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第二章 二節。
第56話 竜帝聖女白姫の後見人。
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◇◇◇
当時、簒奪皇帝のミセリコルディアは、13歳であったし、元々、ソレイユ公爵家の正当な次代様なのであった。
降嫁していたとは言え実母であったフェリスは、先々代の第一皇女で、クレマン五世の妹君。皇妹だ。
そう言う意味で、皇位簒奪者であるミセリコルディアの身分的に地位としては然して問題は無い。
そのソレイユ公は若干16歳の隣国の第一王女であるカロリーヌ殿下をミセリコルディアが公爵籍を抜ける前に養子とし、公爵位を継がせた。
他、ミセリコルディアの側近は、プリュイ侯爵家二女アリエル18歳とブレ公爵家嫡男で成人前のベルナールであったし、シードル伯爵家二女のローズ=マリーである。と、何れも帝国国外の勢力で且つ只の子女。
他は、家格は伯爵家としては高いが、旧帝国に於いて力の無い、ル・ソワレ伯爵を懇意にしている。それだけ………と言う現状であった。
つまり、帝国に於いて、協力的で強力な後ろ楯が、殆ど無い状態であるのだ。
まあ、ぶっちゃけ物理的な力は、竜軍団を使役するミセリコルディアに逆らえる有力貴族など皆無であるのだが………。
◇◇◇
「おお、綺麗になって。覚えているかい?私だよぉ。」
あの皇城を竜達の息でぶっ潰した神月の1日。
主だった貴族家当主を仮の謁見の間、宝物庫と化した丘近くの倉庫にて集め、次期皇帝………、事実上の支配者である。とミセリコルディアは宣言した。
その時、真っ先に挨拶を交わしたのが、『サジェスドゥクッワー公爵』………以前五歳のミセリを可愛がってくれていた先代公爵であった。
サジェスドゥクッワー公爵領は帝国の最東、ソレイユ領の東にあり、地図上では亜大陸の東側である。
地図上で見ると恰かも辺境の地、隣国に接する国境領である。
と言うより併吞した国、サジェス王国であった。そのサジェス家に先々代の皇姉が降嫁、前公爵妃となったと言う経緯だ。
つまり挨拶を交わしたサジェスドゥクッワー前公爵はミセリコルディアの大叔父であるのだ。
外様公爵家で皇家に近しい公爵と懇意である。
ソレイユ家意外の二つの公爵家には良い牽制になったようだ。
そんなことのあった二年後、16歳のミセリコルディアは戴冠式を行った。
◇◇◇
「それでね、ミセリちゃん。私も全面的に支援したいんだ。何がいるのかな?」
「大叔父様、人夫はお貸し出来ましょうか?」
式後のパーティーで、そう言うサジェスドゥクッワー前公爵。
それはそうなのだ。教国へ鉄道が延びる。と言う発表から1ヶ月弱、東部方面『鉄道計画』に、自領の北部の都市名があったのだ。
列車が乗り入れる。と言うのは、都市間貿易が楽に盛んに出来るようになるのだ。しかも他領地に先駆けるのである。
全面協力前のめりです。
「それと、これが我が息子、現公爵アデラールだ。」
「ミセリ…皇帝に於てはご健勝のこととお喜び申し上げます。ってか、すっかり美人さんになっちゃってー!アデルにぃには嬉しいよ。ああ、もっと早くに再開出来て居たなら、お嫁さんに僕が貰いたかったよ。」
「だ、ダメッス………ダメなのですわ。公爵様。」
「おや君は……お美しいお嬢様、せめてお名前を。」
「これは失礼致しました。コルネリウスが娘アデルハイトと申します。不躾ながら、公爵様。ミセリコルディア陛下未来の皇配はあたくしの父にございます。」
「あっはっはは。別に娶らないよ、ミセリちゃんを!だって僕は妻帯者だしぃ。」
クツクツと笑う公爵アデラールであった。のだが、アーデは確信する。「こいつ間男だ。」と………。
「その、君のお父上は何処に居るのかな?」
「あたくしの家は貴族ではありません。ですから父はこの場には居ないのです。」
「え?じゃあ君はミセリとは?その失礼ですが、関係は?」
「あたしは便宜上、準女男爵位。ミセリコルディアの側近で侍女。兼長命種族調整女官です。父はブレ……エスカリエ学園で武術の講師をしております。」
「それは興味あるね。で、父君は、剣術の師範?」
「いいえ、剣術と槍術、投擲術、弓術、棒術、武術全般です。と、調理と聖霊術。」
「随分と多彩な父君だね?ん?長命種、アデルハイト嬢はエルフ。なのかい?」
「そうですよ。」
「そうなのか。。。ああ、あれは!赤バラ様!!」
と、アデラールは小走りにカロリーヌに寄って行った。
「前公爵様ぁー、ご子息節操無いスね?」
「あっはっはぁー。まぁ私の子だからねっ!?」
片目をパチンッと閉じてみせる前公爵。
「そう言えば、アデルハイト嬢、でしたかな?」
「はい、コルネリウスの子アデルハイトでっす。以後お見知り置きを……」
「お美しいですなぁー。ミセリコルディア陛下の周りには美女がいっぱいです!んんータンポポっぽい、ですなぁー。ミセリ陛下、ミセリ陛下。私の領地への機関車を『輝タンポポ号』でお願い致したく思うのです。」
「ですが、前公爵、黄色では無く、『輝』………輝く、でよろしいのですか?」
「はい。アーデ嬢にぴったりではありませんかっ!輝くタンポポ。素晴らしい!『輝・タンポポ号』とでも命名させていただくっ!」
一人盛り上がるサジェストィクッワト前公爵であったのだが、鉄道東部方面線は、彼の『輝・タンポポ号』計画で本格始動してしまうのであった。
計画は二ヵ年。山あり谷ありの道では無いことは幸いであった。
程なく、鉄道は完成し、運行が始まろうとしていた。
ミセリコルディア17歳の誕生日迄半年のことである。
◇◇◇
クロエは、私と同じ修道服を着ている。黒の髪の可愛い少女だ。瞳はミセリと同じ翠玉である。
毎朝の礼拝にも慣れ、朝食後は読み書きを覚え、礼儀作法を習い、ダンスのレッスンを行うと言う生活だ。
「辛くは無いか?」と尋ねると、「わたし、ミセリ様のようになりたいの。だから、がんばる!」と何時も言うのだ。
「それでも、無理だけはダメ。」と言ってある。
そんなある日、サジェスドゥクッワー公爵家がクロエを養女にしたいと申し出た。
クロエの実家である市場の南端にある食堂、『黒パンとチーズ亭』に今日は顔を出している。
兎に角、恐縮し捲りで、話しが進まず。本心を図りかねるのである。
「クロエは、どうしたい?」
「わたし、ミセリ様とおんなじにお貴族様になって、完全無敵、常勝無敗の魔術師ヤン・ウェンr………。お姫様に成る野望があるのです!ですので、このお話し、願ったり叶ったり、なのですわっ!」
五歳児クロエ、君を変えたのは一体?
そして、クロエは名を、『クロエ・ノエミ・ド・サジェスドゥクッワー』公爵家の令嬢。つまり、サジェスドゥクッワー公国の公女、事実上のお姫様に成るのである。
ところで、アーデであるのだが、どうやらミセリの侍女であったようだ。
当時、簒奪皇帝のミセリコルディアは、13歳であったし、元々、ソレイユ公爵家の正当な次代様なのであった。
降嫁していたとは言え実母であったフェリスは、先々代の第一皇女で、クレマン五世の妹君。皇妹だ。
そう言う意味で、皇位簒奪者であるミセリコルディアの身分的に地位としては然して問題は無い。
そのソレイユ公は若干16歳の隣国の第一王女であるカロリーヌ殿下をミセリコルディアが公爵籍を抜ける前に養子とし、公爵位を継がせた。
他、ミセリコルディアの側近は、プリュイ侯爵家二女アリエル18歳とブレ公爵家嫡男で成人前のベルナールであったし、シードル伯爵家二女のローズ=マリーである。と、何れも帝国国外の勢力で且つ只の子女。
他は、家格は伯爵家としては高いが、旧帝国に於いて力の無い、ル・ソワレ伯爵を懇意にしている。それだけ………と言う現状であった。
つまり、帝国に於いて、協力的で強力な後ろ楯が、殆ど無い状態であるのだ。
まあ、ぶっちゃけ物理的な力は、竜軍団を使役するミセリコルディアに逆らえる有力貴族など皆無であるのだが………。
◇◇◇
「おお、綺麗になって。覚えているかい?私だよぉ。」
あの皇城を竜達の息でぶっ潰した神月の1日。
主だった貴族家当主を仮の謁見の間、宝物庫と化した丘近くの倉庫にて集め、次期皇帝………、事実上の支配者である。とミセリコルディアは宣言した。
その時、真っ先に挨拶を交わしたのが、『サジェスドゥクッワー公爵』………以前五歳のミセリを可愛がってくれていた先代公爵であった。
サジェスドゥクッワー公爵領は帝国の最東、ソレイユ領の東にあり、地図上では亜大陸の東側である。
地図上で見ると恰かも辺境の地、隣国に接する国境領である。
と言うより併吞した国、サジェス王国であった。そのサジェス家に先々代の皇姉が降嫁、前公爵妃となったと言う経緯だ。
つまり挨拶を交わしたサジェスドゥクッワー前公爵はミセリコルディアの大叔父であるのだ。
外様公爵家で皇家に近しい公爵と懇意である。
ソレイユ家意外の二つの公爵家には良い牽制になったようだ。
そんなことのあった二年後、16歳のミセリコルディアは戴冠式を行った。
◇◇◇
「それでね、ミセリちゃん。私も全面的に支援したいんだ。何がいるのかな?」
「大叔父様、人夫はお貸し出来ましょうか?」
式後のパーティーで、そう言うサジェスドゥクッワー前公爵。
それはそうなのだ。教国へ鉄道が延びる。と言う発表から1ヶ月弱、東部方面『鉄道計画』に、自領の北部の都市名があったのだ。
列車が乗り入れる。と言うのは、都市間貿易が楽に盛んに出来るようになるのだ。しかも他領地に先駆けるのである。
全面協力前のめりです。
「それと、これが我が息子、現公爵アデラールだ。」
「ミセリ…皇帝に於てはご健勝のこととお喜び申し上げます。ってか、すっかり美人さんになっちゃってー!アデルにぃには嬉しいよ。ああ、もっと早くに再開出来て居たなら、お嫁さんに僕が貰いたかったよ。」
「だ、ダメッス………ダメなのですわ。公爵様。」
「おや君は……お美しいお嬢様、せめてお名前を。」
「これは失礼致しました。コルネリウスが娘アデルハイトと申します。不躾ながら、公爵様。ミセリコルディア陛下未来の皇配はあたくしの父にございます。」
「あっはっはは。別に娶らないよ、ミセリちゃんを!だって僕は妻帯者だしぃ。」
クツクツと笑う公爵アデラールであった。のだが、アーデは確信する。「こいつ間男だ。」と………。
「その、君のお父上は何処に居るのかな?」
「あたくしの家は貴族ではありません。ですから父はこの場には居ないのです。」
「え?じゃあ君はミセリとは?その失礼ですが、関係は?」
「あたしは便宜上、準女男爵位。ミセリコルディアの側近で侍女。兼長命種族調整女官です。父はブレ……エスカリエ学園で武術の講師をしております。」
「それは興味あるね。で、父君は、剣術の師範?」
「いいえ、剣術と槍術、投擲術、弓術、棒術、武術全般です。と、調理と聖霊術。」
「随分と多彩な父君だね?ん?長命種、アデルハイト嬢はエルフ。なのかい?」
「そうですよ。」
「そうなのか。。。ああ、あれは!赤バラ様!!」
と、アデラールは小走りにカロリーヌに寄って行った。
「前公爵様ぁー、ご子息節操無いスね?」
「あっはっはぁー。まぁ私の子だからねっ!?」
片目をパチンッと閉じてみせる前公爵。
「そう言えば、アデルハイト嬢、でしたかな?」
「はい、コルネリウスの子アデルハイトでっす。以後お見知り置きを……」
「お美しいですなぁー。ミセリコルディア陛下の周りには美女がいっぱいです!んんータンポポっぽい、ですなぁー。ミセリ陛下、ミセリ陛下。私の領地への機関車を『輝タンポポ号』でお願い致したく思うのです。」
「ですが、前公爵、黄色では無く、『輝』………輝く、でよろしいのですか?」
「はい。アーデ嬢にぴったりではありませんかっ!輝くタンポポ。素晴らしい!『輝・タンポポ号』とでも命名させていただくっ!」
一人盛り上がるサジェストィクッワト前公爵であったのだが、鉄道東部方面線は、彼の『輝・タンポポ号』計画で本格始動してしまうのであった。
計画は二ヵ年。山あり谷ありの道では無いことは幸いであった。
程なく、鉄道は完成し、運行が始まろうとしていた。
ミセリコルディア17歳の誕生日迄半年のことである。
◇◇◇
クロエは、私と同じ修道服を着ている。黒の髪の可愛い少女だ。瞳はミセリと同じ翠玉である。
毎朝の礼拝にも慣れ、朝食後は読み書きを覚え、礼儀作法を習い、ダンスのレッスンを行うと言う生活だ。
「辛くは無いか?」と尋ねると、「わたし、ミセリ様のようになりたいの。だから、がんばる!」と何時も言うのだ。
「それでも、無理だけはダメ。」と言ってある。
そんなある日、サジェスドゥクッワー公爵家がクロエを養女にしたいと申し出た。
クロエの実家である市場の南端にある食堂、『黒パンとチーズ亭』に今日は顔を出している。
兎に角、恐縮し捲りで、話しが進まず。本心を図りかねるのである。
「クロエは、どうしたい?」
「わたし、ミセリ様とおんなじにお貴族様になって、完全無敵、常勝無敗の魔術師ヤン・ウェンr………。お姫様に成る野望があるのです!ですので、このお話し、願ったり叶ったり、なのですわっ!」
五歳児クロエ、君を変えたのは一体?
そして、クロエは名を、『クロエ・ノエミ・ド・サジェスドゥクッワー』公爵家の令嬢。つまり、サジェスドゥクッワー公国の公女、事実上のお姫様に成るのである。
ところで、アーデであるのだが、どうやらミセリの侍女であったようだ。
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