閻魔の息子

亜坊 ひろ

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第1章【閻魔の息子・輪廻】

【閻魔の息子】3

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カジノ内に入ると案の定、黄泉が店の者ともめていた。

 「なんじゃ~この店は!絶対イカサマじゃ~何でわしだけ勝てんのじゃ~責任者出てこ~い!」

 「お客さん!困りますって!」

 「…うげっ」

 店の者に羽交い締めにされている黄泉を見て頭に手をやるカシム。

“困ったお人ですな…。”

 カシム自身、あまり関わりたくはないものの、閻魔の命令となれば仕方なく、恐る恐る黄泉のもとへ。

 「きぃ~!離せ!離せと言うとろうに!」

 店の者に今にも噛みつきそうな勢いで。

 「黄泉様…。黄泉様、お迎えに参りました」

 「!!おぉ~!カシム~。丁度良いところにきおった~!有り金全部おいていけ、ちゃんと後で返すから」

「へ?」

 状況を把握するのにはさほど時間はかからなかった。

 「な、なんで私がいつも…。こんな仕打ちをうけるの…」

 店の者に平謝りをするカシム。

 「大王様のとこの婆さんじゃなきゃ、とっくに衛兵に突きだしてんだけどねぇ、他の客の手前もあるからちゃんと言い聞かせといてよ」

 「はぁ…申し訳ござ…?」

 「カシム~!はよ、せんか~チップがないぞ~こっちじゃ、こっち~!」

 「黄泉様ぁ~?大王様に叱られますよ~」

 やっとの思いで社内へ連れてきたのだが…。

 「クスッ…ど、どうした?カシムその顔。」

 目の周りを青くしたカシムの顔を見て閻魔が笑う。

「…ふん」

 お互い何か、膨れっ面になっていた。

 「おババ様お久しゅう。あまり無理過ぎぬよう、程々に」

 「自分の金で楽しんでおったのに、無理やり連れてきおって、なんの用じゃ!」

(後ろでカシムが暴れ、衛兵に止められいる「な、何をおっしいますぅ~!じ、自分のじゃないではないでしょ~」)

 「あー…他の者はよい、二人で話がしたい、下がっておれ」

 泣きさけぶカシムを両脇で衛兵が支え出ていった。
(「黄泉様の人でなし~!」)

 重たそうな雰囲気の中、プカプカと煙草をふかす黄泉は既に飽きているようだ。

 「身体に障りますぞババ様。」

 「ほっとけ!それよりなんじゃ、わしに話とは。」

 なかなか言い出せそうにない閻魔の口から出た言葉は。

 「実は…。息子のことなんですが」

 「ん?輪廻(りんね)がどうかしたのかえ?」

続く

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