閻魔の息子

亜坊 ひろ

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第2章【鳥と話す少年】

【閻魔の息子】24

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 「いてて…なんだよ!沙羅…って沙羅?!」

 沙羅が腕から血流して横たわっている。

 「沙羅!大丈夫か?!」

 「う、うーん、リン様…お怪我は…」

 「俺は大丈夫だ、それよりお前が、待ってろ今手当てする」

 ポケットの中から女物のハンカチを取りだし、沙羅の腕に巻く。

 「これって裕子ちゃんの…駄目ですよ私なんかの為に」

 「裕子がうるさいんだ、ハンカチぐらい持っていけって。それと…確か…こう…ふんっ」

 重ね合わせた輪廻の手のひらが白いオーラに包まれる。

 「こ、これは?輝力(きりょく)!…。リン様…いつの間に?」

 「ああ、これか?俺が小さい頃たまたま友人が怪我した時、とっさに手を翳したらこの霊波動が出来たんだ。直ぐに傷口がふさがってくれたからな」

 「ええ、輝力って天界の天使が持つ力。魔界人は魔力、天界人は輝力、我々天魔人は…その両方を持つと言われていますけど…開放はまだ早いはず…。“私でさえやっと最近…流石ね、閻魔大王様の息子と言うだけあって、伊達じゃないわ…”」

 「輝力っていうのか?知らなかった。でも、何だったんだ?俺には何が何やら」

 「た、たしか黒いカラスの様な鳥が、そのガラスを加えてリン様めがけて」

 後ろには血のついたガラスの破片か落ちていた。

 「カラスがか?」

 「でも…嫌な感じでした…何か…憎しみ…の様な、でもあまりに素早くて。」

 「俺にか?何で俺がカラスに恨まれんだよ。とりあえずこれでよしと」

 携帯の時刻に目をやる。

 「時間だ、戻らないと。キマラの足取りは仕事が終わった後だ。沙羅は無理すんな」

 「はい、では後程」

夕方―

 「お先に~」

 やっかみ半分で白井が言う。

 「おう、明日は遅れるなよ、常習犯」

 「あはは、ごめんなさーい」

 沙羅を迎えキマラの足取りを追う。

 「傷はどうだ?」

 「大丈夫です、リン様の処置が良かったんですよ。ありがとうリン様」

 「当たり前だろ。さあて今日は裕子が遅いから長く調べられそうだ。その前に腹ごしらえ」

 「おべんと、おべんとー」

 「全く、食い気ばっかだな沙羅は」

 「リ・ン・さま大好き~チュッ」

 「バカバカ!前が見えない!運転中たぞ!」

 「ひゃあ~!」

 良い子は真似なんかしませんけど。

 コンビニで三人分の弁当を買う。

 「どこで食おうか?」

 「?」

 沙羅が気付くや否や遠くから消防車のサイレンの音が。

続く

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