閻魔の息子

亜坊 ひろ

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第1章【閻魔の息子・輪廻】

【閻魔の息子】14

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 「アルバイト先の店長さん?」

 「は、はい白井と言います。慎二は、慎二はどうなんでしょう?」

 深刻な顔つきで医者がいう。

 「うーん…出来ることは全てやりましたが。 ただ…これ以上は…意識が…今夜が山だと思っていて下さい。他にご家族は?」

 「はぁ、本人は身寄りはいないと言ってたんですが、一応警察の方には…先生!不真面目でツッパってますが根はいい奴なんですよ、助けてください!先生!」

「…。落ち着きましょう店長さん」

 医者の一言に泣き崩れるかの様に膝を落とす白井。そこへ血相を変えてナースがやってきた。

 「先生!急変です!」

 病室では警報の音が響きわたり、ナース達が慌てている。そこへ医者もすぐに駆けつける。

 「血圧が安定しません!」

 「まずいぞ…、出血性のショック状態を起こしてる。酸素量増やして!昇圧剤投与!」

 「駄目です、血圧保てません!下がる一方です」

 身体が苦しそうにうごめく、しかしその動きが止まるまではさほど時間はかからなかった。

 “ピー”

 心電図の波長が無くなる。

 「フラットです」

 「カウンター用意。離れて」

 慎二の胸にカウンターショックを行う医者。

 “ドン”

 電撃で身体が弾む。

 「どうだ?」

 「駄目です。心拍再開しません」

 「もう一度」

 再度試みるも、その身体は動くことはなかった。時計を確認し、白井に医者が言う。

 「御臨終です。」

 「慎二ー!」

 亡骸に泣き崩れる白井を見つめ、その瞬間を待っていた輪廻がそこにいた。

 「見えたあいつの魂だ!今だ!」

 輪廻の魂と慎二の魂が交差する。

 「わりぃな、借りるぜ」

 「!?」

 呆気にとられる慎二の魂の尾を死神が切望の鎌で切り離す。

 「イヒ、完了」

 微動だにしなくなった慎二の身体に輪廻の魂がスッと入り込む。

 “ピクッ”

 白井をなだめ、処置を終えて医者が廊下に出ようとしたその時。

 「せ、先生!来て、下さい!」

 「どうした?」

 慌てふためいた顔でナースが言う事に更に医者も驚いた。

 「し、心機能が…回復しました」

 「なんだって?嘘だろう、今現に…」

 心電図の波長が少しずつ上がっていく。

 「血圧もだんだん正常になりつつあります。こんな事って…」

 「見る見る生気を帯びてくる…き、奇跡だ。そうだ!白井さん!白井さ~ん!」

続く


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