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第41話 運命?
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僕は佐々木先輩の後について教室へとお弁当を取りに行った。
教室にはお弁当を取りに来た人たちでごった返していたが、僕が佐々木先輩と一緒に居るところを見て、誰も僕に質問する人はいなかった。
その部分は助かったけど、恐らく月曜日に皆につかまって質問攻めになるだろう。
僕はお弁当の袋を持った後、今度は佐々木先輩の教室へ向けて歩いて行った。
3年生の階段へ差し掛かった時、先輩が急に立ち止まった。
後ろを付いて行っていた僕は、前が見えずに、いきなり立ち止まった先輩の背中に激突してしまった。
「いたっ」と言って鼻を抑えると、先輩が
「面倒くさいのに見つかったな」とぼそりと言った。
僕は少し赤くなった鼻を擦りながら、そっと先輩の陰から向こう側を伺った。
先輩の対面には、腰まである長いサラサラの黒髪を後ろで一つにくくり、モデル張りの容姿をした先輩が経っていた。
その女子の体操服を見て、直ぐに3年生だと分かった。
そして彼女のゼッケンを見た時、僕は自分の頭を壁にぶつけたい気持ちになった。
そうだった、忘れていた。
佐々木先輩には婚約者がいたんだった!
先輩の前に立っていた女子は、紛れもなく、先輩の婚約者、長瀬優香先輩だった。
彼女はヒョイと佐々木先輩の後ろを覗き込んで僕が居る事を確認した。
僕が先輩の後ろからそっと出てきて、「初めまして…一年三組の赤城と言います。」と挨拶をすると、
僕を上から下まで一通り見回した後、僕の着ている体操服に焦点を合わせて、いかにもαの女性と言う様なオーラを放って、僕を睨んだ。
僕は「ヒッ」となり、蛇に睨まれたカエルのように動けなくなった。
「優香!」先輩が長瀬先輩の名を呼んだ途端、長瀬先輩が僕に放っていたオーラが消えた。
それよりもびっくりしたのが、佐々木先輩がそれよりも強いオーラで長瀬先輩を跳ね退けた事だ。
以前、お父さんから、αの中にも弱肉強食の世界があると言う事を聞いた事がある。
αのオーラは強く、より力のあるαは、自分のオーラで他のαをねじ伏せることが出来ると言う事を。
αを従えることが出来るのであれば、さぞβとΩを操るのは簡単だろうなと思った瞬間だった。
佐々木先輩は、これ以上僕に何かをすると黙ってはいないと言う様なオーラを出して、長瀬先輩を睨みつけた。
恐らく、今は何もできないだろうという事を感じた長瀬先輩は、
僕を睨みつけて、覚えてらっしゃい、というような顔をして、フンッと反対の方向を向き、去って行った。
僕は、金縛りにあったような感じで、言葉を無くして先輩の後ろで放心して立っていた。
「要?大丈夫か?」
先輩の声に我を取り戻して、
「今の、長瀬先輩ですよね?先輩の婚約者の…」と言った。
「なんだ、知ってたのか?」
「知ってたのか?そりゃ知ってますよ。学校でも凄い噂ですし…あ、でも彼女が婚約者だって言うのは矢野先輩に教えてもらって…」
そう言うと、先輩はチッと舌を鳴らして、「浩二のヤツ」とぶっきらぼうに言った。
「あの…やっぱり先輩は僕の事、冗談で…?」
「あほ!冗談でキスするほど落ちぶれちゃいないよ。」
そう言って先輩は僕の頭をコツンと叩いた。
「ほら急いで弁当食べないと、休み時間が終わるそ。」
そう言って、先輩の教室までお弁当を取りに行って、その後僕達は、静かでゆっくり出来るからと、美術部部室へ行く事に決めた。
「先輩、部室、鍵かけてあるんですけど…」
「おれ、生徒会長。全部室の合鍵もち~」
そう言って先輩はカギのチェーンを人差し指でクルクルとして見せた。
僕達は部室までくると、鍵のかかったドアを開けて、また内側から鍵を閉め、グラウンドに面する奥の窓を開けた後、その前に腰かけた。
「優香だけどな…」先輩がそう言って切り出した。
「政略なんでしょ?」と僕が答えると、
「良く知ってるな」と、目を丸くしていた。
「それも矢野先輩に聞いてます~。」
「まったく浩二の野郎、一体どこまで話しているんだ?」
「何か黒歴史でもあるんですか?」
僕はクックックと笑いながら訪ねた。
「バ~カ、完璧な俺には黒歴史なんてありませ~ん。」
そう言って先輩は僕の鼻を摘んだ。
「俺は優香の家には何度も婚約破棄の事は伝えたんだ。」
「はい、それも聞いてます。」
先輩は苦虫を噛み潰したような顔をして、
「じゃ、説明はいらないな。ま、そういうことさ。」と完結した。
「で、俺らの事だがな…」
「はい。僕達…恐らく…」
「運命の番だな。」
「運命の番なんですねよね?」
どちらからともなく、そう答えた。
100%の確信は無かった。
どうやってそう思ったのかも分からない。
でも、強く感じた。
ただ、魂の奥深い部分で、僕自身がそう感じ取っていた。
「僕、両親の話から行くと、もっとビビッとか、ググっとか、間違いの無い確信があるものだと思いました!」
「なんだ?要の両親って、運命の番なのか?」
先輩がびっくりしたように聞いた。
「そうなんです~。二人はこの学校の卒業生なんですよ。そして、正に、ここで知り合ったんですよ!」
「へ~、凄いな。運命の番が実際に居るって初めて聞いたな。と言う事は、お前のおやじとお袋はαとΩか?」
「そうなんです。お母さんのうなじにには、お父さんの噛み痕があるんですよ。僕、何時もうらやましくって…
あ、別に、先輩に噛んで欲しいって言ってる訳では無いんですよ。」
僕は慌てて言い付け加えた。
先輩は慌てる僕を見て、笑いながら、
「ま、それは追々な。」と付け加えた。
教室にはお弁当を取りに来た人たちでごった返していたが、僕が佐々木先輩と一緒に居るところを見て、誰も僕に質問する人はいなかった。
その部分は助かったけど、恐らく月曜日に皆につかまって質問攻めになるだろう。
僕はお弁当の袋を持った後、今度は佐々木先輩の教室へ向けて歩いて行った。
3年生の階段へ差し掛かった時、先輩が急に立ち止まった。
後ろを付いて行っていた僕は、前が見えずに、いきなり立ち止まった先輩の背中に激突してしまった。
「いたっ」と言って鼻を抑えると、先輩が
「面倒くさいのに見つかったな」とぼそりと言った。
僕は少し赤くなった鼻を擦りながら、そっと先輩の陰から向こう側を伺った。
先輩の対面には、腰まである長いサラサラの黒髪を後ろで一つにくくり、モデル張りの容姿をした先輩が経っていた。
その女子の体操服を見て、直ぐに3年生だと分かった。
そして彼女のゼッケンを見た時、僕は自分の頭を壁にぶつけたい気持ちになった。
そうだった、忘れていた。
佐々木先輩には婚約者がいたんだった!
先輩の前に立っていた女子は、紛れもなく、先輩の婚約者、長瀬優香先輩だった。
彼女はヒョイと佐々木先輩の後ろを覗き込んで僕が居る事を確認した。
僕が先輩の後ろからそっと出てきて、「初めまして…一年三組の赤城と言います。」と挨拶をすると、
僕を上から下まで一通り見回した後、僕の着ている体操服に焦点を合わせて、いかにもαの女性と言う様なオーラを放って、僕を睨んだ。
僕は「ヒッ」となり、蛇に睨まれたカエルのように動けなくなった。
「優香!」先輩が長瀬先輩の名を呼んだ途端、長瀬先輩が僕に放っていたオーラが消えた。
それよりもびっくりしたのが、佐々木先輩がそれよりも強いオーラで長瀬先輩を跳ね退けた事だ。
以前、お父さんから、αの中にも弱肉強食の世界があると言う事を聞いた事がある。
αのオーラは強く、より力のあるαは、自分のオーラで他のαをねじ伏せることが出来ると言う事を。
αを従えることが出来るのであれば、さぞβとΩを操るのは簡単だろうなと思った瞬間だった。
佐々木先輩は、これ以上僕に何かをすると黙ってはいないと言う様なオーラを出して、長瀬先輩を睨みつけた。
恐らく、今は何もできないだろうという事を感じた長瀬先輩は、
僕を睨みつけて、覚えてらっしゃい、というような顔をして、フンッと反対の方向を向き、去って行った。
僕は、金縛りにあったような感じで、言葉を無くして先輩の後ろで放心して立っていた。
「要?大丈夫か?」
先輩の声に我を取り戻して、
「今の、長瀬先輩ですよね?先輩の婚約者の…」と言った。
「なんだ、知ってたのか?」
「知ってたのか?そりゃ知ってますよ。学校でも凄い噂ですし…あ、でも彼女が婚約者だって言うのは矢野先輩に教えてもらって…」
そう言うと、先輩はチッと舌を鳴らして、「浩二のヤツ」とぶっきらぼうに言った。
「あの…やっぱり先輩は僕の事、冗談で…?」
「あほ!冗談でキスするほど落ちぶれちゃいないよ。」
そう言って先輩は僕の頭をコツンと叩いた。
「ほら急いで弁当食べないと、休み時間が終わるそ。」
そう言って、先輩の教室までお弁当を取りに行って、その後僕達は、静かでゆっくり出来るからと、美術部部室へ行く事に決めた。
「先輩、部室、鍵かけてあるんですけど…」
「おれ、生徒会長。全部室の合鍵もち~」
そう言って先輩はカギのチェーンを人差し指でクルクルとして見せた。
僕達は部室までくると、鍵のかかったドアを開けて、また内側から鍵を閉め、グラウンドに面する奥の窓を開けた後、その前に腰かけた。
「優香だけどな…」先輩がそう言って切り出した。
「政略なんでしょ?」と僕が答えると、
「良く知ってるな」と、目を丸くしていた。
「それも矢野先輩に聞いてます~。」
「まったく浩二の野郎、一体どこまで話しているんだ?」
「何か黒歴史でもあるんですか?」
僕はクックックと笑いながら訪ねた。
「バ~カ、完璧な俺には黒歴史なんてありませ~ん。」
そう言って先輩は僕の鼻を摘んだ。
「俺は優香の家には何度も婚約破棄の事は伝えたんだ。」
「はい、それも聞いてます。」
先輩は苦虫を噛み潰したような顔をして、
「じゃ、説明はいらないな。ま、そういうことさ。」と完結した。
「で、俺らの事だがな…」
「はい。僕達…恐らく…」
「運命の番だな。」
「運命の番なんですねよね?」
どちらからともなく、そう答えた。
100%の確信は無かった。
どうやってそう思ったのかも分からない。
でも、強く感じた。
ただ、魂の奥深い部分で、僕自身がそう感じ取っていた。
「僕、両親の話から行くと、もっとビビッとか、ググっとか、間違いの無い確信があるものだと思いました!」
「なんだ?要の両親って、運命の番なのか?」
先輩がびっくりしたように聞いた。
「そうなんです~。二人はこの学校の卒業生なんですよ。そして、正に、ここで知り合ったんですよ!」
「へ~、凄いな。運命の番が実際に居るって初めて聞いたな。と言う事は、お前のおやじとお袋はαとΩか?」
「そうなんです。お母さんのうなじにには、お父さんの噛み痕があるんですよ。僕、何時もうらやましくって…
あ、別に、先輩に噛んで欲しいって言ってる訳では無いんですよ。」
僕は慌てて言い付け加えた。
先輩は慌てる僕を見て、笑いながら、
「ま、それは追々な。」と付け加えた。
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