【R18】幽閉returns

幻田恋人

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幽閉returns ③俺が家族を護る…

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どうしたっ？

居間いまにいた俺はくみの悲鳴を聞き

急いで店まで出て来た

どうしたんだ、くみ？

俺は、くみの立つ場所へ駆かけ寄った

くみは店内掃除そうじ用の箒ほうきを握りしめ

震ふるえている

娘の指さす部分を見た俺は

小さな赤いカニを見つけた

くみのズボンを這はっているカニを取ってやった

まだ指を指す場所を見た俺は

十数匹いたカニが床を這はっているのを見た

くみから取り上げた箒ほうきで俺はカニを掃はき集めて

塵取ちりとりに入れ店の外へ捨てに行った

殺す事はあるまい

そう思った俺は道路の向こうまで行き

排水溝にカニ達を捨てた

店に戻った俺は

椅子いすに座り込んでいる娘を見た

何だあんなカニぐらい…

俺は笑って言ってやった

くみはまだ怖こわいのか

床を見回していた

俺も一緒に探してやったが

もう店内には一匹もいなかった

やっと安心したくみは

俺に訴うったえる様に話し出した

最近おかしな客が出入りをしていること

その客が自分をじっと見ていること

その視線が気味が悪くて仕方が無いこと

その客が今日店を出た後も

車を停とめて自分を見ていた

くみがそっちを見ると

慌あわてて車に飛び乗り走り去ったこと

その直後に店内に

カニが現れたこと等を

懸命けんめいに俺に訴うったえた

俺は黙って聞いてやった

考え過ぎだろう

俺は肩を叩たたいてそう言ってやった

くみは美しいから

店に来る客の男どもは

くみ目当てが多いのは知っていた

その中の気弱な男の一人だろう

恥ずかしくて声もかけられないが

やはりくみが気になって

店に何度もやってくる

そして見つめるしか出来ない気弱きよわな男

よくある話じゃないか…

俺はくみの肩を叩たたいて

店の電気を消して

一緒に家に入った

俺達の家は店の奥に続いている

家に入るとくみも安心したようだ

風呂に入ると言い出した

俺は居間いまに戻りソファーに座った

女房にょうぼうは台所で晩飯の支度したくだ

何があったのかと聞くので

俺は女房にょうぼうに話して聞かせた

俺達家族は、くみの監禁事件以来

何でも隠さず話す事にしていた

もう終わった事だったが

家族の秘密がまた悲劇を生む事になる

それを無くすように努力している

女房にょうぼうも俺の説明で安心したようだ

晩飯の支度したくに台所へ戻った

俺は夕刊を広げた

だが文字は頭に入ってこない

あの監禁事件…

俺達には悪夢としか言いようがなかった

俺は左腕に重傷を負い

くみは心に重い傷を負った

心の治療を受けている様だったが

あれだけのひどい体験をしたんだ

心に抱かかえたトラウマは

容易たやすくは治らないだろう

だが、もう終わったんだ…

俺はあの後、刑事を辞やめ

喫茶店を始めた

女房にょうぼうも入院先から家に戻り

三人の暮らしが始まった

もう半年になる

くみも俺もあの事件の話は

お互いに触ふれないようにしている

やはり二人にとって命がけの

脱出劇だったのだ

あの事件は俺達の禁忌タブーになっていた

もう忘れよう

俺は毎日そう思っている

もちろん、くみもそうだろう

だが、今日のくみの怯おびえよう

あれはただ事じゃなかった

くみは俺が命がけで救い出した

大切な一人娘だ

もう誰にも傷付きずつけさせない

そんなヤツが現あらわれたら

俺は何をするか自分でも分からない

もう警察は辞やめたんだ

俺が家族を護まもらなければ

命を懸かけても…

俺は固く心に誓ちかって

くみの入っている浴室の方を見つめた

ん…？

何だあれは…？

赤くて小さなモノが動いていた

それは浴室に通じる扉とびらの表面だった

俺は立ち上がり近寄って見た

何かが扉とびらを這はっていた

それは…

赤い小さなカニだった…

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