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* 死神生活三年目&more *
第344話 死神ちゃんと知的筋肉⑥
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死神ちゃんがダンジョンに降り立った瞬間、冒険者がモンスターに対して見事なジャーマンスープレックスを決めた。思わず拍手を送ると、起き上がった冒険者が出現したアイテムそっちのけで死神ちゃんに抱きついてきた。
「わ~! 師匠、お久しぶりー!!」
「おう、ちてきん。久しぶりだなあ! それにしても、お前は相変わらずキレッキレだな。ハムとの関係は――」
「うわああああん! そっちも相変わらずなんだよ、聞いてよ師匠おおおおおお!」
ちてきんと呼ばれた僧兵の女性は死神ちゃんをギュウギュウと抱きしめながら、甘えるように顔をぐりぐりと押しつけてきた。死神ちゃんは落ち着かせようと彼女の頭を撫でようとしたのだが、彼女の締めつけがあまりにも強すぎ、苦しさのあまり満足に動けなかった。そして「ぐえ」と呻くのと同時に、死神ちゃんの体は彼女の体をすり抜けた。彼女は〈またやっちまった〉と言いたげな気まずそうな表情を一瞬浮かべたあと、謝罪の言葉を述べながらポージングをするという〈筋肉挨拶〉を披露した。
彼女は〈知的筋肉〉、略して〈ちてきん〉と呼ばれている司教上がりの僧兵である。司教としての腕は素晴らしく仲間たちからの信頼も厚かったのだが、常駐先の宿屋の近くにあった僧兵の道場の前を通るたびに見かける〈踊る筋肉〉に彼女は魅せられてしまった。そして僧兵に転職後、彼女はハムと呼ばれる筋肉大好き男と出会った。彼に請われるがまま競技ダンスのパートナーとなり、今ではすっかり〈無二の筋友〉だという。だが、彼女の乙女心は〈友〉では終われなかった。
ハムはそんな彼女の秘めたる思いに気づくことなく、〈ダンスのパートナーにして、筋友だから〉という理由でちょくちょくプレゼントをしている。それがまた彼女の乙女心を刺激し、そういう話を聞かされるたびに死神ちゃんもニヤニヤとしてきた。しかし、あまりのハムの鈍感さに、彼女の刺激された乙女心も死神ちゃんのニヤニヤも、いまだに着地点を見つけることができていなかった。
「俺さ、お前らの〈仲良しエピソード〉を聞かされるたびにニヤニヤとしてきたわけなんだがさ、いい加減〈ニヤニヤ〉じゃあなくて〈ニコニコ〉としたいよ。祝福の意味を込めて」
「私だってそうなりたいよ! でもさ、ほら、ハムって、こう言っちゃあアレだけど、脳筋でしょう?」
「そうだったな……。あいつ、筋肉のことしか考えてないという意味でも、戦闘スタイルという意味でも、脳筋だったな……。戦い方のほうは、だいぶ改善されてはきたが……」
死神ちゃんががっくりと肩を落とすと、ちてきんもしょんぼりとうなだれた。死神ちゃんは気を取り直すと「本日はカカオ集めに来たのか」と尋ねた。すると、彼女はうなずきながら照れくさそうに笑った。
「パーティーの仲間たちに、日ごろの感謝を込めてチョコ箱をあげようと思って。私、最初は職業冒険者だったはずなのに、筋肉アイドルの活動を始めて、今ではすっかり兼業でしょう? それでも、みんな、私はパーティーに欠かせない存在だからって、私のすることを全力で応援してくれるし、パーティーも組み続けてくれてるんだよ。だから――」
「ハムにはやらないのか? ほら、今回のチョコ箱は指輪が出てくるんだろう? 白黒つけるのに、ちょうどいいじゃあないか」
ちてきんは唐突な提案に一瞬ぽかんとしたあと、すぐに苦い顔を浮かべて首を傾げた。
「いやいや、師匠。甘いものって太るでしょう? 筋肉にも良くないんじゃあないの?」
「とんでもない! 知的に筋肉を愛するあなたにこそ知ってほしい! いいですか、チョコレートは上手に付き合えば筋育が捗るナイスフードなんですよ!」
死神ちゃんはカッと目を見開くと、背筋を正して懇々と〈チョコレートと筋肉〉について語りだした。ちてきんは目を輝かせると、真剣に〈筋肉神の尊いお言葉〉に耳を傾けた。
「というわけですから、いいですか! パティシエさんにカカオ豆を渡す際には〈ダークチョコで〉と伝えてください! そして〈そこからさらにお菓子への加工は要りません〉と! 加工するとしても、ナッツやドライフルーツと一緒に固めるくらいです!」
「さすがは師匠! 目から鱗が落ちたよ! ――よしっ! じゃあ、最初のチョコ箱はハムにプレゼントしようっと!」
その日は、これから用事があるからということで、ちてきんは死神ちゃんと教会でお別れをした。数日後、死神ちゃんは再びちてきんにとり憑いた。カカオ収集の進捗を尋ねると、あとひとつ入手できればチョコレートにしてもらえるところまできているそうだ。
「できたらすぐにでも渡したいなと思って、今日、いつもの修行スポットにハムを呼び出しているの。だから師匠、せっかくだから、私の勇姿を見届けて!」
死神ちゃんがうなずくと、ちてきんは勇猛果敢にモンスターへと突っ込んでいった。雄々しい声を上げながら、彼女は次々とプロレス技を華麗に決めていった。しかしドロップはかなり渋く、彼女は中々最後のひと粒を手に入れることができなかった。
いくらなんでも待たせ過ぎとなってしまうと焦り始めたころ、彼女はようやくカカオ豆を手に入れた。それを持って急いで一階に戻ってパティシエに渡し、ダークチョコに仕立ててもらうと慌てて三階奥の修行スポットへと向かった。
「ハム! 待たせちゃってごめんね!」
「おう、ちてきん! ずっと筋トレしてたからな、全然問題ねえよ! ――お、嬢ちゃーん! 久しぶりだなあ!!」
ハムはちてきんの後ろに隠れていた死神ちゃんに目ざとく気がつくと、嬉しそうにかけより、抱き上げてスイングした。そして彼は呼び出されたまま放置されたことを咎めるどころか、どうせ忙しかったんだろと彼女を労った。
ちてきんは唾をゴクリと飲み込むと、待たせてしまった理由を伝えながらチョコ箱を差し出した。ハムは最初、ちてきんが見せたような〈甘いもの? 筋肉に悪いんじゃあないの?〉という表情を浮かべていた。それを彼女は拒絶と勘違いしたようで、涙を浮かべてしょんぼりとし始めた。死神ちゃんは慌てふためくと、ちてきんに向かって言った。
「ほら、教えてやったあの話。あの話、しろよ」
「え? うん、えっとね――」
ちてきんはたどたどしい口調ながらも、必死に〈チョコレートと筋肉〉について説明した。聞きながらハムの瞳はみるみると輝き、尊敬の眼差しで彼女を一心に見つめた。彼女が説明を終えると、ハムは興奮で頬を染めあげて「すごい」を連発した。
「俺は馬鹿だから、嬢ちゃんがせっかく教えてくれたことをきちんと理解するってことが中々できないんだが、やっぱちてきんは頭いいよな! そんな難しい話を、しっかり覚えることができるなんてよ!」
「じゃあ、その、もらってくれる?」
「おう、もちろん!」
ハムは快活に笑って箱を受け取ると、さっそく一粒チョコを口の中に放り込んだ。そして苦味の強さに心なしか顔をしかめながら、これはたしかに筋肉に効きそうだとうなずいた。
彼は中に指輪が入っていることに気がつくと、それを取り出してまじまじと見つめた。裏には「ちてきんより、愛をこめて」という文言が彫られており、それを眺めながら彼はウンウンとうなずいた。
「〈筋友愛よ、永遠なれ〉ということかな、これは。いやはや、照れるな」
「そうじゃなくてね! あの、その……。つっ……つきあってほしいの!」
「え? 今か? 別にいいけどよ」
そう言って、ハムはチョコ箱をポーチにしまい込むとファイティングポーズをとった。どうやら、ちてきんが大事なところで噛んでしまったがために、彼は〈突っつき合う〉――すなわちスパーリング練習をしようと提案されたと勘違いしたらしい。
ちてきんの渾身の告白に予想通りすぎる返しをしてくれたハムに、死神ちゃんもちてきんも唖然として一瞬言葉を失った。しかしちてきんはへこたれることなく、さらに言葉を追加した。
「そうじゃなくてね!? その、私たち、そろそろ次のステージに進んでもいいころなんじゃあないかな~と思って!」
「次のステージ……? あれか? お前、地域アイドルから脱却して全国区目指したいってことか?」
「だから、そうじゃなくてね!?」
「あっ、分かったぜ! 俺の〈筋肉に対する情熱〉と、お前の〈確かな知識〉で、筋肉愛をもっと広めていきたいってことだな!? いいぜ、俺、お前に一生ついていくよ! 一緒に、いい神殿築こうぜ!」
ハムは〈良い家庭を築こう〉のノリで、サラリと宗教法人の設立を宣言した。どこからどうツッコめばいいのか、さすがの死神ちゃんも判断が追いつかなかった。死神ちゃんとちてきんが先ほど以上にぽかんとしていると、ハムはハッと真面目な顔をしてポツリと言った。
「そうと決まれば、さっそく、どこからどう始めたらいいか調べねえとな! とりあえず、創世神様をお祀りしているところに聞いてみたらいいかな!? あそこ、一番規模がデカイし、ダンジョン内に教会があるくらい力もあるし! ――よし、善は急げだ! またな、嬢ちゃん!」
「ハムぅぅぅぅぅッ!?」
死神ちゃんがギョッとして絶叫する隣では、ちてきんが悶々とした表情で「これ、プロポーズなの? でもちょっと違うような。でも、うーん」とぶつぶつ呟いていた。
後日、聞いたところによると、創世神からのご神託により〈筋肉神教会〉という名のスポーツジム発足が認められたという。死神ちゃんは心底ケツあごを恨めしく思ったのだった。
――――外堀から埋められていくというのは、こういうことなのかなと死神ちゃんは思ったそうDEATH。
「わ~! 師匠、お久しぶりー!!」
「おう、ちてきん。久しぶりだなあ! それにしても、お前は相変わらずキレッキレだな。ハムとの関係は――」
「うわああああん! そっちも相変わらずなんだよ、聞いてよ師匠おおおおおお!」
ちてきんと呼ばれた僧兵の女性は死神ちゃんをギュウギュウと抱きしめながら、甘えるように顔をぐりぐりと押しつけてきた。死神ちゃんは落ち着かせようと彼女の頭を撫でようとしたのだが、彼女の締めつけがあまりにも強すぎ、苦しさのあまり満足に動けなかった。そして「ぐえ」と呻くのと同時に、死神ちゃんの体は彼女の体をすり抜けた。彼女は〈またやっちまった〉と言いたげな気まずそうな表情を一瞬浮かべたあと、謝罪の言葉を述べながらポージングをするという〈筋肉挨拶〉を披露した。
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ハムはそんな彼女の秘めたる思いに気づくことなく、〈ダンスのパートナーにして、筋友だから〉という理由でちょくちょくプレゼントをしている。それがまた彼女の乙女心を刺激し、そういう話を聞かされるたびに死神ちゃんもニヤニヤとしてきた。しかし、あまりのハムの鈍感さに、彼女の刺激された乙女心も死神ちゃんのニヤニヤも、いまだに着地点を見つけることができていなかった。
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「私だってそうなりたいよ! でもさ、ほら、ハムって、こう言っちゃあアレだけど、脳筋でしょう?」
「そうだったな……。あいつ、筋肉のことしか考えてないという意味でも、戦闘スタイルという意味でも、脳筋だったな……。戦い方のほうは、だいぶ改善されてはきたが……」
死神ちゃんががっくりと肩を落とすと、ちてきんもしょんぼりとうなだれた。死神ちゃんは気を取り直すと「本日はカカオ集めに来たのか」と尋ねた。すると、彼女はうなずきながら照れくさそうに笑った。
「パーティーの仲間たちに、日ごろの感謝を込めてチョコ箱をあげようと思って。私、最初は職業冒険者だったはずなのに、筋肉アイドルの活動を始めて、今ではすっかり兼業でしょう? それでも、みんな、私はパーティーに欠かせない存在だからって、私のすることを全力で応援してくれるし、パーティーも組み続けてくれてるんだよ。だから――」
「ハムにはやらないのか? ほら、今回のチョコ箱は指輪が出てくるんだろう? 白黒つけるのに、ちょうどいいじゃあないか」
ちてきんは唐突な提案に一瞬ぽかんとしたあと、すぐに苦い顔を浮かべて首を傾げた。
「いやいや、師匠。甘いものって太るでしょう? 筋肉にも良くないんじゃあないの?」
「とんでもない! 知的に筋肉を愛するあなたにこそ知ってほしい! いいですか、チョコレートは上手に付き合えば筋育が捗るナイスフードなんですよ!」
死神ちゃんはカッと目を見開くと、背筋を正して懇々と〈チョコレートと筋肉〉について語りだした。ちてきんは目を輝かせると、真剣に〈筋肉神の尊いお言葉〉に耳を傾けた。
「というわけですから、いいですか! パティシエさんにカカオ豆を渡す際には〈ダークチョコで〉と伝えてください! そして〈そこからさらにお菓子への加工は要りません〉と! 加工するとしても、ナッツやドライフルーツと一緒に固めるくらいです!」
「さすがは師匠! 目から鱗が落ちたよ! ――よしっ! じゃあ、最初のチョコ箱はハムにプレゼントしようっと!」
その日は、これから用事があるからということで、ちてきんは死神ちゃんと教会でお別れをした。数日後、死神ちゃんは再びちてきんにとり憑いた。カカオ収集の進捗を尋ねると、あとひとつ入手できればチョコレートにしてもらえるところまできているそうだ。
「できたらすぐにでも渡したいなと思って、今日、いつもの修行スポットにハムを呼び出しているの。だから師匠、せっかくだから、私の勇姿を見届けて!」
死神ちゃんがうなずくと、ちてきんは勇猛果敢にモンスターへと突っ込んでいった。雄々しい声を上げながら、彼女は次々とプロレス技を華麗に決めていった。しかしドロップはかなり渋く、彼女は中々最後のひと粒を手に入れることができなかった。
いくらなんでも待たせ過ぎとなってしまうと焦り始めたころ、彼女はようやくカカオ豆を手に入れた。それを持って急いで一階に戻ってパティシエに渡し、ダークチョコに仕立ててもらうと慌てて三階奥の修行スポットへと向かった。
「ハム! 待たせちゃってごめんね!」
「おう、ちてきん! ずっと筋トレしてたからな、全然問題ねえよ! ――お、嬢ちゃーん! 久しぶりだなあ!!」
ハムはちてきんの後ろに隠れていた死神ちゃんに目ざとく気がつくと、嬉しそうにかけより、抱き上げてスイングした。そして彼は呼び出されたまま放置されたことを咎めるどころか、どうせ忙しかったんだろと彼女を労った。
ちてきんは唾をゴクリと飲み込むと、待たせてしまった理由を伝えながらチョコ箱を差し出した。ハムは最初、ちてきんが見せたような〈甘いもの? 筋肉に悪いんじゃあないの?〉という表情を浮かべていた。それを彼女は拒絶と勘違いしたようで、涙を浮かべてしょんぼりとし始めた。死神ちゃんは慌てふためくと、ちてきんに向かって言った。
「ほら、教えてやったあの話。あの話、しろよ」
「え? うん、えっとね――」
ちてきんはたどたどしい口調ながらも、必死に〈チョコレートと筋肉〉について説明した。聞きながらハムの瞳はみるみると輝き、尊敬の眼差しで彼女を一心に見つめた。彼女が説明を終えると、ハムは興奮で頬を染めあげて「すごい」を連発した。
「俺は馬鹿だから、嬢ちゃんがせっかく教えてくれたことをきちんと理解するってことが中々できないんだが、やっぱちてきんは頭いいよな! そんな難しい話を、しっかり覚えることができるなんてよ!」
「じゃあ、その、もらってくれる?」
「おう、もちろん!」
ハムは快活に笑って箱を受け取ると、さっそく一粒チョコを口の中に放り込んだ。そして苦味の強さに心なしか顔をしかめながら、これはたしかに筋肉に効きそうだとうなずいた。
彼は中に指輪が入っていることに気がつくと、それを取り出してまじまじと見つめた。裏には「ちてきんより、愛をこめて」という文言が彫られており、それを眺めながら彼はウンウンとうなずいた。
「〈筋友愛よ、永遠なれ〉ということかな、これは。いやはや、照れるな」
「そうじゃなくてね! あの、その……。つっ……つきあってほしいの!」
「え? 今か? 別にいいけどよ」
そう言って、ハムはチョコ箱をポーチにしまい込むとファイティングポーズをとった。どうやら、ちてきんが大事なところで噛んでしまったがために、彼は〈突っつき合う〉――すなわちスパーリング練習をしようと提案されたと勘違いしたらしい。
ちてきんの渾身の告白に予想通りすぎる返しをしてくれたハムに、死神ちゃんもちてきんも唖然として一瞬言葉を失った。しかしちてきんはへこたれることなく、さらに言葉を追加した。
「そうじゃなくてね!? その、私たち、そろそろ次のステージに進んでもいいころなんじゃあないかな~と思って!」
「次のステージ……? あれか? お前、地域アイドルから脱却して全国区目指したいってことか?」
「だから、そうじゃなくてね!?」
「あっ、分かったぜ! 俺の〈筋肉に対する情熱〉と、お前の〈確かな知識〉で、筋肉愛をもっと広めていきたいってことだな!? いいぜ、俺、お前に一生ついていくよ! 一緒に、いい神殿築こうぜ!」
ハムは〈良い家庭を築こう〉のノリで、サラリと宗教法人の設立を宣言した。どこからどうツッコめばいいのか、さすがの死神ちゃんも判断が追いつかなかった。死神ちゃんとちてきんが先ほど以上にぽかんとしていると、ハムはハッと真面目な顔をしてポツリと言った。
「そうと決まれば、さっそく、どこからどう始めたらいいか調べねえとな! とりあえず、創世神様をお祀りしているところに聞いてみたらいいかな!? あそこ、一番規模がデカイし、ダンジョン内に教会があるくらい力もあるし! ――よし、善は急げだ! またな、嬢ちゃん!」
「ハムぅぅぅぅぅッ!?」
死神ちゃんがギョッとして絶叫する隣では、ちてきんが悶々とした表情で「これ、プロポーズなの? でもちょっと違うような。でも、うーん」とぶつぶつ呟いていた。
後日、聞いたところによると、創世神からのご神託により〈筋肉神教会〉という名のスポーツジム発足が認められたという。死神ちゃんは心底ケツあごを恨めしく思ったのだった。
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