閻魔の息子

亜坊 ひろ

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第2章【鳥と話す少年】

【閻魔の息子】21

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 輪廻が人間界に降り立ってからひと月が経とうとしていた。

 「お兄ちゃん遅れるよー、早く早くー」

 「はい、はい」

 「“俺の名前は輪廻、天魔界からやって来た閻魔大王の息子。人間名、紀藤慎二。彼女の名前は紀藤裕子、人間界では俺の妹。俺なんだかんだで人間やってます”」

 「ちゃんと捕まってろよ」

 「レッツゴー!」

“ブゥオン!”

 風の中をバイクが駆けて行く。

 「ここでいいよ、今日は部活のあと合宿の打ち合わせで遅くなるからね、夜は先に食べてていいからね、いってきまーす」

 「いってらっしゃーい。せっかくの夏休みなのに大変やね~」

 裕子を見送り川の土手で一休み。

 「ふぅ…早いもんだな、あれからひと月か…。まぁ何とかこっちの生活にも慣れたけど、相変わらず彼女には慣れないなー。身内って考えられないし、でも身内だし、うーん…」

 「ワンワン!」

 「!お、沙羅」

 「“この犬の名前は沙羅。俺と同じ天魔界からやって来た謎の女性。年齢不詳。さん付けで呼んでいたら「堅苦しいから沙羅って呼べ」って。年上なのか年下なのか微妙なんだな~これが”」

 「リン様、大分人間が板についてきましたね」

 「そうか?バイクは天馬にいつも乗っていたお陰ですんなりマスター出来たけど、携帯電話な~んてもの持たされてさ~信用あるのか、ないのか。慎二って人間やるのも大変だわ」

 「ふふっ、なんか変。中身が入れ変わってるなんて誰も思ってないんだもの」

 「そだな、よっぽど…。影が薄かったのかも」

 「そうそう、昨日大王様から連絡がありました」

 「どうかしたのか?」

 「リン様がこちらに来る時に、私、あの場所で人らしきものに出会ったって言いましたよね」

 「ああ、そういえば虹色に光る実体を見たって」

 「それがどうもリン様と一緒に下界落ちした者がいるらしいと」

 「なんだって?だって俺はあの時一人で…って、まさか!後から来たってことか?」

 「そうみたいです、話によりますとリン様が帰生穴に入られた後、何者かが門内に侵入し帰生穴に入ったと」

 「え?そんな誰が!」

 沙羅の顔が一瞬曇る。

 「それがですね…昨日分かったらしくて魔界の北方主事、後鬼様の御子息が行方不明らしくて」

 「後鬼様の息子って…もしかして?キマラか!?」

 「のようで…」

 キマラの言葉が脳裏をよぎる。

続く

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