292 / 362
* 死神生活三年目&more *
第292話 死神ちゃんと寝不足さん④
しおりを挟む
死神ちゃんは我が目を疑った。〈担当のパーティー〉と思しき冒険者が、植物型モンスターの花(口?)の部分に頭を突っ込んでいたからだ。プラントが花(口?)の部分をもぐもぐと動かして美味しそうに冒険者を堪能しているのをつかの間ぽかんと見つめると、死神ちゃんは慌てて冒険者にとり憑きに行った。
とり憑くために冒険者の体に死神ちゃんがタッチすると、彼は突然ビクリと身を跳ねさせた。そして何やらぎゃあぎゃあと喚きながら、彼は植物から頭を懸命に引っこ抜いた。
「ふう、危うくお花畑が見えるところでした……」
「お前かよ! 懐かしい遭遇の仕方だなあ、おい!」
「いやあ、眠気で朦朧としていたせいか、植物型モンスターがアスフォデルさんに見えたんですよ……」
執事風の男は面目なさげに苦笑いを浮かべながら、片眼鏡を取り、顔中を一生懸命にナフキンで拭った。死神ちゃんは呆れ気味に目を細めながら、同情するように声を落とした。
「この前、見たぜ。滝昇り大会で主賓代理として参加しているお前を。アルデンタスの施術を受けても効果ないのか?」
プラントの粘液を何とか拭い終えた彼は、深くため息をつきながらモノクルを身に着けた。そしてげっそりと青い顔を浮かべると、情けない声でポツリと言った。
「効いてます。効果は、出ておりますとも。でも、それに勝るストレスで、すぐに元通りなんです。滝昇り大会にいらしたのでしたら、察しはつきますでしょう? おかげさまで、もう眠たくて眠たくて。それなのに、寝たいときには眠れなくて……」
言いながら、彼は寝息を立て始めた。死神ちゃんは慌てて、彼の頬を叩いて起こした。今ここで寝られてもプラント以外のモンスターには遭遇しないし、いつ帰ろうとしてくれるかも分からなくなるからだ。彼は起こしてくれたことに感謝し眠気に抗いながら、本日の目的を話し始めた。
この執事風の出で立ちの男は、見た目の通り執事である。彼の奉公先は、M奴隷な性癖を持つ冒険者〈ご主人様〉の実家だ。家から降された命に尽力することなく、自己の性癖に磨きをかけることに暇がないボンクラ三男が起こしたアレコレのせいで、この執事は仕える主と〈その息子が起こすトラブル〉の間で板挟みとなり常にひどい寝不足を強いられていた。
寝不足問題はとうとう彼だけのものではなくなり、使用人はもちろんのこと主も患うようになった。そのため、彼はアスフォデルに睡眠薬を大量に調合してもらっていた。しかしそれも服用上限に達し、今度はアルデンタスの施術を試すようになった。彼の施術は素晴らしく、彼がブレンドするアロマオイルやハーブティーも施術同様だった。そのため、寝不足さんは家を代表して足繁く通い、オイルやお茶を定期的に大量購入しているのだとか。もちろん、それらの品々はとても効果があった。しかし、三男のせいですぐにストレスフルとなる。おかげで、寝不足改善の光が見えてくるのと、寝不足がいたちごっこでやってくるというわけだ。
使えない三男に半ば見切りをつけ、彼の主は〈腕の立つ冒険者のパトロンとなろう〉と決めた。そのためのスカウト作業を、主はダンジョンでの冒険にすっかり明るくなった執事に任せた。さらなる責任を負ったことで、執事の寝不足は加速した。
「パトロン計画が軌道に乗るまでは旦那様も気が気ではないようで。おかげさまで、〈二人して寝不足な日々〉再来ですよ。そんなわけで、本日はとあるモンスターを探しに参りました。何でも、寝かしつけが上手なモンスターがいるらしいんですよ。どんな者でもコロッと眠ってしまうそうで。バクを連れて帰ることができず、睡眠薬もドクターストップならば、寝かしつけ術を少々学んでみようかと」
寝不足さんはうとうととするたびに頬を叩かれながら、何とか説明を終えた。死神ちゃんは頬を引きつらせて心なしか首をひねると、「睡眠罠ですら効かなかったんだから、モンスターの寝かしつけだって効かないんじゃないか」とぼんやりと思った。
寝不足さんは事前に仕入れた情報を頼りに、火炎地区へと向かった。やって来た場所は、先日〈金の亡者〉が入りに来た温泉の辺りだった。辺りには腰蓑をつけた人型のモンスターがうようよとしていた。どうやら、この中に寝かしつけが上手なモノがいるらしい。彼は手当たり次第、モンスターにちょっかいを出した。そして腰蓑の中のものをチラチラと見せられて不幸を背負い込んだり、両端が燃え盛っている木の棒を投げつけられて危うく火だるまになりそうになったりと散々な目に遭った。そしてようやく、彼はそれと思しき腰蓑を発見した。
トーテムポールに連なっていそうな面構えのそいつは、片足を上げ両手を広げた。ワアオと言いながら片足立ちでひょうきんに腰を振るモンスターをじっとりと見据えながら、死神ちゃんは歯切れ悪く言った。
「本当にこいつなのか? どう見ても、こちらに枕を差し出してくれるよりは、こちらから座布団一枚を頂こうと狙ってきそうな感じじゃあないか」
「何ですか、座布団狙ってくるっていうのは。こちらが接待をせねばならぬということですか?」
死神ちゃんと寝不足さんが話しているのもお構いなしに、トーテム腰蓑は踊りだした。踊るトーテムに視線を移した死神ちゃんは苦い顔を浮かべると、ボソリと呟くように言った。
「こいつ、見た目の割に可もなく不可もなくなダンスを踊るな……」
「ええ、そうですね……。はっきり言って、全然つまらない……」
がっかりとしながらも、寝不足さんはトーテムの踊りを漠然と眺めた。そしてしょんぼりと肩を落とすと、うなだれながらこぼした。
「これを覚えて帰ったところで、きっと旦那様を安眠させられない……。そもそも、全然魅力も魔力も感じられないです、し……」
言いながら、彼はうつらうつらと船を漕ぎ始めた。思わず、死神ちゃんは素っ頓狂な声を出した。
「うおっ、寝てる!? すごいな、効果は抜群じゃあないか!」
どうやら、あまりにもつまらなすぎて眠気が一気に襲ってきたようだ。死神ちゃんがうっかり大声を出したことにも気づくことなく、寝不足さんは夢の中へと落ちていった。しかし、完全に落ちきるか否かのところで、彼は踊っていたモンスターに思い切り頬を叩かれた。
「いったーッ! 痛い痛い! ちょっ、何なんですか! 人がせっかく寝そうだってときに!」
寝不足さんが目を覚まして怒りを露わにすると、モンスターは満足げにうなずいて再び踊りだした。寝不足さんもまた、再び船を漕ぎ始めた。そしてもちろん、寝不足さんは張り手を食らって目を覚ました。そんなことが何度も続き、寝不足さんは見るからに弱っていった。
「踊りを覚えて帰りたいのに、あまりにつまらなすぎて眠たくなるし。眠ろうとすれば叩き起こされるし。しかも、知っていますか? 叩き起こされるときって、通常よりも痛く感じるんですよ、何故か。感覚的に言ったら、二倍のダメージですよ。でも、気分的には四倍も八倍ものダメージですよ。眠いのに眠れないって、すごく気力も体力も削がれますから!」
寝不足さんは〈もう我慢できない〉と言わんばかりに憤慨して立ち上がると、武器を片手にモンスターに襲いかかった。怒り任せに渾身の一撃を食らわせて退治することはできたものの、それが最後の力だったのか、それとも先ほどの〈小汚い中具をチラチラと見せられたことによる不幸〉を引きずっていたのか、彼は足をふらつかせた。そして、そのままの勢いで温泉に落下した。
「あ、この温かさ、いい……。しかも、このお湯、何だか疲れがとれま――」
完全なリラックス状態となり幸せそうに頬を緩ませた彼は、そのまま寝始めてしまい沈んでいった。彼が浮かんでこないことを確認すると、死神ちゃんはため息とともに姿を消した。
**********
天狐の城にて。死神ちゃんは温泉に浸かりながら、おっさん臭い〈至福の吐息〉をついた。すると、隣にいたソフィアが幸せそうに相好を崩しながら「温泉って、とても気持ちがいいのね」と呟いた。死神ちゃんはうなずいて返すと、ぼんやりとした口調で言った。
「温泉っていうのはな、疲れをとったり病気を治したりするような効果があるんだよ」
「凄いわね! それじゃあ、魔法が使えない人や貧しくて教会に寄付ができない人でも、常に健康でいられるのね!」
「何にでも効くっていうわけではないがな」
「それでも凄いわよ! ソフィア、大きくなったら世界を回って見てみようと思っているのよ。どんな人でも笑顔でいられる楽園を作りたいから、そのために。その旅に出るまでに温泉について勉強して、旅に出たら絶対に温泉を探そうっと。そしたらきっと、みんなの笑顔が増やせるわ!」
「わらわの温泉は色々な世界からひいてきておるのだがの、お湯の選定はお抱えの温泉博士にお願いしているのじゃ! お勉強したいのであれば、その博士に教えてもらうといいのじゃ!」
天狐が胸を張ると、ソフィアは嬉しそうに目を輝かせて何度もうなずいていた。死神ちゃんはキャッキャとはしゃぐ可愛らしい彼女たちを眺めながら、ほっこりとした気分になった。
一方そのころ、寝不足さんは主に温泉の素晴らしさを語って聞かせていた。温泉とやらを手に入れる方法が分からなかった主は、とりあえず〈お風呂〉というものに心血を注いでみることにしたという。その後それは公衆浴場運営にも波及して一大お風呂ブームが到来し、他国からの観光客もかなり増えたそうだ。その話を人づてに聞いた死神ちゃんは「王国衰退の危機で経済もあまりよろしくない中でも、眠れないほどの悩みを抱えている中でも、人というのは強く図太く生きていけるものなのだな」と感心するとともに呆気にとられたのだった。
――――興味のない、つまらないものでうとうとするよりも、幸せ気分でリラックスしてまどろみたい。そして、それによって出来た〈余裕〉を明日への活力にしたい。〈気持ちに余裕ができる〉というのは、大切かつ最強への道なのDEATH。
とり憑くために冒険者の体に死神ちゃんがタッチすると、彼は突然ビクリと身を跳ねさせた。そして何やらぎゃあぎゃあと喚きながら、彼は植物から頭を懸命に引っこ抜いた。
「ふう、危うくお花畑が見えるところでした……」
「お前かよ! 懐かしい遭遇の仕方だなあ、おい!」
「いやあ、眠気で朦朧としていたせいか、植物型モンスターがアスフォデルさんに見えたんですよ……」
執事風の男は面目なさげに苦笑いを浮かべながら、片眼鏡を取り、顔中を一生懸命にナフキンで拭った。死神ちゃんは呆れ気味に目を細めながら、同情するように声を落とした。
「この前、見たぜ。滝昇り大会で主賓代理として参加しているお前を。アルデンタスの施術を受けても効果ないのか?」
プラントの粘液を何とか拭い終えた彼は、深くため息をつきながらモノクルを身に着けた。そしてげっそりと青い顔を浮かべると、情けない声でポツリと言った。
「効いてます。効果は、出ておりますとも。でも、それに勝るストレスで、すぐに元通りなんです。滝昇り大会にいらしたのでしたら、察しはつきますでしょう? おかげさまで、もう眠たくて眠たくて。それなのに、寝たいときには眠れなくて……」
言いながら、彼は寝息を立て始めた。死神ちゃんは慌てて、彼の頬を叩いて起こした。今ここで寝られてもプラント以外のモンスターには遭遇しないし、いつ帰ろうとしてくれるかも分からなくなるからだ。彼は起こしてくれたことに感謝し眠気に抗いながら、本日の目的を話し始めた。
この執事風の出で立ちの男は、見た目の通り執事である。彼の奉公先は、M奴隷な性癖を持つ冒険者〈ご主人様〉の実家だ。家から降された命に尽力することなく、自己の性癖に磨きをかけることに暇がないボンクラ三男が起こしたアレコレのせいで、この執事は仕える主と〈その息子が起こすトラブル〉の間で板挟みとなり常にひどい寝不足を強いられていた。
寝不足問題はとうとう彼だけのものではなくなり、使用人はもちろんのこと主も患うようになった。そのため、彼はアスフォデルに睡眠薬を大量に調合してもらっていた。しかしそれも服用上限に達し、今度はアルデンタスの施術を試すようになった。彼の施術は素晴らしく、彼がブレンドするアロマオイルやハーブティーも施術同様だった。そのため、寝不足さんは家を代表して足繁く通い、オイルやお茶を定期的に大量購入しているのだとか。もちろん、それらの品々はとても効果があった。しかし、三男のせいですぐにストレスフルとなる。おかげで、寝不足改善の光が見えてくるのと、寝不足がいたちごっこでやってくるというわけだ。
使えない三男に半ば見切りをつけ、彼の主は〈腕の立つ冒険者のパトロンとなろう〉と決めた。そのためのスカウト作業を、主はダンジョンでの冒険にすっかり明るくなった執事に任せた。さらなる責任を負ったことで、執事の寝不足は加速した。
「パトロン計画が軌道に乗るまでは旦那様も気が気ではないようで。おかげさまで、〈二人して寝不足な日々〉再来ですよ。そんなわけで、本日はとあるモンスターを探しに参りました。何でも、寝かしつけが上手なモンスターがいるらしいんですよ。どんな者でもコロッと眠ってしまうそうで。バクを連れて帰ることができず、睡眠薬もドクターストップならば、寝かしつけ術を少々学んでみようかと」
寝不足さんはうとうととするたびに頬を叩かれながら、何とか説明を終えた。死神ちゃんは頬を引きつらせて心なしか首をひねると、「睡眠罠ですら効かなかったんだから、モンスターの寝かしつけだって効かないんじゃないか」とぼんやりと思った。
寝不足さんは事前に仕入れた情報を頼りに、火炎地区へと向かった。やって来た場所は、先日〈金の亡者〉が入りに来た温泉の辺りだった。辺りには腰蓑をつけた人型のモンスターがうようよとしていた。どうやら、この中に寝かしつけが上手なモノがいるらしい。彼は手当たり次第、モンスターにちょっかいを出した。そして腰蓑の中のものをチラチラと見せられて不幸を背負い込んだり、両端が燃え盛っている木の棒を投げつけられて危うく火だるまになりそうになったりと散々な目に遭った。そしてようやく、彼はそれと思しき腰蓑を発見した。
トーテムポールに連なっていそうな面構えのそいつは、片足を上げ両手を広げた。ワアオと言いながら片足立ちでひょうきんに腰を振るモンスターをじっとりと見据えながら、死神ちゃんは歯切れ悪く言った。
「本当にこいつなのか? どう見ても、こちらに枕を差し出してくれるよりは、こちらから座布団一枚を頂こうと狙ってきそうな感じじゃあないか」
「何ですか、座布団狙ってくるっていうのは。こちらが接待をせねばならぬということですか?」
死神ちゃんと寝不足さんが話しているのもお構いなしに、トーテム腰蓑は踊りだした。踊るトーテムに視線を移した死神ちゃんは苦い顔を浮かべると、ボソリと呟くように言った。
「こいつ、見た目の割に可もなく不可もなくなダンスを踊るな……」
「ええ、そうですね……。はっきり言って、全然つまらない……」
がっかりとしながらも、寝不足さんはトーテムの踊りを漠然と眺めた。そしてしょんぼりと肩を落とすと、うなだれながらこぼした。
「これを覚えて帰ったところで、きっと旦那様を安眠させられない……。そもそも、全然魅力も魔力も感じられないです、し……」
言いながら、彼はうつらうつらと船を漕ぎ始めた。思わず、死神ちゃんは素っ頓狂な声を出した。
「うおっ、寝てる!? すごいな、効果は抜群じゃあないか!」
どうやら、あまりにもつまらなすぎて眠気が一気に襲ってきたようだ。死神ちゃんがうっかり大声を出したことにも気づくことなく、寝不足さんは夢の中へと落ちていった。しかし、完全に落ちきるか否かのところで、彼は踊っていたモンスターに思い切り頬を叩かれた。
「いったーッ! 痛い痛い! ちょっ、何なんですか! 人がせっかく寝そうだってときに!」
寝不足さんが目を覚まして怒りを露わにすると、モンスターは満足げにうなずいて再び踊りだした。寝不足さんもまた、再び船を漕ぎ始めた。そしてもちろん、寝不足さんは張り手を食らって目を覚ました。そんなことが何度も続き、寝不足さんは見るからに弱っていった。
「踊りを覚えて帰りたいのに、あまりにつまらなすぎて眠たくなるし。眠ろうとすれば叩き起こされるし。しかも、知っていますか? 叩き起こされるときって、通常よりも痛く感じるんですよ、何故か。感覚的に言ったら、二倍のダメージですよ。でも、気分的には四倍も八倍ものダメージですよ。眠いのに眠れないって、すごく気力も体力も削がれますから!」
寝不足さんは〈もう我慢できない〉と言わんばかりに憤慨して立ち上がると、武器を片手にモンスターに襲いかかった。怒り任せに渾身の一撃を食らわせて退治することはできたものの、それが最後の力だったのか、それとも先ほどの〈小汚い中具をチラチラと見せられたことによる不幸〉を引きずっていたのか、彼は足をふらつかせた。そして、そのままの勢いで温泉に落下した。
「あ、この温かさ、いい……。しかも、このお湯、何だか疲れがとれま――」
完全なリラックス状態となり幸せそうに頬を緩ませた彼は、そのまま寝始めてしまい沈んでいった。彼が浮かんでこないことを確認すると、死神ちゃんはため息とともに姿を消した。
**********
天狐の城にて。死神ちゃんは温泉に浸かりながら、おっさん臭い〈至福の吐息〉をついた。すると、隣にいたソフィアが幸せそうに相好を崩しながら「温泉って、とても気持ちがいいのね」と呟いた。死神ちゃんはうなずいて返すと、ぼんやりとした口調で言った。
「温泉っていうのはな、疲れをとったり病気を治したりするような効果があるんだよ」
「凄いわね! それじゃあ、魔法が使えない人や貧しくて教会に寄付ができない人でも、常に健康でいられるのね!」
「何にでも効くっていうわけではないがな」
「それでも凄いわよ! ソフィア、大きくなったら世界を回って見てみようと思っているのよ。どんな人でも笑顔でいられる楽園を作りたいから、そのために。その旅に出るまでに温泉について勉強して、旅に出たら絶対に温泉を探そうっと。そしたらきっと、みんなの笑顔が増やせるわ!」
「わらわの温泉は色々な世界からひいてきておるのだがの、お湯の選定はお抱えの温泉博士にお願いしているのじゃ! お勉強したいのであれば、その博士に教えてもらうといいのじゃ!」
天狐が胸を張ると、ソフィアは嬉しそうに目を輝かせて何度もうなずいていた。死神ちゃんはキャッキャとはしゃぐ可愛らしい彼女たちを眺めながら、ほっこりとした気分になった。
一方そのころ、寝不足さんは主に温泉の素晴らしさを語って聞かせていた。温泉とやらを手に入れる方法が分からなかった主は、とりあえず〈お風呂〉というものに心血を注いでみることにしたという。その後それは公衆浴場運営にも波及して一大お風呂ブームが到来し、他国からの観光客もかなり増えたそうだ。その話を人づてに聞いた死神ちゃんは「王国衰退の危機で経済もあまりよろしくない中でも、眠れないほどの悩みを抱えている中でも、人というのは強く図太く生きていけるものなのだな」と感心するとともに呆気にとられたのだった。
――――興味のない、つまらないものでうとうとするよりも、幸せ気分でリラックスしてまどろみたい。そして、それによって出来た〈余裕〉を明日への活力にしたい。〈気持ちに余裕ができる〉というのは、大切かつ最強への道なのDEATH。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説

断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる