104 / 157
翠の反抗期
しおりを挟む
毎朝の日課をこなしている途中で、
父さんが狩りから帰ってきた。
バサっと言う翼の音で空を見ると、
弾丸の如く父さんが舞い降りてきた。
「今日はいつもより遅かったね?
獲物が見つからなかったの?」
何も持っていない父さんにそう尋ねると、
父さんは急いだ様にして、
「私はちょっとショウとスーの屋敷へ行ってくる」
そう言って何かゴソゴソとし出した。
「ついこの間行ったばかりなのにまた?」
そう尋ねても、父さんは忙しそうに何かの準備をしていた。
そんな父さんを僕は魔法の練習をしながら眺めていた。
僕が彼らの屋敷に運ばれてから、まだそんなに日も経ってない。
それなのに、父さんはまた彼らの屋敷へ行くことになった。
こんなに矢継ぎ早に彼らのうちに行くのは初めての事だ。
不思議に思い、
「何をしに行くの?」
と尋ねた。
父さんは準備ができた様で、
布で包んだ何かを大事そうに腕に中に抱くと、
「お前に使った植物が帝国でも育つか検証したいそうだ。
今朝狩りに行った時に根ごと掘ってきたから
枯れる前に届けなくてはならん」
そう言って腕の中に抱えた物を僕に見せた。
「え? あの時の植物って?
その腕の中にある物がそうなの?」
そう尋ねると、
「そうだ。お前が麻疹に掛かって死にかけた時に使った植物だ。
リリースノーと言うそうだ」
そう父さんが教えてくれた。
「リリー……スノー……?」
初めて聞く植物の名前だった。
「ああ、お前も覚えているとは思うが、
お前がショウの屋敷で意識が飛んでいた時に、
私が少し屋敷を離れた時があっただろう?
実を言うと、これを探しに行っていたんだ。
回復薬にするには花が必要らしいから、
ちょうどあの時は時期ハズレで見つかるか分からなかったが、
時間はかかったけど、辛うじて花の咲いていた一株を見つけたんだ。
余り市場には出回らないらしく、
とても貴重な植物だから奴らの屋敷で育ててみたいと言ったから
数株取ってきたんだ」
そう父さんが説明してくれた。
「そうだったんだ……」
僕がそう言うと、
「ではもう行くぞ。
これを届ける前に枯らすわけにはいかないからな」
父さんは急いだ様にそう言うと、
サッと龍の姿になった。
僕は慌てて、
「父さん、ちょ……、ちょっと待って!
ぼ……僕も連れて行って!」
急ぎ早にそう言うと、父さんは僕を一眺めして、
「ダメだ。
お前は此処にいろ」
そう言って返す言葉も与えないまま飛び去って行った。
「父さん! 待ってよ!
ねえ、せめて話でも!」
そう言って追いかけたけど、
父さんは瞬く間に空の彼方に見えなくなってしまった。
ちょうど断崖の所まで追いかけた僕は、
崖下を見下ろすと、
怒りをぶつける様にそこから飛び降りた。
“僕は! 父さんに! 頼らなくても! 1人で帝国まで行ってやるんだ!”
ブツブツと独り言の様にそう言いながら、
崖の断崖をピョンピョン飛び降りて行った。
崖下の地面に着陸した時に
“フ~”
と息を吐いて目の前を見た。
そこには、葉のついてない、
生きてるのか死んでるのか分からない様な木々達が
連なって立っていた。
その一本に飛び乗ると、木から木へ飛び移った。
その木々は果てしなく続いていたけど、
この道が帝国に続いている訳では無い。
いや、辿れば行けるのだろうが、
こんなに高い断崖から降りてきたのに、
この地からは未だ未だ下へ続く断崖がある。
僕が今いるところはその中腹にもならない。
僕はその木の一番テッペンまで登ると、
遠くを見つめた。
でも僕の目に映るのは、果てし無く続く荒野で、
僕が帝国に自分の力で行くのは、
夢のまた夢の様に思われたら、自然と涙が出てきた。
“どうして僕は此処から出れないんだ!
……あの子に会いたい……”
僕は暫く遠くを見たまま唇をかみしめて泣いた後、
袖で涙を拭くと、
今来た道を又、木々を伝って家への道を戻って行った。
~ショウ邸宅で~
デューデューはショウの邸宅の広い庭に着地すると、
ス~っと姿を現し人の姿に変わった。
龍舎の方からは、ショウの龍達がデューデューが来た事を察知し、
ギャーギャーと騒ぎ立てていた。
この騒ぎは、デューデューが来る時はいつもの事で、
裏を返せば龍達がデューデューに帰るように文句を言っているのだ。
そして龍達の騒ぎ声を一番に聞きつけて駆けてくるのが龍星だ。
デューデューは龍星の一番のお気に入りになっている。
タッタッタッと小さな素早い足音がしたかと思うと、
「デューデュー!
やっぱり君だったんだ!
父上の龍達が騒がしいからデューデューが来たと思ったんだ!」
そう言って駆けて来ると、
デューデューに飛び付いた。
デューデューは龍星をヒョイっと抱き上げると、
「ちゃんと剣の稽古はしてるのか?」
そう言って龍星を肩に乗せた。
「勿論だよ! 父上の騎士達にも褒めてもらったんだよ!
僕には剣の才能があるんだって!」
龍星がそう言うと、
「そうか、そうか、これからも剣の稽古は怠るんじゃ無いぞ?」
そう言ってデューデューは笑った。
龍星はデューデューの頭に抱きつくと、
「ねえ、今日はどれくらい此処に居れるの?
いつになったらデューデューの背中に乗せて空を飛んでくれるの?!
何時も今度、今度って言って、全然してくれない!
今日は出来る? ねえ、今日は時間あるの?!」
そう言ってデューデューの頭をギュッと抱きしめた。
デューデューは困ったように
「すまない、今日もあまり時間は無いんだ。
なにせ、翠を一人残してきてるからな」
そう言うと、
「もう!! 何時も翠、翠って!
だったら翠も此処に連れてくれば良いじゃ無い!
デューデューは僕と翠のどっちが好きなの?!」
と、子供ならではの質問でデューデューを困らせた。
流石のデューデューも、人の子に接するのは翠以外初めてで、
得意という訳では無い。
翠は本当の息子のように育てているので、
責任と義務を持って接する事ができるけど、
他の子はまだどうやって接していけば良いのか良く分からない。
「あー、そのー」
と、柄にもなく言い淀んでいると、
「デューデュー様!
いらっしゃるとお教えくださればお出迎え致しますのに!」
そう言いながらスーが、一足遅れてパタパタと庭に駆けてきた。
“助かった!”
そう思っていると、
スーに続いて龍輝がスーの後ろから、
隠れる様にピョンピョンと飛ぶようにして付いてきた。
デューデューの所まで辿り着いたスーがハアハアと肩で息をしながら
“フ~”
っと一呼吸し呼吸を整えると、一礼して、
「おはよう御座います。
生憎ショウは今朝早くから王宮に呼び出され、
留守にしておりますの。
何か急ぎのご用でしたか?」
スーがそう尋ねると、
「いや、今日はショウに会いに来たのでは無い。
ほら、今朝採れたばかりのリリースノーの苗だ。
前に此処で栽培してみたいから欲しいと言っていただろう」
そう言ってデューデューは懐からリリースノーの苗を取り出してスーに渡した。
スーはそれを受け取ると嬉しそうに、
「まあ、覚えていらしたのですね。
有難うございます。
この花は私の故郷でも見かけませんので、
とても興味が有ったのです!
私は早速庭師の所までこれを届けて参りますので、
デューデュー様は客間へおいで下さい。
焼きたてのクッキーがありますので、
是非食べていらして下さい!
直ぐにお茶もお持ち致します!」
スーはそう言うと、デューデューの肩に乗っている龍星の尻を叩いて、
「龍星、何時迄もデューデュー様の肩に乗って無いで、
デューデュー様を客間までご案内しなさい!
それに貴方はちゃんとデューデュー様にご挨拶はしたの?!
またいつもの様にデューデュー様に飛び掛かったんでは無いでしょうね?!」
そう言うと、スーの後ろに隠れていた龍輝を前に押しやって、
「龍輝もほら、デューデュー様にちゃんとご挨拶して!
貴方は私の背後にばかり隠れていても一人前の男になれませんよ!」
スーがそう言うと、
「デュ……デューデュー様、ご機嫌よう……」
龍輝は小さな声でオドオドしたようにペコッと頭を下げると、
目を泳がせた。
そして庭師の所へ向かうスーを捉えると、
“あっ!”
と言ってスーを追って走り去った。
龍輝の走り去る姿を見た龍星が、
「イ~ッ!! あいつヤダ!ヤダ!
男のくせにあんなにウジウジして、
いつも母上の後ろに隠れてるんだ!
剣を持たせれば泣き出すし、
夜も母上と父上のベッドに入らないと眠れないんだよ!
本当に僕と双子かって?!
きっと父上と母上が捨て子を見つけて来て、
僕と双子って言って育ててるんだ!」
そう言いながらデューデューの頭をポカポカと叩いた。
逞しい母となったスーに圧倒されていたデューデューは、
そんな龍星にハハハと笑うと、
「いや、お前達は間違いなく兄弟だな。
これだけ似ている他人はいないだろう?
それに東の大陸の血を受け継いだお前達はどちらもショウの様に
真っ黒な髪に真っ黒な瞳をしているでは無いか!
その色は此処では珍しいんだぞ?
ショウとお前達以外は滅多に見ないだろ?
それが紛れもない兄弟だという事を証明しているな!」
デューデューがそういうと、
龍星はプク~ッと膨れた。
「ハ~ なんでアイツは女の子じゃなかったんだろう!
あの性格で男にしておくなんて、男に対する冒涜だよな!
髪も目も僕と同じで真っ黒で!
母上に似れば少しは印象も違ったんだろうけど、
アイツがかっこいい黒だなんて勿体無いよね!」
龍星が本気なのか冗談なのか分からない様な口調でそういうと、
デューデューは少し苦笑いをして真面目な顔をすると、
「龍星、一つ聞いてもいいか?」
そう言って龍星を肩から下ろすと、
腕に抱き上げ目線を合わせた。
「ん~ 何?」
龍星がそう言って首を傾げると、
デューデューはゆっくりと、
「翠が倒れて此処へきた日、
お前は翠に会いに翠が寝ている部屋までやって来たか?」
そう言って龍星に尋ねた。
父さんが狩りから帰ってきた。
バサっと言う翼の音で空を見ると、
弾丸の如く父さんが舞い降りてきた。
「今日はいつもより遅かったね?
獲物が見つからなかったの?」
何も持っていない父さんにそう尋ねると、
父さんは急いだ様にして、
「私はちょっとショウとスーの屋敷へ行ってくる」
そう言って何かゴソゴソとし出した。
「ついこの間行ったばかりなのにまた?」
そう尋ねても、父さんは忙しそうに何かの準備をしていた。
そんな父さんを僕は魔法の練習をしながら眺めていた。
僕が彼らの屋敷に運ばれてから、まだそんなに日も経ってない。
それなのに、父さんはまた彼らの屋敷へ行くことになった。
こんなに矢継ぎ早に彼らのうちに行くのは初めての事だ。
不思議に思い、
「何をしに行くの?」
と尋ねた。
父さんは準備ができた様で、
布で包んだ何かを大事そうに腕に中に抱くと、
「お前に使った植物が帝国でも育つか検証したいそうだ。
今朝狩りに行った時に根ごと掘ってきたから
枯れる前に届けなくてはならん」
そう言って腕の中に抱えた物を僕に見せた。
「え? あの時の植物って?
その腕の中にある物がそうなの?」
そう尋ねると、
「そうだ。お前が麻疹に掛かって死にかけた時に使った植物だ。
リリースノーと言うそうだ」
そう父さんが教えてくれた。
「リリー……スノー……?」
初めて聞く植物の名前だった。
「ああ、お前も覚えているとは思うが、
お前がショウの屋敷で意識が飛んでいた時に、
私が少し屋敷を離れた時があっただろう?
実を言うと、これを探しに行っていたんだ。
回復薬にするには花が必要らしいから、
ちょうどあの時は時期ハズレで見つかるか分からなかったが、
時間はかかったけど、辛うじて花の咲いていた一株を見つけたんだ。
余り市場には出回らないらしく、
とても貴重な植物だから奴らの屋敷で育ててみたいと言ったから
数株取ってきたんだ」
そう父さんが説明してくれた。
「そうだったんだ……」
僕がそう言うと、
「ではもう行くぞ。
これを届ける前に枯らすわけにはいかないからな」
父さんは急いだ様にそう言うと、
サッと龍の姿になった。
僕は慌てて、
「父さん、ちょ……、ちょっと待って!
ぼ……僕も連れて行って!」
急ぎ早にそう言うと、父さんは僕を一眺めして、
「ダメだ。
お前は此処にいろ」
そう言って返す言葉も与えないまま飛び去って行った。
「父さん! 待ってよ!
ねえ、せめて話でも!」
そう言って追いかけたけど、
父さんは瞬く間に空の彼方に見えなくなってしまった。
ちょうど断崖の所まで追いかけた僕は、
崖下を見下ろすと、
怒りをぶつける様にそこから飛び降りた。
“僕は! 父さんに! 頼らなくても! 1人で帝国まで行ってやるんだ!”
ブツブツと独り言の様にそう言いながら、
崖の断崖をピョンピョン飛び降りて行った。
崖下の地面に着陸した時に
“フ~”
と息を吐いて目の前を見た。
そこには、葉のついてない、
生きてるのか死んでるのか分からない様な木々達が
連なって立っていた。
その一本に飛び乗ると、木から木へ飛び移った。
その木々は果てしなく続いていたけど、
この道が帝国に続いている訳では無い。
いや、辿れば行けるのだろうが、
こんなに高い断崖から降りてきたのに、
この地からは未だ未だ下へ続く断崖がある。
僕が今いるところはその中腹にもならない。
僕はその木の一番テッペンまで登ると、
遠くを見つめた。
でも僕の目に映るのは、果てし無く続く荒野で、
僕が帝国に自分の力で行くのは、
夢のまた夢の様に思われたら、自然と涙が出てきた。
“どうして僕は此処から出れないんだ!
……あの子に会いたい……”
僕は暫く遠くを見たまま唇をかみしめて泣いた後、
袖で涙を拭くと、
今来た道を又、木々を伝って家への道を戻って行った。
~ショウ邸宅で~
デューデューはショウの邸宅の広い庭に着地すると、
ス~っと姿を現し人の姿に変わった。
龍舎の方からは、ショウの龍達がデューデューが来た事を察知し、
ギャーギャーと騒ぎ立てていた。
この騒ぎは、デューデューが来る時はいつもの事で、
裏を返せば龍達がデューデューに帰るように文句を言っているのだ。
そして龍達の騒ぎ声を一番に聞きつけて駆けてくるのが龍星だ。
デューデューは龍星の一番のお気に入りになっている。
タッタッタッと小さな素早い足音がしたかと思うと、
「デューデュー!
やっぱり君だったんだ!
父上の龍達が騒がしいからデューデューが来たと思ったんだ!」
そう言って駆けて来ると、
デューデューに飛び付いた。
デューデューは龍星をヒョイっと抱き上げると、
「ちゃんと剣の稽古はしてるのか?」
そう言って龍星を肩に乗せた。
「勿論だよ! 父上の騎士達にも褒めてもらったんだよ!
僕には剣の才能があるんだって!」
龍星がそう言うと、
「そうか、そうか、これからも剣の稽古は怠るんじゃ無いぞ?」
そう言ってデューデューは笑った。
龍星はデューデューの頭に抱きつくと、
「ねえ、今日はどれくらい此処に居れるの?
いつになったらデューデューの背中に乗せて空を飛んでくれるの?!
何時も今度、今度って言って、全然してくれない!
今日は出来る? ねえ、今日は時間あるの?!」
そう言ってデューデューの頭をギュッと抱きしめた。
デューデューは困ったように
「すまない、今日もあまり時間は無いんだ。
なにせ、翠を一人残してきてるからな」
そう言うと、
「もう!! 何時も翠、翠って!
だったら翠も此処に連れてくれば良いじゃ無い!
デューデューは僕と翠のどっちが好きなの?!」
と、子供ならではの質問でデューデューを困らせた。
流石のデューデューも、人の子に接するのは翠以外初めてで、
得意という訳では無い。
翠は本当の息子のように育てているので、
責任と義務を持って接する事ができるけど、
他の子はまだどうやって接していけば良いのか良く分からない。
「あー、そのー」
と、柄にもなく言い淀んでいると、
「デューデュー様!
いらっしゃるとお教えくださればお出迎え致しますのに!」
そう言いながらスーが、一足遅れてパタパタと庭に駆けてきた。
“助かった!”
そう思っていると、
スーに続いて龍輝がスーの後ろから、
隠れる様にピョンピョンと飛ぶようにして付いてきた。
デューデューの所まで辿り着いたスーがハアハアと肩で息をしながら
“フ~”
っと一呼吸し呼吸を整えると、一礼して、
「おはよう御座います。
生憎ショウは今朝早くから王宮に呼び出され、
留守にしておりますの。
何か急ぎのご用でしたか?」
スーがそう尋ねると、
「いや、今日はショウに会いに来たのでは無い。
ほら、今朝採れたばかりのリリースノーの苗だ。
前に此処で栽培してみたいから欲しいと言っていただろう」
そう言ってデューデューは懐からリリースノーの苗を取り出してスーに渡した。
スーはそれを受け取ると嬉しそうに、
「まあ、覚えていらしたのですね。
有難うございます。
この花は私の故郷でも見かけませんので、
とても興味が有ったのです!
私は早速庭師の所までこれを届けて参りますので、
デューデュー様は客間へおいで下さい。
焼きたてのクッキーがありますので、
是非食べていらして下さい!
直ぐにお茶もお持ち致します!」
スーはそう言うと、デューデューの肩に乗っている龍星の尻を叩いて、
「龍星、何時迄もデューデュー様の肩に乗って無いで、
デューデュー様を客間までご案内しなさい!
それに貴方はちゃんとデューデュー様にご挨拶はしたの?!
またいつもの様にデューデュー様に飛び掛かったんでは無いでしょうね?!」
そう言うと、スーの後ろに隠れていた龍輝を前に押しやって、
「龍輝もほら、デューデュー様にちゃんとご挨拶して!
貴方は私の背後にばかり隠れていても一人前の男になれませんよ!」
スーがそう言うと、
「デュ……デューデュー様、ご機嫌よう……」
龍輝は小さな声でオドオドしたようにペコッと頭を下げると、
目を泳がせた。
そして庭師の所へ向かうスーを捉えると、
“あっ!”
と言ってスーを追って走り去った。
龍輝の走り去る姿を見た龍星が、
「イ~ッ!! あいつヤダ!ヤダ!
男のくせにあんなにウジウジして、
いつも母上の後ろに隠れてるんだ!
剣を持たせれば泣き出すし、
夜も母上と父上のベッドに入らないと眠れないんだよ!
本当に僕と双子かって?!
きっと父上と母上が捨て子を見つけて来て、
僕と双子って言って育ててるんだ!」
そう言いながらデューデューの頭をポカポカと叩いた。
逞しい母となったスーに圧倒されていたデューデューは、
そんな龍星にハハハと笑うと、
「いや、お前達は間違いなく兄弟だな。
これだけ似ている他人はいないだろう?
それに東の大陸の血を受け継いだお前達はどちらもショウの様に
真っ黒な髪に真っ黒な瞳をしているでは無いか!
その色は此処では珍しいんだぞ?
ショウとお前達以外は滅多に見ないだろ?
それが紛れもない兄弟だという事を証明しているな!」
デューデューがそういうと、
龍星はプク~ッと膨れた。
「ハ~ なんでアイツは女の子じゃなかったんだろう!
あの性格で男にしておくなんて、男に対する冒涜だよな!
髪も目も僕と同じで真っ黒で!
母上に似れば少しは印象も違ったんだろうけど、
アイツがかっこいい黒だなんて勿体無いよね!」
龍星が本気なのか冗談なのか分からない様な口調でそういうと、
デューデューは少し苦笑いをして真面目な顔をすると、
「龍星、一つ聞いてもいいか?」
そう言って龍星を肩から下ろすと、
腕に抱き上げ目線を合わせた。
「ん~ 何?」
龍星がそう言って首を傾げると、
デューデューはゆっくりと、
「翠が倒れて此処へきた日、
お前は翠に会いに翠が寝ている部屋までやって来たか?」
そう言って龍星に尋ねた。
1
お気に入りに追加
267
あなたにおすすめの小説
【完結】僕はキミ専属の魔力付与能力者
みやこ嬢
BL
【2025/01/24 完結、ファンタジーBL】
リアンはウラガヌス伯爵家の養い子。魔力がないという理由で貴族教育を受けさせてもらえないまま18の成人を迎えた。伯爵家の兄妹に良いように使われてきたリアンにとって唯一安らげる場所は月に数度訪れる孤児院だけ。その孤児院でたまに会う友人『サイ』と一緒に子どもたちと遊んでいる間は嫌なことを全て忘れられた。
ある日、リアンに魔力付与能力があることが判明する。能力を見抜いた魔法省職員ドロテアがウラガヌス伯爵家にリアンの今後について話に行くが、何故か軟禁されてしまう。ウラガヌス伯爵はリアンの能力を利用して高位貴族に娘を嫁がせようと画策していた。
そして見合いの日、リアンは初めて孤児院以外の場所で友人『サイ』に出会う。彼はレイディエーレ侯爵家の跡取り息子サイラスだったのだ。明らかな身分の違いや彼を騙す片棒を担いだ負い目からサイラスを拒絶してしまうリアン。
「君とは対等な友人だと思っていた」
素直になれない魔力付与能力者リアンと、無自覚なままリアンをそばに置こうとするサイラス。両片想い状態の二人が様々な障害を乗り越えて幸せを掴むまでの物語です。
【独占欲強め侯爵家跡取り×ワケあり魔力付与能力者】
* * *
2024/11/15 一瞬ホトラン入ってました。感謝!
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
不幸体質っすけど役に立って、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた8歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中
末っ子王子は婚約者の愛を信じられない。
めちゅう
BL
末っ子王子のフランは兄であるカイゼンとその伴侶であるトーマの結婚式で涙を流すトーマ付きの騎士アズランを目にする。密かに慕っていたアズランがトーマに失恋したと思いー。
お読みくださりありがとうございます。
勘弁してください、僕はあなたの婚約者ではありません
りまり
BL
公爵家の5人いる兄弟の末っ子に生まれた私は、優秀で見目麗しい兄弟がいるので自由だった。
自由とは名ばかりの放置子だ。
兄弟たちのように見目が良ければいいがこれまた普通以下で高位貴族とは思えないような容姿だったためさらに放置に繋がったのだが……両親は兎も角兄弟たちは口が悪いだけでなんだかんだとかまってくれる。
色々あったが学園に通うようになるとやった覚えのないことで悪役呼ばわりされ孤立してしまった。
それでも勉強できるからと学園に通っていたが、上級生の卒業パーティーでいきなり断罪され婚約破棄されてしまい挙句に学園を退学させられるが、後から知ったのだけど僕には弟がいたんだってそれも僕そっくりな、その子は両親からも兄弟からもかわいがられ甘やかされて育ったので色々な所でやらかしたので顔がそっくりな僕にすべての罪をきせ追放したって、優しいと思っていた兄たちが笑いながら言っていたっけ、国外追放なので二度と合わない僕に最後の追い打ちをかけて去っていった。
隣国でも噂を聞いたと言っていわれのないことで暴行を受けるが頑張って生き抜く話です
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる