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第103話 性
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これまでの交友関係ではあまり性に対して
意識することは無かったけど、
最近人の輪が大きくなり始めて、
イヤでも性に対しての
話や、経験談などを聞くようになった。
僕は今まで両親とそう言う話をしたことは無いし、
友達も多くはいなかったので、
経験談を詳細に聞くことも無かった。
矢野先輩は恋愛に対して凄く誠実に対応しているし、
佐々木先輩とはまだ付き合いだして
日も浅かったので、
そのような話をした事は無かったけど、
でも、佐々木先輩といる時には、
否応なしに性に対する感情が湧き上がって止まらなかった。
その事に対して僕は自分が端ないと感じてしまっていた。
実際に佐々木先輩はどう感じているのか分からないけど、
僕は先輩を近くに感じるたびに、
体がムズムズするのを感じ始めていた。
佐々木先輩の方を見て、
練習着を着てはいるものの、
その上からでもはっきりとわかる
先輩の鍛えられ、引き締まった体を目で辿ると、
自分が汚らわしい存在にさえ思えた。
きっと今の僕には煩脳という言葉がぴったりだろう。
でも人って学ばなくても、性についての感情は
自然の摂理で自分で身に着けていくんだなと言う事も学んだ。
あと僕は、この感情をコントロールする術も学ばなくてはいけない。
佐々木先輩を見るたびに、発情する訳にはいかない。
これ故、Ωは恋をすると大変なのかもしれない。
自分の意志や周期に関係なく、
発情するときは発情してしまう。
僕も気を付けなくてはいけない。
佐々木先輩以外の男性と交わるなんて、
絶対嫌だ。
そう思う自分が居る事に凄く驚いた。
矢野先輩を好きな時は、
こういった感情は全然生まれてこなかった。
先輩への感情は多分、
恋に恋していたようなものだったんだろう。
でも、佐々木先輩は恋を飛ばして
愛に行ったようなものだった。
僕は次から次に生まれて来る
こんな感情が愛おしくてたまらなかった。
ピピピというホイッスルの音で、
ハッとして我に返った。
僕は佐々木先輩を目で追いながら、
思いっきり違う世界へとトリップしていた。
どうやら休憩の時間の様だ。
僕は先輩たちに捕まる前に、
青木君の居る1年生のグループの所へ行こうと、
ステージから滑り降りた。
「ねえ、君、赤城君って言ったっけ?」
そう言って後ろから肩を掴まれた。
僕が後ろを振り向くと、
3年生の先輩が僕の肩を掴んでいた。
「あの……何でしょうか?」
僕が恐る恐る聞くと、
「ねえ、うちのマネあれだからさ、
ちょっと俺と水飲み場まで来てくれる?」
そう言ってマネージャーの方を親指を立てて指し示すと、
マネージャーは早速佐々木先輩を掴めて、
何やらベタベタとしていた。
佐々木先輩は余り相手にはしていないようで、
僕の方を見て心配そうな顔をしていたけど、
僕は目配せをして大丈夫ですと返事をした。
それとは反対に、僕は青木君の方を見て、
助けて~ と言う様な顔をしたけど、
流石クラブの先輩に口出しは出来ないようで、
僕は諦めてその先輩と水飲み場まで
一緒に歩いて行った。
「あの、お水を汲んだりとか……
ゲータレードを作るような……?
的な事が必要なんでしょうか?」
僕がそう尋ねると、
「あ、そう言うのは1年生がやるから良いよ。
まあ、ここまで連れてきたのは建前でさ、
実は俺、君に一目ぼれして……
君、Ωでしょう?
何だかそんな匂いがする……」
僕が自分の腕を嗅ぎ始めたので
先輩は慌てて、
「いや、実際に匂うと言う訳では無いんだ。
ただ、そう言う雰囲気があると言うか、
憂いがあると言うか、
俺、αだから、そうじゃないかな~?
程度なんだけど、
そう言った雰囲気でΩが分かると言うか……
うん、とにかく、一目ぼれなんだ!」
と、いきなりの告白だった。
これまではっきりと僕に面と向かって
告白して来たのは3人で、
初めて僕に告って来た佐々木先輩は、
運命の番として、
最初は逃げていたけど、
離れられない人になった。
次に告白して来たのは、
バイト中のカフェで、
これは矢野先輩が丁寧にお断りしてくれたので、
僕は何もしなくても良かったのだけど、
今回は3度目といえど、
自分で返事をしなくてはいけない
状況に追い込まれたのは初めて。
告白をする方もそうだけど、
される方もかなりの神経を使う。
これは告白をする以上に
断るのは緊張するかもしれない。
それも、準備も何もせず、
いきなりなので頭が真っ白だ。
流石の矢野先輩もここで現れる、
という事はないだろう。
これまでの先輩を考えると、
僕は本当に守られていたんだな~
としみじみと感じた。
それに先輩はやっぱり、
色々と経験していると思う。
告白される事に関しては。
いきなりでも、スッとスマートに対応が出来る。
僕はどう返せばいいか分からずアワアワとしていると、
「あれ~?
そこに居るのは要君?」
と聞きなれた優しい声が後ろからしてきた。
僕は
「嘘だ~」
と思い後ろを振り返ると、
そこには紛れもなく、矢野先輩が立っていた。
意識することは無かったけど、
最近人の輪が大きくなり始めて、
イヤでも性に対しての
話や、経験談などを聞くようになった。
僕は今まで両親とそう言う話をしたことは無いし、
友達も多くはいなかったので、
経験談を詳細に聞くことも無かった。
矢野先輩は恋愛に対して凄く誠実に対応しているし、
佐々木先輩とはまだ付き合いだして
日も浅かったので、
そのような話をした事は無かったけど、
でも、佐々木先輩といる時には、
否応なしに性に対する感情が湧き上がって止まらなかった。
その事に対して僕は自分が端ないと感じてしまっていた。
実際に佐々木先輩はどう感じているのか分からないけど、
僕は先輩を近くに感じるたびに、
体がムズムズするのを感じ始めていた。
佐々木先輩の方を見て、
練習着を着てはいるものの、
その上からでもはっきりとわかる
先輩の鍛えられ、引き締まった体を目で辿ると、
自分が汚らわしい存在にさえ思えた。
きっと今の僕には煩脳という言葉がぴったりだろう。
でも人って学ばなくても、性についての感情は
自然の摂理で自分で身に着けていくんだなと言う事も学んだ。
あと僕は、この感情をコントロールする術も学ばなくてはいけない。
佐々木先輩を見るたびに、発情する訳にはいかない。
これ故、Ωは恋をすると大変なのかもしれない。
自分の意志や周期に関係なく、
発情するときは発情してしまう。
僕も気を付けなくてはいけない。
佐々木先輩以外の男性と交わるなんて、
絶対嫌だ。
そう思う自分が居る事に凄く驚いた。
矢野先輩を好きな時は、
こういった感情は全然生まれてこなかった。
先輩への感情は多分、
恋に恋していたようなものだったんだろう。
でも、佐々木先輩は恋を飛ばして
愛に行ったようなものだった。
僕は次から次に生まれて来る
こんな感情が愛おしくてたまらなかった。
ピピピというホイッスルの音で、
ハッとして我に返った。
僕は佐々木先輩を目で追いながら、
思いっきり違う世界へとトリップしていた。
どうやら休憩の時間の様だ。
僕は先輩たちに捕まる前に、
青木君の居る1年生のグループの所へ行こうと、
ステージから滑り降りた。
「ねえ、君、赤城君って言ったっけ?」
そう言って後ろから肩を掴まれた。
僕が後ろを振り向くと、
3年生の先輩が僕の肩を掴んでいた。
「あの……何でしょうか?」
僕が恐る恐る聞くと、
「ねえ、うちのマネあれだからさ、
ちょっと俺と水飲み場まで来てくれる?」
そう言ってマネージャーの方を親指を立てて指し示すと、
マネージャーは早速佐々木先輩を掴めて、
何やらベタベタとしていた。
佐々木先輩は余り相手にはしていないようで、
僕の方を見て心配そうな顔をしていたけど、
僕は目配せをして大丈夫ですと返事をした。
それとは反対に、僕は青木君の方を見て、
助けて~ と言う様な顔をしたけど、
流石クラブの先輩に口出しは出来ないようで、
僕は諦めてその先輩と水飲み場まで
一緒に歩いて行った。
「あの、お水を汲んだりとか……
ゲータレードを作るような……?
的な事が必要なんでしょうか?」
僕がそう尋ねると、
「あ、そう言うのは1年生がやるから良いよ。
まあ、ここまで連れてきたのは建前でさ、
実は俺、君に一目ぼれして……
君、Ωでしょう?
何だかそんな匂いがする……」
僕が自分の腕を嗅ぎ始めたので
先輩は慌てて、
「いや、実際に匂うと言う訳では無いんだ。
ただ、そう言う雰囲気があると言うか、
憂いがあると言うか、
俺、αだから、そうじゃないかな~?
程度なんだけど、
そう言った雰囲気でΩが分かると言うか……
うん、とにかく、一目ぼれなんだ!」
と、いきなりの告白だった。
これまではっきりと僕に面と向かって
告白して来たのは3人で、
初めて僕に告って来た佐々木先輩は、
運命の番として、
最初は逃げていたけど、
離れられない人になった。
次に告白して来たのは、
バイト中のカフェで、
これは矢野先輩が丁寧にお断りしてくれたので、
僕は何もしなくても良かったのだけど、
今回は3度目といえど、
自分で返事をしなくてはいけない
状況に追い込まれたのは初めて。
告白をする方もそうだけど、
される方もかなりの神経を使う。
これは告白をする以上に
断るのは緊張するかもしれない。
それも、準備も何もせず、
いきなりなので頭が真っ白だ。
流石の矢野先輩もここで現れる、
という事はないだろう。
これまでの先輩を考えると、
僕は本当に守られていたんだな~
としみじみと感じた。
それに先輩はやっぱり、
色々と経験していると思う。
告白される事に関しては。
いきなりでも、スッとスマートに対応が出来る。
僕はどう返せばいいか分からずアワアワとしていると、
「あれ~?
そこに居るのは要君?」
と聞きなれた優しい声が後ろからしてきた。
僕は
「嘘だ~」
と思い後ろを振り返ると、
そこには紛れもなく、矢野先輩が立っていた。
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