神楽鈴の巫女

ゆずさくら

文字の大きさ
50 / 73
磁器人形

07

しおりを挟む
 そこには一定の緯度、経度ごとに細い線で描かれた球が表示されており、その立体図の中に小さいドットが表示されていた。
 ドットは広がったり、中心部に集まったりしている。
「我々にはこう見えているのですが……」
 さっきの霊の動きと一致している。分散して、どこにも行けないまままた中心付近に戻ってくる。
 晶紀は窓から球体の中心を眺めた。
 そしてもう一度その表示と見比べる。
「すこし時間の差がありますけど、同じ動きをしていますよ」
「そうですか。非常にうれしいです」
 黒いスーツの『家の者』はサングラスを外して、もう一つのディスプレイを指差した。
 その画面の方が、時間差が少なく、リアルタイムに表現されているように思えた。晶紀は言った。
「これは?」
「これは、別の測定方法を試しているところなんです」
「こっちの方がリアルタイムに表示されているようです」
 黒いスーツの男が、人差し指をピンと立てて笑顔になった。
「そうでしょう? そうなんです」
 男は喜んで話し始めたが、晶紀には何を言っているのか理解出来なかった。
 結局はこの大きな球体で測定している内容を、大雑把な把握の方法で、置き換えることが出来て大雑把な把握方法の方であれば、処理スピードが速くなるということらしい。
「これは今回のような強い霊の場合しか使えないのですが、リアルタイムに知りたい場合や、パソコンの能力が低い場合なんかでも表示が可能です」
「じゃ、こんなのでも?」
 そう言って晶紀はスマフォを取り出した。
「えっ?」
「例えば、アンテナみたいなのをここにつけて」
「あ、えっと…… 実はスマフォって特定の計算は非常に優れていて…… そうですね…… 正確な値が知りたいわけではないのですから……」
 黒いスーツの男はテーブルに合った紙を裏返して、簡単な図を描いて計算している。
「そうですね、もしかしたら」
 白衣を着た方の研究員とボソボソと話し合っている。
「そうだな。そのアイデアで作ってみようよ」
「じゃあ、さっそく試作に取りかかります」
 晶紀があっけに取られていると、黒いスーツの男は部屋を出て行った。
 もしかして、もう私は用済みでは…… などと考えながら、黒いスーツの男が出て行った方を見つめていると、替わりに、白衣を着た男が晶紀の前に来た。
「天摩様。今日は、天摩様の測定をさせてもらってもよろしいでしょうか」
「測定?」
「この球体の中に降りていただいて、霊力を強く出したり弱く出したりして欲しいんです」
「……」
 強くしたり、弱くしたり…… 晶紀にはそういう感覚がなかった。必要な力が強いのか、弱いのかが分からないのだ。確かに、体を持ち上げようと言う時は疲れるから強いのだろう、ということは分かる。
「わかりました。いいですよ。何か軽いものと、重いものを貸してください。それを持ち上げたりする時、霊力でアシストすれば霊力が出ると思いますので」
 白衣を着た男は、部屋の中をきょろきょろと見回した。
 そして机の下からおもむろにオフホワイトの機械を持ってきた。
「重い方はこれで、軽いのは例えばこの紙を丸めたものにしましょうか」
 白衣を来た男は、はかりの上に機械を乗せてスマフォに記録した。次に紙を丸めて乗せ、同じように記録した。
「じゃあ、ちょっと下まで行きましょうか」
 機械を両手で持ち上げ、その上に紙を丸めたものを置いて、白衣の男が歩きだした。晶紀はその後をついていく。
 球状の空間は何か所かに階段が作って合って、下に降りれるようになっていた。
 白衣の男について、その階段を使って下に降りていく。
 晶紀は歩きながら、この空間の中心にいる霊をみていた。拡散して、再び中央に集まってくる。霊は同じことをずっと続けているようだった。
「この霊はいつからこの状態なんですか?」
 晶紀は少し見上げるようにしていたが、白衣の男は足元を見ながら一歩一歩、ゆっくり歩いていた。
「三日前からこの運動を繰り返してますね。どうかしましたか?」
 ようやく球形をした空間の底にあたる部分に降りてきた。
 男は機械と紙を下におろして、スマフォでなにか確認していた。
 晶紀は男にたずねた。
「この実験室は霊が暴走した時はどうするのでしょうか?」
「霊が暴走? どういう状態のことを『暴走』と呼ぶのかが分かりませんが、想定外の自体が発生した場合はこの地下全体を破棄することになると思います」
 晶紀は頭上の空間で外に出ようとバラバラになる霊力とどこにも行けずに再び集まってくる霊の、繰り返す動きを見上げている。
「例えばここにいる霊ですが」
 晶紀は指で上をさすが、男はその方向を向かない。見えないことはわかりきっているからだろう。
「はい」
「今はまだ、集まったり散らばったりを繰り返しているだけですが、外から強い霊力を引き寄せるようになったら」
「さっき、ここは霊を閉じ込めているって。つまり外からも入れないっていうことでしょう?」
「……」
 いや、白衣の男の人が言う通りだ。しかし、本当はどうなんだろう。ここで何度もこの収縮をしていると、そのうちに強い霊を引き込んでしまったり、この中で力を蓄えたりしないとは限らないのだが。晶紀は頭上で繰り返している霊から感じる『嫌な予感』を説明できなかった。
「とにかく、測定できないほど強くなる前に警報がでるようにするとか、なにか対策を」
「室長に掛け合ってみます」
「お願いします」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...