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第二章 二節。
第63話 砂漠の元公爵令息。
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「状況を説明する。」
「誰に言ってんだよ。シリル!」
つまり、状況は最悪の一歩手前。命あっての物種だ。
要は、盗賊団『砂漠の赤髭団』に囚われた状況である。生きて居るのには理由がある。生きる理由に意味を求めるな。とか、生きていたって良いのですよ。なんてお話しでは無く。
あのオアシスに盗賊団の間者が居たのだ。「王太子を探す三人組。」に関する情報が盗賊団『砂漠の赤髭』に筒抜けだったからだ。
では何故、そんな情報で?――――――何故なら、
「ぼ、僕が今の『砂漠の赤髭団』のスポンサー様だから、なのさー。うへへぇー。」
と、言う訳なのである。
詰まるところ、最悪なのである。
「あのう、差し支え無ければ、ですが、この匂いって?」
「ああ、これか。『火の水』ってな。噂で、知ってんだろ?これな、袋に入れて火ぃ点けて商隊に投げ込むんだ。するとな……」
「…火ぃ点いてよぉ、燃えんだよ。人がぁー。ひゃひゃひゃっ。」
(こんなところに『火の水』があっただなんて!)
「と、ところで、お前ら。何故僕を探して、追っているんだ?」
「それはぁーーー。賞金首?」
「と、頭領ぉー。スポンサー様って賞金首。だってさぁー!ギャハハハハァー!」
「オレ達も賞金首?だもんなぁー!うぎゃぎゃー!」
「んでよ。スポンサー様は幾らなんだい?このオレ、赤髭様は、なんと!『金貨一千枚』だぁぜぇー!」
盗賊砂漠の赤髭団の頭領は自慢気に言うのだが、
「ちょっと、縄をほどいて下さいね。ええ、決して逃げません。っと言いますか、逃げられない。そうでしょう?」
一瞬目を見合わせた盗賊達。だったが、「まあ逃げれねーしよぉ」っと言う感じで縄を緩めるのであった。
「ここに……」と、ベルナールが懐から出した巾着袋を赤髭に投げ渡す。
「金貨200枚。前金、………手付金です。それと――――」
ベルナールの投げた紙、カラー印刷の手配書が散らばる。
『~この顔にピーンときたら~
生死問わず!
エカルラトゥ王国、元王太子ダミアン。
この者を捕らえた者に金一封を与える。
皇帝ミセリコルディア一世(白ユリマーク)
帝国金貨100,000枚。尚、生きていた場合は、要相談。』
空気の変わる瞬間をここに居た誰しもが体感出来たのである。
◇◇◇
(おい、)(なんだよぉ。)(どぉする?)(どう、って…)「だって、一、十、百、千…………十万。…!」(じゅ、10まん!)「そう10まんまい」「金貨十万枚!」「金貨10万枚!」「10万枚!」10万枚!10万枚!10万枚!10万枚!
「「「「「金貨100,000枚が居るぅぅぅぅぅーーーー!!!!」」」」」
――――うおおおおおぉおぉぉぉーーー!!!賞金首ぃぃぃーーしょーきんくびはぁぁぁーーーーオレンダァァァーーーー!!!
「さあさ、逃げましょー?逃げましょー!」
「ああ、で、でも (元)ご主人。ご主人の巾着袋がぁぁぁーー!」
「んな細けぇーこたぁーいいんだよー!兎に角逃げる!」
混乱に乗じ外へ出てみると、そこは岩山で、直ぐ近くにオアシスが見えた。わーどぷろへっさーでは無い。
「分かり安い場所だな。」
「取り敢えず、オアシスで……。」
「いいや、オアシスは避けるべきだ。」
「ジャン=ルーさん、何故?」
「盗賊の仲間が居る可能性が高い。寧ろ、さっきの襲われていたキャラバン方向だ。」
「ええーと?」
「死体荒らしみたいで、気分のいいことじゃ無いが、生き残った駱駝、若しくは遺留品で使える物を探す。」
◇◇◇
一頭の駱駝と食糧と少しの水。遺留物の中に身元の分かる物を探して前に立ち寄ったオアシスへと向かった。
運の良いことに、小規模ではあるが、商隊に拾って貰えた三人は、エカルラトゥ王国方面では無く、東の国へ向かうこととなった。
途中、(逆戻りになったのだから、当然ではあるが)あの岩山近くのオアシスに立ち寄った。
商隊にお礼を、礼金としてベルナールは金貨を渡して、別れた。
オアシスで駱駝を三頭買って、その日はそこで夜営をしたのであった。
「なあ、(元)主人よ。何故、お金がまだあるんだ?」
「ああ、それは私も気になってました。盗賊に金貨二百枚も渡したではないですか!」
「あんな物、『見せ金』です。前に造幣所で、鉛を使って作ったんです。試験的に……。まぁ、『見せ金』って偽物の上に本物置くんですけど、僕の場合、上の金貨も黄銅で作ったんで……」
「それ、犯罪じゃね?」
※犯罪です!
「それで、旦那方これからどーするんです?」
「ジャン=ルーさんさえよろしければ、僕、陛下と合流したいんです。」
「と、言うと?」
「このまま東へ行って、その国に、おそらく暫く留まることになるのですが、如何です?」
「私は構いません。が、」
「ああ、俺ッスか。ご主人と一緒でもいいかなーって………」
「やはり、ベルナール様は帝国の方なんですね。」
「―――あ、いえ違うんです。僕の髪色、」
「赤茶色ですが、………あ、帝国人では無く、湾岸、それともエカルラトゥ?では無いですか。」
「いいえ、赤系統の髪色って、湾岸州と、もう一つ、リヴィエール王国なんですよね。黒、焦げ茶色とか金髪って帝国人って感じですよね。僕とシリルもですが、宰相のカロリーヌ様や補佐官のアリエル様ってやっぱリヴィエール人だなって思うんですよ。でもね。『惚れた者の負け』とか言いますでしょう。僕はすっかりミセリ嬢の信奉者なんですよね。あの剣技、あの頭脳。カリスマ!全てですよ!」
「益々、興味が湧きますね。」
「坊っちゃんが未だかつて無い程、語れるご仁、とは?」
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