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第10話 太陽の恵みのトマトジュース~ヒーロー風味~
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英雄はふと顔をあげると、辺りを見回して顔を青ざめさせた。
(えっ、どうしよう……。ここどこ……!?)
考えごとをしながら足元ばかりを見て歩いていたからか、いつの間にか知らない道を歩いてしまっていたようだった。
目の前には、七つの曲がり角のある道が広がっていた。もちろん、塾と家とのあいだでそのような道は通らない。初めて見る場所に困惑してキョロキョロと視線をさまよわせると、英雄は再び下を向いて小さくため息をついた。すると、視界の端で何かが動いているのが見えた。不思議に思って顔をあげてみると、なんと自分の影がするするとどこかへと伸びていくではないか。
月がそんなに早く傾くわけはないし、電柱も動くはずがない。つまり、影がこんなにも伸びていくというのは、本来起こりえないことだ。しかし、英雄は何故だかそれを怖いとは思わなかった。
(影について行ったら、帰れるかも)
そう思った英雄は、迷うことなく影を追いかけ、八つ目の曲がり角を曲がった。
角を曲がって目の前に現れたのは、温かな雰囲気の喫茶店だった。ここで道を教えてもらおうと、英雄は店の扉を押し開けた。すると、入ってすぐの目の前にツナギ姿の男性が背中を向けて立っていた。男性は英雄に気がつくと、にっこりと笑いかけてくれた。
英雄は目を真ん丸にして彼を見つめると、思わず「えっ、うそ!」と声を上げた。彼は英雄にとって、とても馴染みのある人物だったのだ。
「ガンバレッド!?」
目の前の彼は優しく頷くと、応援戦士ガンバレンのガンバレッドが作中で名乗りをあげるのと同じポーズを決め、セリフを言った。英雄は先ほどまで悩んでいたのがまるで嘘のように、心の底から元気が湧き出てくるのを感じた。
「うわ、本物だ! 本物のガンバレッドだ!」
「ははっ、坊主、こんな時間にどうしたんだ? 塾帰りか? 輝く君の未来は、この俺が守ってやるぜ! だから安心して、勉学に励め。そして、たくさん野菜を食うんだぞ」
ガンバレッドは英雄の頭をグリグリと撫でると、颯爽と店をあとにした。ヒーローの背中を見送りながら、英雄は言いしれぬ感動に浸った。そんな、まだぼんやりとしていた英雄の頭を、今度は壮年の女性――八塚が撫で回した。
「それで、少年。ガンバレッドの言う通り、塾帰りなのかい? それとも迷子かな?」
「塾帰りですし、迷子です」
英雄はムッとすると、身を引いて八塚の手から逃れた。せっかくヒーローに撫でてもらった余韻がなくなってしまうのが嫌だったし、見知らぬおばさんに子供扱いされるのも腹立たしかったのだ。
それを察した八塚は申し訳なさそうに苦笑すると、小首を傾げて英雄に尋ねた。
「あら、どっちもかい。あんた、見たところ小学校中学年よりは上だろう? 慣れた道で迷子になるような年でもないだろうに。どうかしたのかい?」
「ちょっと、考えごとをしてて……」
英雄は言いづらそうに口ごもった。店主はカウンターの内側から出てくると、店の奥へと誘うように英雄の肩を軽く叩いた。
「私たちでよろしければ、お伺いしますよ。誰かに話してしまったほうが、すっきりすることもありますしね」
英雄は店主のあとをついていこうとした。しかし足を止めると、目をパチクリとさせて声をひっくり返した。
「ていうか、何でガンバレッドがここに!?」
「昔、ご来店いただいたことがあるんです。今日はそのときのご縁で、お野菜を持ってきてくださったんですよ」
「せっかくだからさ、ガンバレッドのお野菜、少し出してあげたら? それ食べながら、話をしたらいいよ」
八塚の提案に頷くと、店主は英雄を八塚の座っている席へと案内した。八塚は店主が戻ってくる間、ガンバレッドのきゅうりがいかに美味しかったかを英雄に話して聞かせた。英雄は興味深げに耳を傾けながら、驚きを鎮めるようにフウと息をついた。
「最近テレビで見なくなったと思ったら、まさか食卓を応援するヒーローになってたとは思わなかった」
「ガンバレンは今から三年くらい前の子供向け番組だろう? 少年、よく知ってたね」
「少年じゃないよ、英雄だよ。――別に、そんなの全然見るよ。小学校あがったらそういうのを見るのやめちゃった子もたしかにいるけど、俺は今でも見てるよ。だって、ヒーローって男のロマンじゃん。俺もいつか、ガンバレンみたいなカッコいいヒーローになりたいよ」
英雄は目をキラキラと光らせると、力強く両の拳を握った。
店主は英雄に食べやすいようにカットしたきゅうりと味噌、そして温かいお茶を出してあげた。英雄はきゅうりをしげしげと眺めると、フォークを手に取りパクリと食べた。
「わあ、甘い! きゅうりって、こんなほんのり甘いんだなんて知らなかった! いつも食べるのはもっと、水っぽくってチャクチャクしてて美味しくないのに! これ、ガンバレッドが作ったんだよね!? すごいや!」
嬉々としながら、英雄はパクパクときゅうりを口に運んだ。しかしすぐにフォークを持つ手の動きが鈍くなった。そしてみるみる表情を暗くすると、英雄はしょんぼりと肩を落とした。
「どうかしましたか?」
店主は心配するように英雄の顔を覗き見た。すると、英雄は小さな声で「駄目だなあ」と呟いた。
「何が駄目なんですか?」
「だってさ、さっきさ、ガンバレッド、『勉学に励め。野菜を食え』って励ましてくれたじゃん。だけど、そのどっちもできてないんだもん」
「何でだい? 塾帰りってことは、あんた、しっかり勉強してきた帰りってことじゃないか。それのどこが『できてない』んだよ」
首を傾げてそう言う八塚に同意するように、店主も何度も小さく頷いた。すると英雄は苦い顔を浮かべ、ボソボソと呟くように返した。
「考えごとしてて授業の内容が全然頭に入ってこなくて、それでこっそり早退したんだよ。早く帰ったら母さんに心配されるから帰りたくなかったし、考えごとのせいで頭の中もぐちゃぐちゃで、どうしたらいいか分からなくて」
「それでフラフラと歩いてたら道に迷った、と」
八塚は納得したように頷きながら腕を組んだ。英雄は歯をむき出して怒ったが、すぐにまたしょぼんと肩を落として素直に「うん」と頷いた。
「だから、俺、勉強は頑張れてないんだ。野菜も、本当は嫌いなものが多いし。ヒーローになりたいのに、英雄っていう名前なのに、全然ヒーローなんかじゃないし。せっかく、ガンバレッドが応援してくれたのに……」
そう言うと、英雄は物憂げに俯いた。店主と八塚は、英雄をじっと見つめて続きが語られるのを待った。英雄はのろのろと顔をあげると、少しばかり泣きそうになりながらポツリと言った。
「クラスにさ、いじめられてる子がいるんだ。塾じゃなくて、学校のほうなんだけど――」
英雄のクラスには、小柄な男の子がいるそうだ。体格が小さく力も弱いため、ガキ大将格の男子が中心となって「女みたいだな」といじめていたそうだ。どうして過去形かというと、今はその子がいじめのターゲットではないからだという。今ターゲットになっているのは、長期休暇明けに転校してきた女の子だった。
その女の子は成長が早いのか、周りの女の子たちよりも体が大きかった。男子を含めても、クラスの中でトップクラスに背が高かった。勝ち気で明るい性格で、彼女は転校してきて早々にクラスのほとんどと友達になった。積極的な彼女を見て、英雄は素直に「すごいな」と思ったそうだ。そんな彼女が何故いじめのターゲットになってしまったかというと、ガキ大将といじめられている男の子の間に割って入ったことがきっかけだったという。
ガキ大将格の子は、典型的な粗野で乱暴な子だった。何かにつけてすぐにカッとなって手を上げるので、クラスの誰も彼を注意することができなかった。先生もはじめは彼に注意してくれていたのだが、彼が「いじめじゃない。遊んでふざけてただけ」と言い張り、周りも「そうです」と暴力を振るわれるのを恐れて同調していた。そのせいで、気がつけば、先生は全く注意をしてくれなくなっていた。
ヒーローに憧れ正義を良しとしていた英雄にとって、クラスのこの状況はとても苦しいものだった。どうにかしたいと思ってはいたのだが、自分よりもひと回りふた回りも体の大きなガキ大将に太刀打ちできるとは思えなかった。実際、自分よりも体が大きくて運動もできる子が止めに入ったことがあるのだが、どうすることもできずに叩きのめされて終わりだった。叩きのめされた彼も、自分が次のいじめのターゲットにされるのを恐れて、あっさりと身を引いた。その様子に、流されるがまま、見て見ぬふりしたままでいるほうが安全だとクラスの誰もが思い、絶望した。英雄も、その光景に絶望したひとりだったのだ。
それでも、もどかしい思いを捨てきることはできなかった。休みの間中も「どうしたらいいか、どうすべきか」を自問自答する日々で、全然楽しく過ごせなかった。
そんな暗い気持ちで休み明けを迎え、快活な転校生を眩しいと思い、自分も彼女のように何ごとも積極的にいかねばと思ったある日。いじめを止めに入った女の子がガキ大将に殴られるという衝撃的な場面を英雄は目撃することとなった。
女の子は動じることなく、ガキ大将といじめられっ子との間に飛び込んでいった。そして頭に血が上ったガキ大将は「女のくせに」と手を上げ、逃げることなくその場に立ち尽くした女の子は顔を打たれて鼻血を出した。なんてひどいことをするんだと怒りを覚えるとともに、凛とした彼女の姿がガンバレッドのように見えて「カッコいい」と英雄は心の底から思った。しかし、女の子に怪我をさせるというショッキングな出来事は、このいじめの終結に結びつきはしなかった。この女の子は次のいじめのターゲットにされてしまい、クラスの人気者という立ち位置からたちまち底辺に落とされてしまったという。
「『女のくせに生意気』とか『男女』って言いながら、彼女はしょっちゅう殴られてるんだ。彼女のことをちやほやしてた女子も『あの子は女の子じゃないから』とか言って見向きもしない。助けてもらった元いじめられっ子も、また自分がターゲットにされるのが嫌だからって、一緒になって彼女を罵ってる。――俺はビビって何もできないままだったのに、彼女にはためらいなんて何もなかった。彼女は、本当にすごいんだ。こんな状況でも気持ちを強く持って、頑張って毎日学校来てる。だから俺、今度こそ『頑張る君を阻む悪を、天に代わって成敗す』をしたいんだ。なのに、いざとなると足がガクガクしてきちゃって。俺、すごく恥ずかしいよ。ヒーローに憧れてるのに、なれないんだから。英雄って名前なのに勇気も出せなくて、全然カッコよくない」
じわりと目じりを濡らしながら、英雄はため息をついた。唐突に、店主は英雄に尋ねた。
「お野菜が嫌いって仰ってましたけど、何が特に嫌いですか?」
「は……? この流れで、普通そういうこと、聞く……?」
英雄は呆れてぽかんとしたが、店主は譲る気配などなくニコニコとしていた。英雄は不機嫌に顔を歪めると、ぶっきらぼうに答えた。
「トマトだよ。青臭いし、真ん中のグジュグジュしたところは気持ちが悪いし。あれほど最悪なものはないね」
「分かりました。じゃあ、まずはトマトを克服してみましょう。それだけ嫌いなものが平気になったら、きっと他の『無理だろう』『怖い』と思っていることも、少しずつ乗り越えていけるようになると思いますから」
英雄はいっそう顔をしかめた。何を馬鹿なことをとも思い、フンと鼻を鳴らした。すると八塚がニヤリと笑って、挑発するように身を乗り出してきた。
「少年、トマトがそんなに怖いかい?」
「だから、少年じゃねえって! ていうか、トマトは関係ないだろ!?」
「そうやって、また目の前のものから逃げるのかい。――逃げるな、少年。立ち向かえ! ……マスター、今すぐに。急いで用意して」
憤る英雄を無視して、八塚は店主に注文をした。店主は大きく頷くと、三つ編みを揺らしながらぴょこぴょことカウンターへと去っていった。
戻ってきた店主が運んできたのは、真っ赤な色が鮮やかなトマトジュースだった。盛大に顔をしかめる英雄の前にコトリと置くと、店主は自慢げに胸を張った。
「知っていますか? トマトは太陽の国で生まれたとされているんですよ。また、トマトを初めて見たローマ圏の方々は、宝石のように美しいトマトの赤を見て『伝説の果物・黄金の林檎だ!』と思ったとか何とか。日本でも、神饌として神にお供えするところもあるんです。……トマトって、すごいんですよ」
「それ、どこまでが本当の話?」
「そんな、太陽と神の力をうちに秘めた〈すごいトマト〉で作ったトマトジュースです。二種類のトマトを使って作ったほうが味に深みが出ますので、今回はガンバレッドが持ってきてくれたトマトを相方に選びました。ですから今回は特別に、ヒーロー風味です」
「いや、だから、待ってよ! それ、どこまでが本当の話!?」
意気揚々と話を続ける店主に、英雄は懸命にツッコミを入れ続けた。しかし無駄であると諦めると、心底嫌だと言わんばかりの苦みばしった表情でトマトジュースを睨みつけた。
「……これ、ガンバレッドの作ったトマトも使ってるんだよね?」
「ええ、そうですよ」
「じゃあ、飲み切ることができたら、今度こそ俺はガンバレッドみたいになれるかなあ……?」
店主はにっこりと微笑むと、お好みでどうぞと言いながらタバスコ、輪切りのレモン、蓮の花の蜜などをテーブルに置いた。英雄はそれらに目もくれず、トマトジュースを見据えていた。
英雄はコップを持ち上げると、恐る恐るそれに顔を近づけた。そしてギュウと目をつぶると、腹を括ってゴクリとひと口飲んだ。次の瞬間、英雄はカッと目を見開いた。驚きの表情でゆっくりと視線を落とすと、トマトジュースを凝視してポツリと言った。
「全然、青臭くない……」
「お口に合って、よかったです!」
「しかも、サラサラしてて飲みやすい!」
「グジュグジュが嫌だと仰っていたので、一生懸命濾しました!」
胸を張り、嬉しそうに頷きながらそう返す店主そっちのけで、英雄はゴクゴクと喉を鳴らしながらジュースを飲んだ。ぷはっと顔をあげると、英雄は口の上に赤いヒゲを薄っすらと作って笑った。
「ほんのり甘いし、すごく美味しい! これ、そのままで全然美味しい! 冷たいのを飲んでるはずなのに、何だかおなかの底からポカポカしてくるし! これが太陽の力!? それとも、ガンバレッドの応援パワーかなあ!?」
あっという間に、英雄はトマトジュースを飲み干した。飲む前からは想像もつかない至福の笑みを浮かべる英雄に、店主の心もほかほかと温かくなった。
八塚は満足げに頷くと、英雄の頭に手を伸ばした。
「よく逃げずに飲みきった。英雄、偉い偉い」
「結局子供扱いするのかよ。ようやく少年呼びやめてくれたと思ったら」
英雄は不服げに口をとがらせると、八塚の手を払い除けた。八塚は気にすることなく、ニッと笑顔を浮かべた。英雄もニイと笑い返すと、楽しそうにクスクスと小さく声を出して笑った。
勇気を持って立ち向かっていける気がする。――そう言って店をあとにした英雄が再び来店したのは、それから十数年後のことだった。立派な大人に成長した英雄は、あのときの礼を言いにくるのが遅くなって申し訳ないと頭を下げると、カバンから何やら取り出して店主と八塚に見せた。それは、養護教諭として採用されたという通知書だった。
「おや、あんた、保健の先生になるのかい。てっきり、ガンバレンのあとを追ってヒーローにでもなるのかと思ったのに」
「どうやったら俺なりにヒーローになれるか考えた結果がこれなんです」
英雄は照れくさそうに頭をかくと、これまでのことをざっくりと話し始めた。
あのあと、英雄は勇気を振り絞ってガキ大将に立ち向かった。当然のようにボコボコにされたし、クラスメイトからも除け者にされたそうだ。しかし、転校生の女の子だけは態度を変えないでいてくれたという。
一緒に殴られ続ける日々がしばらく続いたあと、女の子は思わぬ行動に出た。なんと病院に行って怪我の診断書を作り被害届を警察に出し、さらには相手を訴えたのである。
「『子どもの喧嘩でそんなことをするだなんて、なんて大げさな』という親ももちろんいました。彼女の親も『モンスタークレーマーなんじゃない』かって嫌味を言われました。でも、全部彼女が自分で考えて自分で起した行動だったんです」
「すごく、頭の回る子だったんですねえ。すごいです」
「はい、そうなんです。彼女、言っていました。『これは、立派な傷害罪。いじめという言葉で済ませたら絶対に駄目。クラス替えがあるまで私たちが耐えたところで、私たちはそれでいじめから逃れられるけど、新しいクラスで新しい被害者が生まれるだけで何の解決にもならない。やめるよう言い続けても状況がよくなるどころか悪くなる一方だったし、だから最終手段に出た』って。……やっぱり、彼女はすごいなって思いました。体の大きさだけじゃなくて、頭脳のほうも俺より大人でした。――今、彼女は弁護士になるために勉強していますよ。あのときにお世話になった弁護士さんが、いじめや離婚など子ども絡みの案件を子どもの気持ちを大切にしながらやってくれる人だったらしくて。その弁護士さんのように、俺たちのような子どもを守れるようになりたいということで」
英雄も彼女と同じ思いをいだいていた。だからガンバレンに言われた通り、一生懸命勉強した。強い大人になれるように、苦手な野菜も克服した。そして自分なりに〈子どもを守るヒーローになるには、どうしたらいいか〉を考えた結果、養護教諭になろうと思い至ったのだそうだ。
「ほら、保健室って〈弱い立場にある子たちの駆け込み寺〉にもされているでしょう? それに、校内を巡回するから全生徒の動向を窺うことができるし。だから、担任としてひとりひとりと向き合うよりも保健室の先生のほうが、自分が目指しているようなことができるような気がして」
ニッコリと笑う英雄は、なんとも頼もしそうに見えた。
いきなりチンと音を立てたレジスターに、英雄は目を丸くした。何が起きたのかと尋ねてきた英雄に、店主は笑顔で答えた。
「あのときの〈お代〉を、今頂戴したんです。――どうか、子どもたちを支える、立派な保健室の先生になってくださいね」
「英雄ならきっとなれるさ。頑張りなよ。応援してるからさ」
ニイと目を細めた八塚に、英雄はあのときのようにニイと笑い返した。そして店主にも笑顔を向けると、ふたりに感謝しながら英雄は店をあとにした。――新しい英雄が誕生した瞬間だった。
(えっ、どうしよう……。ここどこ……!?)
考えごとをしながら足元ばかりを見て歩いていたからか、いつの間にか知らない道を歩いてしまっていたようだった。
目の前には、七つの曲がり角のある道が広がっていた。もちろん、塾と家とのあいだでそのような道は通らない。初めて見る場所に困惑してキョロキョロと視線をさまよわせると、英雄は再び下を向いて小さくため息をついた。すると、視界の端で何かが動いているのが見えた。不思議に思って顔をあげてみると、なんと自分の影がするするとどこかへと伸びていくではないか。
月がそんなに早く傾くわけはないし、電柱も動くはずがない。つまり、影がこんなにも伸びていくというのは、本来起こりえないことだ。しかし、英雄は何故だかそれを怖いとは思わなかった。
(影について行ったら、帰れるかも)
そう思った英雄は、迷うことなく影を追いかけ、八つ目の曲がり角を曲がった。
角を曲がって目の前に現れたのは、温かな雰囲気の喫茶店だった。ここで道を教えてもらおうと、英雄は店の扉を押し開けた。すると、入ってすぐの目の前にツナギ姿の男性が背中を向けて立っていた。男性は英雄に気がつくと、にっこりと笑いかけてくれた。
英雄は目を真ん丸にして彼を見つめると、思わず「えっ、うそ!」と声を上げた。彼は英雄にとって、とても馴染みのある人物だったのだ。
「ガンバレッド!?」
目の前の彼は優しく頷くと、応援戦士ガンバレンのガンバレッドが作中で名乗りをあげるのと同じポーズを決め、セリフを言った。英雄は先ほどまで悩んでいたのがまるで嘘のように、心の底から元気が湧き出てくるのを感じた。
「うわ、本物だ! 本物のガンバレッドだ!」
「ははっ、坊主、こんな時間にどうしたんだ? 塾帰りか? 輝く君の未来は、この俺が守ってやるぜ! だから安心して、勉学に励め。そして、たくさん野菜を食うんだぞ」
ガンバレッドは英雄の頭をグリグリと撫でると、颯爽と店をあとにした。ヒーローの背中を見送りながら、英雄は言いしれぬ感動に浸った。そんな、まだぼんやりとしていた英雄の頭を、今度は壮年の女性――八塚が撫で回した。
「それで、少年。ガンバレッドの言う通り、塾帰りなのかい? それとも迷子かな?」
「塾帰りですし、迷子です」
英雄はムッとすると、身を引いて八塚の手から逃れた。せっかくヒーローに撫でてもらった余韻がなくなってしまうのが嫌だったし、見知らぬおばさんに子供扱いされるのも腹立たしかったのだ。
それを察した八塚は申し訳なさそうに苦笑すると、小首を傾げて英雄に尋ねた。
「あら、どっちもかい。あんた、見たところ小学校中学年よりは上だろう? 慣れた道で迷子になるような年でもないだろうに。どうかしたのかい?」
「ちょっと、考えごとをしてて……」
英雄は言いづらそうに口ごもった。店主はカウンターの内側から出てくると、店の奥へと誘うように英雄の肩を軽く叩いた。
「私たちでよろしければ、お伺いしますよ。誰かに話してしまったほうが、すっきりすることもありますしね」
英雄は店主のあとをついていこうとした。しかし足を止めると、目をパチクリとさせて声をひっくり返した。
「ていうか、何でガンバレッドがここに!?」
「昔、ご来店いただいたことがあるんです。今日はそのときのご縁で、お野菜を持ってきてくださったんですよ」
「せっかくだからさ、ガンバレッドのお野菜、少し出してあげたら? それ食べながら、話をしたらいいよ」
八塚の提案に頷くと、店主は英雄を八塚の座っている席へと案内した。八塚は店主が戻ってくる間、ガンバレッドのきゅうりがいかに美味しかったかを英雄に話して聞かせた。英雄は興味深げに耳を傾けながら、驚きを鎮めるようにフウと息をついた。
「最近テレビで見なくなったと思ったら、まさか食卓を応援するヒーローになってたとは思わなかった」
「ガンバレンは今から三年くらい前の子供向け番組だろう? 少年、よく知ってたね」
「少年じゃないよ、英雄だよ。――別に、そんなの全然見るよ。小学校あがったらそういうのを見るのやめちゃった子もたしかにいるけど、俺は今でも見てるよ。だって、ヒーローって男のロマンじゃん。俺もいつか、ガンバレンみたいなカッコいいヒーローになりたいよ」
英雄は目をキラキラと光らせると、力強く両の拳を握った。
店主は英雄に食べやすいようにカットしたきゅうりと味噌、そして温かいお茶を出してあげた。英雄はきゅうりをしげしげと眺めると、フォークを手に取りパクリと食べた。
「わあ、甘い! きゅうりって、こんなほんのり甘いんだなんて知らなかった! いつも食べるのはもっと、水っぽくってチャクチャクしてて美味しくないのに! これ、ガンバレッドが作ったんだよね!? すごいや!」
嬉々としながら、英雄はパクパクときゅうりを口に運んだ。しかしすぐにフォークを持つ手の動きが鈍くなった。そしてみるみる表情を暗くすると、英雄はしょんぼりと肩を落とした。
「どうかしましたか?」
店主は心配するように英雄の顔を覗き見た。すると、英雄は小さな声で「駄目だなあ」と呟いた。
「何が駄目なんですか?」
「だってさ、さっきさ、ガンバレッド、『勉学に励め。野菜を食え』って励ましてくれたじゃん。だけど、そのどっちもできてないんだもん」
「何でだい? 塾帰りってことは、あんた、しっかり勉強してきた帰りってことじゃないか。それのどこが『できてない』んだよ」
首を傾げてそう言う八塚に同意するように、店主も何度も小さく頷いた。すると英雄は苦い顔を浮かべ、ボソボソと呟くように返した。
「考えごとしてて授業の内容が全然頭に入ってこなくて、それでこっそり早退したんだよ。早く帰ったら母さんに心配されるから帰りたくなかったし、考えごとのせいで頭の中もぐちゃぐちゃで、どうしたらいいか分からなくて」
「それでフラフラと歩いてたら道に迷った、と」
八塚は納得したように頷きながら腕を組んだ。英雄は歯をむき出して怒ったが、すぐにまたしょぼんと肩を落として素直に「うん」と頷いた。
「だから、俺、勉強は頑張れてないんだ。野菜も、本当は嫌いなものが多いし。ヒーローになりたいのに、英雄っていう名前なのに、全然ヒーローなんかじゃないし。せっかく、ガンバレッドが応援してくれたのに……」
そう言うと、英雄は物憂げに俯いた。店主と八塚は、英雄をじっと見つめて続きが語られるのを待った。英雄はのろのろと顔をあげると、少しばかり泣きそうになりながらポツリと言った。
「クラスにさ、いじめられてる子がいるんだ。塾じゃなくて、学校のほうなんだけど――」
英雄のクラスには、小柄な男の子がいるそうだ。体格が小さく力も弱いため、ガキ大将格の男子が中心となって「女みたいだな」といじめていたそうだ。どうして過去形かというと、今はその子がいじめのターゲットではないからだという。今ターゲットになっているのは、長期休暇明けに転校してきた女の子だった。
その女の子は成長が早いのか、周りの女の子たちよりも体が大きかった。男子を含めても、クラスの中でトップクラスに背が高かった。勝ち気で明るい性格で、彼女は転校してきて早々にクラスのほとんどと友達になった。積極的な彼女を見て、英雄は素直に「すごいな」と思ったそうだ。そんな彼女が何故いじめのターゲットになってしまったかというと、ガキ大将といじめられている男の子の間に割って入ったことがきっかけだったという。
ガキ大将格の子は、典型的な粗野で乱暴な子だった。何かにつけてすぐにカッとなって手を上げるので、クラスの誰も彼を注意することができなかった。先生もはじめは彼に注意してくれていたのだが、彼が「いじめじゃない。遊んでふざけてただけ」と言い張り、周りも「そうです」と暴力を振るわれるのを恐れて同調していた。そのせいで、気がつけば、先生は全く注意をしてくれなくなっていた。
ヒーローに憧れ正義を良しとしていた英雄にとって、クラスのこの状況はとても苦しいものだった。どうにかしたいと思ってはいたのだが、自分よりもひと回りふた回りも体の大きなガキ大将に太刀打ちできるとは思えなかった。実際、自分よりも体が大きくて運動もできる子が止めに入ったことがあるのだが、どうすることもできずに叩きのめされて終わりだった。叩きのめされた彼も、自分が次のいじめのターゲットにされるのを恐れて、あっさりと身を引いた。その様子に、流されるがまま、見て見ぬふりしたままでいるほうが安全だとクラスの誰もが思い、絶望した。英雄も、その光景に絶望したひとりだったのだ。
それでも、もどかしい思いを捨てきることはできなかった。休みの間中も「どうしたらいいか、どうすべきか」を自問自答する日々で、全然楽しく過ごせなかった。
そんな暗い気持ちで休み明けを迎え、快活な転校生を眩しいと思い、自分も彼女のように何ごとも積極的にいかねばと思ったある日。いじめを止めに入った女の子がガキ大将に殴られるという衝撃的な場面を英雄は目撃することとなった。
女の子は動じることなく、ガキ大将といじめられっ子との間に飛び込んでいった。そして頭に血が上ったガキ大将は「女のくせに」と手を上げ、逃げることなくその場に立ち尽くした女の子は顔を打たれて鼻血を出した。なんてひどいことをするんだと怒りを覚えるとともに、凛とした彼女の姿がガンバレッドのように見えて「カッコいい」と英雄は心の底から思った。しかし、女の子に怪我をさせるというショッキングな出来事は、このいじめの終結に結びつきはしなかった。この女の子は次のいじめのターゲットにされてしまい、クラスの人気者という立ち位置からたちまち底辺に落とされてしまったという。
「『女のくせに生意気』とか『男女』って言いながら、彼女はしょっちゅう殴られてるんだ。彼女のことをちやほやしてた女子も『あの子は女の子じゃないから』とか言って見向きもしない。助けてもらった元いじめられっ子も、また自分がターゲットにされるのが嫌だからって、一緒になって彼女を罵ってる。――俺はビビって何もできないままだったのに、彼女にはためらいなんて何もなかった。彼女は、本当にすごいんだ。こんな状況でも気持ちを強く持って、頑張って毎日学校来てる。だから俺、今度こそ『頑張る君を阻む悪を、天に代わって成敗す』をしたいんだ。なのに、いざとなると足がガクガクしてきちゃって。俺、すごく恥ずかしいよ。ヒーローに憧れてるのに、なれないんだから。英雄って名前なのに勇気も出せなくて、全然カッコよくない」
じわりと目じりを濡らしながら、英雄はため息をついた。唐突に、店主は英雄に尋ねた。
「お野菜が嫌いって仰ってましたけど、何が特に嫌いですか?」
「は……? この流れで、普通そういうこと、聞く……?」
英雄は呆れてぽかんとしたが、店主は譲る気配などなくニコニコとしていた。英雄は不機嫌に顔を歪めると、ぶっきらぼうに答えた。
「トマトだよ。青臭いし、真ん中のグジュグジュしたところは気持ちが悪いし。あれほど最悪なものはないね」
「分かりました。じゃあ、まずはトマトを克服してみましょう。それだけ嫌いなものが平気になったら、きっと他の『無理だろう』『怖い』と思っていることも、少しずつ乗り越えていけるようになると思いますから」
英雄はいっそう顔をしかめた。何を馬鹿なことをとも思い、フンと鼻を鳴らした。すると八塚がニヤリと笑って、挑発するように身を乗り出してきた。
「少年、トマトがそんなに怖いかい?」
「だから、少年じゃねえって! ていうか、トマトは関係ないだろ!?」
「そうやって、また目の前のものから逃げるのかい。――逃げるな、少年。立ち向かえ! ……マスター、今すぐに。急いで用意して」
憤る英雄を無視して、八塚は店主に注文をした。店主は大きく頷くと、三つ編みを揺らしながらぴょこぴょことカウンターへと去っていった。
戻ってきた店主が運んできたのは、真っ赤な色が鮮やかなトマトジュースだった。盛大に顔をしかめる英雄の前にコトリと置くと、店主は自慢げに胸を張った。
「知っていますか? トマトは太陽の国で生まれたとされているんですよ。また、トマトを初めて見たローマ圏の方々は、宝石のように美しいトマトの赤を見て『伝説の果物・黄金の林檎だ!』と思ったとか何とか。日本でも、神饌として神にお供えするところもあるんです。……トマトって、すごいんですよ」
「それ、どこまでが本当の話?」
「そんな、太陽と神の力をうちに秘めた〈すごいトマト〉で作ったトマトジュースです。二種類のトマトを使って作ったほうが味に深みが出ますので、今回はガンバレッドが持ってきてくれたトマトを相方に選びました。ですから今回は特別に、ヒーロー風味です」
「いや、だから、待ってよ! それ、どこまでが本当の話!?」
意気揚々と話を続ける店主に、英雄は懸命にツッコミを入れ続けた。しかし無駄であると諦めると、心底嫌だと言わんばかりの苦みばしった表情でトマトジュースを睨みつけた。
「……これ、ガンバレッドの作ったトマトも使ってるんだよね?」
「ええ、そうですよ」
「じゃあ、飲み切ることができたら、今度こそ俺はガンバレッドみたいになれるかなあ……?」
店主はにっこりと微笑むと、お好みでどうぞと言いながらタバスコ、輪切りのレモン、蓮の花の蜜などをテーブルに置いた。英雄はそれらに目もくれず、トマトジュースを見据えていた。
英雄はコップを持ち上げると、恐る恐るそれに顔を近づけた。そしてギュウと目をつぶると、腹を括ってゴクリとひと口飲んだ。次の瞬間、英雄はカッと目を見開いた。驚きの表情でゆっくりと視線を落とすと、トマトジュースを凝視してポツリと言った。
「全然、青臭くない……」
「お口に合って、よかったです!」
「しかも、サラサラしてて飲みやすい!」
「グジュグジュが嫌だと仰っていたので、一生懸命濾しました!」
胸を張り、嬉しそうに頷きながらそう返す店主そっちのけで、英雄はゴクゴクと喉を鳴らしながらジュースを飲んだ。ぷはっと顔をあげると、英雄は口の上に赤いヒゲを薄っすらと作って笑った。
「ほんのり甘いし、すごく美味しい! これ、そのままで全然美味しい! 冷たいのを飲んでるはずなのに、何だかおなかの底からポカポカしてくるし! これが太陽の力!? それとも、ガンバレッドの応援パワーかなあ!?」
あっという間に、英雄はトマトジュースを飲み干した。飲む前からは想像もつかない至福の笑みを浮かべる英雄に、店主の心もほかほかと温かくなった。
八塚は満足げに頷くと、英雄の頭に手を伸ばした。
「よく逃げずに飲みきった。英雄、偉い偉い」
「結局子供扱いするのかよ。ようやく少年呼びやめてくれたと思ったら」
英雄は不服げに口をとがらせると、八塚の手を払い除けた。八塚は気にすることなく、ニッと笑顔を浮かべた。英雄もニイと笑い返すと、楽しそうにクスクスと小さく声を出して笑った。
勇気を持って立ち向かっていける気がする。――そう言って店をあとにした英雄が再び来店したのは、それから十数年後のことだった。立派な大人に成長した英雄は、あのときの礼を言いにくるのが遅くなって申し訳ないと頭を下げると、カバンから何やら取り出して店主と八塚に見せた。それは、養護教諭として採用されたという通知書だった。
「おや、あんた、保健の先生になるのかい。てっきり、ガンバレンのあとを追ってヒーローにでもなるのかと思ったのに」
「どうやったら俺なりにヒーローになれるか考えた結果がこれなんです」
英雄は照れくさそうに頭をかくと、これまでのことをざっくりと話し始めた。
あのあと、英雄は勇気を振り絞ってガキ大将に立ち向かった。当然のようにボコボコにされたし、クラスメイトからも除け者にされたそうだ。しかし、転校生の女の子だけは態度を変えないでいてくれたという。
一緒に殴られ続ける日々がしばらく続いたあと、女の子は思わぬ行動に出た。なんと病院に行って怪我の診断書を作り被害届を警察に出し、さらには相手を訴えたのである。
「『子どもの喧嘩でそんなことをするだなんて、なんて大げさな』という親ももちろんいました。彼女の親も『モンスタークレーマーなんじゃない』かって嫌味を言われました。でも、全部彼女が自分で考えて自分で起した行動だったんです」
「すごく、頭の回る子だったんですねえ。すごいです」
「はい、そうなんです。彼女、言っていました。『これは、立派な傷害罪。いじめという言葉で済ませたら絶対に駄目。クラス替えがあるまで私たちが耐えたところで、私たちはそれでいじめから逃れられるけど、新しいクラスで新しい被害者が生まれるだけで何の解決にもならない。やめるよう言い続けても状況がよくなるどころか悪くなる一方だったし、だから最終手段に出た』って。……やっぱり、彼女はすごいなって思いました。体の大きさだけじゃなくて、頭脳のほうも俺より大人でした。――今、彼女は弁護士になるために勉強していますよ。あのときにお世話になった弁護士さんが、いじめや離婚など子ども絡みの案件を子どもの気持ちを大切にしながらやってくれる人だったらしくて。その弁護士さんのように、俺たちのような子どもを守れるようになりたいということで」
英雄も彼女と同じ思いをいだいていた。だからガンバレンに言われた通り、一生懸命勉強した。強い大人になれるように、苦手な野菜も克服した。そして自分なりに〈子どもを守るヒーローになるには、どうしたらいいか〉を考えた結果、養護教諭になろうと思い至ったのだそうだ。
「ほら、保健室って〈弱い立場にある子たちの駆け込み寺〉にもされているでしょう? それに、校内を巡回するから全生徒の動向を窺うことができるし。だから、担任としてひとりひとりと向き合うよりも保健室の先生のほうが、自分が目指しているようなことができるような気がして」
ニッコリと笑う英雄は、なんとも頼もしそうに見えた。
いきなりチンと音を立てたレジスターに、英雄は目を丸くした。何が起きたのかと尋ねてきた英雄に、店主は笑顔で答えた。
「あのときの〈お代〉を、今頂戴したんです。――どうか、子どもたちを支える、立派な保健室の先生になってくださいね」
「英雄ならきっとなれるさ。頑張りなよ。応援してるからさ」
ニイと目を細めた八塚に、英雄はあのときのようにニイと笑い返した。そして店主にも笑顔を向けると、ふたりに感謝しながら英雄は店をあとにした。――新しい英雄が誕生した瞬間だった。
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