4 / 29
第1章【閻魔の息子・輪廻】
【閻魔の息子】4
しおりを挟む「実は…。私の職を輪廻に譲ろうと思っていました。そしてその為に下界へと」
「なんと、下界落ちの修行をさせるというのか?」
「はい、輪廻ももう一人前、自分の進まなければならない道はわかっていると」
「ほぉ…」
初めは驚いたような顔の黄泉だったが、閻魔の動揺を直ぐに感じとった。
「他に誰か話したのか?」
「い、いいえ、ババ様以外は。」
「ふーん、そうかえ…」
暫く沈黙が続いた後、黄泉が切り出す。
「なにを考えとる、閻魔。まさか、あの女が関わっておるのか?」
「いいえ、そんな事など決してありません」
「当たり前じゃ、お前達を捨てて、下界に身を投じた女などもってのほか。人間界のどこがいいのかわしにはさっぱりわからん」
「…。いや、あれは事故で…」
「なにが事故じゃ!賄いの証言では、生身で自分から身を投げたと聞いたぞ。かばうのもいい加減にせい!」
「…」
「ま、生身だからのぅ、帰生穴(きしょうけつ)は魂だけしか通れん、生身で落ちたら最後、生身から魂だけ引き離され、天魔界と人間界の間をさまよい、運よく転生出来たとしても、今の人間界に居るなどわからんからのぅ」
「ええ…。私にも見当がつきません」
「ふむ…。幻魔にはなんと言うのじゃ」
「はあ、父上にはこの後に話そうと思っておりましたが」
「…。下界落ちに何を求める、閻魔」
閻魔の目付きが変わる。
「私もこの生業を父上から継ぎもう幾年、そろそろ輪廻にも人間の死とは何であるかを、自分の目で確かめさそうと」
「ほぅ、その考えた末が下界落ちか…。ま、お前も、幻魔のバカ同様、温室育ちだったからのぅ。輪廻の方が骨があると思っていたが、あやつもそんな歳か…。わしは反対せんよ、ただ…」
「ただ?何ですかババ様」
「人間は弱い、その弱さにあやつがどこまで耐えられるか、その弱さに打ち勝つことができれば一人前じゃて。この生業に情けは無用じゃからのぅ」
「ありがとうございます。おババ様」
「うむ、幻魔のバカにはわしから言っておく、ちょうど小遣いも無いのでな、せびってくるかのぅ」
お互いの笑顔の中にも閻魔にはやはり妻のことが気になっていた。
続く
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
日本国転生
北乃大空
SF
女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。
或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。
ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。
その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。
ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。
その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる