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* 死神生活ニ年目 *
第189話 死神ちゃんと覗き魔④
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死神ちゃんがダンジョン内に降り立って〈担当のパーティー〉を探し彷徨っていると、前方からドワーフのおっさんが走ってきた。彼はキラキラと輝かんばかりの、漫画などで言ったら星やお花が背景に舞っていそうな良い笑顔で、諸手を上げて走り寄ってきた。死神ちゃんはあからさまに嫌そうな顔を浮かべると、敢えて飛行速度を早めて彼に突っ込んでいった。
彼は死神ちゃんが〈確実に受け止められない程の速度〉で突っ込んでくることに驚くと、その場で思わず身構えた。すると、死神ちゃんは速度を緩めることなくそのまま彼の体を透過して背中側へとすり抜けた。
「ぎゃあああああああ!」
何かが体を通り抜けていく感覚が気持ち悪かったのだろう、おっさんが身震いしながら絶叫した。死神ちゃんはその様子を、耳を塞いで、天井すれすれの高さからじっとりと見下ろした。
おっさんは絶叫し終えると、抗議をしようと死神ちゃんを仰ぎ見た。そして怒り顔から一転して、彼は悲しげに目を細めた。
「何で! スカートの裾を!! 脚の間に挟んでガード態勢ばっちりとってるのよ!!!」
「覗かれるの分かってて対策しないのは、それはただの変態だろうが」
死神ちゃんは彼――スカートの中を〈ただ、覗く〉ということを生きがいとしている覗き魔を睨みつけると、今度こそパーティーから見放されたのかと尋ねた。しかし彼は首を横に振り、今回もひとりでアイテム掘りに来たと答えた。死神ちゃんが残念そうに舌打ちをするのも気にすることなく、彼はにっこりと笑って続けた。
「新年度が始まってから、半年経ちましたね」
「はあ、そうですね」
「想像してください。『新卒入社の君、半年経ってみて、どう?』――そう言って、クール系美人な先輩が声をかけてきてくれるんです」
「なんだ、今回は女子高生じゃあないんだな」
死神ちゃんが投げやりにそう言うと、覗き魔は一層微笑んで「想像してください」と繰り返した。
「今回の妄想はふたパターンございます。想像してください。――クール系美人な先輩に、新卒社会人の僕ちゃんは『まだ、ちょっと……』とおどおどと答えます。すると、先輩が笑顔から鬼のような形相へと変わり、僕ちゃんを突き飛ばします。尻もちをついてそのまま壁を背にもたれて座り込んだ僕ちゃんの顔の横に、先輩が女王様のごとくパンプスでこう、ガッとね、するわけです。そしてグズな僕ちゃんを罵るわけです。先輩のスーツはもちろん、短めのタイトスカート。それで足ドンなんてされちゃってるわけです。つまり、桃源郷が見えるわけです! 僕ちゃん、怒られているはずなのに、ご褒美もらっちゃってるわけですよ!」
「はあ……。――で? もう片方のパターンは何なわけ」
「こちらもこちらでクール系美人な先輩です。しかし、こちらはドS女王様ではございません。アレですね、簡単に言うとギャップ萌えというやつですね。――新卒社会人の僕ちゃんは先輩に連れられて〈半年お疲れ様飲み会〉に来ているわけです。そこで、普段クールな先輩のちょっと意外な一面をちょいちょい垣間見てドキドキしているわけです。そして恙なく飲み会が終了し、さて帰ろうとした矢先。先輩は、実はドジっ子属性を秘めているんですね。だから、酔った勢いで転びそうになっちゃう。僕ちゃんは咄嗟に手を伸ばしたんですが、間に合わない。そして二人して転んで、僕ちゃんが『あー、いてて』と目を開けた目の前に! 何故か先輩の桃源郷が!」
「それで?」
覗き魔は身振り手振りを交えながら、キャッキャと楽しそうに語っていた。死神ちゃんは彼のほうを向くことなく、ポーチから取り出したおやつを頬張りながら適当に相槌を打っていた。彼はそんな死神ちゃんの態度に不満を露わにすると、死神ちゃんに向かって目くじらを立てた。
「どうしてちゃんと聞いてくれないの! 気にならないわけ? 桃源郷の風景が、どのようなものなのか!」
「別に、どうでもいい」
「気になってよ! 気になろうよ! そして死神ちゃんも大きくなったら、是非穿こう? 黒レースのガーターベルト!」
死神ちゃんはゆっくりと覗き魔を見下ろすと、彼を〈何か、汚いものを見る目〉でじっとりと見つめた。彼はうっとりと目を細め、上気した頬を両手のひらで包んでホウと甘ったるい息をついた。
「似合うと思うんよ、死神ちゃんも。もちろん、大きくなったらだけれども」
「大きくなんてなりたくないし、絶対に穿きません」
死神ちゃんは盛大に顔をしかめると、そのように言い捨てた。覗き魔は残念そうに肩を落とすと、黒レースのガーターベルトをドロップしそうなモンスターを探してトボトボと歩き出した。
今回の品もやはり、女性の魔物が持っているものだという。パッと見て女性だと分かるモンスターはケイティーをオリジナルとする〈闘士〉以外だと、吸血鬼亜種やサキュバス、泣き女などの〈精気を吸ってくる系〉のモンスターばかりだった。これらのモンスターは体力を根こそぎ吸い尽くそうとするだけではなく、冒険者としてのレベルや経験値も吸ってくるので、冒険者からは特に敬遠されているモンスターだった。
しかし覗き魔は手慣れたもので、たまにモンスターたちのスカートの中身を覗きに行こうとうずうずしだすのだが、それをグッと押し込んで丁寧に戦闘を行っていた。死神ちゃんはその様子をぼんやりと眺めながら、首を傾げた。
「お前さ、そろそろ〈スカートの女性〉を見ても桃源郷に参拝したいと思わないようになれるんじゃないか? そこまで、毅然とした態度で戦闘に臨めるのならさ」
「それはそれ、これはこれ。プロとのにゃんにゃんと、ハニーとのにゃんにゃんだって別物でしょう? ――あ、幼女のチミには早過ぎる例えだったかな?」
「随分と低俗な例えだな。ていうか、それは人によるだろう。けど、俺だったら、ハニー以外となんて絶対に嫌だね」
死神ちゃんは覗き魔を軽蔑の眼差しで刺すように見たが、彼はそれを軽く笑い飛ばした。
様々な女性型モンスターとしばらく戦っていたが、一向にドロップする気配はなかった。覗き魔は首を捻ると、困惑顔で頭を掻いた。
「やっぱり希少品だから、そうそうドロップしないんかな。サキュバスでも、特に〈ボンテージに網タイツのタイプ〉がドロップしやすいっていう情報だったんだけどなあ」
そう言う彼の目の前に、一匹の夢魔が現れた。死神ちゃんはニヤニヤと笑うと、覗き魔に向かって言った。
「ほら、お前のお目当ての夢魔が現れたぞ」
「いやでも、これは明らかに違うでしょ」
「どちらも同じ存在であるという一説もあるんだし、戦ってみたら良いだろう」
「……そうね。もしかしたら、お姉さんに押し付けられた洗濯物として、手に持っているかもだし」
「どんな設定だよ、それは」
死神ちゃんが顔をしかめると、覗き魔は笑いながらインキュバスへと突っ込んでいった。インキュバスは麗しい肉体で覗き魔を誘惑しようとしていたが覗き魔には通用せず、彼は涼しい顔でインキュバスを淡々と追い詰めていた。そして無事に討伐し終えて、彼はインキュバスがアイテムに変わるのを期待を込めて見つめた。しかし、インキュバスがアイテムに変わる様子はなく、そのままスゥと姿を消した。ただ――
「なあ、もしかして、それ、ドロップ品の代わりなんじゃあないか?」
「そんなの、認めたくない!」
「いやでも、それを残して消えたんだから、どう考えてもそれがドロップ品だろう。――お前、つくづく縁があるんだな、その入れ物に。しかもそれ、明らかに使用済みだよな? だって、さっきまで股間にあったものをそのまま残して消えて……」
「それ以上言わないで! 心が痛くなるから!」
覗き魔が悲痛な面持ちで叫ぶと、それを慰めようとするかのように新たなインキュバスが寄ってきた。インキュバスが彼に熱烈なキスをすると、覗き魔は声にならない声で拒否を訴えながらカラカラに干からびていった。
彼が干からびた先からサラサラと灰になって積もっていくのを眺めながら、死神ちゃんは〈どうしてインキュバスがおっさんに熱烈キスなんか〉と思った。しかしすぐさま〈インキュバスは夢魔である特性上、バイな人も多い〉ということを思い出し、納得とでもいうかのように頷いた。
そして壁の中へと消えていきながら、死神ちゃんは「そうだ、俺も後輩たちを〈お疲れ様飲み会〉に連れて行こう」と思ったのだった。
**********
勤務終了後、死神ちゃんは気晴らしにやって来たゲームセンターにてインキュバスさんと出会った。彼はダンジョン六階のダンスホールのスタッフなのだが、ダンスホールスタッフは社内側のゲームセンタースタッフも兼任しているのだ。
彼は死神ちゃんに気がつき近寄ってくると、場内に設置されているスクリーンを指差しながら笑顔で言った。
「小花さん、さっき、〈今日の薫ちゃん〉流れてましたよ」
「シーンチョイスと編集、早いな! 俺、さっき上がってきたばかりだってのに!」
死神ちゃんが驚くと、インキュバスはしょんぼりと肩を落とした。
「あの変態ドワーフ、どうして俺が姉ちゃんに洗濯物を押し付けられてるのを知ってたんすかね……」
社交場勤務のサキュバスは彼の姉だそうで、どうやら二人は同居しているらしい。死神ちゃんが苦笑いを浮かべると、インキュバスは肩を竦めて話を続けた。
「それにしても、裸にペニスケースって古いっすよ。今どき、そんな格好している夢魔なんていないってのに。どこの秘境の部族っすか」
現在はパリパリのスーツに革靴を履いて、薔薇を一輪持って対象の目の前に現れるそうだ。死神ちゃんは思わず「ジゴロかよ」と突っ込んだのだった。
――――その会話のあと、インキュバスさんは死神ちゃんに〈どの遊具でも、一回無料チケット〉をくれました。死神ちゃんはタダチケットで射撃して、タダでソフトクリームをもらってご満悦だったそうDEATH。
彼は死神ちゃんが〈確実に受け止められない程の速度〉で突っ込んでくることに驚くと、その場で思わず身構えた。すると、死神ちゃんは速度を緩めることなくそのまま彼の体を透過して背中側へとすり抜けた。
「ぎゃあああああああ!」
何かが体を通り抜けていく感覚が気持ち悪かったのだろう、おっさんが身震いしながら絶叫した。死神ちゃんはその様子を、耳を塞いで、天井すれすれの高さからじっとりと見下ろした。
おっさんは絶叫し終えると、抗議をしようと死神ちゃんを仰ぎ見た。そして怒り顔から一転して、彼は悲しげに目を細めた。
「何で! スカートの裾を!! 脚の間に挟んでガード態勢ばっちりとってるのよ!!!」
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死神ちゃんは彼――スカートの中を〈ただ、覗く〉ということを生きがいとしている覗き魔を睨みつけると、今度こそパーティーから見放されたのかと尋ねた。しかし彼は首を横に振り、今回もひとりでアイテム掘りに来たと答えた。死神ちゃんが残念そうに舌打ちをするのも気にすることなく、彼はにっこりと笑って続けた。
「新年度が始まってから、半年経ちましたね」
「はあ、そうですね」
「想像してください。『新卒入社の君、半年経ってみて、どう?』――そう言って、クール系美人な先輩が声をかけてきてくれるんです」
「なんだ、今回は女子高生じゃあないんだな」
死神ちゃんが投げやりにそう言うと、覗き魔は一層微笑んで「想像してください」と繰り返した。
「今回の妄想はふたパターンございます。想像してください。――クール系美人な先輩に、新卒社会人の僕ちゃんは『まだ、ちょっと……』とおどおどと答えます。すると、先輩が笑顔から鬼のような形相へと変わり、僕ちゃんを突き飛ばします。尻もちをついてそのまま壁を背にもたれて座り込んだ僕ちゃんの顔の横に、先輩が女王様のごとくパンプスでこう、ガッとね、するわけです。そしてグズな僕ちゃんを罵るわけです。先輩のスーツはもちろん、短めのタイトスカート。それで足ドンなんてされちゃってるわけです。つまり、桃源郷が見えるわけです! 僕ちゃん、怒られているはずなのに、ご褒美もらっちゃってるわけですよ!」
「はあ……。――で? もう片方のパターンは何なわけ」
「こちらもこちらでクール系美人な先輩です。しかし、こちらはドS女王様ではございません。アレですね、簡単に言うとギャップ萌えというやつですね。――新卒社会人の僕ちゃんは先輩に連れられて〈半年お疲れ様飲み会〉に来ているわけです。そこで、普段クールな先輩のちょっと意外な一面をちょいちょい垣間見てドキドキしているわけです。そして恙なく飲み会が終了し、さて帰ろうとした矢先。先輩は、実はドジっ子属性を秘めているんですね。だから、酔った勢いで転びそうになっちゃう。僕ちゃんは咄嗟に手を伸ばしたんですが、間に合わない。そして二人して転んで、僕ちゃんが『あー、いてて』と目を開けた目の前に! 何故か先輩の桃源郷が!」
「それで?」
覗き魔は身振り手振りを交えながら、キャッキャと楽しそうに語っていた。死神ちゃんは彼のほうを向くことなく、ポーチから取り出したおやつを頬張りながら適当に相槌を打っていた。彼はそんな死神ちゃんの態度に不満を露わにすると、死神ちゃんに向かって目くじらを立てた。
「どうしてちゃんと聞いてくれないの! 気にならないわけ? 桃源郷の風景が、どのようなものなのか!」
「別に、どうでもいい」
「気になってよ! 気になろうよ! そして死神ちゃんも大きくなったら、是非穿こう? 黒レースのガーターベルト!」
死神ちゃんはゆっくりと覗き魔を見下ろすと、彼を〈何か、汚いものを見る目〉でじっとりと見つめた。彼はうっとりと目を細め、上気した頬を両手のひらで包んでホウと甘ったるい息をついた。
「似合うと思うんよ、死神ちゃんも。もちろん、大きくなったらだけれども」
「大きくなんてなりたくないし、絶対に穿きません」
死神ちゃんは盛大に顔をしかめると、そのように言い捨てた。覗き魔は残念そうに肩を落とすと、黒レースのガーターベルトをドロップしそうなモンスターを探してトボトボと歩き出した。
今回の品もやはり、女性の魔物が持っているものだという。パッと見て女性だと分かるモンスターはケイティーをオリジナルとする〈闘士〉以外だと、吸血鬼亜種やサキュバス、泣き女などの〈精気を吸ってくる系〉のモンスターばかりだった。これらのモンスターは体力を根こそぎ吸い尽くそうとするだけではなく、冒険者としてのレベルや経験値も吸ってくるので、冒険者からは特に敬遠されているモンスターだった。
しかし覗き魔は手慣れたもので、たまにモンスターたちのスカートの中身を覗きに行こうとうずうずしだすのだが、それをグッと押し込んで丁寧に戦闘を行っていた。死神ちゃんはその様子をぼんやりと眺めながら、首を傾げた。
「お前さ、そろそろ〈スカートの女性〉を見ても桃源郷に参拝したいと思わないようになれるんじゃないか? そこまで、毅然とした態度で戦闘に臨めるのならさ」
「それはそれ、これはこれ。プロとのにゃんにゃんと、ハニーとのにゃんにゃんだって別物でしょう? ――あ、幼女のチミには早過ぎる例えだったかな?」
「随分と低俗な例えだな。ていうか、それは人によるだろう。けど、俺だったら、ハニー以外となんて絶対に嫌だね」
死神ちゃんは覗き魔を軽蔑の眼差しで刺すように見たが、彼はそれを軽く笑い飛ばした。
様々な女性型モンスターとしばらく戦っていたが、一向にドロップする気配はなかった。覗き魔は首を捻ると、困惑顔で頭を掻いた。
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そう言う彼の目の前に、一匹の夢魔が現れた。死神ちゃんはニヤニヤと笑うと、覗き魔に向かって言った。
「ほら、お前のお目当ての夢魔が現れたぞ」
「いやでも、これは明らかに違うでしょ」
「どちらも同じ存在であるという一説もあるんだし、戦ってみたら良いだろう」
「……そうね。もしかしたら、お姉さんに押し付けられた洗濯物として、手に持っているかもだし」
「どんな設定だよ、それは」
死神ちゃんが顔をしかめると、覗き魔は笑いながらインキュバスへと突っ込んでいった。インキュバスは麗しい肉体で覗き魔を誘惑しようとしていたが覗き魔には通用せず、彼は涼しい顔でインキュバスを淡々と追い詰めていた。そして無事に討伐し終えて、彼はインキュバスがアイテムに変わるのを期待を込めて見つめた。しかし、インキュバスがアイテムに変わる様子はなく、そのままスゥと姿を消した。ただ――
「なあ、もしかして、それ、ドロップ品の代わりなんじゃあないか?」
「そんなの、認めたくない!」
「いやでも、それを残して消えたんだから、どう考えてもそれがドロップ品だろう。――お前、つくづく縁があるんだな、その入れ物に。しかもそれ、明らかに使用済みだよな? だって、さっきまで股間にあったものをそのまま残して消えて……」
「それ以上言わないで! 心が痛くなるから!」
覗き魔が悲痛な面持ちで叫ぶと、それを慰めようとするかのように新たなインキュバスが寄ってきた。インキュバスが彼に熱烈なキスをすると、覗き魔は声にならない声で拒否を訴えながらカラカラに干からびていった。
彼が干からびた先からサラサラと灰になって積もっていくのを眺めながら、死神ちゃんは〈どうしてインキュバスがおっさんに熱烈キスなんか〉と思った。しかしすぐさま〈インキュバスは夢魔である特性上、バイな人も多い〉ということを思い出し、納得とでもいうかのように頷いた。
そして壁の中へと消えていきながら、死神ちゃんは「そうだ、俺も後輩たちを〈お疲れ様飲み会〉に連れて行こう」と思ったのだった。
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勤務終了後、死神ちゃんは気晴らしにやって来たゲームセンターにてインキュバスさんと出会った。彼はダンジョン六階のダンスホールのスタッフなのだが、ダンスホールスタッフは社内側のゲームセンタースタッフも兼任しているのだ。
彼は死神ちゃんに気がつき近寄ってくると、場内に設置されているスクリーンを指差しながら笑顔で言った。
「小花さん、さっき、〈今日の薫ちゃん〉流れてましたよ」
「シーンチョイスと編集、早いな! 俺、さっき上がってきたばかりだってのに!」
死神ちゃんが驚くと、インキュバスはしょんぼりと肩を落とした。
「あの変態ドワーフ、どうして俺が姉ちゃんに洗濯物を押し付けられてるのを知ってたんすかね……」
社交場勤務のサキュバスは彼の姉だそうで、どうやら二人は同居しているらしい。死神ちゃんが苦笑いを浮かべると、インキュバスは肩を竦めて話を続けた。
「それにしても、裸にペニスケースって古いっすよ。今どき、そんな格好している夢魔なんていないってのに。どこの秘境の部族っすか」
現在はパリパリのスーツに革靴を履いて、薔薇を一輪持って対象の目の前に現れるそうだ。死神ちゃんは思わず「ジゴロかよ」と突っ込んだのだった。
――――その会話のあと、インキュバスさんは死神ちゃんに〈どの遊具でも、一回無料チケット〉をくれました。死神ちゃんはタダチケットで射撃して、タダでソフトクリームをもらってご満悦だったそうDEATH。
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