閻魔の息子

亜坊 ひろ

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第1章【閻魔の息子・輪廻】

【閻魔の息子】20

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 「お兄ちゃん、退院おめでとう。はい、お花。病院の先生から連絡もらってたの」

 「ああ…。“余計な事を!”」

 「叔母さんにわがまま言って一緒に暮らす事を許してもらったよ」

 「ああ…。“なんで許すかな~”」

 横から白井も。

 「慎二、身体治って良かったな。これから休んだ分もバリバリ働いて貰うぞ。ちなみにここの病院代もバイト代から引いておくからな、ワッハッハ」

 「はぁ…“何がワッハッハだよ、オッサン!”」

 更に刑事の越智が。

 「慎二君、裕子ちゃん共々こちらの白井さんに身元引き受け人を頼んでおいたからね。叔母さんの方からも二人を頼むとお願いされてきたからね」

 「はぁ…“引き受けないで…。”」

 白井がまた余計なお世話を。

 「そのまま今のアパートを二人で使えばいいだろ?裕子ちゃん」

 「はい、私はお兄ちゃんと一緒ならどこでもいいです」

 「決定だな、汚いがうちが経営しているアパートだからな、家賃はまけておくよ」

 「ありがとうございます、店長さん優しい」

 「ウヘヘ」

 三人の会話に固まってしまい頭を抱える輪廻。

 「どうしたの?お兄ちゃん気分良くないの?」

 「おいおい大丈夫か?そういや記憶喪失だったな?まさかこの俺の事も忘れてたんじゃ…」

 「?」

 「冗談だと思ってたが仕事もか?」

「?…はぁ」

 「仕方ない、仕事はまた覚えりゃいいんだ。まあ以前だって大した変わらんしな、サボり専門だしな」

 「店長さん!」

 「悪い、悪い」

 「私も5年間空白だったから同じ、だからこれからいっぱい思い出作ろうね」

 「それではまず、私はこれで。叔母さんには伝えておくよ」

 越知がその場を立ち去って行く。

 「じゃあ行こうお兄ちゃん、あれ?この犬お兄ちゃんから離れないね。お兄ちゃんが飼っているの?」

 「ああ、まあね」

 「なんだ?聞いてないぞ、お前動物好きだったか?」

 「名前は?」

 「…。サ、ラ」

 「サラか、いい名前…悔しいなワンちゃんの名前だけ覚えるなんて」

 「ごめん…」

 「頑張ろうっと、私だって負けないんだからねサラ!」

 「“ヒィッ”」

 「お兄ちゃーん行くよ~!」


 陽炎の中で手を振る裕子に眼を細める輪廻。

 「リン様…」

 「何とかなるって」

 「はい」

 「おーい待ってくれ~アパートの場所わからな~い」

 「やれやれ…前途多難、ワンワーン!」

 閻魔の息子、輪廻の物語が今幕を上げる。

第2章へ続く
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