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“アレ”の正体
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そよそよと風が吹いて、
見上げた木の葉がカサカサと動き、
僕はビクッとして固まった。
木陰から
“チチチチチ”
と鳥が鳴いて飛び立つのでさえも
ビクビクとしている。
僕は僕の五感を持って
異常が起きている事を感じ取っていた。
ヒンヤリと冷や汗が背筋を伝って
流れ落ちていくのを感じた。
“一体何が起きてるんだ?!
何処から『アレ』は来たんだ?!”
その事だけが頭の中をグルグルとしていた。
湖の方に続く“足跡”はさらに僕の心を騒つかせた。
“デューデュー、無事でいて!”
何故かデューデューの事が気になる。
ダリルの方を見ると、
彼は未だリオンと話し込んでいた。
回復魔法で回復した騎士達は、
もう何の問題も無く忙しく動き回って
事後処理を行っていた。
僕は一国の王子だと言うのに
そこに立ち尽くすだけで
何の役にも立ってない。
これまで積み上げて来た教養が
如何に役に立ってないかを肌で感じていた。
“もっとしっかりしなくては!!”
そう思い頬をパンパンと叩くと、
「殿下、今日はデューデュー様に会うのは
お控えになったほうがいいかもしれません。
何の備えもしてしていませんし、
“アレに”対しての情報が無さすぎます。
危険すぎますし、
これ以上森を詮索するのは今日は無理でしょう。
先ずはお城へ帰り、
森に現れた魔物について詳しく調べましょう。
城の図書館、若しくは殿下のお持ちの書に
何か書き記してあるかもしれません」
処理を終えたダリルが僕のところに戻って来て
そう言ったけど、
何故かデューデューの事が気が気でなかった。
“もし、今日湖へ水を飲みに降りて来ていたら……
もし、森を彷徨っている時にあの魔物に出会ったら……”
そう言う思いが頭の中をグルグルと駆け巡る。
デューデューに取って今はまだ何もなくとも、
少なくともあの魔物について伝える事が出来る。
でもダリルの言うことも最もだ。
僕は選択をしなければならなかった。
諦めて引き返すのか、
湖へデューデューに会いにいくのか。
確かに僕達は今日現れた魔物について何も知らない。
僕は急ピッチで考えていた。
“もし『あれ』が湖へ行ったとして、
何のために?
湖のほうがくは、
ただ目的地への通り道だったのか?
もしそうだとすると、
もうそこには居ないだろう。
でも、もし未だ湖に居るとすると?
リオンの話しでは、
かなりの大きさの魔物らしい。
そこまで大きいと、
きっと遠くからでも見えるはずだ。
僕は目もかなり良い。
遠くまで見渡す事が出来る。
その僕が見えないのだから、
今ではもうここら付近には居ないはずだ。
だから湖へいっても、
危険性は少ない!
それにあの『足跡』が
何処まで続いているのかも気になる所だ。”
そう思うと、好奇心も手伝って段々と湖へ行っても
大丈夫な様な気がして来た。
「ダリルの言う事は最もだけど、
僕、やっぱり湖に行ってみる。
多分その魔物はこの辺りにはもう居ないと思う」
僕がそう言うと、
ダリルは深いため息を吐いた。
「それでは私もお供させて頂きます」
ダリルは僕が一度言い出すと
引かないと言う事を知っている。
ダリルはリオンの所へもどると、
捜索部隊は城に戻って
報告と対策をする様に伝えると、
「お待たせ致しました」
そう言って僕の元へ来た。
「僕の我儘に付き合わせてごめん。
でもありがとう」
そう言うと、ダリルに向かって
コクリと小さく頷いて、木の枝に飛び乗った。
リオンは僕達が一緒に城に戻らず、湖へ行く事をしると、
僕達が湖へ行く事を必死で止めたけど、
止める事が出来ないとわかるともう何も言わなかった。
「お気をつけて行って下さい。
無事のお帰りをお待ちしております」
そう言うと、深く頭を下げた。
僕が木に飛び乗った時は流石にビックリして居たけど、
僕はもう自分の力を隠しておく事は不必要だと思った。
こんな魔物が出てくると言う事は、
きっとこの力が国や民を守るために必要になる。
そんな時にこの力を使わないほど
僕は臆病ではないし、
民を守る義務にあるこの国の王子だと言う自覚はある。
僕は木に飛び乗ると、素早く
枝から枝に、木から木へと飛び移ると、
ダリルより一足先に湖へと辿り着いた。
湖は相変わらずにキラキラとしたその湖面を
僕の前に晒し出した。
あの魔物の
“足跡”
を途中からずっと追って来たけど、
やはり魔物は湖の方まで来て居た。
でも不思議な事に、その
“足跡”
は、湖の所でプツリと途切れて居た。
僕は決っして小さくは無いその湖の周りを一周して見た。
でもそこ以外、“足跡”を見つける事は無かった。
確かに湖の所までは足跡が地面に沈んだん様に付いている。
“湖に入って溺れた?
まさか……
そう言えばリオンは
『大きな妖精』
と言って居た。
と言う事は魔物には羽が生えてる?
空か?!”
そう思って上を見た。
少なくとも巨大な何かが空を飛んでいる様な気配はない。
僕は安全を確認して大声で
「デューデュー! 居たら返事して!
デューデュー! 僕は今、湖だよ!
デューデュー、無事なの?!
僕の所へ来て!」
そう叫んだ。
叫んでいるうちにダリルも僕に追いついたけど、
彼は直ぐに途切れた足跡に気付き、
その辺りを調べ出した。
僕はデューデューの住処がある方をジーッと見つめた。
姿が見えるまで安心できない。
「デューデュー!」
呼んでもデューデューが来ない。
いや、いつもデューデューがここまで来るのに、
この位は時間が掛かってるのかもしれないけど、
無事を確認するまでは心が流行って1分が永遠の様に感じられた。
「デューデュー!」
三度目呼んだ時に、
北の方からバサっと羽ばたく音がして
デューデューがビューッと言う風音を立ててやって来た。
地に舞い降りるなり、
「うるさい! 一度呼べば聞こえている」
いつもの様に一言言って、
今では普通の家だったら薙倒せるんじゃ無いかと言う様な
大きな翼を閉じた。
「デューデュー、無事だったんだ!
すごく心配したんだ!
どうして今日はこんなに時間がかかったの?!」
僕はデューデューに飛びついてその首に抱きついた。
僕の気のせいでなければ、
今日はデューデューを呼んでからここまで来る時間が
いつもより遅い。
デューデューは首を一振りすると、
「私は今朝は早くから狩りをしていた」
すまし顔でそう言い放った。
僕は目を丸々と見開くと、
「狩り?! 狩りって食べるために
生きてる動物を取ったりする?!」
僕はデューデューと狩りが結び付かず、
少し意外だと思った。
「何だ? 私が狩りをしては悪いのか?」
そう聞かれても、
やっぱりデューデューと狩りが結び付かない。
でもデューデューの答えは肩透かしだった。
アレだけ心配して気を揉んだのに、
まさか“狩”をしていたとは……
でも安心すると、
あの大きな体でウサギを追いかけていると思っただけで
笑いが込み上げて来た。
デューデューは僕をジーッと見据えると、
当たり前の様に
「私だって腹が空く。
そしたら食べ物を狩に行くのは当たり前だ。
ジェイドは私が霞を食べて生きているとでも思っていたのか?」
そこまで言われると、もう笑うしかない。
デューデューが無事だったのと相まって
僕は少しハイになった。
「いや、だってデューデューが
ウサギを追いかけてる姿が可笑しくって」
実際ウサギを狩っているわけでは無いだろうけど、
そう想像すると、可笑しくて、可笑しくて堪らなかった。
僕が笑いながらそう言うと、
デューデューはジトっと僕のことを睨んだ。
「そうだ! 笑ってる場合では無かった!
デューデューは今朝方森で凄い事が起きてた事知ってる?」
早速そう尋ねると、
デューデューが急に真面目顔になった。
「お前たちの騎士たちが大変な目にあったのは知っている。
今朝は早朝から森がやけに騒がしいとは思っていた」
デューデューはそう言うと、
”足跡“をじっと見た。
「デューデューは森に現れた魔物を見た?
凄く大きいって聞いたんだけど、
デューデューが狩をしてる所からでも見る事が出来た?」
そう尋ねると、
「いや、私は狩に夢中でそちらの方を見たわけではない。
ただ、騎士たちの戦う声が聞こえてきただけだ」
そう答えた。
「じゃあ、実際に魔物を見たわけではないんだ……」
デューデューが何か知っていればと期待したけど、
でも、それでよかったかもしれない。
もしデューデューがあの魔物に会ってたら、
デューデューでさえも勝てたかは分からない。
「でも、デューデューが無事で良かったよ」
「そうだな」
そう言ってデューデューは湖に続く足跡をもう一度見た。
「“あれ”の通った後は派手に木々を蹴散らしようだな」
やはりデューデューに取ってもそう見えるらしい。
デューデューでさえも密集した地に降り立つと、
木々が薙ぎ倒される。
でもこれほどでは無い。
「うん、あんな足跡を作りながら歩く魔物がいるなんて……
でも、デューデューが無事で本当によかった。
今日は無事を確かめに来ただけだから、
僕はもう行くね。
城に帰ってあの魔物の事を調べなくちゃ。
デューデューも気を付けてね。
何かわかったら、又来るから!」
そう言うと、
「一つだけ言っておくが、
見たわけでは無いから確かでは無いが、
恐らくこれは地の神、メルデーナだ」
と言い始めた。
「メルデーナ?」
「お前は魔神に付いて前に話していただろう?
私も伝え聞いただけだから
詳しい事は知らないが、
メルデーナは魔神の扉を管理する
四大元素に属する魔法を司る神の1人だ。
メルデーナは地=自然を模る魔法の神だ。
謂わば、お前の魔法の元祖になる。
それにメルデーナは聖龍と繋がっている」
「え??? 神?
それって良いの? 悪いの?
でも…魔神の扉を管理?!
それ、どう言う事?!」
「魔神の扉は地、空気、水、火の神によって管理されていると言う話だ。
“アレ”はその1人」
「じゃあ、良い神様なんだよね?
どうして騎士達を襲ったの?!」
「恐らくアレは呪われている。
あれに呪いをかけた人物がいると言う事だ」
デューデューの一言で
僕の全身の血の気がなくなった様な気がした。
「僕は急いで城に帰って父上にその事を報告する。
僕達人間がどうにか出来るか分からないけど、
でもメルデーナ?に呪いをかけたのは人間だよね?
だったら、僕達がどうにかしなきゃ!
デューデューも十分気をつけて!」
そう言い残すと僕達は城への道を急いだ。
でも僕はこの時湖へデューデューを呼び出した事で
ある事を知ってしまう事になる。
見上げた木の葉がカサカサと動き、
僕はビクッとして固まった。
木陰から
“チチチチチ”
と鳥が鳴いて飛び立つのでさえも
ビクビクとしている。
僕は僕の五感を持って
異常が起きている事を感じ取っていた。
ヒンヤリと冷や汗が背筋を伝って
流れ落ちていくのを感じた。
“一体何が起きてるんだ?!
何処から『アレ』は来たんだ?!”
その事だけが頭の中をグルグルとしていた。
湖の方に続く“足跡”はさらに僕の心を騒つかせた。
“デューデュー、無事でいて!”
何故かデューデューの事が気になる。
ダリルの方を見ると、
彼は未だリオンと話し込んでいた。
回復魔法で回復した騎士達は、
もう何の問題も無く忙しく動き回って
事後処理を行っていた。
僕は一国の王子だと言うのに
そこに立ち尽くすだけで
何の役にも立ってない。
これまで積み上げて来た教養が
如何に役に立ってないかを肌で感じていた。
“もっとしっかりしなくては!!”
そう思い頬をパンパンと叩くと、
「殿下、今日はデューデュー様に会うのは
お控えになったほうがいいかもしれません。
何の備えもしてしていませんし、
“アレに”対しての情報が無さすぎます。
危険すぎますし、
これ以上森を詮索するのは今日は無理でしょう。
先ずはお城へ帰り、
森に現れた魔物について詳しく調べましょう。
城の図書館、若しくは殿下のお持ちの書に
何か書き記してあるかもしれません」
処理を終えたダリルが僕のところに戻って来て
そう言ったけど、
何故かデューデューの事が気が気でなかった。
“もし、今日湖へ水を飲みに降りて来ていたら……
もし、森を彷徨っている時にあの魔物に出会ったら……”
そう言う思いが頭の中をグルグルと駆け巡る。
デューデューに取って今はまだ何もなくとも、
少なくともあの魔物について伝える事が出来る。
でもダリルの言うことも最もだ。
僕は選択をしなければならなかった。
諦めて引き返すのか、
湖へデューデューに会いにいくのか。
確かに僕達は今日現れた魔物について何も知らない。
僕は急ピッチで考えていた。
“もし『あれ』が湖へ行ったとして、
何のために?
湖のほうがくは、
ただ目的地への通り道だったのか?
もしそうだとすると、
もうそこには居ないだろう。
でも、もし未だ湖に居るとすると?
リオンの話しでは、
かなりの大きさの魔物らしい。
そこまで大きいと、
きっと遠くからでも見えるはずだ。
僕は目もかなり良い。
遠くまで見渡す事が出来る。
その僕が見えないのだから、
今ではもうここら付近には居ないはずだ。
だから湖へいっても、
危険性は少ない!
それにあの『足跡』が
何処まで続いているのかも気になる所だ。”
そう思うと、好奇心も手伝って段々と湖へ行っても
大丈夫な様な気がして来た。
「ダリルの言う事は最もだけど、
僕、やっぱり湖に行ってみる。
多分その魔物はこの辺りにはもう居ないと思う」
僕がそう言うと、
ダリルは深いため息を吐いた。
「それでは私もお供させて頂きます」
ダリルは僕が一度言い出すと
引かないと言う事を知っている。
ダリルはリオンの所へもどると、
捜索部隊は城に戻って
報告と対策をする様に伝えると、
「お待たせ致しました」
そう言って僕の元へ来た。
「僕の我儘に付き合わせてごめん。
でもありがとう」
そう言うと、ダリルに向かって
コクリと小さく頷いて、木の枝に飛び乗った。
リオンは僕達が一緒に城に戻らず、湖へ行く事をしると、
僕達が湖へ行く事を必死で止めたけど、
止める事が出来ないとわかるともう何も言わなかった。
「お気をつけて行って下さい。
無事のお帰りをお待ちしております」
そう言うと、深く頭を下げた。
僕が木に飛び乗った時は流石にビックリして居たけど、
僕はもう自分の力を隠しておく事は不必要だと思った。
こんな魔物が出てくると言う事は、
きっとこの力が国や民を守るために必要になる。
そんな時にこの力を使わないほど
僕は臆病ではないし、
民を守る義務にあるこの国の王子だと言う自覚はある。
僕は木に飛び乗ると、素早く
枝から枝に、木から木へと飛び移ると、
ダリルより一足先に湖へと辿り着いた。
湖は相変わらずにキラキラとしたその湖面を
僕の前に晒し出した。
あの魔物の
“足跡”
を途中からずっと追って来たけど、
やはり魔物は湖の方まで来て居た。
でも不思議な事に、その
“足跡”
は、湖の所でプツリと途切れて居た。
僕は決っして小さくは無いその湖の周りを一周して見た。
でもそこ以外、“足跡”を見つける事は無かった。
確かに湖の所までは足跡が地面に沈んだん様に付いている。
“湖に入って溺れた?
まさか……
そう言えばリオンは
『大きな妖精』
と言って居た。
と言う事は魔物には羽が生えてる?
空か?!”
そう思って上を見た。
少なくとも巨大な何かが空を飛んでいる様な気配はない。
僕は安全を確認して大声で
「デューデュー! 居たら返事して!
デューデュー! 僕は今、湖だよ!
デューデュー、無事なの?!
僕の所へ来て!」
そう叫んだ。
叫んでいるうちにダリルも僕に追いついたけど、
彼は直ぐに途切れた足跡に気付き、
その辺りを調べ出した。
僕はデューデューの住処がある方をジーッと見つめた。
姿が見えるまで安心できない。
「デューデュー!」
呼んでもデューデューが来ない。
いや、いつもデューデューがここまで来るのに、
この位は時間が掛かってるのかもしれないけど、
無事を確認するまでは心が流行って1分が永遠の様に感じられた。
「デューデュー!」
三度目呼んだ時に、
北の方からバサっと羽ばたく音がして
デューデューがビューッと言う風音を立ててやって来た。
地に舞い降りるなり、
「うるさい! 一度呼べば聞こえている」
いつもの様に一言言って、
今では普通の家だったら薙倒せるんじゃ無いかと言う様な
大きな翼を閉じた。
「デューデュー、無事だったんだ!
すごく心配したんだ!
どうして今日はこんなに時間がかかったの?!」
僕はデューデューに飛びついてその首に抱きついた。
僕の気のせいでなければ、
今日はデューデューを呼んでからここまで来る時間が
いつもより遅い。
デューデューは首を一振りすると、
「私は今朝は早くから狩りをしていた」
すまし顔でそう言い放った。
僕は目を丸々と見開くと、
「狩り?! 狩りって食べるために
生きてる動物を取ったりする?!」
僕はデューデューと狩りが結び付かず、
少し意外だと思った。
「何だ? 私が狩りをしては悪いのか?」
そう聞かれても、
やっぱりデューデューと狩りが結び付かない。
でもデューデューの答えは肩透かしだった。
アレだけ心配して気を揉んだのに、
まさか“狩”をしていたとは……
でも安心すると、
あの大きな体でウサギを追いかけていると思っただけで
笑いが込み上げて来た。
デューデューは僕をジーッと見据えると、
当たり前の様に
「私だって腹が空く。
そしたら食べ物を狩に行くのは当たり前だ。
ジェイドは私が霞を食べて生きているとでも思っていたのか?」
そこまで言われると、もう笑うしかない。
デューデューが無事だったのと相まって
僕は少しハイになった。
「いや、だってデューデューが
ウサギを追いかけてる姿が可笑しくって」
実際ウサギを狩っているわけでは無いだろうけど、
そう想像すると、可笑しくて、可笑しくて堪らなかった。
僕が笑いながらそう言うと、
デューデューはジトっと僕のことを睨んだ。
「そうだ! 笑ってる場合では無かった!
デューデューは今朝方森で凄い事が起きてた事知ってる?」
早速そう尋ねると、
デューデューが急に真面目顔になった。
「お前たちの騎士たちが大変な目にあったのは知っている。
今朝は早朝から森がやけに騒がしいとは思っていた」
デューデューはそう言うと、
”足跡“をじっと見た。
「デューデューは森に現れた魔物を見た?
凄く大きいって聞いたんだけど、
デューデューが狩をしてる所からでも見る事が出来た?」
そう尋ねると、
「いや、私は狩に夢中でそちらの方を見たわけではない。
ただ、騎士たちの戦う声が聞こえてきただけだ」
そう答えた。
「じゃあ、実際に魔物を見たわけではないんだ……」
デューデューが何か知っていればと期待したけど、
でも、それでよかったかもしれない。
もしデューデューがあの魔物に会ってたら、
デューデューでさえも勝てたかは分からない。
「でも、デューデューが無事で良かったよ」
「そうだな」
そう言ってデューデューは湖に続く足跡をもう一度見た。
「“あれ”の通った後は派手に木々を蹴散らしようだな」
やはりデューデューに取ってもそう見えるらしい。
デューデューでさえも密集した地に降り立つと、
木々が薙ぎ倒される。
でもこれほどでは無い。
「うん、あんな足跡を作りながら歩く魔物がいるなんて……
でも、デューデューが無事で本当によかった。
今日は無事を確かめに来ただけだから、
僕はもう行くね。
城に帰ってあの魔物の事を調べなくちゃ。
デューデューも気を付けてね。
何かわかったら、又来るから!」
そう言うと、
「一つだけ言っておくが、
見たわけでは無いから確かでは無いが、
恐らくこれは地の神、メルデーナだ」
と言い始めた。
「メルデーナ?」
「お前は魔神に付いて前に話していただろう?
私も伝え聞いただけだから
詳しい事は知らないが、
メルデーナは魔神の扉を管理する
四大元素に属する魔法を司る神の1人だ。
メルデーナは地=自然を模る魔法の神だ。
謂わば、お前の魔法の元祖になる。
それにメルデーナは聖龍と繋がっている」
「え??? 神?
それって良いの? 悪いの?
でも…魔神の扉を管理?!
それ、どう言う事?!」
「魔神の扉は地、空気、水、火の神によって管理されていると言う話だ。
“アレ”はその1人」
「じゃあ、良い神様なんだよね?
どうして騎士達を襲ったの?!」
「恐らくアレは呪われている。
あれに呪いをかけた人物がいると言う事だ」
デューデューの一言で
僕の全身の血の気がなくなった様な気がした。
「僕は急いで城に帰って父上にその事を報告する。
僕達人間がどうにか出来るか分からないけど、
でもメルデーナ?に呪いをかけたのは人間だよね?
だったら、僕達がどうにかしなきゃ!
デューデューも十分気をつけて!」
そう言い残すと僕達は城への道を急いだ。
でも僕はこの時湖へデューデューを呼び出した事で
ある事を知ってしまう事になる。
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☆第11回BL小説大賞 21位
皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。
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