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* 死神生活三年目&more *
第269話 死神ちゃんと中二病④
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オ、オ、オと地響きのような唸り声を上げて、忍者は背中を丸めて腰をかがめた。すると周囲に赤い光が渦巻き、その光が消失するのと同時に彼は全身に力を漲らせて筋肉をパンパンに張った。
雄叫びを上げ、丸めていた背中を仰け反らせて、彼は封印を解いた。思わず、死神ちゃんは顔をしかめると、呆然として口をあんぐりと開けたのだった。
**********
砂漠地帯にて。死神ちゃんは、岩場の陰に入って日光を避けながら休憩をしている一団を見つけた。その集団が〈担当のパーティー〉であると確認した死神ちゃんは、少し離れた場所に座っている仲間から水筒を受け取るべく膝立ちになって身を乗り出した忍者の背中めがけて急降下した。忍者は背中に重い一撃を食らうと、そのままべしゃりと砂地に倒れ込んだ。彼は砂に爪を立てると、絞り出すように苦悶の声を上げた。
「クッ……どうやら俺も、もう潮時のようだ……。闇が、完全なる闇が、俺を支配しようとしている……ッ! 体が! 体が重い……ッ!」
* 忍者の 信頼度は 3 下がったよ! *
「だから、物理的にのしかかられてたら、そりゃあ重たいから」
仲間の一人は呆れ混じりにそう言ってため息をつくと、死神ちゃんを抱き上げた。背中が軽くなった忍者は目を瞬かせると、体を起こして死神ちゃんと対面した。
「おお、魂を狩りし暗黒の幼女よ。久しいな」
「おう。闇を抱えたり、支配されたり、お前も相変わらず忙しそうだな」
死神ちゃんが鼻を鳴らすと、忍者も機嫌が悪そうに鼻を鳴らした。あまりの態度の悪さに死神ちゃんが驚いて目を瞬かせると、死神ちゃんを抱きかかえていた仲間が苦笑いを浮かべて言った。
「ごめんな、死神ちゃん。こいつ、今日は一ヶ月のうちで最も機嫌が悪い日なんだ」
「どういうことだ?」
「ほら、今日は新月だろう? だからさ」
「いや、サッパリ訳が分からないんだが」
死神ちゃんが顔をしかめると、別の仲間がニコリと笑って死神ちゃんにお菓子と飲み物を差し出しながら言った。
「新月の日はね、月明かりがないから闇の力が強大になるんだよ。だから、凶暴化するの。逆に満月の日は神聖な光で満たされるから、闇が浄化されて気持ちも穏やかになるんだよ。――そういう、設定」
「今はっきりと設定って言ったな。またアレか。中二の世界に、全員でどっぷりと浸かってるってわけか」
死神ちゃんが呆れて苦い顔を浮かべると、一同は照れくさそうに笑って大きくうなずいた。
この忍者はいわゆる〈中二病〉の患者で、左手が疼いたり第三の目が開かぬよう封印を施したりしている。もちろん、第三の目などという御大層なものは持ち合わせてなんかいないし、左手は疼いたとしてもそこから魔法を放つだけである。彼の仲間たちはごく普通の趣味嗜好の持ち主なのだが、彼のこの疾患に対して偏見を持つということはしなかった。むしろ、おもしろいと言って最近では一緒に悪ノリしているくらいだった。今回はどうやら、忍者の病気の症状に〈月齢によって性格が変わる〉というものが加わったらしい。
「こう毎日ダンジョンに潜ってるとさ、曜日感覚がなくなってきて『今日って何日だったっけ?』ってなったりするわけなんだけど。だから、日付はともかくとして曜日だけは把握しておくために、金曜日の夜にはカレーを食べたりするわけなんだけど。忍者がまたおもしろいこじらせを発症したおかげで、暦を見なくても時の流れを何となく把握できるようになったんだよね」
「満月が近づくにつれて中二発言が減っていってね、満月当日には『どこのジェントル!?』って感じになるんだよ。おもしろいよね」
「はあ、そう……」
死神ちゃんが頬を引きつらせながら相槌を打つと、忍者が死神ちゃんからお菓子を取り上げた。何食わぬ顔で全部食べつくした忍者に死神ちゃんが愕然としていると、彼はケロリとした目を目深に被った頭巾の中から覗かせた。
「闇に突き動かされて、ついな」
「闇のせいにすれば何してもいいと思ってるだろ、お前!」
死神ちゃんが顔を真っ赤にして抗議すると、仲間が申し訳なさそうに苦笑した。
「ごめんね。彼、新月の日はちょっぴり意地悪にもなるんだよね」
「ちょっぴりじゃあないだろ、あれは!」
死神ちゃんが目を見開いて怒りを露わにすると、忍者は皮肉っぽく鼻を鳴らした。
休憩を終えると、彼らは日陰から出て砂漠の中を歩き出した。モンスターに遭遇すると、彼らは随所に中二なセリフを散りばめながら敵を制圧していった。しばらくして彼らは〈小さなピラミッド〉に差し掛かり、ミイラの棺の集団に囲まれた。棺はとても手強く、彼らは押されっぱなしだった。
どの者も疲弊し連携が乱れてくると、仲間の一人が棺に取り込まれた。断末魔をあげて仲間が姿を消したことに残りの一同が顔を青ざめさせる中、忍者がゴクリと唾を飲みながら低い声を響かせた。
「闇は満ちた! この窮地を脱するためにも、俺は闇に身を委ねるッ!」
「駄目よ、忍者! 完全なる凶暴化だなんて、危険過ぎるわ!」
「大丈夫だ、同胞よ。ただ、もしも俺が完全に闇に飲み込まれてしまったら、俺のことは捨てて逃げるのだ!」
そう言ってニヤリと笑った彼は、その直後、苦しそうに胸を抑えて悶え始めた。彼が地鳴りのような呻き声を上げて身を折ると、僧侶が支援魔法の呪文をこっそりと唱えて彼にかけてやった。彼は攻撃力の上がる魔法を受けて赤い光を纏い、それが体内に馴染んで筋肉が盛り上がるのと同時に雄叫びを上げながら体を仰け反らせた。そして、同じタイミングで頭巾以外の衣服が弾け飛んだ。
パーティー内の女性陣がキャッと恥じらいの声を上げて手で目を覆い隠した横で、死神ちゃんは口をあんぐりとさせた。
「またこのパターンかよ」
「あ、でも、一部は凶暴化せずにそのままなのね」
「一部ってなんだよ! 破廉恥だな!」
女性のうちの一人が心なしか俯き気味で、しかも指と指の間からこっそりと忍者を凝視していた。死神ちゃんが素っ頓狂な声でツッコミを入れると、彼女は慌てて開いていた指を閉じてカマトトぶった。
封印のひとつを開放し凶暴化した忍者は棺の群れへと突っ込んでいった。しかし、一人で全てを相手にするのはやはり無理があり、彼の威勢も一部もしぼんでいった。彼の中の闇の炎が下火になりかけたころ、彼はまだ生きている仲間を逃がすために「究極爆撃を放つ」と叫んだ。直後、まるで何かに覆われたかのように辺り一帯に影が差した。
ドオンという大きな音を立てて、空から大きなケルベロスが降ってきた。新たに敵が増えたのかと一同が身構えると、彼らの頭上から女性の声が響いた。
「黄昏よりも暗き混沌の中に棲みし我が下僕よ! この愚かな者どもを食らいつくし、呵責のときを授けよ!」
女性は太陽を背にしていたため、姿がはっきりとは見て取れなかった。しかし陰の形から察するに彼女は〈天使と人間のハーフ〉という種族のようだった。ケルベロスは彼女の命令に従い、石の棺を蹂躙して回った。
モンスターが駆逐されると、ケルベロスは小型犬のサイズとなった。マイペースに後ろ足で耳の付け根を掻くケルベロスのもとに、ボンテージ姿のセレスチャルの女性がふわりと降り立った。
「ココアちゃん、今日もいい子でちたねー。ママたん、とても助かりましたよー」
「天使の容姿に悪魔の装束とは、貴様、何奴。敵ならば、我が左腕が疼く前に立ち去れい。さもなくば、我が拳に宿りし紅蓮の炎が、貴様の身を永遠に消えぬ禍となり――」
「何スか、この全裸忍者! 言っちゃってることが見た目以上に超絶クレイジーで、めっちゃパンクなんスけど!」
忍者はアレをぶるんと揺れ動かしながらセレスチャルを睨むと、拳に灯した炎を揺れ動かした。すると、セレスチャルの背後から毒々しい骸骨の意匠をあちこちに散りばめさせた軽いノリの男が顔を出した。彼は死神ちゃんに気がつくと、目を輝かせて深々とお辞儀をした。
「死神ちゃんさんじゃあないっスかーッ! チッス!」
「お、おう。パンクに堕天使。お前ら、どうしたんだよ」
セレスチャルの背後から顔を覗かせた彼は、死神ちゃんもたびたび遭遇しているロックでパンクなものが大好きな錬金術師だった。彼は頭を掻きながら、錬金素材を手に入れるために、セレスチャルの女性――少し中二病の気配がある〈堕天使〉に護衛を頼んでここまで来たと言った。
「呪い解除の依頼を受けたのはいいんスけど、すげぇ特殊な材料が必要なもので、手元に在庫がなかったもんスから。 ――あれ? 姐さん、ヤベェパネェって顔して、どうしたんスか?」
堕天使はケルベロスのココアちゃんを抱っこしたまま、顔を真っ赤にして忍者を見つめていた。彼女は小さな声で「いい……」と呟くと、女王様の風格を繕って胸を張った。
「闇に蠢く哀れな者よ。昏き世界の女王たる私にひれ伏すがよい」
忍者はハッと息を呑むと、片膝をつき、中二な言葉で「助けてくれてありがとう」というようなことを言った。堕天使はそれに対し、中二な言葉で「とんでもない。無事でよかったですね」というようなことを返した。二人の間ではパンクがヤベェパネェを繰り返していた。死神ちゃんは〈ロックでパンクで中二でV系で全裸〉という、何だかよく分からないものが合致して結束した瞬間に立ち会って胃もたれしたのだった。
――――類は友を呼び、トモダチの輪は広がっていくのDEATH。
雄叫びを上げ、丸めていた背中を仰け反らせて、彼は封印を解いた。思わず、死神ちゃんは顔をしかめると、呆然として口をあんぐりと開けたのだった。
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砂漠地帯にて。死神ちゃんは、岩場の陰に入って日光を避けながら休憩をしている一団を見つけた。その集団が〈担当のパーティー〉であると確認した死神ちゃんは、少し離れた場所に座っている仲間から水筒を受け取るべく膝立ちになって身を乗り出した忍者の背中めがけて急降下した。忍者は背中に重い一撃を食らうと、そのままべしゃりと砂地に倒れ込んだ。彼は砂に爪を立てると、絞り出すように苦悶の声を上げた。
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「今はっきりと設定って言ったな。またアレか。中二の世界に、全員でどっぷりと浸かってるってわけか」
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この忍者はいわゆる〈中二病〉の患者で、左手が疼いたり第三の目が開かぬよう封印を施したりしている。もちろん、第三の目などという御大層なものは持ち合わせてなんかいないし、左手は疼いたとしてもそこから魔法を放つだけである。彼の仲間たちはごく普通の趣味嗜好の持ち主なのだが、彼のこの疾患に対して偏見を持つということはしなかった。むしろ、おもしろいと言って最近では一緒に悪ノリしているくらいだった。今回はどうやら、忍者の病気の症状に〈月齢によって性格が変わる〉というものが加わったらしい。
「こう毎日ダンジョンに潜ってるとさ、曜日感覚がなくなってきて『今日って何日だったっけ?』ってなったりするわけなんだけど。だから、日付はともかくとして曜日だけは把握しておくために、金曜日の夜にはカレーを食べたりするわけなんだけど。忍者がまたおもしろいこじらせを発症したおかげで、暦を見なくても時の流れを何となく把握できるようになったんだよね」
「満月が近づくにつれて中二発言が減っていってね、満月当日には『どこのジェントル!?』って感じになるんだよ。おもしろいよね」
「はあ、そう……」
死神ちゃんが頬を引きつらせながら相槌を打つと、忍者が死神ちゃんからお菓子を取り上げた。何食わぬ顔で全部食べつくした忍者に死神ちゃんが愕然としていると、彼はケロリとした目を目深に被った頭巾の中から覗かせた。
「闇に突き動かされて、ついな」
「闇のせいにすれば何してもいいと思ってるだろ、お前!」
死神ちゃんが顔を真っ赤にして抗議すると、仲間が申し訳なさそうに苦笑した。
「ごめんね。彼、新月の日はちょっぴり意地悪にもなるんだよね」
「ちょっぴりじゃあないだろ、あれは!」
死神ちゃんが目を見開いて怒りを露わにすると、忍者は皮肉っぽく鼻を鳴らした。
休憩を終えると、彼らは日陰から出て砂漠の中を歩き出した。モンスターに遭遇すると、彼らは随所に中二なセリフを散りばめながら敵を制圧していった。しばらくして彼らは〈小さなピラミッド〉に差し掛かり、ミイラの棺の集団に囲まれた。棺はとても手強く、彼らは押されっぱなしだった。
どの者も疲弊し連携が乱れてくると、仲間の一人が棺に取り込まれた。断末魔をあげて仲間が姿を消したことに残りの一同が顔を青ざめさせる中、忍者がゴクリと唾を飲みながら低い声を響かせた。
「闇は満ちた! この窮地を脱するためにも、俺は闇に身を委ねるッ!」
「駄目よ、忍者! 完全なる凶暴化だなんて、危険過ぎるわ!」
「大丈夫だ、同胞よ。ただ、もしも俺が完全に闇に飲み込まれてしまったら、俺のことは捨てて逃げるのだ!」
そう言ってニヤリと笑った彼は、その直後、苦しそうに胸を抑えて悶え始めた。彼が地鳴りのような呻き声を上げて身を折ると、僧侶が支援魔法の呪文をこっそりと唱えて彼にかけてやった。彼は攻撃力の上がる魔法を受けて赤い光を纏い、それが体内に馴染んで筋肉が盛り上がるのと同時に雄叫びを上げながら体を仰け反らせた。そして、同じタイミングで頭巾以外の衣服が弾け飛んだ。
パーティー内の女性陣がキャッと恥じらいの声を上げて手で目を覆い隠した横で、死神ちゃんは口をあんぐりとさせた。
「またこのパターンかよ」
「あ、でも、一部は凶暴化せずにそのままなのね」
「一部ってなんだよ! 破廉恥だな!」
女性のうちの一人が心なしか俯き気味で、しかも指と指の間からこっそりと忍者を凝視していた。死神ちゃんが素っ頓狂な声でツッコミを入れると、彼女は慌てて開いていた指を閉じてカマトトぶった。
封印のひとつを開放し凶暴化した忍者は棺の群れへと突っ込んでいった。しかし、一人で全てを相手にするのはやはり無理があり、彼の威勢も一部もしぼんでいった。彼の中の闇の炎が下火になりかけたころ、彼はまだ生きている仲間を逃がすために「究極爆撃を放つ」と叫んだ。直後、まるで何かに覆われたかのように辺り一帯に影が差した。
ドオンという大きな音を立てて、空から大きなケルベロスが降ってきた。新たに敵が増えたのかと一同が身構えると、彼らの頭上から女性の声が響いた。
「黄昏よりも暗き混沌の中に棲みし我が下僕よ! この愚かな者どもを食らいつくし、呵責のときを授けよ!」
女性は太陽を背にしていたため、姿がはっきりとは見て取れなかった。しかし陰の形から察するに彼女は〈天使と人間のハーフ〉という種族のようだった。ケルベロスは彼女の命令に従い、石の棺を蹂躙して回った。
モンスターが駆逐されると、ケルベロスは小型犬のサイズとなった。マイペースに後ろ足で耳の付け根を掻くケルベロスのもとに、ボンテージ姿のセレスチャルの女性がふわりと降り立った。
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「天使の容姿に悪魔の装束とは、貴様、何奴。敵ならば、我が左腕が疼く前に立ち去れい。さもなくば、我が拳に宿りし紅蓮の炎が、貴様の身を永遠に消えぬ禍となり――」
「何スか、この全裸忍者! 言っちゃってることが見た目以上に超絶クレイジーで、めっちゃパンクなんスけど!」
忍者はアレをぶるんと揺れ動かしながらセレスチャルを睨むと、拳に灯した炎を揺れ動かした。すると、セレスチャルの背後から毒々しい骸骨の意匠をあちこちに散りばめさせた軽いノリの男が顔を出した。彼は死神ちゃんに気がつくと、目を輝かせて深々とお辞儀をした。
「死神ちゃんさんじゃあないっスかーッ! チッス!」
「お、おう。パンクに堕天使。お前ら、どうしたんだよ」
セレスチャルの背後から顔を覗かせた彼は、死神ちゃんもたびたび遭遇しているロックでパンクなものが大好きな錬金術師だった。彼は頭を掻きながら、錬金素材を手に入れるために、セレスチャルの女性――少し中二病の気配がある〈堕天使〉に護衛を頼んでここまで来たと言った。
「呪い解除の依頼を受けたのはいいんスけど、すげぇ特殊な材料が必要なもので、手元に在庫がなかったもんスから。 ――あれ? 姐さん、ヤベェパネェって顔して、どうしたんスか?」
堕天使はケルベロスのココアちゃんを抱っこしたまま、顔を真っ赤にして忍者を見つめていた。彼女は小さな声で「いい……」と呟くと、女王様の風格を繕って胸を張った。
「闇に蠢く哀れな者よ。昏き世界の女王たる私にひれ伏すがよい」
忍者はハッと息を呑むと、片膝をつき、中二な言葉で「助けてくれてありがとう」というようなことを言った。堕天使はそれに対し、中二な言葉で「とんでもない。無事でよかったですね」というようなことを返した。二人の間ではパンクがヤベェパネェを繰り返していた。死神ちゃんは〈ロックでパンクで中二でV系で全裸〉という、何だかよく分からないものが合致して結束した瞬間に立ち会って胃もたれしたのだった。
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