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第3話「どうしても南へ行きたいんだ… ①『そいつとの出会い…そして恐怖による支配へ』」
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「おい、伸田。まだかよ? その凍り付く湖ってのは? うっ! エリ、もっと激しくしごけ…」
車の中央列であるセカンドシートに座る巨漢の幸田 剛士が、車を運転する伸田 伸也に聞いた。
最後の剛士の言葉は伸田にかけられたものでは無い。剛士は隣に座るガールフレンドの水木エリとペッティングの真っ最中なのだ。右手をエリのショーツに突っ込んで、クチュクチュと音を立てながらエリの中に入れた指を激しく動かしていた。
エリの方も恍惚とした表情で涎を垂らして喘ぎながら、やはりズボンとパンツをずらして下半身丸出しとなった剛士《たけし》のカチカチに屹立した巨大な性器を相手に負けじとばかりに激しく右手で上下にしごいている。
「お前らなあ… 僕にばっかり運転させやがって、後ろでいちゃいちゃと何やってるんだ!」
剛士に呼びかけられた運転席に座る伸田 伸也がルームミラーで後部座席を覗き込みながら怒鳴った。だが、そう言う伸也も運転しながら助手席に乗せた恋人の皆元 静香に、口を使って奉仕させていた。静香は伸也の股間のモノを小さな口に頬張り、頭をゆっくりと上下させている。
幼馴染だった伸田と静香の二人は成長して大学まで進学した今では互いに愛し合う恋人同士という関係を越え、自分達だけではなく双方の親達が結婚を公認した婚約者同士だったのである。
車内にいる6人の内、伸田に静香、そして幸田と須根尾の4人は幼稚園に入園する以前からの近所付き合いで始まった幼馴染であり、大学4年生となった今でも4人の仲の良さは変わる事無く続いていた。
残る2人の女子大生は幸田と須根尾のそれぞれの恋人達であり、6人の若者達全員の就職内定と卒業旅行を兼ねての冬のスキーと温泉巡りに向かう旅の道中だった。
「へっ! もう止められるかよ! 後ろの座席じゃ、我慢出来なくなった須根尾がミチルと生本番始めやがったぜ!
お前だって、運転しながら愛しのシズちゃんにフェラさせてるじゃねえか!
バックミラーで後ろなんか見てねえで、お前は前見て運転に集中してろ!」
高まってきた快感に酔いしれた剛士が、エリの膣に入れた指を夢中で出し入れしながら叫んだ。
なるほど、たしかに剛士の言った様に、SUV車の最後尾のシートでは、下半身全裸になった若い男女が狭い場所ながら器用に後背位で繋がったまま激しく腰を振っている最中だった。
「シズちゃん… ぼ、僕…もう…イキそうだ… ううっ! 出る!」
伸田は右手だけでハンドルを握り、左手で恋人の静香の頭を押さえつけると、彼女の喉奥深くまで自分のモノを突き立てて思いっ切り射精した。
「グエッ! ゲボッ! ゲホゲホッ! ん~!ん~!」
静香は必死になって頭を振り、喉奥深くまで突き立てられた男のイチモツを吐き出そうとするが、伸田はなかなか解放しようとしなかった。彼は右手だけでハンドルを握って器用に運転したまま、恍惚とした表情を浮かべ、精液を最後の一滴まで静香の喉奥に放出し終わるまで、逃れられずに苦し気に両手を振って暴れる彼女の頭を左手で強く押さえつけていた。
「げええぇーっ! な、何す… うえーっ、ぺっぺっ! 苦しくて死ぬかと思った!
もうっ、ノビタさん! あたしを殺す気? おえっ! こんなにいっぱい出して!
ううっ… 半分以上飲んじゃったじゃない…、ノビタさんの精子! うぇ~気持ち悪い… げえっ!」
普段は美しく清楚な顔にいつも優しい微笑を浮かべ、彼女の前では同世代だけでなく年齢にかかわらず男なら誰でも魅了されてしまう静香が、本気で伸田に怒りながら車内のゴミ箱に、自分の喉奥に放出された精液を可能な限り吐き出そうとして激しく嘔吐いた。
さすがに相思相愛の恋人同士でも、静香は本気で怒っていた。
静香の口内に溜まっていた精液をたっぷりと放出して満足し、すでに『賢者タイム』に入っていた伸田は、恋人の怒りの表情を見て心底後悔した。
「ご、ごめんよ…シズちゃん、怒らないで… あんまり、君の口が気持ち良かったもんだから…」
慌てて何度も謝罪する伸田が少し可哀そうになったのか、本来が優しい性格の静香は多少引きつってはいたが、美しい顔に微笑みを浮かべながら言った。
「もういいわ。許してあげるから、ちゃんと前見て運転してちょうだい。」
愛しい静香の許しを得てホッとした伸田は、これでようやく運転に集中する事が出来ると思った。彼としては、後ろで仲間達が繰り広げる痴態にげんなりとしながらも、はち切れそうに勃起した若い自分自身が辛くて仕方が無かったのだ。そんな恋人を見かねた優しい静香が、手と口で彼のイチモツを慰め始めたのだ。
面倒見のいい静香は伸田の放出したばかりのイチモツを、嫌がる事も無く自主的にウェットティッシュで綺麗に拭き取ってから、ズボンとパンツの中に元通りにしまってやった。
伸田は、そんな優しい静香が好きで好きでたまらないのだった。彼は早く静香と結婚して所帯を持ちたくて仕方が無いのだった。助手席に座る彼女の存在を感じているだけで、自然と自分の鼻の下が伸びてくるほど幸せなのだった。
運転中にもかかわらず、また静香の美しい横顔に目がいきそうになるのを、彼女に心底惚れている伸田にはどうしようもなかった。
「うっ! お、俺も…もう出そうだ… エリ、お前の口で受けてくれ…って…! うわっ!
おいっ! 伸田! 前見ろおっ! ひ、人だ! 人がいるぞっ!」
剛士がエリの右手にガチガチに勃起したイチモツをしごかれたまま放出した精液を空中に撒き散らしながら、フロントガラスの前方に見える光景を恐怖の目で見つめながら絶叫した。
「えっ? う、うわあっ!」
「ギギギーッ!ギャギャギャギャギャーッ! ドンッ!」
剛士の叫び声で前方に目を向けた伸田が、急ブレーキを踏んだ時には遅かった…
車は雪道用のスタッドレスタイヤを着用していたが凍った路面でスリップし、何とかスピンこそ免れたが車体を激しく左右に振りながら何かに衝突した。
車は停車したが、車内の全員が自分達の快楽行為に没頭するためにシートベルトを着用していなかったのだ。
衝突の瞬間に握ったハンドルに両手を突っ張った伸田以外の全員が、ダッシュボードや前のシートに強く頭や身体を、したたかに叩きつけられていた。
車内のあちこちで、乗っていた男女の悲鳴や呻き声が上がった。
「おい、シズちゃん! しっかりしろ! み、みんな、大丈夫か…?」
そう呼びかけながら、伸田は車内を見回した。 助手席の静香はダッシュボードにぶつけて頭を切ったのか、額から伝った血が白く美しい顔を汚して気絶していた。唇を切ったのか半開きの彼女の口からも、伸田が放出した精液の残りが混ざった血が少量だが流れ出していた。
後部座席にいた者達も、それぞれがぶつけた身体をさすったり頭を振ったりしながら、呻き声を上げている。誰も伸田に「大丈夫だ」と答えを返す者はいなかった。
最後尾で夢中になって性交を楽しんでいた須根尾 骨延と恋人の山野ミチルは、かわいそうにペニスを膣に挿入したままの状態で身体を重ねて床に転げ落ちていた。ぶつかった衝撃で須根尾はミチルの膣内に射精したらしく、二人の性器の結合部から白い精液が流れ出ていた。
二人とも呻き声を上げているので、どうやら無事の様だ。
暖房の効いた暖かい車内には、6人の男女が夥しく放出した体液のすえた匂いと、剥き出しになった全員の性器を含む汗ばんだ全身から発散されるオスとメスの発情した匂いが、熱気と共に充満していた。
運転者も含めた乗員全員が、こんな快楽行為に耽った状態で凍った路面に車を走らせていたのだから、衝突事故に遭っても不思議では無かった。
こんな非常識でバカな連中の乗った車にぶつけられた人間がいるとしたら、不幸のひと言で済ませられないだろう。心身ともにたまったものでは無い…
「い、いったい何だったんだ…? ひ、人を轢いたのか?
ど、どうしよう… 視界がホワイトアウトに近い状態で、前方がよく分からなかったんだ。路面が凍ってるからそんなにスピードは出してなかったけど…まさか、死んじゃいないよな。おい、ジャイアンツ! 一緒に外へ見に行ってくれよ…」
背後を振り返った運転者の伸田が訴えた『ジャイアンツ』というのは、二列目のシートで恋人である水木エリにフェラチオをさせていた幸田 剛士の事である。
彼自身がプロ野球セリーグの有名チームの熱狂的ファンでもあり、身体も同級生の中でずば抜けて大きかった事から幸田 剛士は、親しい者の間では幼い頃より『ジャイアンツ』というあだ名で呼ばれているのだった。
このグループの中で、男三人と女子の皆元 静香だけは、幼稚園に入る前からの幼馴染の仲だった。
大学は全員別々に進んだが、大学生となった今でも4人の仲の良さが変わる事は無かった。
どういうわけか、男子のうち一番可能性の低いと思われた伸田が、三人の男達のアイドルだった皆元 静香のハートを射止めたようで、今では伸田と静香は恋人同士となっていた。
他の二人、幸田 剛士と須根尾 骨延も自分の彼女を連れて、合計6人の一行は伸田の提案と運転で冬の二泊三日のスキー旅行へと出かけて来た往路の最中だった。
伸田はしっかりとサイドブレーキをかけハザードランプを点灯させてから、自分の性器に付いていた精液をエリに綺麗に拭き取らせてパンツとズボンを穿き直した剛士と共に、防寒用の上着を着込んで暖かい車中から吹雪く車外へと出た。
「サク、サクッ…」
歩くたびに路面に積もった雪が小気味よい音を立てる。
車の前に回り込んだ伸田は助手席側のヘッドライトが割れ、その周囲の車体が凹みバンパーが破損しているのを見とめた。
「あーあ、やっちゃったな… まだローンがだいぶ残ってるのに…」
伸田が泣きそうな声で言うのに、剛士が責める様に言った。
「バカ野郎!
てめえの自業自得だろ。ノビタのくせに、運転しながら俺達のマドンナのシズカちゃんにフェラなんてさせてっからだろ!
下手したら全員死ぬとこだったぜ! これだからノビタは…」
幼い頃からいじめっ子だった巨漢の剛士が大声で怒鳴ったものだから、伸田は本当に泣きそうな顔になって答えた。
「ごめんよ~ ジャイアンツ~ そ、それよりも何にぶつかったかだよ… 君が見たのって本当に人だったの?」
そう言って伸田は、路肩に止めた自分の車の周囲を見回した。
「バカ野郎! ノビタのくせに、この俺様が見間違えたって言いてえのか?
思いっきりぶん殴るぞ、ノビタ! あれは間違いなく人間の男だったんだ!」
雪の降りしきる車外で寒そうに震えながらも、握った右拳を口元に持っていき息を吹きかけながら剛士が伸田を怒鳴りつけた。
怒鳴られた伸田は外の寒さだけではなく、恐ろしさで震えあがった。白い息を吐き続ける彼の口元では歯がガチガチ鳴り、顔も真っ青だった。今にも卒倒しそうに震えていた。
「何だ、ノビタ! お前はちっちゃい頃から臆病だったけど、そんなにブルブルガタガタ震え上がりやがって! しょうがねえ、今回は勘弁して殴らねえでいてやらあ。でも、俺の前でシズカちゃんに二度とあんな事させるなよ!」
剛士はニヤニヤ笑いながら振り上げていた右拳を下ろした。
「ち、違うんだ… ジャ、ジャイアンツ… き、君の… う、後ろ…」
ノビタが震えながら右手を上げ、剛士の方を指さした。
「何だ、そんなに震えやがって! 俺の後ろがどうしたってんだ?」
そう言って後ろを振り返った剛士の目の前にそいつが立っていた…
「う…」
剛士は驚きの余り、息を吞んだ。目の前に立つそいつは、185cmある巨漢の剛士よりもさらに大きな男だった。
「な、何だよ… あ、あんたは…?」
剛士は生まれて初めて他の男に圧倒された。いつも自分の強さを自慢にしていた剛士が、本能的にこの男には敵わないと感じたのだった。
「お前らの車にぶつかったんだ… 怒らないから俺を車に乗せてくれよ。俺、どうしても行きたい所があるんだ…」
そう言った男の顔は、ぼさぼさの長髪の頭から顔面にかけて血を流していた。凍った地面に強く頭をぶつけたのだろうか?… だが、頭がフラフラする訳でもないようでしっかりと立って話している。
しかし、この男は寒い年末の雪国の山道を一人で歩いていたのだろうか…? 長身でがっしりとした体格の男の格好は、カーキ色でフード付きのM-51と呼ばれるアメリカの軍用コートを着ている。このコートは、それだけでは決して温かい防寒具とは言えない だが、そいつは厳寒のこの地でもコートの前を開いたままだった。中に着ているのは普通のワークシャツに下半身に履いているのはダボッとしたやはり軍用だと思われるヨレヨレで汚れたチノパンだった。足元は頑丈そうな編み上げの登山靴を履いている様だ。
それに、女物だろうか…? およそこの男には似つかわしくない造りの、赤黒い気味の悪い色をしたリュックサックを左肩からぶら下げていた。
そのリュックサックからは、入りきらない何か頑丈そうな木製の取っ手部分(?)が飛び出していた。何かの工具だろうか?
しかし、この男の発散している匂いは何だ… まるで野生の動物の様な体臭だった。すぐ傍に立った剛士は匂いに顔をしかめた。寒風の吹きすさぶ野外の少し離れた所に立つ伸田にまで強く匂ってきていた。
「と、とにかく傷の手当てをしなきゃ! 中に救急箱があるから、こんなとこで話してたらみんな凍え死んじゃうよ!」
伸田が叫んだ。その通りだった。さっきよりも風と雪がきつくなっていたのだ。近くの山から吹き下ろす風で吹雪が強まっているのだ。
剛士はこの前に立ちすくむ状態から離れられるのなら、理由は何でもよかった。伸田の提案に渡りに船とばかりに賛成した。
「お、おう! そうだな、とにかく車の中に入ろう。さあ、あんたも入れよ!」
伸田は運転席に、剛士は男を促して自分の乗っていたセカンドシートに右側ドアを開けて乗り込む。男は反対の左側ドアから乗り込んだので剛士のガールフレンドの水木エリが大男二人に挟まれる形になった。
車内では、さっきまで全員が下半身丸出しか全裸だったのに、ちゃんと衣服を戻した連中が緊張して無言のまま三人が入って来るのを迎えた。
助手席の静香は額に絆創膏を貼っていたが、血が滲んでいない所を見ると傷は大した事は無い様だった。恋人の伸田はそれを見て安心した
「うっ! 何…この匂い…?」
セカンドシートに座っていて、新たに入って来た男に身体をくっつけられた水木エリが遠慮する事無く露骨に顔をしかめてつぶやいた。口にこそ出さないが、他の者達も同じ思いであるのに違いは無かった。
しかし、車内にも服は着たと言っても6人の男女の快楽行為による匂いが残滓となって籠っているのだ。この正体不明の男も鼻をヒクヒクさせて車内の匂いを嗅いでいる様だった。
女達は全員が新たに乗って来た男の発する獣臭い匂いを我慢しながらも、男に自分達の没頭していた性行為が気付かれたのではないかと頬を上気させ、さっきまで快感に濡れそぼっていた股間を無意識に手で隠すようにした。
しかし、女達が太ももを擦り合わせるようにして股間を閉じたのには理由があった。 匂いに閉口しながらも男の野性味あふれる体臭にメスの本能を刺激され、さらなる性への欲望に自分の女の秘めた部分の奥からジワジワと溢れ出してくる液体をどうする事も出来なかったからだ。
普段は清楚で大人しく振舞っている静香でさえ、身体じゅうが熱くなってショーツをグショグショに濡らし、さらに染み出した愛液が防寒用に履いている裏起毛の防寒用パンツの太ももまでぐっしょりと濡らしていた。
三人の女が全員、顔を匂いにしかめながらも一様に形の良い太ももの内側をもじもじとすり合わせているのは、獣じみた野性味あふれる男の出現によって女の欲望に火がついたのを表していたと言えるだろう。
最後列のシートでさっきまで交わっていた須根尾 骨延と女友達の山野ミチルは、隣り合った身体を少し離すように座っていた。よく見ると、ネズミの様な顔をしている須根尾の左頬にはピンク色の手形がくっきりと付いていた。どうやら、先ほどミチルの膣内で射精したために彼女に殴られたのだろう。
新たに加わり、大きな身体をしたヒッチハイカーが、すでに剛士と水木エリのカップルが座っているセカンドシートに座ったので、エリがその男と剛士の間でつぶされそうになっている。
怒った剛士が腰を浮かせてそいつに抗議する。
「おい! この列は俺とエリの席だ! お前は遠慮して後ろの列へ行けよ!」
暖房で温まっていた車内の空気が一瞬にして凍りついた。車内の誰もが、巨漢で日頃から乱暴者で通っている剛士と、野生見丸出しで正体不明のヒッチハイカーとの一触即発の状況に恐れをなしたのだ。
暴力とは無縁で臆病な伸田と須根尾は、真っ青になって、女達よりもガタガタと震えていた。
剛士に怒鳴られた男は何も言い返しもせず、ただ静かに剛士の顔を見つめるだけだった。しかし、右拳を握り締めていつでも殴れる状態に固めていた剛士は、そいつの目の奥に底なしの虚無を見た気がして戦う気力が一気に萎えてしまった…
場数を踏み喧嘩慣れしている剛士だったが、こんな気味の悪い男とタイマンの喧嘩をした事は無かった。いや…したいとも思わなかっただろう。
「うっ… や、やっぱり俺が後ろに座ろう… おい、どけっ! スネオ!」
そう言って怒鳴ると、剛士はセカンドシートの中央を通り須根尾と山野ミチルのいるサードシートへ移った。
「無茶言わないでよ、ジャイアンツ~ 君みたいなデカいのが来たら、僕もミチルも狭くて苦しいよ…」
ネズミ面をした須根尾とミチルは二人とも小柄なカップルだったが、それでも巨漢の剛士が加わると、元から居た二人にとっては窮屈となり、迷惑この上なかった。
「やかましい! お前らさっきまで、ここでズコバコ生で本番やってたくせしやがって!
俺様がお前の精液臭いのガマンしてやるってんだ、生意気に文句言うんじゃねえ!」
剛士にギロリと睨みつけられた小柄な二人は、真っ青になって抱き合って震えるだけで何も言い返せなかった。
可哀そうに、二人の男達に挟まれた格好のミチルは、可能な限り剛士の身体に触れない様に右側に座る彼氏である須根尾に必死にしがみついていた。
だが、自分が見せた先ほどの臆病な一面をごまかすためか、剛士はミチルの尻をイヤらしく撫でまわす。そして、嫌がるミチルの股間の秘所をグリグリと指で嬲り始めた。彼女の膣からは愛液と共に須根尾が放出し、中に残っていた精液がトロリと流れ出して来た。
剛士は構わずに愛撫を続け、ミチルの耳に息を吹きかけながら囁いた。
「お前さ…チビのくせにプリプリしたいいケツしてるじゃねえか… 今度一発俺にやらせろよ… スネオよりデカくてぶっといので天国へ連れてってやるからよ…」
ミチルは首を大きく振りながら涙を流して、剛士と反対側にいる須根尾に力いっぱい抱きついた。
「もう! こんな時に冗談はやめてくれよ、ジャイアンツ!」
須根尾も涙を浮かべて必死な思いで剛士に訴えた。
すると、セカンドシートを乗っ取ったヒッチハイカーがぐるりと後ろを振り返り、剛士を鋭い目で睨みつけた。
「やかましいぞ、お前。殺してやろうか…?」
男は本気で言っているのか…恐ろしい言葉を淡々と静かに告げたので、剛士にとっては怒鳴られるよりも余計に恐怖を感じずにはいられなかった。
「じょ、冗談だよ… し、静かにしてるさ…」
普段は傲慢で人の言う事などに耳を貸さない性格の剛士が反発する事も無く、しどろもどろに男に素直に従った。剛士をよく知る車内の者達は、彼の震える声を聞いて自分の耳を疑った。
剛士の態度は、まるで蛇に睨まれた蛙の様だった。自分自身も粗暴で喧嘩慣れした彼は、ヒッチハイカーが無造作に言い放った『殺す』という言葉が、決してただの脅しでは無い事を本能的に感じ取ったのだ。
「ね、ねえ… ところで、君さ… どこまで行きたいの? 僕達は、この先のスキー場の近くにある〇X村の旅館へ行くつもりなんだ。温泉もあるらしいしね…」
運転席の伸田が後ろの席の様子を少しでも和らげようと、ルームミラーで後ろを見ながら臆病なこの男には珍しく勇気を振り絞ってそいつに尋ねた。
震えながら自分の左太ももに力いっぱい両手でしがみついている恋人の静香に、いい所を見せたかったのだろう。
後ろを振り返っていたそいつが、ゆっくりと前方へ身体の向きを戻して答えた。
「俺… 行きたいところがあるんだ。この車で連れてってくれないかな…?」
ルームミラー越しにヒッチハイカーと目の合った伸田は、慌てて目をそらした。
「も、もちろん… ぼ、僕達が行ける所まででいいなら…だけどね。」
伸田が恐る恐る、ルームミラーで自分を見つめているヒッチハイカーに答える。
「うん、それでいいよ。じゃあ、南へ向かってくれないかな。」
ヒッチハイカーの答え方は、じつに穏やかな話し方だったので伸田は笑顔を返そうとしたが…
「えっ、南…? じ、じゃあ…僕達の向かうのと逆の方向だよ… 僕達は南の方から来たんだ…」
また、車内の空気が凍り付いた。
車内の全員が伸田の発した答に顔をしかめて、恐る恐る様子を窺っている。誰もひと言も声を出せないでいた。
「じゃあ、Uターンしてくれよ。頼むよ、南に行きたいんだ…」
ヒッチハイカーは伸田の顔の映るルームミラーを、まっすぐ覗き込むようにして言った。だが… 伸田に向かってしゃべりながらも、彼の右手は横にいる水木エリのノーブラの巨乳をセーターの上から鷲づかみにして力強く揉みしだいていた。
「あん! いや、痛いっ! 乱暴にしないでよ!」
エリが小さな悲鳴を上げながら、ヒッチハイカーに抗議している。彼の右手を自分の胸からもぎ放そうと両手で逆らうが、男の力強い手はびくともしなかった。
ヒッチハイカーの左手は自分の盛り上がったチノパンのチャックをゆっくりと引き下ろし、そそり立つ巨大な性器を掴みだした。
「おい、俺にも後ろのヤツにやってた事をしてくれよ。俺も気持ちよくなりたいんだ…」
そう言いながら男は揉んでいたエリの胸から右手を放し、彼女の右手に無理やり自分の剥き出しになった性器を握らせた。
「う…うわ、何これ… めっちゃおっきい… 剛士のよりずっと大きい…」
エリは最初は嫌がっていたが、興味をそそられたらしくヒッチハイカーの硬く屹立したペニスを右手で握りしめ、ゆっくりとだが上下にしごき始めた。この時、なぜか助手席で静香が、サードシートではミチルがゴクリと唾を飲み込む音が大きく響いた。
「エリ! てめえっ! 俺以外のヤツのチンポなんて触るんじゃねえ!」
サードシートで激昂した剛士が叫んだ。
「うるさいな。騒いだら殺すぞ…黙ってろ。この女の邪魔をするな。
騒いだり邪魔したヤツはみんな殺す…」
ヒッチハイカーは剛士の方を振り返りもせず、恐ろしい言葉とは裏腹に少しも興奮していないかの様に静かな口調で言った。だが、その口調には誰にも有無を言わせない威圧感と迫力があった。
剛士は何も言い返せない悔しさに顔を真っ赤にして歯を食いしばり、自分の恋人を奪われた屈辱感に涙を浮かべながらも黙らざるを得なかった。
車内にいる全ての者が一様に理解したのは、この正体不明の男は自分に逆らったら脅しではなく本気で殺す…という事だった。
この場にいた全員の動物的な本能とでも言うべきものが危険を知らせていたのだ。
車内でただ一人魅入られた様に恍惚とした表情を浮かべて男に従っている水木エリ以外の全員が、この危険なヒッチハイカーから目を逸らし、無理やり車の進行方向に目を向けていた。
しばらくの間、エリが自分の唾液をたっぷりと垂らしたヒッチハイカーの性器を懸命に手でしごく卑猥な音と、彼女の荒い呼吸音だけが車内に響いていた…
車内にいる全員が、この謎の男の存在を恐ろしく感じてはいるのだが… 若者達の呼び覚まされた性的な本能は興奮状態となり、男達は皆勃起し、女達は膣奥からジワーっと溢れ出す液体をどうする事も出来なかった… 車内にいる全員が恐怖を感じながらも、若さゆえの新たな性的興奮から荒い呼吸を繰り返し、全身から性的フェロモンを分泌発散していた。それらがさらに全員の欲情を高め合うのだった。
ヒッチハイカーが加わってからの狭い車内は、暖房と若い6人の男女が感じた恐怖と性的興奮の両方によって大量のアドレナリンが分泌され、皆の体温が上昇した事により、ムンとする熱気が籠って実際に数度も温度が上がっていた。
それだけでは無く、全員が何かのきっかけで乱交状態に入りそうな、大麻や合成麻薬のパーティーにも似た雰囲気を醸し出しているのだった。
外は相変わらず吹雪いて風の音が荒れ狂っていた。
【次回に続く…】
車の中央列であるセカンドシートに座る巨漢の幸田 剛士が、車を運転する伸田 伸也に聞いた。
最後の剛士の言葉は伸田にかけられたものでは無い。剛士は隣に座るガールフレンドの水木エリとペッティングの真っ最中なのだ。右手をエリのショーツに突っ込んで、クチュクチュと音を立てながらエリの中に入れた指を激しく動かしていた。
エリの方も恍惚とした表情で涎を垂らして喘ぎながら、やはりズボンとパンツをずらして下半身丸出しとなった剛士《たけし》のカチカチに屹立した巨大な性器を相手に負けじとばかりに激しく右手で上下にしごいている。
「お前らなあ… 僕にばっかり運転させやがって、後ろでいちゃいちゃと何やってるんだ!」
剛士に呼びかけられた運転席に座る伸田 伸也がルームミラーで後部座席を覗き込みながら怒鳴った。だが、そう言う伸也も運転しながら助手席に乗せた恋人の皆元 静香に、口を使って奉仕させていた。静香は伸也の股間のモノを小さな口に頬張り、頭をゆっくりと上下させている。
幼馴染だった伸田と静香の二人は成長して大学まで進学した今では互いに愛し合う恋人同士という関係を越え、自分達だけではなく双方の親達が結婚を公認した婚約者同士だったのである。
車内にいる6人の内、伸田に静香、そして幸田と須根尾の4人は幼稚園に入園する以前からの近所付き合いで始まった幼馴染であり、大学4年生となった今でも4人の仲の良さは変わる事無く続いていた。
残る2人の女子大生は幸田と須根尾のそれぞれの恋人達であり、6人の若者達全員の就職内定と卒業旅行を兼ねての冬のスキーと温泉巡りに向かう旅の道中だった。
「へっ! もう止められるかよ! 後ろの座席じゃ、我慢出来なくなった須根尾がミチルと生本番始めやがったぜ!
お前だって、運転しながら愛しのシズちゃんにフェラさせてるじゃねえか!
バックミラーで後ろなんか見てねえで、お前は前見て運転に集中してろ!」
高まってきた快感に酔いしれた剛士が、エリの膣に入れた指を夢中で出し入れしながら叫んだ。
なるほど、たしかに剛士の言った様に、SUV車の最後尾のシートでは、下半身全裸になった若い男女が狭い場所ながら器用に後背位で繋がったまま激しく腰を振っている最中だった。
「シズちゃん… ぼ、僕…もう…イキそうだ… ううっ! 出る!」
伸田は右手だけでハンドルを握り、左手で恋人の静香の頭を押さえつけると、彼女の喉奥深くまで自分のモノを突き立てて思いっ切り射精した。
「グエッ! ゲボッ! ゲホゲホッ! ん~!ん~!」
静香は必死になって頭を振り、喉奥深くまで突き立てられた男のイチモツを吐き出そうとするが、伸田はなかなか解放しようとしなかった。彼は右手だけでハンドルを握って器用に運転したまま、恍惚とした表情を浮かべ、精液を最後の一滴まで静香の喉奥に放出し終わるまで、逃れられずに苦し気に両手を振って暴れる彼女の頭を左手で強く押さえつけていた。
「げええぇーっ! な、何す… うえーっ、ぺっぺっ! 苦しくて死ぬかと思った!
もうっ、ノビタさん! あたしを殺す気? おえっ! こんなにいっぱい出して!
ううっ… 半分以上飲んじゃったじゃない…、ノビタさんの精子! うぇ~気持ち悪い… げえっ!」
普段は美しく清楚な顔にいつも優しい微笑を浮かべ、彼女の前では同世代だけでなく年齢にかかわらず男なら誰でも魅了されてしまう静香が、本気で伸田に怒りながら車内のゴミ箱に、自分の喉奥に放出された精液を可能な限り吐き出そうとして激しく嘔吐いた。
さすがに相思相愛の恋人同士でも、静香は本気で怒っていた。
静香の口内に溜まっていた精液をたっぷりと放出して満足し、すでに『賢者タイム』に入っていた伸田は、恋人の怒りの表情を見て心底後悔した。
「ご、ごめんよ…シズちゃん、怒らないで… あんまり、君の口が気持ち良かったもんだから…」
慌てて何度も謝罪する伸田が少し可哀そうになったのか、本来が優しい性格の静香は多少引きつってはいたが、美しい顔に微笑みを浮かべながら言った。
「もういいわ。許してあげるから、ちゃんと前見て運転してちょうだい。」
愛しい静香の許しを得てホッとした伸田は、これでようやく運転に集中する事が出来ると思った。彼としては、後ろで仲間達が繰り広げる痴態にげんなりとしながらも、はち切れそうに勃起した若い自分自身が辛くて仕方が無かったのだ。そんな恋人を見かねた優しい静香が、手と口で彼のイチモツを慰め始めたのだ。
面倒見のいい静香は伸田の放出したばかりのイチモツを、嫌がる事も無く自主的にウェットティッシュで綺麗に拭き取ってから、ズボンとパンツの中に元通りにしまってやった。
伸田は、そんな優しい静香が好きで好きでたまらないのだった。彼は早く静香と結婚して所帯を持ちたくて仕方が無いのだった。助手席に座る彼女の存在を感じているだけで、自然と自分の鼻の下が伸びてくるほど幸せなのだった。
運転中にもかかわらず、また静香の美しい横顔に目がいきそうになるのを、彼女に心底惚れている伸田にはどうしようもなかった。
「うっ! お、俺も…もう出そうだ… エリ、お前の口で受けてくれ…って…! うわっ!
おいっ! 伸田! 前見ろおっ! ひ、人だ! 人がいるぞっ!」
剛士がエリの右手にガチガチに勃起したイチモツをしごかれたまま放出した精液を空中に撒き散らしながら、フロントガラスの前方に見える光景を恐怖の目で見つめながら絶叫した。
「えっ? う、うわあっ!」
「ギギギーッ!ギャギャギャギャギャーッ! ドンッ!」
剛士の叫び声で前方に目を向けた伸田が、急ブレーキを踏んだ時には遅かった…
車は雪道用のスタッドレスタイヤを着用していたが凍った路面でスリップし、何とかスピンこそ免れたが車体を激しく左右に振りながら何かに衝突した。
車は停車したが、車内の全員が自分達の快楽行為に没頭するためにシートベルトを着用していなかったのだ。
衝突の瞬間に握ったハンドルに両手を突っ張った伸田以外の全員が、ダッシュボードや前のシートに強く頭や身体を、したたかに叩きつけられていた。
車内のあちこちで、乗っていた男女の悲鳴や呻き声が上がった。
「おい、シズちゃん! しっかりしろ! み、みんな、大丈夫か…?」
そう呼びかけながら、伸田は車内を見回した。 助手席の静香はダッシュボードにぶつけて頭を切ったのか、額から伝った血が白く美しい顔を汚して気絶していた。唇を切ったのか半開きの彼女の口からも、伸田が放出した精液の残りが混ざった血が少量だが流れ出していた。
後部座席にいた者達も、それぞれがぶつけた身体をさすったり頭を振ったりしながら、呻き声を上げている。誰も伸田に「大丈夫だ」と答えを返す者はいなかった。
最後尾で夢中になって性交を楽しんでいた須根尾 骨延と恋人の山野ミチルは、かわいそうにペニスを膣に挿入したままの状態で身体を重ねて床に転げ落ちていた。ぶつかった衝撃で須根尾はミチルの膣内に射精したらしく、二人の性器の結合部から白い精液が流れ出ていた。
二人とも呻き声を上げているので、どうやら無事の様だ。
暖房の効いた暖かい車内には、6人の男女が夥しく放出した体液のすえた匂いと、剥き出しになった全員の性器を含む汗ばんだ全身から発散されるオスとメスの発情した匂いが、熱気と共に充満していた。
運転者も含めた乗員全員が、こんな快楽行為に耽った状態で凍った路面に車を走らせていたのだから、衝突事故に遭っても不思議では無かった。
こんな非常識でバカな連中の乗った車にぶつけられた人間がいるとしたら、不幸のひと言で済ませられないだろう。心身ともにたまったものでは無い…
「い、いったい何だったんだ…? ひ、人を轢いたのか?
ど、どうしよう… 視界がホワイトアウトに近い状態で、前方がよく分からなかったんだ。路面が凍ってるからそんなにスピードは出してなかったけど…まさか、死んじゃいないよな。おい、ジャイアンツ! 一緒に外へ見に行ってくれよ…」
背後を振り返った運転者の伸田が訴えた『ジャイアンツ』というのは、二列目のシートで恋人である水木エリにフェラチオをさせていた幸田 剛士の事である。
彼自身がプロ野球セリーグの有名チームの熱狂的ファンでもあり、身体も同級生の中でずば抜けて大きかった事から幸田 剛士は、親しい者の間では幼い頃より『ジャイアンツ』というあだ名で呼ばれているのだった。
このグループの中で、男三人と女子の皆元 静香だけは、幼稚園に入る前からの幼馴染の仲だった。
大学は全員別々に進んだが、大学生となった今でも4人の仲の良さが変わる事は無かった。
どういうわけか、男子のうち一番可能性の低いと思われた伸田が、三人の男達のアイドルだった皆元 静香のハートを射止めたようで、今では伸田と静香は恋人同士となっていた。
他の二人、幸田 剛士と須根尾 骨延も自分の彼女を連れて、合計6人の一行は伸田の提案と運転で冬の二泊三日のスキー旅行へと出かけて来た往路の最中だった。
伸田はしっかりとサイドブレーキをかけハザードランプを点灯させてから、自分の性器に付いていた精液をエリに綺麗に拭き取らせてパンツとズボンを穿き直した剛士と共に、防寒用の上着を着込んで暖かい車中から吹雪く車外へと出た。
「サク、サクッ…」
歩くたびに路面に積もった雪が小気味よい音を立てる。
車の前に回り込んだ伸田は助手席側のヘッドライトが割れ、その周囲の車体が凹みバンパーが破損しているのを見とめた。
「あーあ、やっちゃったな… まだローンがだいぶ残ってるのに…」
伸田が泣きそうな声で言うのに、剛士が責める様に言った。
「バカ野郎!
てめえの自業自得だろ。ノビタのくせに、運転しながら俺達のマドンナのシズカちゃんにフェラなんてさせてっからだろ!
下手したら全員死ぬとこだったぜ! これだからノビタは…」
幼い頃からいじめっ子だった巨漢の剛士が大声で怒鳴ったものだから、伸田は本当に泣きそうな顔になって答えた。
「ごめんよ~ ジャイアンツ~ そ、それよりも何にぶつかったかだよ… 君が見たのって本当に人だったの?」
そう言って伸田は、路肩に止めた自分の車の周囲を見回した。
「バカ野郎! ノビタのくせに、この俺様が見間違えたって言いてえのか?
思いっきりぶん殴るぞ、ノビタ! あれは間違いなく人間の男だったんだ!」
雪の降りしきる車外で寒そうに震えながらも、握った右拳を口元に持っていき息を吹きかけながら剛士が伸田を怒鳴りつけた。
怒鳴られた伸田は外の寒さだけではなく、恐ろしさで震えあがった。白い息を吐き続ける彼の口元では歯がガチガチ鳴り、顔も真っ青だった。今にも卒倒しそうに震えていた。
「何だ、ノビタ! お前はちっちゃい頃から臆病だったけど、そんなにブルブルガタガタ震え上がりやがって! しょうがねえ、今回は勘弁して殴らねえでいてやらあ。でも、俺の前でシズカちゃんに二度とあんな事させるなよ!」
剛士はニヤニヤ笑いながら振り上げていた右拳を下ろした。
「ち、違うんだ… ジャ、ジャイアンツ… き、君の… う、後ろ…」
ノビタが震えながら右手を上げ、剛士の方を指さした。
「何だ、そんなに震えやがって! 俺の後ろがどうしたってんだ?」
そう言って後ろを振り返った剛士の目の前にそいつが立っていた…
「う…」
剛士は驚きの余り、息を吞んだ。目の前に立つそいつは、185cmある巨漢の剛士よりもさらに大きな男だった。
「な、何だよ… あ、あんたは…?」
剛士は生まれて初めて他の男に圧倒された。いつも自分の強さを自慢にしていた剛士が、本能的にこの男には敵わないと感じたのだった。
「お前らの車にぶつかったんだ… 怒らないから俺を車に乗せてくれよ。俺、どうしても行きたい所があるんだ…」
そう言った男の顔は、ぼさぼさの長髪の頭から顔面にかけて血を流していた。凍った地面に強く頭をぶつけたのだろうか?… だが、頭がフラフラする訳でもないようでしっかりと立って話している。
しかし、この男は寒い年末の雪国の山道を一人で歩いていたのだろうか…? 長身でがっしりとした体格の男の格好は、カーキ色でフード付きのM-51と呼ばれるアメリカの軍用コートを着ている。このコートは、それだけでは決して温かい防寒具とは言えない だが、そいつは厳寒のこの地でもコートの前を開いたままだった。中に着ているのは普通のワークシャツに下半身に履いているのはダボッとしたやはり軍用だと思われるヨレヨレで汚れたチノパンだった。足元は頑丈そうな編み上げの登山靴を履いている様だ。
それに、女物だろうか…? およそこの男には似つかわしくない造りの、赤黒い気味の悪い色をしたリュックサックを左肩からぶら下げていた。
そのリュックサックからは、入りきらない何か頑丈そうな木製の取っ手部分(?)が飛び出していた。何かの工具だろうか?
しかし、この男の発散している匂いは何だ… まるで野生の動物の様な体臭だった。すぐ傍に立った剛士は匂いに顔をしかめた。寒風の吹きすさぶ野外の少し離れた所に立つ伸田にまで強く匂ってきていた。
「と、とにかく傷の手当てをしなきゃ! 中に救急箱があるから、こんなとこで話してたらみんな凍え死んじゃうよ!」
伸田が叫んだ。その通りだった。さっきよりも風と雪がきつくなっていたのだ。近くの山から吹き下ろす風で吹雪が強まっているのだ。
剛士はこの前に立ちすくむ状態から離れられるのなら、理由は何でもよかった。伸田の提案に渡りに船とばかりに賛成した。
「お、おう! そうだな、とにかく車の中に入ろう。さあ、あんたも入れよ!」
伸田は運転席に、剛士は男を促して自分の乗っていたセカンドシートに右側ドアを開けて乗り込む。男は反対の左側ドアから乗り込んだので剛士のガールフレンドの水木エリが大男二人に挟まれる形になった。
車内では、さっきまで全員が下半身丸出しか全裸だったのに、ちゃんと衣服を戻した連中が緊張して無言のまま三人が入って来るのを迎えた。
助手席の静香は額に絆創膏を貼っていたが、血が滲んでいない所を見ると傷は大した事は無い様だった。恋人の伸田はそれを見て安心した
「うっ! 何…この匂い…?」
セカンドシートに座っていて、新たに入って来た男に身体をくっつけられた水木エリが遠慮する事無く露骨に顔をしかめてつぶやいた。口にこそ出さないが、他の者達も同じ思いであるのに違いは無かった。
しかし、車内にも服は着たと言っても6人の男女の快楽行為による匂いが残滓となって籠っているのだ。この正体不明の男も鼻をヒクヒクさせて車内の匂いを嗅いでいる様だった。
女達は全員が新たに乗って来た男の発する獣臭い匂いを我慢しながらも、男に自分達の没頭していた性行為が気付かれたのではないかと頬を上気させ、さっきまで快感に濡れそぼっていた股間を無意識に手で隠すようにした。
しかし、女達が太ももを擦り合わせるようにして股間を閉じたのには理由があった。 匂いに閉口しながらも男の野性味あふれる体臭にメスの本能を刺激され、さらなる性への欲望に自分の女の秘めた部分の奥からジワジワと溢れ出してくる液体をどうする事も出来なかったからだ。
普段は清楚で大人しく振舞っている静香でさえ、身体じゅうが熱くなってショーツをグショグショに濡らし、さらに染み出した愛液が防寒用に履いている裏起毛の防寒用パンツの太ももまでぐっしょりと濡らしていた。
三人の女が全員、顔を匂いにしかめながらも一様に形の良い太ももの内側をもじもじとすり合わせているのは、獣じみた野性味あふれる男の出現によって女の欲望に火がついたのを表していたと言えるだろう。
最後列のシートでさっきまで交わっていた須根尾 骨延と女友達の山野ミチルは、隣り合った身体を少し離すように座っていた。よく見ると、ネズミの様な顔をしている須根尾の左頬にはピンク色の手形がくっきりと付いていた。どうやら、先ほどミチルの膣内で射精したために彼女に殴られたのだろう。
新たに加わり、大きな身体をしたヒッチハイカーが、すでに剛士と水木エリのカップルが座っているセカンドシートに座ったので、エリがその男と剛士の間でつぶされそうになっている。
怒った剛士が腰を浮かせてそいつに抗議する。
「おい! この列は俺とエリの席だ! お前は遠慮して後ろの列へ行けよ!」
暖房で温まっていた車内の空気が一瞬にして凍りついた。車内の誰もが、巨漢で日頃から乱暴者で通っている剛士と、野生見丸出しで正体不明のヒッチハイカーとの一触即発の状況に恐れをなしたのだ。
暴力とは無縁で臆病な伸田と須根尾は、真っ青になって、女達よりもガタガタと震えていた。
剛士に怒鳴られた男は何も言い返しもせず、ただ静かに剛士の顔を見つめるだけだった。しかし、右拳を握り締めていつでも殴れる状態に固めていた剛士は、そいつの目の奥に底なしの虚無を見た気がして戦う気力が一気に萎えてしまった…
場数を踏み喧嘩慣れしている剛士だったが、こんな気味の悪い男とタイマンの喧嘩をした事は無かった。いや…したいとも思わなかっただろう。
「うっ… や、やっぱり俺が後ろに座ろう… おい、どけっ! スネオ!」
そう言って怒鳴ると、剛士はセカンドシートの中央を通り須根尾と山野ミチルのいるサードシートへ移った。
「無茶言わないでよ、ジャイアンツ~ 君みたいなデカいのが来たら、僕もミチルも狭くて苦しいよ…」
ネズミ面をした須根尾とミチルは二人とも小柄なカップルだったが、それでも巨漢の剛士が加わると、元から居た二人にとっては窮屈となり、迷惑この上なかった。
「やかましい! お前らさっきまで、ここでズコバコ生で本番やってたくせしやがって!
俺様がお前の精液臭いのガマンしてやるってんだ、生意気に文句言うんじゃねえ!」
剛士にギロリと睨みつけられた小柄な二人は、真っ青になって抱き合って震えるだけで何も言い返せなかった。
可哀そうに、二人の男達に挟まれた格好のミチルは、可能な限り剛士の身体に触れない様に右側に座る彼氏である須根尾に必死にしがみついていた。
だが、自分が見せた先ほどの臆病な一面をごまかすためか、剛士はミチルの尻をイヤらしく撫でまわす。そして、嫌がるミチルの股間の秘所をグリグリと指で嬲り始めた。彼女の膣からは愛液と共に須根尾が放出し、中に残っていた精液がトロリと流れ出して来た。
剛士は構わずに愛撫を続け、ミチルの耳に息を吹きかけながら囁いた。
「お前さ…チビのくせにプリプリしたいいケツしてるじゃねえか… 今度一発俺にやらせろよ… スネオよりデカくてぶっといので天国へ連れてってやるからよ…」
ミチルは首を大きく振りながら涙を流して、剛士と反対側にいる須根尾に力いっぱい抱きついた。
「もう! こんな時に冗談はやめてくれよ、ジャイアンツ!」
須根尾も涙を浮かべて必死な思いで剛士に訴えた。
すると、セカンドシートを乗っ取ったヒッチハイカーがぐるりと後ろを振り返り、剛士を鋭い目で睨みつけた。
「やかましいぞ、お前。殺してやろうか…?」
男は本気で言っているのか…恐ろしい言葉を淡々と静かに告げたので、剛士にとっては怒鳴られるよりも余計に恐怖を感じずにはいられなかった。
「じょ、冗談だよ… し、静かにしてるさ…」
普段は傲慢で人の言う事などに耳を貸さない性格の剛士が反発する事も無く、しどろもどろに男に素直に従った。剛士をよく知る車内の者達は、彼の震える声を聞いて自分の耳を疑った。
剛士の態度は、まるで蛇に睨まれた蛙の様だった。自分自身も粗暴で喧嘩慣れした彼は、ヒッチハイカーが無造作に言い放った『殺す』という言葉が、決してただの脅しでは無い事を本能的に感じ取ったのだ。
「ね、ねえ… ところで、君さ… どこまで行きたいの? 僕達は、この先のスキー場の近くにある〇X村の旅館へ行くつもりなんだ。温泉もあるらしいしね…」
運転席の伸田が後ろの席の様子を少しでも和らげようと、ルームミラーで後ろを見ながら臆病なこの男には珍しく勇気を振り絞ってそいつに尋ねた。
震えながら自分の左太ももに力いっぱい両手でしがみついている恋人の静香に、いい所を見せたかったのだろう。
後ろを振り返っていたそいつが、ゆっくりと前方へ身体の向きを戻して答えた。
「俺… 行きたいところがあるんだ。この車で連れてってくれないかな…?」
ルームミラー越しにヒッチハイカーと目の合った伸田は、慌てて目をそらした。
「も、もちろん… ぼ、僕達が行ける所まででいいなら…だけどね。」
伸田が恐る恐る、ルームミラーで自分を見つめているヒッチハイカーに答える。
「うん、それでいいよ。じゃあ、南へ向かってくれないかな。」
ヒッチハイカーの答え方は、じつに穏やかな話し方だったので伸田は笑顔を返そうとしたが…
「えっ、南…? じ、じゃあ…僕達の向かうのと逆の方向だよ… 僕達は南の方から来たんだ…」
また、車内の空気が凍り付いた。
車内の全員が伸田の発した答に顔をしかめて、恐る恐る様子を窺っている。誰もひと言も声を出せないでいた。
「じゃあ、Uターンしてくれよ。頼むよ、南に行きたいんだ…」
ヒッチハイカーは伸田の顔の映るルームミラーを、まっすぐ覗き込むようにして言った。だが… 伸田に向かってしゃべりながらも、彼の右手は横にいる水木エリのノーブラの巨乳をセーターの上から鷲づかみにして力強く揉みしだいていた。
「あん! いや、痛いっ! 乱暴にしないでよ!」
エリが小さな悲鳴を上げながら、ヒッチハイカーに抗議している。彼の右手を自分の胸からもぎ放そうと両手で逆らうが、男の力強い手はびくともしなかった。
ヒッチハイカーの左手は自分の盛り上がったチノパンのチャックをゆっくりと引き下ろし、そそり立つ巨大な性器を掴みだした。
「おい、俺にも後ろのヤツにやってた事をしてくれよ。俺も気持ちよくなりたいんだ…」
そう言いながら男は揉んでいたエリの胸から右手を放し、彼女の右手に無理やり自分の剥き出しになった性器を握らせた。
「う…うわ、何これ… めっちゃおっきい… 剛士のよりずっと大きい…」
エリは最初は嫌がっていたが、興味をそそられたらしくヒッチハイカーの硬く屹立したペニスを右手で握りしめ、ゆっくりとだが上下にしごき始めた。この時、なぜか助手席で静香が、サードシートではミチルがゴクリと唾を飲み込む音が大きく響いた。
「エリ! てめえっ! 俺以外のヤツのチンポなんて触るんじゃねえ!」
サードシートで激昂した剛士が叫んだ。
「うるさいな。騒いだら殺すぞ…黙ってろ。この女の邪魔をするな。
騒いだり邪魔したヤツはみんな殺す…」
ヒッチハイカーは剛士の方を振り返りもせず、恐ろしい言葉とは裏腹に少しも興奮していないかの様に静かな口調で言った。だが、その口調には誰にも有無を言わせない威圧感と迫力があった。
剛士は何も言い返せない悔しさに顔を真っ赤にして歯を食いしばり、自分の恋人を奪われた屈辱感に涙を浮かべながらも黙らざるを得なかった。
車内にいる全ての者が一様に理解したのは、この正体不明の男は自分に逆らったら脅しではなく本気で殺す…という事だった。
この場にいた全員の動物的な本能とでも言うべきものが危険を知らせていたのだ。
車内でただ一人魅入られた様に恍惚とした表情を浮かべて男に従っている水木エリ以外の全員が、この危険なヒッチハイカーから目を逸らし、無理やり車の進行方向に目を向けていた。
しばらくの間、エリが自分の唾液をたっぷりと垂らしたヒッチハイカーの性器を懸命に手でしごく卑猥な音と、彼女の荒い呼吸音だけが車内に響いていた…
車内にいる全員が、この謎の男の存在を恐ろしく感じてはいるのだが… 若者達の呼び覚まされた性的な本能は興奮状態となり、男達は皆勃起し、女達は膣奥からジワーっと溢れ出す液体をどうする事も出来なかった… 車内にいる全員が恐怖を感じながらも、若さゆえの新たな性的興奮から荒い呼吸を繰り返し、全身から性的フェロモンを分泌発散していた。それらがさらに全員の欲情を高め合うのだった。
ヒッチハイカーが加わってからの狭い車内は、暖房と若い6人の男女が感じた恐怖と性的興奮の両方によって大量のアドレナリンが分泌され、皆の体温が上昇した事により、ムンとする熱気が籠って実際に数度も温度が上がっていた。
それだけでは無く、全員が何かのきっかけで乱交状態に入りそうな、大麻や合成麻薬のパーティーにも似た雰囲気を醸し出しているのだった。
外は相変わらず吹雪いて風の音が荒れ狂っていた。
【次回に続く…】
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