セピア色の秘め事

樹木緑

文字の大きさ
上 下
21 / 52

第21話 茉莉花さんの乱入

しおりを挟む
「そっか~ サムにも色々あるんだね~」

陽向に言われ、益々申し訳ない気持ちになった。

陽向こそ、辛い目に遭っているのに、
前向きに明るく生きている。

きっと光のサポートが素晴らしいのだろう。

僕にもジュンがいてくれたら……

否応なしに彼の事を思い起こさせる。

「なぁ、もしかしてお前も良いところの坊ちゃんで
お家騒動に巻き込まれたとか言う口なのか?

俺らみたいにお見合い、お見合い、お見合いみたいな?」

そう仁に言われ、
彼の顔を見上げた。

“何だろう? 仁から感じるこのバイブは……”

初めて仁に会ったときから、
僕には彼から感じる何かがあった。

先ず、最初から彼はキラキラとしていた。

それに仁に触れたときに、静電気にも似たような、
まるで雷にでも打たれたような電撃を受けた事は……

僕が仁の質問に躊躇していると、

「あら~ そう言うことだったら、
仁がお相手してあげれば?

悪い虫も良けれて良いんじゃない?

日頃から寄ってくる虫がうるさいって言ってたでしょう?

それに、その間そのジュンちゃんも探してあげれば!

ほら! ウィン、ウィンじゃない!

私ってあったま良い~」

と背後から茉莉花さんが声をかけてきたので、
僕たち四人は怪談話でもしていたかのように

「ギャー!」

と悲鳴を上げて驚いた。

“え?! この人、一体どこから湧いて出たの?!

マジシャン?!”

そうドギマギとしていると、

「しーっ、声を下げて!
セキュリティーがきちゃうわよ!」

と言う茉莉花さんのセリフに、
陽向は苦笑いしながら頭をかいていたけど、
後の二人は

“ムッキ~ッ!”

としたように静かに茉莉花さんを睨みつけていた。

「ほら、ほら、若人よ。
人類皆兄弟!
困った事があったら助けあわないとね!」

と何のこっちゃみたいなセリフで彼女はこの場を仕切り出した。

どこから持ってきたのかペンとメモを取り出すと、

「それで、それで?

ジュン君っていう意外に分かっている事は?」

と早速メモを取り始め、
僕は何が何だか訳が分からなくなり陽向の方を向いた。

何故陽向の方を向いたのか分からないけど、
きっと彼は僕の戸惑いを分かってくれると思ったからだろう。

僕が陽向に目をやると、陽向は陽向で、

”でしょう?“

とでも言う様に僕に目配せをしていた。

“フ~ッ、そいう言う事か……”

何となく察して、僕もクスッと笑うと、
メモを一生懸命取る茉莉花さんに
色々と覚えてる限りの情報を提供した。

「先ず彼はジュンという名前。

恐らく光たちと同級か、
一つ上か下くらい。

二人は兄弟かわからないけど、
血縁なのは確実。

どちらも彼女は甥と呼んでいたから。

彼女はボストンから東京に引っ越して、
甥達は近くに住んでいると言っていた。

だから彼らの家族はこの東京に住んでいる」

僕が持っている情報はそんなもんだ。

「うーん、これだけじゃねえ~

彼女の名前は忘れちゃったのよね?

家族の名字とか覚えてる? 他には何かないの?」

そう茉莉花さんに聞かれちょっと思い出してみようとしたけど、
何も出てこない。

「僕、日本人の名前は難しくって、
名字なんてあの頃の僕には宇宙語のようで……

ジュンの名前もちゃんと発音できなくって、
何度も、何度も茉莉花さんと練習して……」

「そっか~

名字が分かってたらなんとかなったかもしれないんだけどね~

これだけだとちょっと難しいかも?!

でも浩二お祖父ちゃんや陽一お祖母ちゃんも
アメリカに住んでたことあるのよね~

彼らもボストンに住んでたから、
向こうの日本人繋がりで何かわかるかもしれないけど、
その方の写真か何かないの?

お祖父ちゃんに見せれば何かわかるかも?!」

茉莉花さんにそう尋ねられ、

「あ、僕、彼らの写真があります!

僕のマンションにあるんだけど……

彼らの写真ではあまり役には立たないかな?」

そういうと、

「いや、無いよりはましかも?!

じゃあ、俺らでちょっくら行ってみるか?」

という流れになってきたので、

「今からですか?!」

と彼等の行動力の速さにびっくりした。

「まあ、お前の事情は分かった、
恋人役が必要なこともわかった。

その事はまずは置いといても、
取り敢えずお前の家に行って、
その写真とやらを見てみるぞ」

そう仁に言われ、僕達は会場を後にした。

流石に今日のパーティーのメインである茉莉花さんは抜けられず、
示談場を踏みながら、

「ちゃんと中途報告するのよ!」

と悔しそうに念を押され、僕たちはマンションに向かった。

「此処だよ」

そう言ってマンションの前に立ち止まると、
皆で上を見上げた。

「朝に良く会うから、
近くに住んでいる事は分かってたけど、
そっか、此処に住んでいたのか~

でもここって……」

陽向が何かを言いかけた時に
光がそれを遮った。

「ここがどうかしたの?」

少し気になって尋ねてみたけど、

「ううん、何でもない」

そう言って陽向がエントランスを潜った。

「此処ら辺って家族が多いのに、
何故シングルのサムがここ?」

恐らく陽向にとっては素朴な疑問だったのだろうけど、
僕に取っては説明難い質問だ。

でもその質問は、光の

「余り人のプライバシーに踏み入るんじゃない」

という叱責で流れたので僕に取っては良かった。
でも陽向には悪い事をした。

僕に後ろめたい事がなければ直ぐにでも答えられる質問なのに、
僕はすまない気持ちでいっぱいだった。

でも僕の彼らに済まないと思う気持ちは、
家のドアを開けるのと同時に恐怖へと変わった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

僕の平凡生活が…

ポコタマ
BL
アンチ転校生によって日常が壊された主人公の話です 更新頻度はとても遅めです。誤字・脱字がある場合がございます。お気に入り、しおり、感想励みになります。

Endless Summer Night ~終わらない夏~

樹木緑
BL
ボーイズラブ・オメガバース "愛し合ったあの日々は、終わりのない夏の夜の様だった” 長谷川陽向は “お見合い大学” と呼ばれる大学費用を稼ぐために、 ひと夏の契約でリゾートにやってきた。 最初は反りが合わず、すれ違いが多かったはずなのに、 気が付けば同じように東京から来ていた同じ年の矢野光に恋をしていた。 そして彼は自分の事を “ポンコツのα” と呼んだ。 ***前作品とは完全に切り離したお話ですが、 世界が被っていますので、所々に前作品の登場人物の名前が出てきます。***

毒/同級生×同級生/オメガバース(α×β)

ハタセ
BL
βに強い執着を向けるαと、そんなαから「俺はお前の運命にはなれない」と言って逃げようとするβのオメガバースのお話です。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき
BL
 族の総長と副総長の恋の話。  アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。  その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。 「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」  学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。  族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。  何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

愛され末っ子

西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。 リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。 (お知らせは本編で行います。) ******** 上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます! 上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、 上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。 上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的 上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン 上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。 てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。 (特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。 琉架の従者 遼(はる)琉架の10歳上 理斗の従者 蘭(らん)理斗の10歳上 その他の従者は後々出します。 虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。 前半、BL要素少なめです。 この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。 できないな、と悟ったらこの文は消します。 ※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。 皆様にとって最高の作品になりますように。 ※作者の近況状況欄は要チェックです! 西条ネア

僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ

樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー 消えない思いをまだ読んでおられない方は 、 続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。 消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が 高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、 それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。 消えない思いに比べると、 更新はゆっくりになると思いますが、 またまた宜しくお願い致します。

処理中です...