閻魔の息子

亜坊 ひろ

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第1章【閻魔の息子・輪廻】

【閻魔の息子】17

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 越知が心配そうに裕子に言う。

 「叔母さんには何と言うんだい?せっかく苦労して入学したのに」

 「説得します、必ず了承して貰います」

 裕子の真剣さに困惑の症状を隠せない越知だった。

 「しかしなぁ~うーん、白井さんに相談してみるか」

 三人の会話に全く入り込めずだだボーっとする輪廻。

 「…。“一緒に暮らす!?知らない女の子のこと二人っきりでか~?う嬉しい~けど、やっぱまずいじゃん!正体がバレるだろー”」

 心と裏腹なのが男としての性なのか。

 「裕子さん、刑事さん、取りあえず事情はわかりました。彼も先ほど意識が戻ったばかりなので、まだ油断はできません。暫くは当院にて入院治療しますので、彼が退院するまで待っていて下さい。裕子さん、今日のところは一度帰って叔母さんに報告してからまたおいで。来週からは学校も夏休みだし、今度はゆっくりできるよ」

 医者の優しい心遣いに笑顔で答える裕子。

 「わかりました、そうします」

 「ただね、記憶がいつ戻るかがね…私にも分からないしねぇ。短くて1週間、長ければ一生って場合もあるからこればかりはどうも。彼次第だからね」

 急に振られさらに固まる輪廻。

 「え゛?。“記憶なんてハナから無いしどうすりゃいいんだよ~”」

 「そうですか…」

 医者の言葉にまた落ち込む裕子。すると越知が裕子の肩に優しく声をかける。

 「大丈夫だよ、ちゃんと治るよ裕子さん」

 「ありがとうございます。刑事さん、そして先生」

 「先生、それじゃ彼女を家まで送りますので、失礼致します。慎二君、お大事に」

 「お兄ちゃん、来週また来るからね、先生の言うことちゃんと聞いてね。バイバイ」

 「あ゛、“バイバイ~って”」

 放心状態のまま手を振り二人を見送った。

 「…。“落ち込むよな~記憶喪失のままずっといようか…そもそもあいつらが悪い…あ!ヤバっ、あいつら外にいるんじゃ?”」

 急いでベッドから飛び起き、窓ガラスを開けると、木陰に沙羅の姿が。

 「沙羅さん!おーい」

 「あんた達!もう少しましなもん、なかったの!モグモグ…」

 「ウヒ、沙羅さーま、ホント、死神、使い、あらい」

 「うぐさ~い!」

 「沙羅さんって!聞こえないのかよ~」

 更に窓から呼ぶ輪廻。

 「ウヒ?ありゃ?沙羅さーま、うえ、うえ」

 「モグモグ…ん?あれって?リン様ね。天魔人で中々だったけど、人間姿もイケメンだわ~」

 「あ、気付いた!沙羅さーん!」

続く

    
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