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* 死神生活ニ年目 *
第123話 死神ちゃんとフリマ出店者②
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死神ちゃんは待機室で出動要請がかかるのを待っていた。ソファーに腰掛けて足をブラブラとさせ暇を持て余していると、モニターブースにいたケイティーが変な呻き声を上げた。
愕然とした表情で肩を落とした彼女はそのまま画面を注視していたが、しばらくするとひどいしかめっ面で腕を組み何やら思案しだした。その間に、死神が一人待機室へと帰ってきた。そいつは何故か足元がおぼつかない感じでフラフラと揺れ動くように室内をさまよい、ケイティーはその様子を目で追い頬を引きつらせていた。
彼らの様子がおかしいことを不審に思い、死神ちゃんもその〈帰ってきた死神〉のことを観察していた。すると、そいつはとうとう動くことを止め、まるで糸の切れたマリオネットのようにぐにゃりと床に崩れ落ちた。
ケイティーは苦虫を噛み潰したような顔で頭を乱暴に掻きむしると、足早にそいつの側に駆け寄り、そしてそいつを抱きかかえた。そのままそいつを背もたれのある椅子に座らせてやると、ケイティーは何故か死神ちゃんを呼びつけた。
「何だ、どうした? そいつ、たしか第一班の新人だよな? 何かあったのか?」
「あー、うん……。凄まじく緊急事態。しかも、これは小花にしか頼めない。ちょっと、その持ち前の可愛らしさとトーク力で私を助けて」
「はあ……?」
思わず、死神ちゃんは顔をしかめた。第一班の新人は椅子に座らせられたまま、沈黙を保っている。こいつを〈あろけーしょんせんたー〉に連れて行くべく人員を確保したいというなら理解できる。しかし、それだったら死神ちゃんではなく他の者の方が確実に適任だろう。しかし、彼女の言葉から察するに、頼みたいことというのは他にあるらしい。
死神ちゃんが「何をすればいい」と尋ねると、ケイティーは「ちょっと、こっち」と言いながらモニターブースを示すように顎をしゃくった。彼女の後をついて行くと、彼女はモニターのコンソールをあれこれと操作していくつかある画面のひとつにとある冒険者を映しだした。見覚えのあるノームに、死神ちゃんは表情を失った。
「小花にはこいつの持っているコレを、持って帰ってきてもらいたい」
「あー、うん。それはいいんだが、こいつ、前にとり憑いた覚えがあるからさ、幼女のフリして交渉するっていうのは多分無理だぜ」
「分かってる。だからいつも通りに適当におしゃべりして、隙を見てアレを奪取してきて」
そう言って、ケイティーは再度コンソールを操作した。直後、掲示板に死神ちゃんの社員番号が表示された。頼んだよ、と言いながら見送りをする彼女に、死神ちゃんは頷いて返した。しかし、死神ちゃんは心の中で首を傾げた。
(ぬいぐるみを持ち帰ってこいって、何で……?)
死神ちゃんはダンジョンに降り立つと、早速ターゲットの元へと向かった。ノームは前回とり憑いたとき同様、四階の〈アイテム掘りスポット〉でせっせと作業に勤しんでいた。
死神ちゃんは天井づたいに移動すると、モンスターが地に崩れ落ちるのと同時にノームの眼前へと急降下した。そして頬を両手でペチンと挟んでやると、ニヤリと笑って言った。
「儲かりまっか?」
「ぼちぼちでんなあ……?」
ノームの彼女――フリマ出店者は目をパチクリとさせながらも、死神ちゃんの問いかけに答えた。死神ちゃんは地面に着地すると、彼女の姿に呆れ返った。
「お前、また破廉恥な格好してるんだな」
「いやだな、死神ちゃん。よーく見たまえ。きちんと、履いているだろう?」
地面に剣を突き立てると、フリマ出店者は得意気に両手を腰に当てた。死神ちゃんはじっとりと目を細めると、抑揚のない低い声で答えた。
「あー、うん。しっかり履いてるな。ガーターベルトに網タイツを」
「あやっ! 腰当てのことを言ったつもりだったんだけど、また商売用の衣装のままとなっていたか! これは、お目汚し失礼~」
出店者は慌てて小指のファッションリングを弾いた。すると、ガーターベルトに網タイツという出で立ちから腰鎧とズボンという装いに切り替わり、ごく普通の冒険者と同じような見た目へと変化した。
彼女は壁際に移動して座り込むと、ポーチからミートパイを取り出した。それをナイフで半分に割ると、片方を死神ちゃんに差し出しながらニッコリと笑った。
「で? さっきのほっぺたペチンでとり憑き完了してるんでしょう? てことは、ストーカーの一件が落ち着きでもして、ようやくマスコットになってくれる決心がついたってこと?」
「は? お前、まだ諦めてないのかよ」
当然、と言いながら不敵に笑う彼女からミートパイを受け取ると、死神ちゃんは早速それにかじりついた。もくもくと頬張り、美味しさにうっとりと目を細めながら死神ちゃんは答えた。
「でも俺、マジでエンゲル係数高いぜ? こう見えて、一般的な成人男性よりも飯食うんだよ。おやつも欠かせないし。――これ、すごく美味いな」
「それね、この近くの街の人気の食堂で売ってるんだ。私も最近お気に入りなの。マスコットやってくれるなら、いくらでもそれ食べさせてあげちゃうよ。破竹の勢いで稼いでるからね、そのくらい、ワケないって!」
死神ちゃんは曖昧な相槌を打つと、差し出されたお茶を受け取り飲み干した。ひと心地ついたところで、死神ちゃんは眉根を寄せた。
「でもなあ。売り物はボッタクリの詐欺商品、売り方は破廉恥だろう? それじゃあ、俺の評価もダダ下がりになるじゃあないか。それは勘弁願いたいんだが。あの粗悪品以外に売り物って、他にはないのかよ」
「えっとねえ、ちょっと待ってね……」
言いながら、彼女はポーチをガサゴソと漁りだした。そして品質も種類も様々なアイテムをその場に出し始めた。これらは本日の戦利品だそうだ。
死神ちゃんはその中からピエロのぬいぐるみを手にとった。ピエロといってもよくあるトラウマになりそうな気味の悪いものではなく、ファンシーで可愛らしいものだった。
「へえ、ぬいぐるみもあるのか。これ、どこで手に入れたんだ?」
「あー、それね。ここに来る途中に偶然拾ったんだよ。誰かの落し物か、はたまたドロップアイテムか。それは定かじゃないけど、ダンジョン内のルールでは〈最終的にその物を手にした者が、そのアイテムの所持者〉だからね。もしも本来の持ち主が現れても、コレ払ってもらえなきゃあお返しはできませんねえ」
彼女は悪どい笑みを浮かべながらお金を示すジェスチャーをとった。死神ちゃんはげっそりとした顔のまま口の端だけを持ち上げると、小さく笑ってため息をついた。
フリマ出店者は荷物をまとめると、一階目指して出発した。ぬいぐるみだけはしまわずに、死神ちゃんがそのまま抱きかかえた。大事そうにぬいぐるみを抱きしめてふよふよと漂う死神ちゃんを眺めながら、彼女はヘラヘラと相好を崩した。
「うん、やっぱり可愛い。いいね、最高の看板娘になれるよ、死神ちゃん。――ねえ、ちょっとポーズとってみてよ。売り子の練習兼ねてさ」
死神ちゃんは一瞬面倒くさそうに眉根を寄せたが、フウと息をつくとキュルッと一回転して満面の笑みを浮かべてポーズをとった。興奮して目を輝かせる彼女に乗せられて、死神ちゃんはさらに様々なポーズをとってみせた。フリマ出店者は「いいね」を連呼しながら、その場でジタバタと足踏みをした。そのまま、突如彼女は灰と化した。――彼女は興奮のあまり、足元に仕掛けがあるのを見落として、うっかり罠を発動させてしまったのだ。
彼女の成れの果てから突き出た無数の槍が、彼女を崩しながらスルスルと石畳の中へと戻って行くのを冷めた目で束の間眺めてフンと鼻を鳴らすと、死神ちゃんは壁の中へと消えていった。
**********
死神ちゃんが待機室に戻ってくると、モニターの前でケイティーが悶え死んでいた。死神ちゃんが帰ってきたことに気がついた彼女はふるふると身を震わせながら、今にも爆発しそうな興奮で声も震わせた。
「小花、もう一度ポーズ……! ポーズ決めて……!」
「アホか! ――ほら、持ち帰ったぞ、ぬいぐるみ」
死神ちゃんは不機嫌極まりないという顔でピエロを差し出した。ケイティーは残念そうに口を尖らせつつも、感謝しながらそれを受け取った。
死神ちゃんは怪訝な顔つきで首を傾げると、彼女に尋ねた。
「――で。それは一体、何なんだ?」
ケイティーは答えることなく、ピエロを依然動かぬままの新人に近づけた。すると、突如新人が動き出した。新人は死神ローブを脱ぎ捨てると、大切そうにピエロを抱えた。流れるような銀髪、透き通るような青い瞳。顔立ちも恐ろしいまでに整っており、新人はまるで人形のような少女だった。
彼女はニコリと微笑むと、お辞儀をしながら礼を述べた。しかしその声は見た目のようには美しくなく、例えるならばどこぞのネコ型ロボットのようなダミ声だった。しかも少女の口は動いてはいるものの、その声の発生源はなんとピエロからだった。
死神ちゃんが苦い顔をすると、ケイティーが苦笑いを浮かべた。
「こいつ、ピエロが本体なんだよ……」
「軍曹、やっぱりただ紐で括りつけるんじゃあ駄目だね。まさか、ダンジョンデビュー当日から、こんなやらかしを犯すとは思わなかったよ」
「……抱っこ紐とかおんぶ紐とか、そういうの用意すればいいんじゃないのか?」
死神ちゃんは呆れ返って表情もなくそう言うと、お昼休憩をとるべく待機室を後にしたのだった。
――――自分が言うのも何だけど「また変なの入ってきたなあ」と死神ちゃんは思ったそうDEATH。
愕然とした表情で肩を落とした彼女はそのまま画面を注視していたが、しばらくするとひどいしかめっ面で腕を組み何やら思案しだした。その間に、死神が一人待機室へと帰ってきた。そいつは何故か足元がおぼつかない感じでフラフラと揺れ動くように室内をさまよい、ケイティーはその様子を目で追い頬を引きつらせていた。
彼らの様子がおかしいことを不審に思い、死神ちゃんもその〈帰ってきた死神〉のことを観察していた。すると、そいつはとうとう動くことを止め、まるで糸の切れたマリオネットのようにぐにゃりと床に崩れ落ちた。
ケイティーは苦虫を噛み潰したような顔で頭を乱暴に掻きむしると、足早にそいつの側に駆け寄り、そしてそいつを抱きかかえた。そのままそいつを背もたれのある椅子に座らせてやると、ケイティーは何故か死神ちゃんを呼びつけた。
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「はあ……?」
思わず、死神ちゃんは顔をしかめた。第一班の新人は椅子に座らせられたまま、沈黙を保っている。こいつを〈あろけーしょんせんたー〉に連れて行くべく人員を確保したいというなら理解できる。しかし、それだったら死神ちゃんではなく他の者の方が確実に適任だろう。しかし、彼女の言葉から察するに、頼みたいことというのは他にあるらしい。
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「小花にはこいつの持っているコレを、持って帰ってきてもらいたい」
「あー、うん。それはいいんだが、こいつ、前にとり憑いた覚えがあるからさ、幼女のフリして交渉するっていうのは多分無理だぜ」
「分かってる。だからいつも通りに適当におしゃべりして、隙を見てアレを奪取してきて」
そう言って、ケイティーは再度コンソールを操作した。直後、掲示板に死神ちゃんの社員番号が表示された。頼んだよ、と言いながら見送りをする彼女に、死神ちゃんは頷いて返した。しかし、死神ちゃんは心の中で首を傾げた。
(ぬいぐるみを持ち帰ってこいって、何で……?)
死神ちゃんはダンジョンに降り立つと、早速ターゲットの元へと向かった。ノームは前回とり憑いたとき同様、四階の〈アイテム掘りスポット〉でせっせと作業に勤しんでいた。
死神ちゃんは天井づたいに移動すると、モンスターが地に崩れ落ちるのと同時にノームの眼前へと急降下した。そして頬を両手でペチンと挟んでやると、ニヤリと笑って言った。
「儲かりまっか?」
「ぼちぼちでんなあ……?」
ノームの彼女――フリマ出店者は目をパチクリとさせながらも、死神ちゃんの問いかけに答えた。死神ちゃんは地面に着地すると、彼女の姿に呆れ返った。
「お前、また破廉恥な格好してるんだな」
「いやだな、死神ちゃん。よーく見たまえ。きちんと、履いているだろう?」
地面に剣を突き立てると、フリマ出店者は得意気に両手を腰に当てた。死神ちゃんはじっとりと目を細めると、抑揚のない低い声で答えた。
「あー、うん。しっかり履いてるな。ガーターベルトに網タイツを」
「あやっ! 腰当てのことを言ったつもりだったんだけど、また商売用の衣装のままとなっていたか! これは、お目汚し失礼~」
出店者は慌てて小指のファッションリングを弾いた。すると、ガーターベルトに網タイツという出で立ちから腰鎧とズボンという装いに切り替わり、ごく普通の冒険者と同じような見た目へと変化した。
彼女は壁際に移動して座り込むと、ポーチからミートパイを取り出した。それをナイフで半分に割ると、片方を死神ちゃんに差し出しながらニッコリと笑った。
「で? さっきのほっぺたペチンでとり憑き完了してるんでしょう? てことは、ストーカーの一件が落ち着きでもして、ようやくマスコットになってくれる決心がついたってこと?」
「は? お前、まだ諦めてないのかよ」
当然、と言いながら不敵に笑う彼女からミートパイを受け取ると、死神ちゃんは早速それにかじりついた。もくもくと頬張り、美味しさにうっとりと目を細めながら死神ちゃんは答えた。
「でも俺、マジでエンゲル係数高いぜ? こう見えて、一般的な成人男性よりも飯食うんだよ。おやつも欠かせないし。――これ、すごく美味いな」
「それね、この近くの街の人気の食堂で売ってるんだ。私も最近お気に入りなの。マスコットやってくれるなら、いくらでもそれ食べさせてあげちゃうよ。破竹の勢いで稼いでるからね、そのくらい、ワケないって!」
死神ちゃんは曖昧な相槌を打つと、差し出されたお茶を受け取り飲み干した。ひと心地ついたところで、死神ちゃんは眉根を寄せた。
「でもなあ。売り物はボッタクリの詐欺商品、売り方は破廉恥だろう? それじゃあ、俺の評価もダダ下がりになるじゃあないか。それは勘弁願いたいんだが。あの粗悪品以外に売り物って、他にはないのかよ」
「えっとねえ、ちょっと待ってね……」
言いながら、彼女はポーチをガサゴソと漁りだした。そして品質も種類も様々なアイテムをその場に出し始めた。これらは本日の戦利品だそうだ。
死神ちゃんはその中からピエロのぬいぐるみを手にとった。ピエロといってもよくあるトラウマになりそうな気味の悪いものではなく、ファンシーで可愛らしいものだった。
「へえ、ぬいぐるみもあるのか。これ、どこで手に入れたんだ?」
「あー、それね。ここに来る途中に偶然拾ったんだよ。誰かの落し物か、はたまたドロップアイテムか。それは定かじゃないけど、ダンジョン内のルールでは〈最終的にその物を手にした者が、そのアイテムの所持者〉だからね。もしも本来の持ち主が現れても、コレ払ってもらえなきゃあお返しはできませんねえ」
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死神ちゃんは一瞬面倒くさそうに眉根を寄せたが、フウと息をつくとキュルッと一回転して満面の笑みを浮かべてポーズをとった。興奮して目を輝かせる彼女に乗せられて、死神ちゃんはさらに様々なポーズをとってみせた。フリマ出店者は「いいね」を連呼しながら、その場でジタバタと足踏みをした。そのまま、突如彼女は灰と化した。――彼女は興奮のあまり、足元に仕掛けがあるのを見落として、うっかり罠を発動させてしまったのだ。
彼女の成れの果てから突き出た無数の槍が、彼女を崩しながらスルスルと石畳の中へと戻って行くのを冷めた目で束の間眺めてフンと鼻を鳴らすと、死神ちゃんは壁の中へと消えていった。
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死神ちゃんが待機室に戻ってくると、モニターの前でケイティーが悶え死んでいた。死神ちゃんが帰ってきたことに気がついた彼女はふるふると身を震わせながら、今にも爆発しそうな興奮で声も震わせた。
「小花、もう一度ポーズ……! ポーズ決めて……!」
「アホか! ――ほら、持ち帰ったぞ、ぬいぐるみ」
死神ちゃんは不機嫌極まりないという顔でピエロを差し出した。ケイティーは残念そうに口を尖らせつつも、感謝しながらそれを受け取った。
死神ちゃんは怪訝な顔つきで首を傾げると、彼女に尋ねた。
「――で。それは一体、何なんだ?」
ケイティーは答えることなく、ピエロを依然動かぬままの新人に近づけた。すると、突如新人が動き出した。新人は死神ローブを脱ぎ捨てると、大切そうにピエロを抱えた。流れるような銀髪、透き通るような青い瞳。顔立ちも恐ろしいまでに整っており、新人はまるで人形のような少女だった。
彼女はニコリと微笑むと、お辞儀をしながら礼を述べた。しかしその声は見た目のようには美しくなく、例えるならばどこぞのネコ型ロボットのようなダミ声だった。しかも少女の口は動いてはいるものの、その声の発生源はなんとピエロからだった。
死神ちゃんが苦い顔をすると、ケイティーが苦笑いを浮かべた。
「こいつ、ピエロが本体なんだよ……」
「軍曹、やっぱりただ紐で括りつけるんじゃあ駄目だね。まさか、ダンジョンデビュー当日から、こんなやらかしを犯すとは思わなかったよ」
「……抱っこ紐とかおんぶ紐とか、そういうの用意すればいいんじゃないのか?」
死神ちゃんは呆れ返って表情もなくそう言うと、お昼休憩をとるべく待機室を後にしたのだった。
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