風俗探偵 千寿 理(せんじゅ おさむ)

幻田恋人

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番外編:仮面タイガー・ホワイト 「ショウタとの約束、屋上でのワニ怪人の始末…」

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「くそっ…! 柔らかくてうまそうなガキどもめ、にげやがって。死んだ人間の肉は美味うまくないんだ、畜生ちくしょうっ!」
 ショウタがワニ怪人と呼んだ男が、屋上で二人の子供達に逃げられて地団太じだんだんで悔しがっていた。

「しょうがない、他のガキか美味そうな女をねらうか… ああ、腹が減った…」
ワニ怪人が屋上から降りる階段に通じるドアを開けようとした時だった。

「おい、ワニがわ野郎!」
さっきまで誰もいなかった後ろから、男の大声が聞こえた。

「何だとおっ! 俺の事かあ?」
ワニ怪人が振り返った目の前に、信じられないモノが立っていた。

「他に誰がいる?」
そこに立っていたのは、白いトラの風貌ふうぼうをした男(?)だった。

「うわあっ! ば、化け物っ!」
ワニ怪人は悲鳴を上げた。

「誰が化け物だ、ワ二野郎。お前にだけは言われたくないぜ。」
トラ男がワニ怪人の肩越しに右手で壁ドンをした。

「ドカッ! ガラガラッ!」
 トラ男が壁ドンをした階段室のコンクリートの壁に穴が開いて、トラ男の右手は壁の向こうに突き抜けていた。

「ひいっ!」
 ワニ怪人は自分を圧倒する強さを持った相手に恐怖し、腰が抜けてひざを屋上の床についた。

「俺は仮面タイガー・ホワイトだ。よくも貴様、あのいたいけな子供達を食おうとしやがったな…」
 仮面タイガー・ホワイトと名乗ったトラ男が、膝をついて震えているワニ怪人の首を右手でつかんで持ち上げた。
 ワニ怪人の身体は仮面タイガー・ホワイトよりも、見るからに一回りは大きかった。そのワニ怪人を右手一本で高々と持ち上げているのだ。

「くっ… 苦しい… 助けて…」
 ワニ怪人は仮面タイガー・ホワイトの右手をきむしり、自分の首から引き離そうとするが鋼鉄の塊の様な筋肉はビクともしなかった。

「あの子もそう言って命いしたはずだぞ… 俺はな、弱い者いじめが大嫌いなんだ。老人や女子供に暴力を振るう奴は許せない。
 しかも、お前… 人を食ったな。 他にも子供を食いやがって… 俺の鼻は犬よりもくんだ、お前のそのデカい口からは人食いのにおいがプンプンする。
残念だが、このまま放って置くわけにはいかない… 覚悟するんだな。」

 そう言った仮面タイガー・ホワイトはワニ怪人の首をつかんだ右手に力を込めた。

「グググウッ…」
 ワニ怪人は苦し気にうめきながらも、2mはあろうかというワニの尻尾しっぽを必死に仮面タイガー・ホワイトのあしたたきつけた。目にも見えない速度だった。

 すると… 仮面タイガー・ホワイトは左手を軽く動かしただけでワニ怪人の強力な尻尾の一撃を受け止め、その尻尾を握りしめた。
「グシャッ! ブチブチッ!」

 仮面タイガー・ホワイトは、素手の左手でワニ怪人の成人男性の太ももほどはあろうかと言う硬い鰐皮わにがわおおわれた尻尾を、表情を変える事も無く無造作に握りつぶした。

「ギヤーッ!」
 ワニ怪人は悲鳴と共に、鋭いきばの生えた大きな口からゴボゴボと血の混じった泡を吹き出した。

「ボギッ…」
 仮面タイガー・ホワイトの右手に握られていたワニ怪人の首から嫌な音が聞こえ、頸椎けいついが粉砕された様だった。

「こいつも考えて見ればあわれなヤツだ… これも新宿に蔓延はびこる『strongestストロンゲスト』のせいか…」
 そうひとりり言をつぶやいた仮面タイガー・ホワイトは、再生されることの無いようにワニ怪人の頭を右足の一撃で踏みつぶした。

「これでショウタとの約束は果たした。さあ、ショウタの所へ行って安心させてやるか…」

 そう言った仮面タイガー・ホワイトは、軽い足取りでさくを飛び越えたかと思うと、12階建ての高層マンションの屋上からひらりと下へ飛び降りた。

空には月齢14日の銀色の満月が浮かんでいた。
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