閻魔の息子

亜坊 ひろ

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第1章【閻魔の息子・輪廻】

【閻魔の息子】11

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 「しゅっぱーつ!」

 閻魔の号令と共に馬車隊が動き出す。

 社からやや離れた小高い丘の上に、強硬な柱を装った門が見えてきた。それが天城門。

 「輪廻、着いたぞ」

 「うん?あ、ああ。うひゃぁ~でけぇな~」

 呆気にとられる間もなく、静かに門が開く。門をくぐり暫く歩くとその奥には厳重な警備に守られた虹色に輝く穴があった

 「時間だ、輪廻。心配するな大丈夫だ」

「あ、ああ…」

 大丈夫だと言われると更に不安になるのが心情。閻魔の言葉が聞こえたのかは定かではなかった。

 「あー、沙羅聞こえるか、こっちの準備は出来た。今から輪廻がそちらへ行くぞ、手はずは良いな」

 「“はい、はーい。沙羅でーす。えーと、うーんと…何とかOKでーす“」

 「なんとかって…。頼むよ」

 「よーし、ゲート開け!照準、神の大地、日本!」

 分厚いガラス扉が衛兵によって開かれる。

 「ここからは一人で行くのだ」

 初めての体験にはあまり動揺しない輪廻も今回ばかりは勝手が違う様で、足が先に進まない。

 「くそっ…魂になったって、ビビるだろ普通は…。ええい!ままよ!」

 思いきって穴の上へ跳んだ。すると、虹色の光が輪廻の身体を包み込むとスッと消えた

 「“頑張るのだぞ輪廻…。”」

 そこへ一人の衛兵が血相を変えてやって来た。

 「大変にございます、大王様!」

 「どうした騒がしい、人が別れを惜しんでいるときに」

 「はっ、只今の情報によりますと何者かが門内に侵入したと。」

 「なんだと!何をやっているのか!早く見つけだすのだ、とりあえず衛兵!ゲートを閉め…?そ、そこにおるではないか!馬鹿者!早く閉めろ!」

 ニヤリと笑う姿は、素早くゲート内に入り、あっという間に穴の中に消えた。

「なんと言うことだ…」

「あの者…どっかで…確か輪廻様の…」

 「知っておるのか?」

 「確か…輪廻様としょっちゅう会ってたような…。天馬で出かける時に…名前までは聞いてませんが」

「…。仕方ない、まず社へ戻り輪廻が無事にたどり着いたか確認してから対策を考えよう」

「はっ」

“何を考えておるのだあの者は…。”

続く


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