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第35話 面接結果
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“大草原が見えて来そうな冠ですね”
そう言われた途端、僕の目の前にイメージが広がった。
小さい女の子がキャッキャと笑いながら、
大草原で花輪を作っていた。
そして満面の笑みで僕を見て、
その小さな手を差し出した。
「お兄ちゃん! これあげる!」
差し出された手には僕の今作ったばかりの花輪が持たれていた。
僕は思いがけもしないそのシーンに顔をゆがめた。
「どうしたんですか?」
その人に再度声を掛けられ、ハッとして現実に戻った。
「いえ、すみません!」
そう言って横を振り向くと、他の面接者たちが、
シラ~ッとしたようにして、
“早く答えなよ!”
とでも言う様に僕の事を見ていた。
僕はもう一度面接官の方を向くと、
「これは…… ある人をイメージして作ったんです」
と、そう答えた。
「ある人とは恋人ですか?」
「いえ! 恋人ではないんですが……
凄く花が好きな人で……
大草原でいつも花を摘んで遊んでいるような人で……
その人が花輪を作るのが好きで……
凄く花輪の似合う人で……
僕にとってはその人が特別な人だったので……
同じように作れないかなって……
すみません!
何だか支離滅裂な受け答えになってしまって……」
慌ててそう答えると、
面接官は僕にニコリとほほ笑んで、
「そうですか……
私にもこの冠のイメージそのままの様な特別な人が居ました。
今長谷川君の言ったように花が大好きで、
花冠がとても似合う人でした……
この花冠は私に彼女の事を思い出させてくれました。
ありがとう」
とびっくりするような返答が帰って来た。
“なんだろう? この感覚は?”
僕は今回の面接といい、
去年の夏のバイトといい、
なんだか、わけのわからないような感覚を覚えた。
“僕が去年の夏にバイトに受かったのも、
今回の面接に来れたのも、
ただの偶然なのだろうか?”
何か見えない力が絡んでるいるような感覚さえする。
そんなことをぼんやりと考えているうちに第二次面接は終了した。
「今日はワザワザお越しいただき有り難うございました。
30分ほどお時間をいただき、結果を発表させていただきます」
そう言って面接官たちは席を立った。
結果は後にメールで送られてくるものだとばかり思っていたので、
その場で発表されることにとても驚いた。
ドキドキとして、その30分は僕の人生の中で
一番長く感じる30分だった。
手に冷や汗をかきながら握りしめていると、
面接官たちが部屋に入って来た。
僕たちは一斉に起立し、
面接官たちが席に着くのを待った。
「どうぞご着席下さい」
そう言われ、僕たちは一礼すると席に着いた。
「皆さんの作品は……」
そう言って最終発表の前置きが始まったかと思うと、
早くも採用の決定が発表された。
その人の名前が呼ばれた。
“春山柚香さん”
その瞬間周りでは、ワッというようなざわめきが響き渡った。
まるでミスコンテストにでも選ばれた瞬間様に。
春山さんは口に両手を当ててワナワナと震えていた。
その姿が僕には異様で、
何故ただのバイトに……?という思いがぬぐい切れなかった。
でも彼らが先ほど話していたように、
これはバイトだけど、ただのバイトではないのかもしれない。
他の人より軽い気持ちで挑んだ僕が受かるとは思っていなかったけど、
少し前に僕を取り巻く環境に特別な感情を覚えたばかり。
少しの期待はあった。
でも選ばれたのは僕ではなかった。
あの時に感じた特別な思いは勘違いだったのかもしれない。
受かるとは思っていなかったけど、
何故かとても悲しかった。
横では春山さんの、
「はい! 頑張ります!
ありがとうございました」
という嬉しそうな声が聞こえてきた。
はっきり言って羨ましかった。
そして悔しかった。
もっと最初からこのバイトについて下調べをしておくべきだった。
そう思っても後の祭りだ。
でも分からないながらも、
自分で出来る事を思いっきりやれて凄く嬉しかった。
チャレンジして良かったと思った。
僕が落ちたので、周りの人たちの僕に対する反応も少し和らいだ様な気がした。
発表の後は、
“残念だったね”
と声さえ掛けられた。
途中経過からすると考えられない事だ。
まあ僕からすると、
この人達とは二度と会わないだろうから
そんな事はどうでも良かったのだけど……
“仕方ない……
方付けて帰りの準備しよ……
今日は頑張った僕へのご褒美に何か美味しい物でも食べていこうかな……”
そう思いながら帰りの準備に取り掛かった時に、
「長谷川君、ちょっと良いかな」
と声をかけられたので、
声のする方を振り向くと、
僕の花輪に対して共感を示していた
審査員人がそこに立っていた。
急に声を掛けられたのでびっくりした。
「あ、はい! 何でしょうか?」
そう尋ねると、
「長谷川君は確か今、専門学生だよね?」
「はい! 東京トータルビジネス学園の
フラワー・コーディネート課に所属しています!」
そう答えると、名刺を渡され、
「明日、このオフィスに朝の11時ごろ来ることができだろうか?
少し話したいことがあるんだが……」
と尋ねられた。
名刺を見ると、
“ブライダル インフィニティ
代表取締役 嵯峨野篤志”
とあった。
“一体ブライダルの社長が僕に何の用だろう?”
と思ったけど、とりあえずは
「はい! 必ず!」
と答えて彼の名刺をポケットの中に仕舞った。
そう言われた途端、僕の目の前にイメージが広がった。
小さい女の子がキャッキャと笑いながら、
大草原で花輪を作っていた。
そして満面の笑みで僕を見て、
その小さな手を差し出した。
「お兄ちゃん! これあげる!」
差し出された手には僕の今作ったばかりの花輪が持たれていた。
僕は思いがけもしないそのシーンに顔をゆがめた。
「どうしたんですか?」
その人に再度声を掛けられ、ハッとして現実に戻った。
「いえ、すみません!」
そう言って横を振り向くと、他の面接者たちが、
シラ~ッとしたようにして、
“早く答えなよ!”
とでも言う様に僕の事を見ていた。
僕はもう一度面接官の方を向くと、
「これは…… ある人をイメージして作ったんです」
と、そう答えた。
「ある人とは恋人ですか?」
「いえ! 恋人ではないんですが……
凄く花が好きな人で……
大草原でいつも花を摘んで遊んでいるような人で……
その人が花輪を作るのが好きで……
凄く花輪の似合う人で……
僕にとってはその人が特別な人だったので……
同じように作れないかなって……
すみません!
何だか支離滅裂な受け答えになってしまって……」
慌ててそう答えると、
面接官は僕にニコリとほほ笑んで、
「そうですか……
私にもこの冠のイメージそのままの様な特別な人が居ました。
今長谷川君の言ったように花が大好きで、
花冠がとても似合う人でした……
この花冠は私に彼女の事を思い出させてくれました。
ありがとう」
とびっくりするような返答が帰って来た。
“なんだろう? この感覚は?”
僕は今回の面接といい、
去年の夏のバイトといい、
なんだか、わけのわからないような感覚を覚えた。
“僕が去年の夏にバイトに受かったのも、
今回の面接に来れたのも、
ただの偶然なのだろうか?”
何か見えない力が絡んでるいるような感覚さえする。
そんなことをぼんやりと考えているうちに第二次面接は終了した。
「今日はワザワザお越しいただき有り難うございました。
30分ほどお時間をいただき、結果を発表させていただきます」
そう言って面接官たちは席を立った。
結果は後にメールで送られてくるものだとばかり思っていたので、
その場で発表されることにとても驚いた。
ドキドキとして、その30分は僕の人生の中で
一番長く感じる30分だった。
手に冷や汗をかきながら握りしめていると、
面接官たちが部屋に入って来た。
僕たちは一斉に起立し、
面接官たちが席に着くのを待った。
「どうぞご着席下さい」
そう言われ、僕たちは一礼すると席に着いた。
「皆さんの作品は……」
そう言って最終発表の前置きが始まったかと思うと、
早くも採用の決定が発表された。
その人の名前が呼ばれた。
“春山柚香さん”
その瞬間周りでは、ワッというようなざわめきが響き渡った。
まるでミスコンテストにでも選ばれた瞬間様に。
春山さんは口に両手を当ててワナワナと震えていた。
その姿が僕には異様で、
何故ただのバイトに……?という思いがぬぐい切れなかった。
でも彼らが先ほど話していたように、
これはバイトだけど、ただのバイトではないのかもしれない。
他の人より軽い気持ちで挑んだ僕が受かるとは思っていなかったけど、
少し前に僕を取り巻く環境に特別な感情を覚えたばかり。
少しの期待はあった。
でも選ばれたのは僕ではなかった。
あの時に感じた特別な思いは勘違いだったのかもしれない。
受かるとは思っていなかったけど、
何故かとても悲しかった。
横では春山さんの、
「はい! 頑張ります!
ありがとうございました」
という嬉しそうな声が聞こえてきた。
はっきり言って羨ましかった。
そして悔しかった。
もっと最初からこのバイトについて下調べをしておくべきだった。
そう思っても後の祭りだ。
でも分からないながらも、
自分で出来る事を思いっきりやれて凄く嬉しかった。
チャレンジして良かったと思った。
僕が落ちたので、周りの人たちの僕に対する反応も少し和らいだ様な気がした。
発表の後は、
“残念だったね”
と声さえ掛けられた。
途中経過からすると考えられない事だ。
まあ僕からすると、
この人達とは二度と会わないだろうから
そんな事はどうでも良かったのだけど……
“仕方ない……
方付けて帰りの準備しよ……
今日は頑張った僕へのご褒美に何か美味しい物でも食べていこうかな……”
そう思いながら帰りの準備に取り掛かった時に、
「長谷川君、ちょっと良いかな」
と声をかけられたので、
声のする方を振り向くと、
僕の花輪に対して共感を示していた
審査員人がそこに立っていた。
急に声を掛けられたのでびっくりした。
「あ、はい! 何でしょうか?」
そう尋ねると、
「長谷川君は確か今、専門学生だよね?」
「はい! 東京トータルビジネス学園の
フラワー・コーディネート課に所属しています!」
そう答えると、名刺を渡され、
「明日、このオフィスに朝の11時ごろ来ることができだろうか?
少し話したいことがあるんだが……」
と尋ねられた。
名刺を見ると、
“ブライダル インフィニティ
代表取締役 嵯峨野篤志”
とあった。
“一体ブライダルの社長が僕に何の用だろう?”
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