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魔王の果実Ⅱ朽ちてゆく者【第14話】

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“バキーン!!”

 「シルドガ…くっ…ちょっとこれは…キツイかな…おばさん…油断大敵だよ…」

 ベルルの前に防御壁を張って立ちはだかるラナリュ。

 「おぬし…なんで…。“俺の足手まといにならないでよ…”」

 ベルルの脳裏にはラナリュの言葉が離れずにいたが、それとは逆のラナリュの行動に驚きを隠せなかった。

 「なんでって…おばさんに倒れられちゃ…ミハエルにどやされるだろ?…嫌なんだよね…叱られるのは。でも、これじゃ魔力がもたない…」

 連続で放たれるマドリアの攻撃。

 「ホラホラ!防御だけじゃ私は倒せないよ最初の威勢はどうした?ベルルの様な足手まといは放っておけばいいのさ!さぁ!来てみな小僧!王族の魔力はそんなものか!バストラ!」

“ダーン!ダーン!ダーン!”

 「ラナリュ!わしの事はいい!マドリアを討て!」

 「まいったな…。シルドガが破られそうだよ…。そうだ、おばさん!そのスサノオを俺に!」

 「そうか、わかった!」

 ラナリュの手に握られるスサノオ。次第にラナリュの魔力が回復する。

 「考えたな…だが次の攻撃は防ぎきれるかな…剛なる雷よ…ハァアア!」

 「いかん!ラナリュ!あれはボルトの最大呪文じゃ!」

 「おばさん…いい?マドリアが魔法を放ったら、横へ飛んで…。」

 「くらえ!“ボルティアラ!”」

“バシューン!ビリビリ!”

 「今だ!」

 すかさず左右へ分かれ飛んだ二人。しかしその行動もマドリアには分かっていた。

 「最後だ…ベルル」

“ヒュン”

 マドリアがベルルに向けて魔法を放とうとした時。ラナリュが目の前に現れる。

 「最後はあんたの方だよ…じゃあね…。“ギャラス!!”」

 ラナリュの5本の黒い爪が伸びてマドリアの目と心臓、腹部を直撃する。

“ドシュッ!”

 「ギャァアア!」

 目玉が落ち、心臓から血しぶきが飛ぶ。ガクリと崩れ倒れるマドリアの身体。

 「あやつ、やりおった!」

 一撃に倒れるマドリアに歓喜するベルル。

 「ふん…。俺たちを舐めすぎたね…あんたらしい最後?…。な、何ぃ?」

 顔から落ち、ぶら下がっていた目玉が、ラナリュの顔を見る。一度はダラリとうなだれたマドリアの身体がゆっくりと起き上がる。

 「ハハハ…。アーハッハッハ。残念だったね坊や…。勝ったと思ったかい?くらえ!“フェンリル!”」

“ガルルル!ガウ!”

 マドリアが振りかざした杖の先から牙を剥き出した狼が飛ぶ。取り付くしまも与えずラナリュの肩口を裂いた。

“ザシュッ!!”

 「ぐっぁ…。こ、これは?毒か!…身体が…。動かない…。“ドサッ”」

 倒れるラナリュにベルルが走り寄る。

 「ラナリュ!この薬草を噛むんじゃ!遅効性の毒消しじゃが、毒を抑えられる!」

 「ご、ごめんよ…おばさん…嵌めたつもりが嵌められたよ…。俺を置いて…逃げて」

 次第にマドリアの身体が再生してゆく。

 「マドリア…。おぬし…また禁術を…。自らを不死に変えるとは…。“デスアルク”か」

 「私だけではないぞ…さぁお前たち!あの二人を殺せ!」

 埠頭に横たわっていた組員たちが、ゆっくりと立ち上がりラナリュとベルルに向かってくる。

 「痛い…痛い…助けて…痛い…助けて…」

第15話へ続く


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