56 / 161
アーレンハイムの意図
しおりを挟む
急に召されたアーウィンの最高大神官という職は、
彼自身に取っても、凄く違和感があるようだった。
アーウィンもその事に対して、
しきりに何かを主張しようとしていた。
でも焦れば焦るだけ、
言葉が先走りしてしまう。
でも、アーウィンの言わんとしている事は何だかわかるような気がした。
「アーウィンの言ってる事はよく分からないけど、
実は僕も少し変だと思う事があったんだ。
取り敢えずは僕の部屋へ行こう」
取り敢えず取り乱すアーウィンを落ち着かせようとそう言うと、アーウィンは頷いた。
部屋へアーウィンを通すと、
マギーに紅茶とお菓子を持って来てもらった。
アーウィンはお茶を一口啜ると、少しホッとしたのか、
「今日はダリル様は?」
開口一番にそう尋ねた。
「ダリルは今は訓練場だけど、
ダリルに用があるの?」
そう尋ねるとアーウィンは首を振った。
彼は少しソワソワしたようにすると、
「ダリル様は未だジェイドの護衛だよね?」
とおかしな事を尋ね始めた。
「勿論だよ! どうしてそんな事を尋ねるの?」
僕には何故アーウィンが急にそう言うことを尋ねるのか分からなかった。
すると、
「多分僕を最高大神官に勧めたのはアーレンハイム公だ…」
アーウィンが俯いて、真っ青な顔をしてそう言った。
「叔父上が? どうして? 彼は神殿とは関係ないでしょう?」
今まで叔父が神殿の組織に関与した話を聞いた事がない。
いや、もしかしたら僕が知らないだけかも知れない……
「僕、アーレンハイム公が神殿でマリオン様と話してるのを偶然聞いたんだ」
その言葉に心臓がドクンと弾いた。
叔父とマリオンは裏で繋がってる?!
何かが頭に中でひかかった。
僕は唾をゴクリと飲み込むと、
「え? 何を?」
と尋ねた。
「あの日神殿に戻って来て神殿長に挨拶した後廊下を歩いてたら、
アーレンハイム公が見えたから挨拶をしようと思って追いかけたんだ。
丁度柱のところで追いついたから声を掛けようと思ったら誰かと話してたから、
諦めて戻ろうと思ったら、僕の名前が聞こえたから立ち聞きするつもりは無かったけど、
ついつい盗み聞きしてしまって……
ボソボソと内緒話のように話してたからうまく聞き取れなかったけど、
でも僕にはわかる。
公は僕を最高大神官に任命して神殿に閉じ込めておくようにって……
絶対そう言っていた!」
アーウィンは確信のようにしてそう言い切った。
「まさか!」
僕はアーウィンの言ってる事が俄かには信じられなかった。
だってそれが本当だとすると、
叔父は僕たちが思ってるよりも、
僕達の事を知っているという事だ。
「間違いないよ!
だって、僕の魔力を測ってみろって言ってたもん。
その後直ぐだよ?
僕の魔力測定があったのは!
僕を神殿に閉じ込める理由が必要だったんだよ!」
「でも……何故そこまでして…?」
「決まってるよ! 僕をジェイドから引き離すためだよ!
ジェイド、きっともう公にバレてるんだよ!
公はジェイドを孤立させようとしてると思う!
それにマリオンは変だよ!」
アーウィンのそのセリフに更に僕の心臓が早鐘のように鳴り響いた。
「マリオンが変って……どう言う事?」
僕もマリオンには違和感を感じた。
でも何処をどう言うふうに感じたのか言葉で説明出来なかった。
「マリオンはきっと公がつれて来たんだよ。
マリオンが中央管理局の局長になったのは僕達が城を開けてる間だよ?!
それも、公に任命されたって話だよ?」
「ちょっと待って!
何故叔父に神殿の役員を任命する事ができるの?」
「だって王都は公の公爵としての管轄だよ?
彼の一声で何でも決まる場所なんだよ?」
僕はそれを聞いて頭の中が真っ白になった。
「ねえ、マリオンと話していて変だと思わなかった?」
アーウィンのその問いに僕は頷いた。
「でしょう? 彼は絶対聖職者じゃ無いよ!
どちらかと言うと、彼は暗殺者だよ!」
ドキドキとした心臓が止まる思いだった。
アーウィンは僕が感じていた違和感を物の見事に言い当てた。
それでも何処かに否定する気持ちは残っていた。
「暗殺者? アーウィン、そんな滅多な事は言うもんじゃ無いよ!」
僕も変だと思ったけどどう考えても信じ難い事だった。
「だって彼、気配も足音も消して後ろから近づくんだよ?
僕、そんなに気配読むのうまくは無いけど、
少なくとも数ヶ月ダリル様に訓練場されてデューデューに教えを受けて来たんだよ?!
僕だって普通の人か、そうで無いかくらいその人の動きを見ればわかるよ!」
アーウィンは真剣な顔をして僕を説得した。
「アーウィン、もしそれが本当だったらどうしよう……
僕、ヤバいって事だよね?」
急に現実が押し寄せて来たようだった。
「直ぐ直ぐどうこうとかは無いと思うけど、
でも僕、神殿から出られなくなるかも知れない!
僕はジェイドと一緒に居てジェイドを守りたかったのに!」
僕はアーウィンの肩に手を置くと、
「アーウィンの気持ちはすごく嬉しい。
でもアーウィンは神殿から何かできる事があるかも知れない……
だから少し様子を見てみよう。
僕も何か策があるか考えてみる……」
そう言って宥めようとしたけど、
「でも、時間が無かったらどうしたら……」
アーウィンが泣きそうな顔をしてそう言った。
もし全てが急にやって来て、何の策も取る事ができなくても、
何か……何か……そう考えている時に、
一つの事を思い出した。
出来ればこれは使わないほうがいいけど、
もしもの時は、最後の砦になるはずだ。
「そうだ! 僕、アーウィンに教えたかった事がある!」
僕が閃いたようにしてそう言うと、
アーウィンは目を見開いて
「え? 何?」
と尋ねてきた。
僕は呼吸を整えるとゆっくりと息を吐き出し、
「あのね、時巡りをしてる時に大賢者に教えて貰った呪文があるんだ」
そう伝えた。
「呪文?」
「うん、あの時は時間がなくて詳しい説明はしてもらえなかったんだけど、
これはきっと禁断の書にあった、あの時戻しの術だよ!
大賢者が書いたって事だったし、
この呪文はその大賢者直々に教えて貰ったんだ。
だから、もしもの時のためにアーウィンにも教えておく!
あの時の魔力の流れは覚えてるから、
忘れないようにアーウィンの魂に刻むから手を貸して」
そう言うと僕はアーウィンの手を取った。
「いい? 集中してね」
そう言うと、アーウィンはコクリと頷いた。
僕も気を集中させると、
あの時大賢者がしてくれたようにアーウィンに向かって魔力を流し始め
時戻しの術を唱え始めた。
僕はその術が僕の魔力に乗ってアーウィンに流れていくのを感じた。
僕の魂に刻まれたその術は驚くほどすんなりとアーウィンに移行できた。
全てが終わった後、
「ジェイド、これ凄いよ!
頭の中でこの呪文が広がって僕の中に浸透していくのがハッキリ分かったよ!
僕、今だったらこの呪文唱えられるよ!」
アーウィンが興奮したようにしてそう叫んだ。
「今唱えても役に立たないよ。
大賢者も言っていたけど、必要になる時が来たら使うんだよ?
もし僕達が前の時間軸の事を覚えていたら
絶対僕達の運命を変えるように働くんだよ。
もし僕達の誰かがそれを忘れていたら、
誠心誠意を持って何が起きてるのかを説明して!」
そこまで言って、
「あーダメだ、ダメだ!
ダリルとマグノリアもこの話し合いに入らないと!
きっとこの呪文はもしも今世で叔父上に負けた時、
僕達の強い味方になってくれるから!
もし時戻しが起きたらその時は絶対間違えたらダメだから!」
そう言っていると、僕の寝室のドアが勢いよくバーンと開いてマグノリアが泣きながら入って来た。
「ちょっと、ちょっと、マグノリア!
いきなり部屋へ入ってくるのもアレだけど、
何故泣いてるの?!」
泣くと言う事をほとんどしないマグノリアが大泣きで部屋に突撃して来たので
僕とアーウィンは呆気に取られたようにしてマグノリアを見ていた。
マグノリは質問している僕を素通りして勿論アーウィンに抱きつくと、
「たった今告げられたんだけど、
ジェイドと婚約破棄して国に帰されることになったの!」
そう言ってアーウィンに縋り付いて泣き叫んだ。
“ちょっと待ってよ……
それってもう残るは一つしかないよね?”
そう思うと僕はアーウィンを見つめた。
アーウィンも同じ事を思っているみたいで、
お互いに頷き合うと、
「もしかしてダリルも……」
そう言うと、居ても立っても居られなくなった。
彼自身に取っても、凄く違和感があるようだった。
アーウィンもその事に対して、
しきりに何かを主張しようとしていた。
でも焦れば焦るだけ、
言葉が先走りしてしまう。
でも、アーウィンの言わんとしている事は何だかわかるような気がした。
「アーウィンの言ってる事はよく分からないけど、
実は僕も少し変だと思う事があったんだ。
取り敢えずは僕の部屋へ行こう」
取り敢えず取り乱すアーウィンを落ち着かせようとそう言うと、アーウィンは頷いた。
部屋へアーウィンを通すと、
マギーに紅茶とお菓子を持って来てもらった。
アーウィンはお茶を一口啜ると、少しホッとしたのか、
「今日はダリル様は?」
開口一番にそう尋ねた。
「ダリルは今は訓練場だけど、
ダリルに用があるの?」
そう尋ねるとアーウィンは首を振った。
彼は少しソワソワしたようにすると、
「ダリル様は未だジェイドの護衛だよね?」
とおかしな事を尋ね始めた。
「勿論だよ! どうしてそんな事を尋ねるの?」
僕には何故アーウィンが急にそう言うことを尋ねるのか分からなかった。
すると、
「多分僕を最高大神官に勧めたのはアーレンハイム公だ…」
アーウィンが俯いて、真っ青な顔をしてそう言った。
「叔父上が? どうして? 彼は神殿とは関係ないでしょう?」
今まで叔父が神殿の組織に関与した話を聞いた事がない。
いや、もしかしたら僕が知らないだけかも知れない……
「僕、アーレンハイム公が神殿でマリオン様と話してるのを偶然聞いたんだ」
その言葉に心臓がドクンと弾いた。
叔父とマリオンは裏で繋がってる?!
何かが頭に中でひかかった。
僕は唾をゴクリと飲み込むと、
「え? 何を?」
と尋ねた。
「あの日神殿に戻って来て神殿長に挨拶した後廊下を歩いてたら、
アーレンハイム公が見えたから挨拶をしようと思って追いかけたんだ。
丁度柱のところで追いついたから声を掛けようと思ったら誰かと話してたから、
諦めて戻ろうと思ったら、僕の名前が聞こえたから立ち聞きするつもりは無かったけど、
ついつい盗み聞きしてしまって……
ボソボソと内緒話のように話してたからうまく聞き取れなかったけど、
でも僕にはわかる。
公は僕を最高大神官に任命して神殿に閉じ込めておくようにって……
絶対そう言っていた!」
アーウィンは確信のようにしてそう言い切った。
「まさか!」
僕はアーウィンの言ってる事が俄かには信じられなかった。
だってそれが本当だとすると、
叔父は僕たちが思ってるよりも、
僕達の事を知っているという事だ。
「間違いないよ!
だって、僕の魔力を測ってみろって言ってたもん。
その後直ぐだよ?
僕の魔力測定があったのは!
僕を神殿に閉じ込める理由が必要だったんだよ!」
「でも……何故そこまでして…?」
「決まってるよ! 僕をジェイドから引き離すためだよ!
ジェイド、きっともう公にバレてるんだよ!
公はジェイドを孤立させようとしてると思う!
それにマリオンは変だよ!」
アーウィンのそのセリフに更に僕の心臓が早鐘のように鳴り響いた。
「マリオンが変って……どう言う事?」
僕もマリオンには違和感を感じた。
でも何処をどう言うふうに感じたのか言葉で説明出来なかった。
「マリオンはきっと公がつれて来たんだよ。
マリオンが中央管理局の局長になったのは僕達が城を開けてる間だよ?!
それも、公に任命されたって話だよ?」
「ちょっと待って!
何故叔父に神殿の役員を任命する事ができるの?」
「だって王都は公の公爵としての管轄だよ?
彼の一声で何でも決まる場所なんだよ?」
僕はそれを聞いて頭の中が真っ白になった。
「ねえ、マリオンと話していて変だと思わなかった?」
アーウィンのその問いに僕は頷いた。
「でしょう? 彼は絶対聖職者じゃ無いよ!
どちらかと言うと、彼は暗殺者だよ!」
ドキドキとした心臓が止まる思いだった。
アーウィンは僕が感じていた違和感を物の見事に言い当てた。
それでも何処かに否定する気持ちは残っていた。
「暗殺者? アーウィン、そんな滅多な事は言うもんじゃ無いよ!」
僕も変だと思ったけどどう考えても信じ難い事だった。
「だって彼、気配も足音も消して後ろから近づくんだよ?
僕、そんなに気配読むのうまくは無いけど、
少なくとも数ヶ月ダリル様に訓練場されてデューデューに教えを受けて来たんだよ?!
僕だって普通の人か、そうで無いかくらいその人の動きを見ればわかるよ!」
アーウィンは真剣な顔をして僕を説得した。
「アーウィン、もしそれが本当だったらどうしよう……
僕、ヤバいって事だよね?」
急に現実が押し寄せて来たようだった。
「直ぐ直ぐどうこうとかは無いと思うけど、
でも僕、神殿から出られなくなるかも知れない!
僕はジェイドと一緒に居てジェイドを守りたかったのに!」
僕はアーウィンの肩に手を置くと、
「アーウィンの気持ちはすごく嬉しい。
でもアーウィンは神殿から何かできる事があるかも知れない……
だから少し様子を見てみよう。
僕も何か策があるか考えてみる……」
そう言って宥めようとしたけど、
「でも、時間が無かったらどうしたら……」
アーウィンが泣きそうな顔をしてそう言った。
もし全てが急にやって来て、何の策も取る事ができなくても、
何か……何か……そう考えている時に、
一つの事を思い出した。
出来ればこれは使わないほうがいいけど、
もしもの時は、最後の砦になるはずだ。
「そうだ! 僕、アーウィンに教えたかった事がある!」
僕が閃いたようにしてそう言うと、
アーウィンは目を見開いて
「え? 何?」
と尋ねてきた。
僕は呼吸を整えるとゆっくりと息を吐き出し、
「あのね、時巡りをしてる時に大賢者に教えて貰った呪文があるんだ」
そう伝えた。
「呪文?」
「うん、あの時は時間がなくて詳しい説明はしてもらえなかったんだけど、
これはきっと禁断の書にあった、あの時戻しの術だよ!
大賢者が書いたって事だったし、
この呪文はその大賢者直々に教えて貰ったんだ。
だから、もしもの時のためにアーウィンにも教えておく!
あの時の魔力の流れは覚えてるから、
忘れないようにアーウィンの魂に刻むから手を貸して」
そう言うと僕はアーウィンの手を取った。
「いい? 集中してね」
そう言うと、アーウィンはコクリと頷いた。
僕も気を集中させると、
あの時大賢者がしてくれたようにアーウィンに向かって魔力を流し始め
時戻しの術を唱え始めた。
僕はその術が僕の魔力に乗ってアーウィンに流れていくのを感じた。
僕の魂に刻まれたその術は驚くほどすんなりとアーウィンに移行できた。
全てが終わった後、
「ジェイド、これ凄いよ!
頭の中でこの呪文が広がって僕の中に浸透していくのがハッキリ分かったよ!
僕、今だったらこの呪文唱えられるよ!」
アーウィンが興奮したようにしてそう叫んだ。
「今唱えても役に立たないよ。
大賢者も言っていたけど、必要になる時が来たら使うんだよ?
もし僕達が前の時間軸の事を覚えていたら
絶対僕達の運命を変えるように働くんだよ。
もし僕達の誰かがそれを忘れていたら、
誠心誠意を持って何が起きてるのかを説明して!」
そこまで言って、
「あーダメだ、ダメだ!
ダリルとマグノリアもこの話し合いに入らないと!
きっとこの呪文はもしも今世で叔父上に負けた時、
僕達の強い味方になってくれるから!
もし時戻しが起きたらその時は絶対間違えたらダメだから!」
そう言っていると、僕の寝室のドアが勢いよくバーンと開いてマグノリアが泣きながら入って来た。
「ちょっと、ちょっと、マグノリア!
いきなり部屋へ入ってくるのもアレだけど、
何故泣いてるの?!」
泣くと言う事をほとんどしないマグノリアが大泣きで部屋に突撃して来たので
僕とアーウィンは呆気に取られたようにしてマグノリアを見ていた。
マグノリは質問している僕を素通りして勿論アーウィンに抱きつくと、
「たった今告げられたんだけど、
ジェイドと婚約破棄して国に帰されることになったの!」
そう言ってアーウィンに縋り付いて泣き叫んだ。
“ちょっと待ってよ……
それってもう残るは一つしかないよね?”
そう思うと僕はアーウィンを見つめた。
アーウィンも同じ事を思っているみたいで、
お互いに頷き合うと、
「もしかしてダリルも……」
そう言うと、居ても立っても居られなくなった。
5
お気に入りに追加
287
あなたにおすすめの小説

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け


前世である母国の召喚に巻き込まれた俺
るい
BL
国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。
【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので)
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

マリオネットが、糸を断つ時。
せんぷう
BL
異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。
オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。
第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。
そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。
『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』
金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。
『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!
許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』
そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。
王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。
『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』
『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』
『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』
しかし、オレは彼に拾われた。
どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。
気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!
しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?
スラム出身、第十一王子の守護魔導師。
これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。
※BL作品
恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。
.
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

スキルも魔力もないけど異世界転移しました
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
なんとかなれ!!!!!!!!!
入社四日目の新卒である菅原悠斗は通勤途中、車に轢かれそうになる。
死を覚悟したその次の瞬間、目の前には草原が広がっていた。これが俗に言う異世界転移なのだ——そう悟った悠斗は絶望を感じながらも、これから待ち受けるチートやハーレムを期待に掲げ、近くの村へと辿り着く。
そこで知らされたのは、彼には魔力はおろかスキルも全く無い──物語の主人公には程遠い存在ということだった。
「異世界転生……いや、転移って言うんですっけ。よくあるチーレムってやつにはならなかったけど、良い友だちが沢山できたからほんっと恵まれてるんですよ、俺!」
「友人のわりに全員お前に向けてる目おかしくないか?」
チートは無いけどなんやかんや人柄とかで、知り合った異世界人からいい感じに重めの友情とか愛を向けられる主人公の話が書けたらと思っています。冒険よりは、心を繋いでいく話が書きたいです。
「何って……友だちになりたいだけだが?」な受けが好きです。
6/30 一度完結しました。続きが書け次第、番外編として更新していけたらと思います。

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました
厘/りん
BL
ナルン王国の下町に暮らす ルカ。
この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。
ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。
国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。
☆英雄騎士 現在28歳
ルカ 現在18歳
☆第11回BL小説大賞 21位
皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる