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第2章【鳥と話す少年】
【閻魔の息子】25
しおりを挟む暫くすると目の前を何台かの消防車が通る。
「火事の様ですね」
「ああ、近いな、行って見るか」
「リン様やじうまー」
沙羅の言葉に少しムカつく輪廻。
「ふ~ん、弁当いらない?」
「あわわ、ご一緒しま~す」
バイクを降り、押しながら火災場所へ行くとそこは黒山のひとだかりでいっぱいだった。
「可哀想に…小学生だって。でも不審火みたいよ」
「また?最近物騒よね、怖いわ」
近くの主婦連中の話声が聞こえる。
「どうかしたんですか?」
「子供が亡くなったのよ。一人で留守番している最中だったみたい。でも放火らしいのよ、火の回りが早かったから灯油かなんかで外から…」
「これで3件目よね、全部子供が犠牲になってるけど…偶然なのかしら?」
「ひどいことを…」
魔物のごとく赤き炎が家を飲み込んでしまう、崩れ落ちてゆく幸せのあかし。火災現場を傷心な思いで見つめている輪廻に沙羅が呼ぶ。
“トントン”
「ん?どうした?」
「ワン。“リン様、あれ見て”」
沙羅が手を指すところに目をやると。
「あの坊主だ、肩に鳥を乗っけていやがる」
「ワン“それと上を見て”」
沙羅が手を指した電柱の上を見ると。
「カラスだ、あのカラスか?…でも、な、なんだあの強烈な赤い霊波動は…」
沙羅が人のいないところへ走っていく。
「沙羅、どう思う?俺達の魔瞳(まどう)にさえ反応する赤い波動…俺達のとは全然違う」
「…たぶん、怨念ですね。恨み、妬み、嫉み。すべてあの波動を誘発する。誰かの怨念が憑依したんですよ」
「恨み…。!?まさか?」
「私もそう思います。きっとあの子供の父親でしょう…恨みを晴らしたのに未だに浮かばれずあの子を見守っている」
「だから俺が声をかけた時、鳥を驚かせてあの子を悲しませたから襲ってきたんだ…」
「ええ、そうでしょう」
二人がまた電柱の方に目をやると…。
「!?カラスがいないぞ!」
慌ててやじうまの中の少年をさがすと。
「坊主もいない!?」
「やはり、そうみたいですね」
「…ああ」
すると遠くから聞き覚えのある声が。
「お兄ちゃーん!」
「裕子!」
「お兄ちゃん。あ、沙羅ちゃんも一緒。」
「帰りか?」
「うん、今日は少し早めに部活終わったから、帰りに明日の食事の材料を買いに商店街に寄ったらこっちで火事があったって聞いて」
続く
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