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第67話 矢野先輩の追求
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「あの……先輩……
腕、痛いです……」
先輩は僕を掴んだ手に
力を込めて僕の腕を握りしめていた。
「あ、ごめん。
掴むのに夢中で……
でもそんなに慌ててどうしたの?」
先輩が心配そうに顔を覗き込んできた。
「あ、いえ、何でもないんです。
早く応援席に戻らなきゃって思って……」
「この後の出番は?」
「暫くはありませんが……」
「じゃあ、そこの木陰でちょっと休憩しよう。
最近、あまり要君と話す機会無かったし、ね?」
そう言って先輩は僕の手を引いて、
校舎に並んで立っている
桜の木の下に僕を連れて行って、
そこの一角にある丸太のフェンスに
もたれ掛けた。
そこで僕も、フェンスの低い部分に座った。
「借りもの競争はやっぱり
何時見ても楽しいよね。
ねえ、要君の借りものって……
何だったの?」
先輩が真面目な顔をして尋ねてきた。
僕は先輩の方を見上げて、
「僕のは……
……“生徒会長”……、
でした」
そう答えたのと同時に、
「なんだ~
好きな人では無かったのか~」
と、先輩が独り言のように
ボソッと言うのが聞こえた。
「ねえ、僕達さ……」
先輩がそう言って話し出した。
「えっ? 僕達が……
何ですか……?」
少しドキッとした。
「僕達、最近少しぎこちないよね、
そう思わない?
そう、要君の発情期が始まったあたりから……」
僕は更にドキッとした。
何とかごまかさなくちゃ!
そう言う思いだけが頭の中を
グルグルとしていた。
「あの……僕……
発情期が始まって
何か変わったのでしょうか?」
「う~ん、
そう言うんじゃないんだよね~」
「と、言うと?」
「多分、発情期が始まった辺りと言うよりは……」
「言うよりは?」
「発情期が引き起こされた時と言った方が……」
えっ?
発情期が引き起こされた?
引き起こされた……
何の事だろう……?
僕が困惑して先輩を見上げると、
「要君、放課後の校舎で
不意に発情期が来たの覚えてる?
奥野さんが僕を探しに来てくれた時の……」
「あ……はい。
あの時は先輩にも奥野さんにも迷惑をかけて……」
「うん、それは良いんだよ。
でも、あの時ってまだ次の発情期には
早かったよね?」
僕は少し考えて、
「そうでしたね。
だから僕も予期して無くって……」
と答えた。
「あの時、発情期が起こる前の事覚えてる?」
「あの時は……僕、先輩を探しに部室へ行って……」
僕は記憶を辿りながら話し出した。
「部室に辿りついたら、
誰かが窓辺にもたれて眠っていたから、
誰だろうと思って近ずいたら、
佐々木先輩で……」
「それで?」
「佐々木先輩に近ずいたら
凄く良い香りがして……」
そう言ったところで僕はハッとした。
「そうだよね。
裕也の匂いで発情したんだよね」
「じゃあ、あの発情は……」
「うん。
恐らく、裕也のαのフェロモンで
誘発されたんだよね」
僕は先輩の方を見上げた。
「僕思ったんだけど、
あの時要君に僕の匂いを嗅いでって
言った時、
僕からは何の匂いも感じ取れなかったよね」
僕は暫く下をうつ向いて、
「はい……覚えています」
とか細く答えた。
「それからだよね。
裕也が君の周りに現れ始めたのは……」
僕は心臓が破裂するかと思うくらい
ドキドキとしていた。
「ねえ、要君?」
先輩の方を見上げると、
先輩が真剣に僕の瞳を覗き込んできた。
そしてこう尋ねた。
「君、僕に何か隠してない?」
腕、痛いです……」
先輩は僕を掴んだ手に
力を込めて僕の腕を握りしめていた。
「あ、ごめん。
掴むのに夢中で……
でもそんなに慌ててどうしたの?」
先輩が心配そうに顔を覗き込んできた。
「あ、いえ、何でもないんです。
早く応援席に戻らなきゃって思って……」
「この後の出番は?」
「暫くはありませんが……」
「じゃあ、そこの木陰でちょっと休憩しよう。
最近、あまり要君と話す機会無かったし、ね?」
そう言って先輩は僕の手を引いて、
校舎に並んで立っている
桜の木の下に僕を連れて行って、
そこの一角にある丸太のフェンスに
もたれ掛けた。
そこで僕も、フェンスの低い部分に座った。
「借りもの競争はやっぱり
何時見ても楽しいよね。
ねえ、要君の借りものって……
何だったの?」
先輩が真面目な顔をして尋ねてきた。
僕は先輩の方を見上げて、
「僕のは……
……“生徒会長”……、
でした」
そう答えたのと同時に、
「なんだ~
好きな人では無かったのか~」
と、先輩が独り言のように
ボソッと言うのが聞こえた。
「ねえ、僕達さ……」
先輩がそう言って話し出した。
「えっ? 僕達が……
何ですか……?」
少しドキッとした。
「僕達、最近少しぎこちないよね、
そう思わない?
そう、要君の発情期が始まったあたりから……」
僕は更にドキッとした。
何とかごまかさなくちゃ!
そう言う思いだけが頭の中を
グルグルとしていた。
「あの……僕……
発情期が始まって
何か変わったのでしょうか?」
「う~ん、
そう言うんじゃないんだよね~」
「と、言うと?」
「多分、発情期が始まった辺りと言うよりは……」
「言うよりは?」
「発情期が引き起こされた時と言った方が……」
えっ?
発情期が引き起こされた?
引き起こされた……
何の事だろう……?
僕が困惑して先輩を見上げると、
「要君、放課後の校舎で
不意に発情期が来たの覚えてる?
奥野さんが僕を探しに来てくれた時の……」
「あ……はい。
あの時は先輩にも奥野さんにも迷惑をかけて……」
「うん、それは良いんだよ。
でも、あの時ってまだ次の発情期には
早かったよね?」
僕は少し考えて、
「そうでしたね。
だから僕も予期して無くって……」
と答えた。
「あの時、発情期が起こる前の事覚えてる?」
「あの時は……僕、先輩を探しに部室へ行って……」
僕は記憶を辿りながら話し出した。
「部室に辿りついたら、
誰かが窓辺にもたれて眠っていたから、
誰だろうと思って近ずいたら、
佐々木先輩で……」
「それで?」
「佐々木先輩に近ずいたら
凄く良い香りがして……」
そう言ったところで僕はハッとした。
「そうだよね。
裕也の匂いで発情したんだよね」
「じゃあ、あの発情は……」
「うん。
恐らく、裕也のαのフェロモンで
誘発されたんだよね」
僕は先輩の方を見上げた。
「僕思ったんだけど、
あの時要君に僕の匂いを嗅いでって
言った時、
僕からは何の匂いも感じ取れなかったよね」
僕は暫く下をうつ向いて、
「はい……覚えています」
とか細く答えた。
「それからだよね。
裕也が君の周りに現れ始めたのは……」
僕は心臓が破裂するかと思うくらい
ドキドキとしていた。
「ねえ、要君?」
先輩の方を見上げると、
先輩が真剣に僕の瞳を覗き込んできた。
そしてこう尋ねた。
「君、僕に何か隠してない?」
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