白姫さまの征服譚。

潤ナナ

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第一章 二節。

第27話 盗賊と聖女白姫。

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◇◇◇

 国境を越え、半日過ぎた頃、嫌な気配に包まれた。
 少し早く気付いたアーデ。流石エルフ。なのかどうかは分からないが、次いでリコリー、ミリディアが気が付く。

「前から、複数、後ろも同じね。囲まれたわ。」
「それにしちゃー落ち着いてるなぁミリディアちゃんは、、、」

「君、危ないから、馬車に入って!」
 丁稚の男の子は、盗賊とか興味があるのか、身を乗り出して居た。
 そうすると、標的になってしまうのが、世の常……、であるかのように、矢が少年の肩から背中に抜けた。

「近い!後ろ何人?」
「10程、って言ってまーす!」
 とマリー。

「前は、20位?かしら。」
「えーとぉ、アーデがあんまり、殺すなって言ってます。『犯罪奴隷』とかで、高く売れるってさぁー!」
「そんな端金要りませんわ。先ず、わたしが広域魔法で、後は、マリーとわたしで、物理ですわ。」
「後ろは平気って言ってるッスわあー。」

「丁度良い具合の雨雲ですわ。行きます。落ちろ!!!」
――――ドオオオオオオォォォンン。。。
 20人の盗賊で、立って居るものは居なかった。一応、安否確認をすると、四名が、生き残って居た。
 後ろの10名もアーデの矢を受けた四名は残って居たが、カロンの剣の錆となった六名は、冥府へと誘ったのである。
 流石、冥府の渡し守カロン。
「つか、何なんッスかリーダー!殺したらお金貰え無いんスよう。もう!」
 アーデが怒っている。

(アーデって、エルフなのに凄く俗物よね?絵本の中のエルフ様のイメージがドンドン崩れて行くの。)
「で、こいつ等のアジトに案内して貰うッスよ?」
「何故?ですの。」
「うわああー王女さんあんたもかい!あのね。盗賊の持ち物は持ち主が分からない場合。冒険者の取り分になるんス。ああ、王女って言っちゃいました。聴こえてなースかねー。」
「そーなんだぜ?あたい等の物さっ!」
「……そうでしたの?」

「アリエルさんもかよー!じゃまあ案内たのまー。」
 アジトへは一刻以上掛けて行った。驚いたのは、他所の村か町から連れ去られて居た女性、10歳位の女の子まで居たのだ。
 皆、慰み物にされていたのであろう。

「……酷い。」
「こう言うのが我々庶民の隣合わせであるんスよ。これが、日常なんです。姫さんの知らない世界でしょ?」
 何ともやるせ無い。そう言うミリディアは、今まで何を見て来たのだろうか?
 そんなことを考えながら、女の子を含む女性6人を保護し、殺した盗賊を土に埋めた。生き残りの盗賊を数珠繋ぎで馬車で引き連れ、マントの町に入ったのは、翌日の昼食前であった。


◇◇◇

 マントの町は、山合にあるそれ程規模の大きな町では無かった。
 だけど、小さな冒険者ギルドもあったし、慎ましやかな市場マルシェもあった。

 町の警吏に盗賊八人を引き渡すと、「2~3日で、『犯罪奴隷』として、奴隷商に引き渡すので、お金はその時に、」と言われた。
 同じように女性達も警吏に委ね、警吏の詰所を後にしようとすると、行方不明者数名の懸賞金がある。と言う。金貨五枚貰えた。

 ギルドで、五日分の護衛料金、銀貨20枚を受け取り、依頼の完遂の判子を貰う。
 アーデは階位ランクを上げ、『ギュールズ』になった。

 プワロ商会の丁稚君は、「コッソリ」ミリディアが傷を治した。
 矢傷だったが矢じりなどは体内に残らず、だったから、コッソリ治せたのだ。
 因みに、流行っていた風邪は下火になっていた。

 そんな感じに2~3日の休日だ。
 アーデは、文字を知らない。勉強する機会はあったのだと言う。それよりリュートを奏でたり、森で狩りをした方が楽しくて、勉強を疎かにした。「てへ?」と舌をだすのだった。
 なので、カロンもアリエルもマリーも挙ってお勉強させられるアーデであった。

 ミリディアは、オスカーに会っていた。

「改めて、お礼を言わせて欲しい。ジャン、丁稚の子だが、の矢傷を治したんだろ?それと、あんな大勢の盗賊、普通なら、降参して、荷物や金全て差し出すんだ。そう言う、暗黙のルールになってる。でも、今回は、荷物も人死にも無く、商売が出来る。
 どうだろう。ウチの専属にならないか?」

「結論から言います。それは無理ですの。わたくしには、目的があるのですわ。」
「目的に俺等の力は使えるかい?」
「殆ど使え無い。と思います。」
「その目的はなんだい?」
 ニッコリと微笑んだミリディアは、オスカーの顔を見て言うのであった。

「復讐ですわ。」



 それからの三日間午前中は、アーデのお勉強。午後は、鍛練したり、買い物したり。
 そんなある日、アーデが言うのだ。

「ミリディアちゃんの『癒し』凄い力あるッス。あたし、解るんスケド、右腕治せるッポイッスよ?」
 ミリディアにとって朗報。僥倖である。腕が生えるの?何か希望が涌き出て来る。

(そうね、義手のメンテ出来ないし、腕生やそうかしら?)
 だが、問題があった。毎日少しづつ、になるのだそうだ。
 ほんの少しの希望が、潰えてはいないが、(いろいろ忙がしいのが終わったら生やしましょう。)と言う結論に至るのであった。
 だが、悲しいかな義手が早くも壊れることになるのだ。

 三日後の昼に「奴隷商に盗賊が売れた。」と言う知らせが、ミリディア達の泊まる宿にあった。
 金貨四枚と小金貨六枚を受け取って「ホクホク」なアーデである。
なんと言う俗物っぷりか!

 なんと言うか、ミリディアのエルフ像を破壊し捲るアデルハイトである。
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