27 / 87
第一章 二節。
第27話 盗賊と聖女白姫。
しおりを挟む◇◇◇
国境を越え、半日過ぎた頃、嫌な気配に包まれた。
少し早く気付いたアーデ。流石エルフ。なのかどうかは分からないが、次いでリコリー、ミリディアが気が付く。
「前から、複数、後ろも同じね。囲まれたわ。」
「それにしちゃー落ち着いてるなぁミリディアちゃんは、、、」
「君、危ないから、馬車に入って!」
丁稚の男の子は、盗賊とか興味があるのか、身を乗り出して居た。
そうすると、標的になってしまうのが、世の常……、であるかのように、矢が少年の肩から背中に抜けた。
「近い!後ろ何人?」
「10程、って言ってまーす!」
とマリー。
「前は、20位?かしら。」
「えーとぉ、アーデがあんまり、殺すなって言ってます。『犯罪奴隷』とかで、高く売れるってさぁー!」
「そんな端金要りませんわ。先ず、わたしが広域魔法で、後は、マリーとわたしで、物理ですわ。」
「後ろは平気って言ってるッスわあー。」
「丁度良い具合の雨雲ですわ。行きます。落ちろ!!!」
――――ドオオオオオオォォォンン。。。
20人の盗賊で、立って居るものは居なかった。一応、安否確認をすると、四名が、生き残って居た。
後ろの10名もアーデの矢を受けた四名は残って居たが、カロンの剣の錆となった六名は、冥府へと誘ったのである。
流石、冥府の渡し守カロン。
「つか、何なんッスかリーダー!殺したらお金貰え無いんスよう。もう!」
アーデが怒っている。
(アーデって、エルフなのに凄く俗物よね?絵本の中のエルフ様のイメージがドンドン崩れて行くの。)
「で、こいつ等のアジトに案内して貰うッスよ?」
「何故?ですの。」
「うわああー王女さんあんたもかい!あのね。盗賊の持ち物は持ち主が分からない場合。冒険者の取り分になるんス。ああ、王女って言っちゃいました。聴こえてなースかねー。」
「そーなんだぜ?あたい等の物さっ!」
「……そうでしたの?」
「アリエルさんもかよー!じゃまあ案内たのまー。」
アジトへは一刻以上掛けて行った。驚いたのは、他所の村か町から連れ去られて居た女性、10歳位の女の子まで居たのだ。
皆、慰み物にされていたのであろう。
「……酷い。」
「こう言うのが我々庶民の隣合わせであるんスよ。これが、日常なんです。姫さんの知らない世界でしょ?」
何ともやるせ無い。そう言うミリディアは、今まで何を見て来たのだろうか?
そんなことを考えながら、女の子を含む女性6人を保護し、殺した盗賊を土に埋めた。生き残りの盗賊を数珠繋ぎで馬車で引き連れ、マントの町に入ったのは、翌日の昼食前であった。
◇◇◇
マントの町は、山合にあるそれ程規模の大きな町では無かった。
だけど、小さな冒険者ギルドもあったし、慎ましやかな市場もあった。
町の警吏に盗賊八人を引き渡すと、「2~3日で、『犯罪奴隷』として、奴隷商に引き渡すので、お金はその時に、」と言われた。
同じように女性達も警吏に委ね、警吏の詰所を後にしようとすると、行方不明者数名の懸賞金がある。と言う。金貨五枚貰えた。
ギルドで、五日分の護衛料金、銀貨20枚を受け取り、依頼の完遂の判子を貰う。
アーデは階位を上げ、『赤』になった。
プワロ商会の丁稚君は、「コッソリ」ミリディアが傷を治した。
矢傷だったが矢じりなどは体内に残らず、だったから、コッソリ治せたのだ。
因みに、流行っていた風邪は下火になっていた。
そんな感じに2~3日の休日だ。
アーデは、文字を知らない。勉強する機会はあったのだと言う。それよりリュートを奏でたり、森で狩りをした方が楽しくて、勉強を疎かにした。「てへ?」と舌をだすのだった。
なので、カロンもアリエルもマリーも挙ってお勉強させられるアーデであった。
ミリディアは、オスカーに会っていた。
「改めて、お礼を言わせて欲しい。ジャン、丁稚の子だが、の矢傷を治したんだろ?それと、あんな大勢の盗賊、普通なら、降参して、荷物や金全て差し出すんだ。そう言う、暗黙のルールになってる。でも、今回は、荷物も人死にも無く、商売が出来る。
どうだろう。ウチの専属にならないか?」
「結論から言います。それは無理ですの。わたくしには、目的があるのですわ。」
「目的に俺等の力は使えるかい?」
「殆ど使え無い。と思います。」
「その目的はなんだい?」
ニッコリと微笑んだミリディアは、オスカーの顔を見て言うのであった。
「復讐ですわ。」
それからの三日間午前中は、アーデのお勉強。午後は、鍛練したり、買い物したり。
そんなある日、アーデが言うのだ。
「ミリディアちゃんの『癒し』凄い力あるッス。あたし、解るんスケド、右腕治せるッポイッスよ?」
ミリディアにとって朗報。僥倖である。腕が生えるの?何か希望が涌き出て来る。
(そうね、義手のメンテ出来ないし、腕生やそうかしら?)
だが、問題があった。毎日少しづつ、になるのだそうだ。
ほんの少しの希望が、潰えてはいないが、(いろいろ忙がしいのが終わったら生やしましょう。)と言う結論に至るのであった。
だが、悲しいかな義手が早くも壊れることになるのだ。
三日後の昼に「奴隷商に盗賊が売れた。」と言う知らせが、ミリディア達の泊まる宿にあった。
金貨四枚と小金貨六枚を受け取って「ホクホク」なアーデである。
なんと言う俗物っぷりか!
なんと言うか、ミリディアのエルフ像を破壊し捲るアデルハイトである。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
69
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる