消えない思い

樹木緑

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第75話 体育祭の後

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体育祭のプラグラムも、
終盤に差し掛かった。

午後の部の見ものは、
各団毎の応援。

僕は応援団の事は余り分からなかったけど、
応援団部の3年生から、
選ばれた団長がとてもカッコよくて、
特攻隊のようなファッションは
何処の団も惚れ惚れとしたけど、
やっぱり自分立ちの団が一番だなと思った。

副団長の女子も、かっこよくて、
長い髪をポニーテールにして
風に揺れながら踊る姿は、
団長を凌ぐ美しさがあった。

佐々木先輩や矢野先輩とは違った
カッコよさと美しさがあった。

中学の時の体育の時間の延長のような
応援とは違い、
一糸乱れぬ動きと掛け声は、
やっぱり高校生だなと感じ、
少し成長した自分の位置に
少しワクワクとした。

応援団の出し物が終わると、
残るは最終のフォークダンスのみ。

フォークダンスは各年毎に、
グラウンドの真ん中で
丁度、三つ葉のような感じに並んだ、
円になって行われた。

一か所だけ、1年生と
2年生と3年生が接近するスポットがあるけど、
そこで矢野先輩や佐々木先輩にかち合う確率は
0に等しかった。

中学生の時は、
皆恥ずかしがって、
やる気無さそうに踊ったけど、
高校生はそうでもなかった。

やっぱり、大人になった分、
落ち着いてきているせいもあるのかもしれない。
中学生はまだ異性に対して意識していたけど、
高校生にもなると、半分以上は付き合っている人が居る。

特に3年生ともなると、多くが付き合った経験があるため、
それほど異性に対して意識してはいないようだったけど、
やっぱり、モテる先輩たちはバチバチに意識されていた。

それは、佐々木先輩も、矢野先輩も同じだった。
彼らの前に来る女生徒は、
少なからず頬を染めて、
少しはにかんだ様にして、
彼らの手を取っていた。

でも、先輩たちがフォークダンスを踊る姿は
かなりの見ものだった。
矢野先輩は相変わらずで、
女子生徒にリードをしてもらうと言う様な感じで、
見ていた僕が少しハラハラとした。

佐々木先輩はスマートだった。
生徒会長らしくビシッと背筋を伸ばして、
これから、社交ダンス?
とでもいうようなたたずまいだった。

僕はこの時ほど、
同じ年に生まれなかったことを呪った。
まあ、同じ年に生まれても、
男同士ではペアになる事は出来ないんだけど、
それほど只のフォークダンスが
カッコ良く見えたのは、
やっぱり僕がそう言う目で佐々木先輩の事を
見ているせいなのかな?
と思うところもあった。

そうやって僕達の体育祭は終了し、
僕達の青団は総合4位に終わった。

後かたずけは、
次の日の日曜日となっていたので、
今日はこのまま家に帰る事が出来た。

色々と怒涛のような1日だったけど、
体育祭が終わった後は、
僕は凄く佐々木先輩に
会いたくて、会いたくてたまらなかった。

何故だか分からないけど、
無性に佐々木先輩に会いたくて、
全校生徒が解散された後、
先輩を見つけに行った。

でも、見つけに行く途中で、
お父さんに捕まってしまい、

「さあ帰るよ~
一緒に帰ろうと思って要君の事
見つけて回ってたんだよ~
優君も待ってるからね~」

と、腕を引いて連れて行かれてしまった。

駐車場まで行くと、
お母さんと楽しそうに話をする
矢野先輩がそこに居た。

「今日はね、体育祭の打ち上げで
お寿司を注文するから、
矢野君もさそったのよ~」

そうお母さんが嬉しそうに言った。

「さ、車に乗って、乗って」

お父さんに車の中に押し込まれ、
僕は佐々木先輩を探すのは諦め、
渋々と車の中に乗り込んだ。

「さ、矢野君も乗って、乗って」

そう言うお母さんに、
先輩も、

「じゃあ、失礼しま~す」

と車に乗り込み、
僕達は家へ向けて走り始めた。

そして去り行く駐車場から、
僕達を見送っている
佐々木先輩の姿が目に入った。

僕は、直ぐに後ろに乗り出し、
先輩の方を見た。

僕は、そこに佐々木先輩が居たことに、
ちっとも気付かなかった。

またしても僕は、
佐々木先輩を置いて、
矢野先輩と去っていく姿を見せてしまった。

その事に凄く心が痛んだ。

先輩が真っすぐにそこに立ち、
僕達を見送る姿勢には、
涙が出る思いだった。

先輩は僕達が居なくなった
駐車場に佇み、
僕達が見えなくなるまで
そこに立っていた。

僕は直ぐに車を降りて、
佐々木先輩の元へ走って行きたかった。

先輩の所へ走って行って、
先輩に抱き着き、

「大丈夫だよ」

と直ぐにでも伝えたい気持ちで一杯だった。

僕が後ろに乗り出していたので
矢野先輩が

「どうしたの?
ちゃんと座ってシートベルトを締めないと」

と言ったので僕は真っすぐ座り直して
シートベルトを締め直した。

そんな僕を、
お母さんは何か言いたそうに
バックミラーで見ていたけど、
僕にはまだその時は、
お母さんが何を言おうとしていたのか、
知る由も無かった。







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