龍の寵愛を受けし者達

樹木緑

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話し合い

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「殿下、城に帰った方が良いとは、一体どういう意味でしょうか?」

「そうだよ、いきなりどうしたの?

ねえ、デューデューも一体、何があったの?!

ジェイドはデューデューが襲われた理由を知ってるの?!」

ダリルとアーウィンに攻めよられ、僕はグッと言葉を飲み込んだ。

まさか自分が尊敬し、
敬愛していた叔父が敵だったなんてどうやって説明したらいいか分からない。

「殿下、黙っていないでちゃんと説明して下さい。

何があっても私は殿下に付いて行きますので!」

「そうだよ、僕達の事信頼して!

絶対ジェイドを裏切ることはないから!

黙っていられると信頼されて無いみたいで悲しいよ」

彼らにそう言われたけど、別に二人の事を信頼していないわけじゃない。

「二人ともありがとう。ダリルもアーウィンも、マグノリアもすごく信頼してる。

僕の我がままにずっと付き合ってくれて、
慣れない生活を先取ってやってくれて……

得た情報があまりにも膨大で
ただ、何と説明したらいいか分からないんだ……」

そう言って言葉を濁していると、

「人は考えすぎるからダメなのだ。

一言言えば済む話では無いか。

お前が言えなかったら私が言おう。

童共よ、私を捉えたのはジューク・アーレンハイムだ」

そうデューデューが言うと、やっぱり思った様に皆言葉を失っていた。

叔父に近かったダリルは動揺を隠せないようだ。

「殿下、それは確かなのですか?」

ダリルが確認するように尋ねた。

「うん、ダリルは父上の護衛団長だったから
叔父上と顔を合わせる機会はたくさんあったと思うけど、
少なくともデューデューが未だ幼体だった時にデューデューをとらえたり、
今回致死量に至る傷をつけたのも叔父で間違いない」

「そんな……あのアーレンハイム公が……」

ダリルは言葉を無くしその後は何も言う事が出来なかった。

僕はぎゅっと握り拳を握りしめると、

「ごめん皆、多分僕のお家騒動に巻き込んじゃったのかもしれない」

そう言うとデューデューが

「違うと思うぞ」

そう言った。

「え? 違うって…… 叔父上は王になりたくて謀反を起こそうとしているのじゃないの?」

そう尋ねると、

「確かにデューデュー様が言うように、
単なるお家騒動でしたらデューデュー様やメルデーナ様を巻き込むことは無いでしょう?」

とダリルもデューデューに同意した。

「それに忘れたのか?

あいつは大賢者を手のうちにしている」

デューデューのその言葉にいち早く反応したのがアーウィンだった。

「大賢者?! 大賢者ってダンジョンに飲み込まれた塔に居たっていう?!」

僕は頷くと、

「あれはその大賢者で間違いないと思う。

彼は羽衣ローブを着ていた。

それにメルデーナがダンジョンに飲み込まれる前に塔から召喚したって言ってたから」

「凄い……大賢者が生きてるなんて!

世紀の大発見だよ! それで彼はどこに居るの?!」

アーウィンの興奮したような問いに僕は又言葉を詰まらせた。

そしてデューデューをチラッと見ると、
デューデューは僕の言わんとしていることを察したのか話し始めた。

「大賢者はジューク・アーレンハイムに囚われておる。

それも自分で自分に呪いをかけてな」

「え? 自分に呪いをかけることが出来るの?!

どうしてそんなことを?!」

確かに大賢者は呪いにかかり闇に落ちたようにしていた。

まさか自分でかけた呪いだったなんて、
僕自身も自分に呪いをかける事が出来るという事は知らなかった。

「お前、大賢者に呪いをかけれるような魔法使いが今の世に居ると思うのか?

あれは自分で自分に呪いをかけた結果だ。

あの呪いは完璧だった。

恐らくメルデーナに呪いをかけたのも大賢者だ」

そうデューデューに言われ僕は言葉を失った。

「一体アーレンハイム公はどうやって大賢者様を従わせたのでしょうか?」

ダリルの問いに、

「もしかしたら人質がいるのかもしれない……」

そう答えたデューデューを見て、僕はハッとした。

「もしかして……エレ……ノア……?」

「分からない。だがそう思っていて間違いないと思う……」

「そんな…… 叔父上は一体何をしようとしているの?!」

僕がそう言うと、

「決まってるだろう、あいつはこの世界の王になろうとしている」

そうデューデューに言われ、

「なっ! 何を馬鹿な事を!」

僕は叔父がこの世界の王になろうとしていることが信じられなかった。

いつも陰から父を助け、自分は父の陰で良いと言い、父から絶対的な信頼を得ている人だ。

「私は今回の事で分かった。 あいつは魔神を召喚しようとしている」

「え? 魔神って本当に召喚できるの?

それには龍の心臓に僕の血が必要って…… 僕達が狙われるのはその為?」

おびえながらそう言うと、デューデューが笑いながら、

「それはどこの情報だ。 全くのデタラメだ。

魔神を召喚するには、4人の守り神を倒さなければならない。

魔神のいる亜空間のカギを握るのはこの4人の神だ。

この神たちが倒されると召喚の魔法陣が一つずつ組まれる。

そしてその4っつのカギを統べるのが黒龍だ。

黒龍を倒して初めて組まれた魔法陣が発動する」

「え? じゃあ、デューデューは関係ないじゃない!

それに僕だって……

なのになぜ叔父上は僕達を狙うのだろう?」

「お前は明確だ。 白龍の加護を持っている。

謂わば、お前と白龍は繋がっているんだ。

アーレンハイムはきっとお前が白龍の加護を持っていることに気付いたはずだ。

恐らく、お前と白龍はお互いが共にいて出来る何かがあるはずだ」

「そんな……じゃあなぜデューデューは?

デューデューは灰色の龍だよ?

黒龍じゃないよ? 

それにまだ4人の守り神は倒されていないよ?」

「私にもそこは分からない。

何故奴らがこうも執拗に私を狙うのか……」

「それってエレノアやメルデーナがデューデューを気にしていた事と関係があるのかな?

もしかしてデューデューが黒龍の父親になるとか?」

「可能性はあるが今の時点では全く分からない」

僕は皆を見回すと、

「僕は城に帰って叔父上がやろうとしていることを止めなければ!」

そう言うと、

「でもそれって却って危険じゃないの?」

アーウィンは反対の様だ。

「危険は分かってるけど、叔父上を止めなければ僕一人の問題ではなくなるはずだ。

それに城に残された父上が心配だ。

多分父上は知らないだろうから、僕が今回経験したこと、得た知識などを報告もしなくちゃ」

僕がそう言うと、

「殿下、私は殿下が行かれるところに付いてゆきます。

殿下が決められた事を、どうぞ命令して下さい」

そう言ってダリルは跪いた。

僕はマグノリアの方を向くと、

「君は国へ帰った方が良いかもしれない。

少なくともここにいるよりは安全だと思う」

そう言ったけど、彼女は頑として首を縦に振らなかった。

「デューデューは? デューデューはどうするの?

此処に居たらデューデューも危険だよ?

もしかするともう叔父上にもここがばれてるかもしれない……」

そう言うと

「そうかもしれない。 

だがまだここに攻め込んでないという事は恐らくバレてはいないだろう。

私は此処に残り暫く様子を見ることとしよう」

「え? ここに残るって本当に大丈夫なの?」

「ここでダメな時はどこへ行っても同じだ。

向こうにはあの大賢者がいる。

私を見つける事などたやすいだろう。

だがそれをしてないという事は、恐らくあの大賢者にまだ自我があるんだろう」

デューデューがそう言うと僕は顔を伏せた。

「どうにかやってあの大賢者を助けることが出来れば!」

「無理だろう。 

エレノアが向こうの手の内にあるのならば奴はあいつらの手を離れない」

「じゃあカギはエレノア?!」

「そう言う事になるだろうな」

「でもエレノアはどこに囚われているのだろう?

大賢者が介入したわけではないんだよね?

と、いう事は呪いではないんだよね?

一体どこに……」

「私には分からない。

だが城へ戻るのであれば一日でも早い方が良いぞ。

私が逃げたことできっと躍起になっているはずだ」

「そうだね」

僕は一言そう言うと、皆の顔を見回した。

「皆、急だけど、明日朝一番で城に戻ろうと思う」

そう言うと、

「お供致します」

そう言ってダリルが跪いた。

「僕も一緒に行く! どうせ一度神殿に顔を出さなきゃいけないし、
僕もこの世界を守りたい!」

アーウィンがそう言うと、

「じゃあ、私、これから荷造りするわね」

とそんな具合で全員一致で明日の朝一番に城に帰ることになった。

































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