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第1章【閻魔の息子・輪廻】
【閻魔の息子】18
しおりを挟む「リン様!ダメよ、呼んじゃ!」
越知と裕子を見送った医者が病室に戻ると、慎二が身を乗り出して窓辺にいるのに仰天した。
「な、何をやっとるのか!君!も、もしや?!早まるのは止めたまえ!記憶がなくても生きていけるぞ、考え直すんだ!」
「沙羅さ…え?わわわ!」
医者に無理やり羽交い締めにされる。
「痛いですよ、何もしてないでしょ!」
「考え直すんだ…って…違ったのかい?でも急に起き上がって風にあたると身体に悪い…ん?なんだい?あの犬?」
医者が窓の外を見ると、見慣れない犬がいる。
「ワンワン!」
「ん?君の犬かい?」
「はぁ、何というか…」
「うーん…欠損型の記憶喪失か?断片的にしか記憶が繋がらない?でも名前わすれてるしな…」
「!“やばっ”あ、思い出した…」
「え?何か、何か思い出したのかい?」
「名前、紀藤…慎二…えー歳、22歳…」
「おお!後は?それだけかい?住所は?生年月日は?」
更なる問いになすすべ無し。
「…。“だってそれだけしか聞いてないし”」
「駄目かい…まあいい、それでも上等、上等。ゆっくりと思い出せばいいよ」
「先生…、あの犬に会わせて下さい」
「うーん、他の患者の手前もあるが…ま、少しの時間ならいいだろう。ナースには私から言っておくよ、少しでも何か思い出す材料になればいいし。どれ、私が連れて来よう」
「いや、俺が…自分で」
「大丈夫かい?じゃ車椅子をナースに用意させよう」
そうして車椅子で裏庭にでると沙羅が待っていた。
「ワンワン!」
「あら、可愛いワンちゃんね。じゃ私は仕事があるから終わったら無線コールしてね」
「は、はい。すいません」
ナースが病院へ戻るのを確認してから。
「やったよ!沙羅さん!」
沙羅も久しぶりの対面に喜び輪廻に飛びつく。
「リン様~!よかった~大王様も心配してましたよ。無事に融合出来て何よりでした」
「まあね、意識が遠のく時はどうなる事かと思ったけど。魔界でレースするよりドキドキしたよ。でもなぁ…」
「どうかしました?」
いままでの経緯を沙羅に説明すると。
「ありゃま、身内がいたんですか?!おまえらぁー!」
横にいた死神にパンチを喰らわす。
「ウヒィ!沙羅さーま、どんなんでも、いい、言った!」
「うるさーい!この役立たず!“ボカスカ!”」
続く
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