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番外編:ショウタとくみちゃんと…あの人達
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「とおっ! 変身、仮面タイガーホワイトッ!」
僕はすべり台の半分くらいの高さから飛び降りたんだ。
すると、着地の瞬間に砂が飛んで砂場で遊んでいたちっちゃな女の子にかかっちゃった。
「なにすんのよっ! もうっ!」
女の子の背中に砂がかかった様だった。
僕は慌てて女の子に駆け寄った。
「ごめん、ごめん… 大丈夫かい?」
「なによう! あたちのおきにいりのふくにすながかかったじゃないの!」
女の子はカンカンに怒っているけど、元からその子の服は砂と泥で汚れてたんじゃないか。
僕がかけた砂なんて、ほんの少しだもん。
それにしても、この子はどこの子かな?
この近くであんまり見かけないけど…
僕の名前はショウタって言うの。
5歳の保育園児なんだ。
この公園の前に建ってる12階建てのマンションにママとヒビキと住んでるんだよ。パパは死んじゃったの…
ヒビキっていうのは僕の弟だよ、まだ赤ちゃんなんだ。
今日はママのお仕事がお休みで、ぼくはこの公園で遊んでるんだ。
今、ママはヒビキとお昼寝してるの。
さっきまで同じ保育所の男の子と公園で遊んでたんだよ。でも、その子のママが迎えに来て一緒に帰っちゃった。
それからは、僕一人で仮面タイガー・ホワイトごっこしてたんだよ。
僕の大好きなヒーローのおじさんなんだ。
この前ね、僕とヒビキをワニ怪人から助けてくれたんだよ。
ホントなんだから。
ワニ怪人は僕達を食べようとしたんだ。
すごく怖くて、僕は屋上からヒビキを抱いて飛び降りたんだけど、仮面タイガー・ホワイトが飛んで来て助けてくれたんだ。
帰って行く時は、5階から飛び降りてたんだけど平気だったみたい。
すごかったよ、僕びっくりしちゃったんだ。
僕は仮面タイガー・ホワイトと約束したんだ。
ママの言う事を聞いて、好き嫌いしないで食べて、ヒビキの面倒をよく見たら僕もヒーローになれるっておじさんが言ってたんだ。
それから僕はちゃんと毎日おじさんとの約束を守ってるよ。
それにしても… この女の子、まだ僕の事にらんでる。
どこの子なんだろう?
「まったく… レディーにすなをかけるなんて…
さいてーね、あんた。としうえのくせに…」
まだ女の子はブツブツ言ってる。
「ごめんよ、ホントに… ねえ、僕はショウタだけど君の名前は?」
答えてくれるか分からないけど、僕はその子に聞いてみた。
「あたち? あたちはくみっていうのよ。いいなまえでちょ?」
どうも自分の名前は好きらしかったんだ。
「僕は5歳だけどくみちゃんは?」
今度も答えてくれるだろうと僕は安心して聞いてみた。
「なによ! レディーにとちなんかきいたらダメでちょ!」
今度は怒られちゃった。
「3ちゃいよ…」
ちょっと恥ずかしそうにボソッと教えてくれた。僕より2歳下だ。
「ねえねえ、さっきいってた『かめんたいだー』ってなに?」
くみちゃんは気になってたみたいで僕に聞いてきた。
「仮面タイガー・ホワイトだよ。
正義のヒーローの仮面タイガー・ホワイト!」
僕はちょっと誇らしげに言ったんだ。だって、僕のヒーローだもん。
「なに、ちょれ? ひーろーってガキね…あんた。」
くみちゃんが冷たい目で見ながら僕に言った。
「くみちゃんこそ、何だよそれ? 僕の方が2歳もお兄ちゃんじゃないか!」
僕はちょっと悔しくて、大声で言ってやったんだ。
「おんなのこのほうがおとななのよ、そんなこともちらないの?」
反対に、くみちゃんにバカにされちゃった。
「何だよ… 仮面タイガー・ホワイトはホントにいるんだぞ。
だって僕を助けてくれたし、悪いワニ怪人をやっつけてくれたんだ。
ホントだもん。」
僕はちょっと泣きそうになった。ホントに悔しかったんだ。
「あたちだって、ヒーローちってるわよ。」
くみちゃんが突然に意外な事を言ったんだ。
「ホント? どんなヒーロー?」
僕は悔しいのも忘れて聞いてみた。僕はヒーローが大好きなんだもん。
「あたちのともだちよ。ニケちゃんっていうんだから。」
くみちゃんはドヤ顔で言った。
「ニケちゃん…? 知らないなあ…?」
そんな名前のヒーローなんて知らないや… うん、やっぱり知らない。
「どんなヒーローなの?」
「あんた、ちらないの? ニケちゃんはすごいんだから。
ぎんいろのはねで、おそらをとぶのよ。それにおめめからあおいひかりをだすの。」
くみちゃんがすごく得意げに話すもんだから、僕も興味が出て来ちゃった。
「へええ、空を飛べるのか… それに目から青い光を出すんだね。
すごいな… レーザービームかな?」
僕はワクワクしてきちゃった。
「カッコいいな… すごいんだね、そのおじさんは。」
僕がくみちゃんにそう言うと、くみちゃんはキョトンとしてるんだ。
「どうしたの?」
「ショウタちゃん… あんた、なにいってるのよ?ニケちゃんはおんなよ、おばちゃんなの!」
くみちゃんは、怒ってるようなしゃべり方だったけど笑っていた。
その時だ…
「キキーッ! ドンッ!」
大きな音がしたから僕とくみちゃんは振り返った。
そしたらね、公園の後ろにある道を走ってた自転車が止まってた大きな車にぶつかってたんだ。
自転車にはセーラー服のキレイなおねえちゃんが乗ってたよ。
そのおねえちゃんはね… 髪の毛は長くてキレイな栗色で、僕がびっくりしたのは目が青いんだ。外国の人なのかな…?
ぶつけられた車から男の人が出て来た。車はT社のラン〇クルーザーだった。おっきくてカッコイイ車。
僕の好きな車なんだ。僕、トミカで持ってるから知ってるよ。
おじさんが言った。
「大丈夫かい、お嬢さん? 怪我はない?」
ぶつけられたのは、おじさんの車の方なのに優しく聞いてあげてる。
いいおじさんなんだ…
でも… この声… 聞いたことがある…
どこでだったろう…?
「私がよそ見してたんです… 本当にすみませんでした。
車は大丈夫でしょうか…?」
青い目のお姉ちゃんが車を見て、心配そうにおじさんに謝ってた。
二人とも相手に優しい話し方をする人達だな…
自分じゃなくて相手の心配ばっかりしてるよ。二人ともいい人達なんだね、きっと。僕は少し嬉しくなった。
「ああ… この車なら何の心配も無いさ。ダンプカーがぶつかっても壊れるのは向こうの方だからね。とても頑丈に出来てるタフなヤツだから。
なっ、『ロシナンテ』。」
おじさんがお姉ちゃんに優しく言ってる。
でも…やっぱり、この声…
最近聞いた気がする…
「気を付けてな、お嬢さん。よそ見してると君が怪我するぜ。それじゃあ、これで。」
って言いながらおじさんが僕の方を見た。僕と目が合ったんだ。
「おっ、ショウタじゃないか。公園で遊んでるのか?」
「…?」
どうして僕の名前を知ってるんだろう? 僕は知らないよ。おじさんとは初めて会ったのに…?
お姉ちゃんの方もこっちを見て驚いた様だった。
「まあ、くみちゃんじゃない!」
お姉ちゃんは、くみちゃんの知り合いみたいだ。
「あっ、ニケちゃんだ! ねえ、あのおねえちゃんがニケちゃんだよ。」
僕の方を見てくみちゃんがそう言った。
僕はキレイなお姉ちゃんを見て思った。
『目は青いけど…普通の人間のお姉ちゃんじゃないか… どこがヒーローなんだよ。』
「ニケちゃん、どこいくの?」
お姉ちゃんはくみちゃんに答えた。
「えっ、うん… ちょっと用事でね。」
くみちゃんとお姉ちゃんが話し出した。
僕はおじさんに気になった事を聞いてみた。
「おじさん、僕…おじさんの事を知らないんだけど…」
「あっ、ああ… そ、そうだったな… ええっと…そうだ、おじさんはママの知り合いなんだ。そう、そうだよ…
で…ママにショウタの話を聞いて写真も見せてもらったんだ。だからショウタの事を知ってるんだ。」
なんか、おじさんは慌ててたみたいだけど…そう僕に説明した。
「ふうん、ママの友達なのか…」
僕はちょっと納得できなかったけど、まあ悪い人じゃなさそうだ。
「ママに用事? 今、お部屋でヒビキと寝てるけど…」
僕がそう言うとおじさんは慌てた様に手を振った。
「い、いいよ… 今日は通りかかっただけだから、ママは寝かせておいてあげるんだ。ママはお仕事で疲れてるんだからな。」
僕はやっぱりこのおじさんはいい人なんだなって思って、ちょっとうれしくなった。
「じゃあな、ショウタ。おじさんはもう行くよ。」
そうおじさんが言って僕に手を振った。そして車に乗り込んだんだ。
でも…あの手の振り方… どこかで… 僕はまた考えちゃった。
「バタンッ、ブルルンッ!」
ドアが閉まって、おじさんはエンジンをかけた。
それで運転席の窓を開けて、僕にまた手を振ってから車を発車させた。
「ああーっ! あの声…あの手の振り方… それにあの車…
仮面タイガー・ホワイトだ!」
僕は大声を出して遠ざかって行く車に手を振った。
車が行っちゃってから、僕は思い出したんだ。
「あの声は… 絶対に仮面タイガー・ホワイトだった…
あのおじさんが…僕のヒーローだったんだ…」
僕は車が角を曲がった後もずっと見ていた。
「じゃあね、くみちゃん… バイバイ。」
その声で、僕はくみちゃんとお姉ちゃんに気が付いた。
「うん、またね… ニケちゃん、バイバイ。」
そう言って手を振るくみちゃんを後にして、お姉ちゃんは自転車で走り出したんだ。僕にも笑って手を振ってくれたよ。
僕もちょっと好きになっちゃった…
「キレイな人だね、あのお姉ちゃん…」
僕は去って行くお姉ちゃんを見ながら、くみちゃんに言った。
「まあね… でもそらをとぶのよ。」
まだ言ってる。あのお姉ちゃんはキレイだけど、やっぱりただの女の人だよ。
でも、僕の方のあのおじさんは…
「絶っっ対に、仮面タイガー・ホワイトだっ!」
僕の大声にくみちゃんはびっくりしてた。
僕はすべり台の半分くらいの高さから飛び降りたんだ。
すると、着地の瞬間に砂が飛んで砂場で遊んでいたちっちゃな女の子にかかっちゃった。
「なにすんのよっ! もうっ!」
女の子の背中に砂がかかった様だった。
僕は慌てて女の子に駆け寄った。
「ごめん、ごめん… 大丈夫かい?」
「なによう! あたちのおきにいりのふくにすながかかったじゃないの!」
女の子はカンカンに怒っているけど、元からその子の服は砂と泥で汚れてたんじゃないか。
僕がかけた砂なんて、ほんの少しだもん。
それにしても、この子はどこの子かな?
この近くであんまり見かけないけど…
僕の名前はショウタって言うの。
5歳の保育園児なんだ。
この公園の前に建ってる12階建てのマンションにママとヒビキと住んでるんだよ。パパは死んじゃったの…
ヒビキっていうのは僕の弟だよ、まだ赤ちゃんなんだ。
今日はママのお仕事がお休みで、ぼくはこの公園で遊んでるんだ。
今、ママはヒビキとお昼寝してるの。
さっきまで同じ保育所の男の子と公園で遊んでたんだよ。でも、その子のママが迎えに来て一緒に帰っちゃった。
それからは、僕一人で仮面タイガー・ホワイトごっこしてたんだよ。
僕の大好きなヒーローのおじさんなんだ。
この前ね、僕とヒビキをワニ怪人から助けてくれたんだよ。
ホントなんだから。
ワニ怪人は僕達を食べようとしたんだ。
すごく怖くて、僕は屋上からヒビキを抱いて飛び降りたんだけど、仮面タイガー・ホワイトが飛んで来て助けてくれたんだ。
帰って行く時は、5階から飛び降りてたんだけど平気だったみたい。
すごかったよ、僕びっくりしちゃったんだ。
僕は仮面タイガー・ホワイトと約束したんだ。
ママの言う事を聞いて、好き嫌いしないで食べて、ヒビキの面倒をよく見たら僕もヒーローになれるっておじさんが言ってたんだ。
それから僕はちゃんと毎日おじさんとの約束を守ってるよ。
それにしても… この女の子、まだ僕の事にらんでる。
どこの子なんだろう?
「まったく… レディーにすなをかけるなんて…
さいてーね、あんた。としうえのくせに…」
まだ女の子はブツブツ言ってる。
「ごめんよ、ホントに… ねえ、僕はショウタだけど君の名前は?」
答えてくれるか分からないけど、僕はその子に聞いてみた。
「あたち? あたちはくみっていうのよ。いいなまえでちょ?」
どうも自分の名前は好きらしかったんだ。
「僕は5歳だけどくみちゃんは?」
今度も答えてくれるだろうと僕は安心して聞いてみた。
「なによ! レディーにとちなんかきいたらダメでちょ!」
今度は怒られちゃった。
「3ちゃいよ…」
ちょっと恥ずかしそうにボソッと教えてくれた。僕より2歳下だ。
「ねえねえ、さっきいってた『かめんたいだー』ってなに?」
くみちゃんは気になってたみたいで僕に聞いてきた。
「仮面タイガー・ホワイトだよ。
正義のヒーローの仮面タイガー・ホワイト!」
僕はちょっと誇らしげに言ったんだ。だって、僕のヒーローだもん。
「なに、ちょれ? ひーろーってガキね…あんた。」
くみちゃんが冷たい目で見ながら僕に言った。
「くみちゃんこそ、何だよそれ? 僕の方が2歳もお兄ちゃんじゃないか!」
僕はちょっと悔しくて、大声で言ってやったんだ。
「おんなのこのほうがおとななのよ、そんなこともちらないの?」
反対に、くみちゃんにバカにされちゃった。
「何だよ… 仮面タイガー・ホワイトはホントにいるんだぞ。
だって僕を助けてくれたし、悪いワニ怪人をやっつけてくれたんだ。
ホントだもん。」
僕はちょっと泣きそうになった。ホントに悔しかったんだ。
「あたちだって、ヒーローちってるわよ。」
くみちゃんが突然に意外な事を言ったんだ。
「ホント? どんなヒーロー?」
僕は悔しいのも忘れて聞いてみた。僕はヒーローが大好きなんだもん。
「あたちのともだちよ。ニケちゃんっていうんだから。」
くみちゃんはドヤ顔で言った。
「ニケちゃん…? 知らないなあ…?」
そんな名前のヒーローなんて知らないや… うん、やっぱり知らない。
「どんなヒーローなの?」
「あんた、ちらないの? ニケちゃんはすごいんだから。
ぎんいろのはねで、おそらをとぶのよ。それにおめめからあおいひかりをだすの。」
くみちゃんがすごく得意げに話すもんだから、僕も興味が出て来ちゃった。
「へええ、空を飛べるのか… それに目から青い光を出すんだね。
すごいな… レーザービームかな?」
僕はワクワクしてきちゃった。
「カッコいいな… すごいんだね、そのおじさんは。」
僕がくみちゃんにそう言うと、くみちゃんはキョトンとしてるんだ。
「どうしたの?」
「ショウタちゃん… あんた、なにいってるのよ?ニケちゃんはおんなよ、おばちゃんなの!」
くみちゃんは、怒ってるようなしゃべり方だったけど笑っていた。
その時だ…
「キキーッ! ドンッ!」
大きな音がしたから僕とくみちゃんは振り返った。
そしたらね、公園の後ろにある道を走ってた自転車が止まってた大きな車にぶつかってたんだ。
自転車にはセーラー服のキレイなおねえちゃんが乗ってたよ。
そのおねえちゃんはね… 髪の毛は長くてキレイな栗色で、僕がびっくりしたのは目が青いんだ。外国の人なのかな…?
ぶつけられた車から男の人が出て来た。車はT社のラン〇クルーザーだった。おっきくてカッコイイ車。
僕の好きな車なんだ。僕、トミカで持ってるから知ってるよ。
おじさんが言った。
「大丈夫かい、お嬢さん? 怪我はない?」
ぶつけられたのは、おじさんの車の方なのに優しく聞いてあげてる。
いいおじさんなんだ…
でも… この声… 聞いたことがある…
どこでだったろう…?
「私がよそ見してたんです… 本当にすみませんでした。
車は大丈夫でしょうか…?」
青い目のお姉ちゃんが車を見て、心配そうにおじさんに謝ってた。
二人とも相手に優しい話し方をする人達だな…
自分じゃなくて相手の心配ばっかりしてるよ。二人ともいい人達なんだね、きっと。僕は少し嬉しくなった。
「ああ… この車なら何の心配も無いさ。ダンプカーがぶつかっても壊れるのは向こうの方だからね。とても頑丈に出来てるタフなヤツだから。
なっ、『ロシナンテ』。」
おじさんがお姉ちゃんに優しく言ってる。
でも…やっぱり、この声…
最近聞いた気がする…
「気を付けてな、お嬢さん。よそ見してると君が怪我するぜ。それじゃあ、これで。」
って言いながらおじさんが僕の方を見た。僕と目が合ったんだ。
「おっ、ショウタじゃないか。公園で遊んでるのか?」
「…?」
どうして僕の名前を知ってるんだろう? 僕は知らないよ。おじさんとは初めて会ったのに…?
お姉ちゃんの方もこっちを見て驚いた様だった。
「まあ、くみちゃんじゃない!」
お姉ちゃんは、くみちゃんの知り合いみたいだ。
「あっ、ニケちゃんだ! ねえ、あのおねえちゃんがニケちゃんだよ。」
僕の方を見てくみちゃんがそう言った。
僕はキレイなお姉ちゃんを見て思った。
『目は青いけど…普通の人間のお姉ちゃんじゃないか… どこがヒーローなんだよ。』
「ニケちゃん、どこいくの?」
お姉ちゃんはくみちゃんに答えた。
「えっ、うん… ちょっと用事でね。」
くみちゃんとお姉ちゃんが話し出した。
僕はおじさんに気になった事を聞いてみた。
「おじさん、僕…おじさんの事を知らないんだけど…」
「あっ、ああ… そ、そうだったな… ええっと…そうだ、おじさんはママの知り合いなんだ。そう、そうだよ…
で…ママにショウタの話を聞いて写真も見せてもらったんだ。だからショウタの事を知ってるんだ。」
なんか、おじさんは慌ててたみたいだけど…そう僕に説明した。
「ふうん、ママの友達なのか…」
僕はちょっと納得できなかったけど、まあ悪い人じゃなさそうだ。
「ママに用事? 今、お部屋でヒビキと寝てるけど…」
僕がそう言うとおじさんは慌てた様に手を振った。
「い、いいよ… 今日は通りかかっただけだから、ママは寝かせておいてあげるんだ。ママはお仕事で疲れてるんだからな。」
僕はやっぱりこのおじさんはいい人なんだなって思って、ちょっとうれしくなった。
「じゃあな、ショウタ。おじさんはもう行くよ。」
そうおじさんが言って僕に手を振った。そして車に乗り込んだんだ。
でも…あの手の振り方… どこかで… 僕はまた考えちゃった。
「バタンッ、ブルルンッ!」
ドアが閉まって、おじさんはエンジンをかけた。
それで運転席の窓を開けて、僕にまた手を振ってから車を発車させた。
「ああーっ! あの声…あの手の振り方… それにあの車…
仮面タイガー・ホワイトだ!」
僕は大声を出して遠ざかって行く車に手を振った。
車が行っちゃってから、僕は思い出したんだ。
「あの声は… 絶対に仮面タイガー・ホワイトだった…
あのおじさんが…僕のヒーローだったんだ…」
僕は車が角を曲がった後もずっと見ていた。
「じゃあね、くみちゃん… バイバイ。」
その声で、僕はくみちゃんとお姉ちゃんに気が付いた。
「うん、またね… ニケちゃん、バイバイ。」
そう言って手を振るくみちゃんを後にして、お姉ちゃんは自転車で走り出したんだ。僕にも笑って手を振ってくれたよ。
僕もちょっと好きになっちゃった…
「キレイな人だね、あのお姉ちゃん…」
僕は去って行くお姉ちゃんを見ながら、くみちゃんに言った。
「まあね… でもそらをとぶのよ。」
まだ言ってる。あのお姉ちゃんはキレイだけど、やっぱりただの女の人だよ。
でも、僕の方のあのおじさんは…
「絶っっ対に、仮面タイガー・ホワイトだっ!」
僕の大声にくみちゃんはびっくりしてた。
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