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魔王の果実Ⅱ朽ちてゆく者【第7話】
しおりを挟む“シャン、シャン!”
錫杖に変化させたスサノオを振りかざして見せるベルル。
「まあ…こんなもんかのう…。あやつの魔力に打ち勝つには…スサノオ…お前の力を私に貸しておくれ…。」
すると錫杖が鈍く光り輝く。
“ブーン!”
「な、なんと!?スサノオが意思を持つと?」
光景に驚くミハエル。
「馬鹿もんが!あの八首竜…ヤマタノオロチを倒したと言われる草薙の剣…。その剣の持ち主スサノオノミコトの生を宿すと言われてる魔剣スサノオ…。そんなことも知らず振り回しておったのか!」
「や…すまん…。単なる言い伝えと聞いていたが…。」
「ま、短気で単細胞…お前の様な筋肉バカに似合うように化けておったのじゃ。」
ベルルの言葉にムッとした表情のミハエル。
「な、短気!?単細胞だと!?ベルル!折角マドリアを見事仕留めたあかつきには魔王様に刑期の軽減を嘆願しようと思っていたのに…。」
「ふん、余計な情けじゃわい、だがミハエル…次の納金の遅れは勘弁して貰うぞ…。あの馬鹿女を討つとなると、それなりに時間が必要じゃ…。スサノオの魔力を借りたとて今のわしではダメじゃ…。」
魔界魔導師の中でも指折りの才能を持ったベルルが弱音を吐くなんてと改めてマドリアの凄さを感じるミハエルだった。
「そうか…。あのマドリアがそこまでとは…。」
「わが教え子の中でも、3本の指に入る魔導センスの持ち主じゃった…わしが魔界を負われる際、わしの後継者に推薦する程完成された魔女じゃった…。ただ…。」
「ただ…なんだ?」
「わしがいけなかったのかもしれん…。魔術を追及し、壁にぶつかった時、あやつに禁術の恐ろしさを言い聞かせたつもりが、逆に禁術の驚異に興味を持つ嵌めになってしまった…。禁術などに…魅了されおって…。」
「うむ…。だが今はお主にしか頼む者がおらん。ベルルよ頼む…。」
すると老人ホームの焼け跡を見ていたメヒストがあることに気づく。
「ベル様、あのマドリアって魔女、禁術を探してたんですよね?じゃなんでここに狙いを着けたんでしょうか?」
メヒストの思いがけない言葉に。
「それじゃ!あやつの狙いデロッサの壺はここにあるわけではない。なのに何故、ヤクザ風情に手を借りてまで、ここを襲撃しなければならなかったのか…。」
メヒストが更に不思議そうに。
「ベル様。そもそもデロッサの壺ってなんですか?」
するとベルルの表情に険しさが増す。
「メヒスト、ミハエル、お主らも知らん古に封印された魔法の壺じゃ…。デロッサの壺とは暗黒魔界の魔神…。ロキ・デロッサが封印され、この人間界に目に見えない壺として葬られたと…。」
「ま、魔神ロキ!?名前こそ聞いたことがあるぞ…。それこそ神話の世界の存在ではないのか?そんな魔神など人間界で復活したら…。」
「無じゃ…。地獄など生温い…。なにも残らん…。人間など直ぐに塵にされよう…。その魔神の召喚が禁術と言うわけじゃ。」
あまりの恐ろしさにおののくメヒスト。
「ひぃいい…。怖い…。」
“ガサッ、ガサッ“
「ん?なんの音じゃ?」
焼け跡の瓦礫の方から動く気配が。
第8話へ続く
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