来た

「痛いっ!」と言って男の子は手を離す

「ほら!遊べ!」

「遊べって言ったって…砂場じゃ…」と不満を垂れる

「いいから!遊べ!」

「で、でも…」となかなか遊ばないし、自分の威厳を見せてやろうと思って柏木に褒められた城を作ってやる

砂場に入って「見とけ!!!」と言って必死に作る

30分ぐらいして「飽きた~」とか言うけどその子はチラチラと俺の制作風景を見ていた

よし、ようやく完成した

「こんな感じに作るんだぞ!」と言うとその子は完成した城を見て目を輝かせていた

その目を見て絶対この城以上にすごい物を作ってやる!

城じゃなくて俺を見てもらうように、頑張ろう。そう決めた

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