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番外編
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ーー紫音が復活し、2週間たった執務室。
あれから熱も平熱に戻り、寿命も3ヵ月程延びた紫音としては、ほぼ体調万全なのだが、ライオネルの過保護が止まらず、執務室内では紫音の特等席になってしまった簡易ソファーからなるべく動かさないようにしている。
今も休憩と言い、ルイスが執務室から出た隙にライオネル自らお菓子を持って紫音のいる簡易ソファーへ向かい紫音を抱き上げるように自分の膝の上にのせた。
「あー。癒される~」
紫音はされるがまま資料を見ている。
暫くそんなマッタリした時間が流れたが、紫音に全く気にされていない事に寂しくなったのか、ライオネルは紫音の資料を取り上げ、簡易テーブルに置いた。
「お菓子食べよー」
ライオネルは資料のかわりに、紫音にマフィンのようなお菓子を渡す。お茶が欲しいなと思っていた所にルイスが帰ってきた為、声をかける。
「お茶の時間にしよう! ルイスお茶よろしく」
「ライオネル様……。かしこまりました」
ルイスは呆れた顔をしつつも、確かに今提出してきた書類でひと段落はした為、お茶を用意して簡易ソファーに持っていく。
ライオネルの横には紫音、その向かいには既にアインが腰掛けていた。
4人しかいない場合のライオネルのこの秘密のお茶の時間では、アインもルイスも同じ席に付き、暫し身分を超えての語らいの場となっている。
ライオネルは膝の上で両手を使ってお菓子を食べている紫音にほっこりしつつ、気になっていた事を聞いた。
「シオン。そうえいば、文字はいつの間に習得してたんだ? こっちに来た時は読めなかったし、書けなかったよな?」
「うん。でもアインに教えて貰ったよ?」
紫音が復活してから、アインもルイスも紫音がライオネルの嫁の位置につく事は分かっていた為、敬称は不要と言って敬称は取るようになっていた。
「ん? 最初以降にも教えてたのか? アイン」
「いえ。ライオネル様にご紹介いただいた日に教えて以降は私は特に」
どういう事だ? とライオネルもアインも首を傾げる。
紫音も何故疑問に思っているのかが分からず首を傾げる。
誰もツッコミを入れる者がいない為、不思議空間になりかけていた所をルイスが話を整理する。
「私もアインから、シオン君へは読み方の基礎を1度しか教えていないと聞きましたが、その後どうやっていつ覚えたのですか?」
紫音は何でもない事とでも言うようにルイスの質問に答える。
「アインが教えてくれたので、その後は図書館に通いながら覚えました。次の日には問題ないレベルになったのではないかと思います」
「「「は?」」」
常識を語るように紫音は言う。
「言語体系さえ分かれば、後は分かるでしょう? アインも丁寧に基礎見てくれたし」
「「「(いやいやいやいや、そんな訳ないでしょう!)」」」
紫音以外の3人は心の中でツッコミを入れた。
確かに、”鬼上司紫音”の時から頭の良さは実感していたがこれ程とはと……。代表で引き続きルイスが確認する。
「ち、因みに今迄に何ヵ国語覚えたんですか? 大体1カ国後覚えるのにどの位かかります?」
「今まで……。12ヶ国語でここも入れれば13カ国後ですかね。ここは既に言葉が分かったので1日でマスターしましたが、流石に言葉も文字も分からない場合は2週間程はかかるかと思います」
まるで2週間は”時間がかかっている”とでも言いたげな紫音に3人はまたしても絶句した。
ライオネルは会った当初の事を思い出していた。
「そ、そういえば、シオンは最初に頭が割と良いと言ってたな、アイ、アイ何とかがどーのと」
「はい。”IQ”ですね。私達の世界では知能指数と言って頭の良さを数値で表すこともしていました。最高値は245で私は218でした。200を超えるのは当時世界人口の0.1%以下だったと思います」
3人は紫音が最高値ではない事に何となく安堵を覚えた。ただ、平均は150位だろうか? 平均が分からない為ルイスが代表で聞く。
「その”IQ”の平均値ってどの位ですか?」
「100前後です。大体70~120が人口の95%をしめていました」
3人の予想より低く、”やはり紫音は元の世界でも規格外”と認識を改めた。
紫音は言い終わると、またお菓子をモソモソ食べ出す。
どうやらライオネルが調達したお菓子が美味しかったようで、2個目に手が伸びている。
その様子は子リスのようで、とても戦闘能力も頭の良さも規格外の青年には見えず皆ホッコリしたのだった。
ライオネルはお菓子を食べる紫音の頬にキスをすると、共に生きる為にお互いをもっと知っていこうと、もうちょっとお茶の時間を増やそうと心に決めたのだった。
あれから熱も平熱に戻り、寿命も3ヵ月程延びた紫音としては、ほぼ体調万全なのだが、ライオネルの過保護が止まらず、執務室内では紫音の特等席になってしまった簡易ソファーからなるべく動かさないようにしている。
今も休憩と言い、ルイスが執務室から出た隙にライオネル自らお菓子を持って紫音のいる簡易ソファーへ向かい紫音を抱き上げるように自分の膝の上にのせた。
「あー。癒される~」
紫音はされるがまま資料を見ている。
暫くそんなマッタリした時間が流れたが、紫音に全く気にされていない事に寂しくなったのか、ライオネルは紫音の資料を取り上げ、簡易テーブルに置いた。
「お菓子食べよー」
ライオネルは資料のかわりに、紫音にマフィンのようなお菓子を渡す。お茶が欲しいなと思っていた所にルイスが帰ってきた為、声をかける。
「お茶の時間にしよう! ルイスお茶よろしく」
「ライオネル様……。かしこまりました」
ルイスは呆れた顔をしつつも、確かに今提出してきた書類でひと段落はした為、お茶を用意して簡易ソファーに持っていく。
ライオネルの横には紫音、その向かいには既にアインが腰掛けていた。
4人しかいない場合のライオネルのこの秘密のお茶の時間では、アインもルイスも同じ席に付き、暫し身分を超えての語らいの場となっている。
ライオネルは膝の上で両手を使ってお菓子を食べている紫音にほっこりしつつ、気になっていた事を聞いた。
「シオン。そうえいば、文字はいつの間に習得してたんだ? こっちに来た時は読めなかったし、書けなかったよな?」
「うん。でもアインに教えて貰ったよ?」
紫音が復活してから、アインもルイスも紫音がライオネルの嫁の位置につく事は分かっていた為、敬称は不要と言って敬称は取るようになっていた。
「ん? 最初以降にも教えてたのか? アイン」
「いえ。ライオネル様にご紹介いただいた日に教えて以降は私は特に」
どういう事だ? とライオネルもアインも首を傾げる。
紫音も何故疑問に思っているのかが分からず首を傾げる。
誰もツッコミを入れる者がいない為、不思議空間になりかけていた所をルイスが話を整理する。
「私もアインから、シオン君へは読み方の基礎を1度しか教えていないと聞きましたが、その後どうやっていつ覚えたのですか?」
紫音は何でもない事とでも言うようにルイスの質問に答える。
「アインが教えてくれたので、その後は図書館に通いながら覚えました。次の日には問題ないレベルになったのではないかと思います」
「「「は?」」」
常識を語るように紫音は言う。
「言語体系さえ分かれば、後は分かるでしょう? アインも丁寧に基礎見てくれたし」
「「「(いやいやいやいや、そんな訳ないでしょう!)」」」
紫音以外の3人は心の中でツッコミを入れた。
確かに、”鬼上司紫音”の時から頭の良さは実感していたがこれ程とはと……。代表で引き続きルイスが確認する。
「ち、因みに今迄に何ヵ国語覚えたんですか? 大体1カ国後覚えるのにどの位かかります?」
「今まで……。12ヶ国語でここも入れれば13カ国後ですかね。ここは既に言葉が分かったので1日でマスターしましたが、流石に言葉も文字も分からない場合は2週間程はかかるかと思います」
まるで2週間は”時間がかかっている”とでも言いたげな紫音に3人はまたしても絶句した。
ライオネルは会った当初の事を思い出していた。
「そ、そういえば、シオンは最初に頭が割と良いと言ってたな、アイ、アイ何とかがどーのと」
「はい。”IQ”ですね。私達の世界では知能指数と言って頭の良さを数値で表すこともしていました。最高値は245で私は218でした。200を超えるのは当時世界人口の0.1%以下だったと思います」
3人は紫音が最高値ではない事に何となく安堵を覚えた。ただ、平均は150位だろうか? 平均が分からない為ルイスが代表で聞く。
「その”IQ”の平均値ってどの位ですか?」
「100前後です。大体70~120が人口の95%をしめていました」
3人の予想より低く、”やはり紫音は元の世界でも規格外”と認識を改めた。
紫音は言い終わると、またお菓子をモソモソ食べ出す。
どうやらライオネルが調達したお菓子が美味しかったようで、2個目に手が伸びている。
その様子は子リスのようで、とても戦闘能力も頭の良さも規格外の青年には見えず皆ホッコリしたのだった。
ライオネルはお菓子を食べる紫音の頬にキスをすると、共に生きる為にお互いをもっと知っていこうと、もうちょっとお茶の時間を増やそうと心に決めたのだった。
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