1 / 201
第1話 プロローグ
しおりを挟む
僕には忘れられない夏がある
まだ残暑も残る8月の校舎
3階にある美術部部室
真っ白なキャンバスと絵の具の匂い
部室の窓から時折入るさわやかな風と木漏れ日
途切れることの無い蝉の鳴き声
入道雲と時折訪れるスコールとも呼べる雷と雨
誰も居ない夏の校舎の大きな木々に隠された窓は、
僕にとってはちょっとした、
ほんの小さな隠れ家的存在だった。
木造旧校舎の3階の隅にある部室には、
ほとんどと言って良いほど人が来ない。
ましてや、もうすぐ終わろうという夏休みの後半では。
そんな誰も居ない少しだけ木漏れ日が入る午後の部室で、
静かに微睡むことが好きだった。
僕の全てはあの時にあった。
愛する人のはにかんだ笑顔と僕を見つめるその瞳
風になびく柔らかそうな黒髪
僕の髪をかき上げるその長い指
僕の頬をやさしく包むその大きな手
頬をなぞりながらそっとくれるキス
彼の唇から愛してるとそっと漏れる吐息
隠れて何度も何度も熱いキスを交わしたあの校庭
暑さなど感じもしなかった。
ただ、ただ、彼の中に溶けてしまいたかった。
彼以外何も欲しくなかった。
何を捨てても構わなかった。
彼が好きだった。
凄く、凄く、凄く好きだった。
彼は僕の世界の全てだった。
でも、僕の永遠は、あの日に終末を迎えた。
まだ残暑も残る8月の校舎
3階にある美術部部室
真っ白なキャンバスと絵の具の匂い
部室の窓から時折入るさわやかな風と木漏れ日
途切れることの無い蝉の鳴き声
入道雲と時折訪れるスコールとも呼べる雷と雨
誰も居ない夏の校舎の大きな木々に隠された窓は、
僕にとってはちょっとした、
ほんの小さな隠れ家的存在だった。
木造旧校舎の3階の隅にある部室には、
ほとんどと言って良いほど人が来ない。
ましてや、もうすぐ終わろうという夏休みの後半では。
そんな誰も居ない少しだけ木漏れ日が入る午後の部室で、
静かに微睡むことが好きだった。
僕の全てはあの時にあった。
愛する人のはにかんだ笑顔と僕を見つめるその瞳
風になびく柔らかそうな黒髪
僕の髪をかき上げるその長い指
僕の頬をやさしく包むその大きな手
頬をなぞりながらそっとくれるキス
彼の唇から愛してるとそっと漏れる吐息
隠れて何度も何度も熱いキスを交わしたあの校庭
暑さなど感じもしなかった。
ただ、ただ、彼の中に溶けてしまいたかった。
彼以外何も欲しくなかった。
何を捨てても構わなかった。
彼が好きだった。
凄く、凄く、凄く好きだった。
彼は僕の世界の全てだった。
でも、僕の永遠は、あの日に終末を迎えた。
2
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説

王冠にかける恋【完結】番外編更新中
毬谷
BL
完結済み・番外編更新中
◆
国立天風学園にはこんな噂があった。
『この学園に在籍する生徒は全員オメガである』
もちろん、根も歯もない噂だったが、学園になんら関わりのない国民たちはその噂を疑うことはなかった。
何故そんな噂が出回ったかというと、出入りの業者がこんなことを漏らしたからである。
『生徒たちは、全員首輪をしている』
◆
王制がある現代のとある国。
次期国王である第一王子・五鳳院景(ごおういんけい)も通う超エリート校・国立天風学園。
そこの生徒である笠間真加(かさままなか)は、ある日「ハル」という名前しかわからない謎の生徒と出会って……
◆
オメガバース学園もの
超ロイヤルアルファ×(比較的)普通の男子高校生オメガです。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜
車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。

春風の香
梅川 ノン
BL
名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。
母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。
そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。
雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。
自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。
雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。
3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。
オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。
番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!

Endless Summer Night ~終わらない夏~
樹木緑
BL
ボーイズラブ・オメガバース "愛し合ったあの日々は、終わりのない夏の夜の様だった”
長谷川陽向は “お見合い大学” と呼ばれる大学費用を稼ぐために、
ひと夏の契約でリゾートにやってきた。
最初は反りが合わず、すれ違いが多かったはずなのに、
気が付けば同じように東京から来ていた同じ年の矢野光に恋をしていた。
そして彼は自分の事を “ポンコツのα” と呼んだ。
***前作品とは完全に切り離したお話ですが、
世界が被っていますので、所々に前作品の登場人物の名前が出てきます。***

運命の人じゃないけど。
加地トモカズ
BL
αの性を受けた鷹倫(たかみち)は若くして一流企業の取締役に就任し求婚も絶えない美青年で完璧人間。足りないものは人生の伴侶=運命の番であるΩのみ。
しかし鷹倫が惹かれた人は、運命どころかΩでもないβの電気工事士の苳也(とうや)だった。
※こちらの作品は「男子高校生マツダくんと主夫のツワブキさん」内で腐女子ズが文化祭に出版した同人誌という設定です。

花いちもんめ
月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。
ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。
大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。
涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。
「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる