死にたがりの”ドール”が幸せを掴むまで

あやまみりぃ

文字の大きさ
上 下
26 / 41
本編

救助(ライオネル視点)

しおりを挟む
 背中に鞭を受けた日、濡れた体もあって、熱を出した。太陽の光が入らない為、1日の移り変わりが分からないが、体感であっていれば次の日は何もされず食事を出された。
 熱と痛みで食べたくは無かったが、少しでも体力を回復する必要がある為無理矢理食べた。
 その次の日はまた吊り下げられ、今度は胸等前面を鞭打たれ、最後はやはり塩水をかけられた。
 その次の日はまた休みが与えられた。
 そして5日目、男達の方に背中がむけられるようにまた吊り下げられる。
 一度も回復魔法をかけられる事なく休みを挟みつつ続く拷問は、目的が分からず恐怖に駆られた。

「(シオン、シオン、シオン)」
 心の中で、紫音を呼び続ける。紫音はもっと耐えていた。この位で何を言っているんだと。そう言い聞かせても、体は何をされるのか学習しているようで、男たちの声を聞くと勝手にブルブル震えた。

 ーーそして、目隠しをされ拷問が開始される。

 ーービシッ
「ぐっ、、(シオン)」

 ライオネルにとっていつ終わるか分からない永遠とも言える時間。

 ーービシッ
「あぁ、、(シオン)」

 心が折れそうになる度、紫音の事を思い挫け無いようにする。

 ーービシッ
「ぅ、う、(シオン)」

 叫び出してしまいたい思いに駆られつつも、必死に耐え、声は出さない。

 と、不意に続いていた衝撃が止み、男たちが騒めいた
「なんだぁーお前は?」

 次の瞬間には

 ーートスッ、トスッ、トスッ

 と、軽い音がして、

 ーードサッッ。

 何かが崩れ落ちるような音が聞こえた。

 ライオネルは火照った頭で考える。助けがきたのだろうかと。ただ先程から何も声を発さない相手。もしかして新手なのかもしれないと思うとやはり怖くて体が震えた。

 誰かが静かに近付いてくる。

 ーー怖い。

 吊り下げられた状態から下ろしてくれる。

 ーー怖い。

 痛む体で無意識に後ろに下がる。

 ーー怖い。
 
 味方では無かったら次は何をされるのかと思うと怖くて仕方がない。


 そのやってきた誰かはひんやりとした手で頭を撫でるとライオネルをそっと抱きしめてくれた。

「シ、オン?」

 見せたい幻想がそうさせるのか紫音なのではないかと感じ、思わず声をかけてしまったが、相手からは声をかけられることもなく、いつまでたってもライオネルの目隠しも手枷も外されない。
 そして、すっとライオネルを抱き上げて簡単に移動する様は、やはりあの華奢な紫音では無いのかと残念に思った。
 考えてみればタイミングよく目覚めるなんて奇跡はそうそう起こるものでもないし、例え目覚めたとしても直前まで寝る事しかしていない人間が普通に歩けるわけがない。

 紫音では無いのなら味方なのか、ただ違う場所に運んでる敵なのか分からず抵抗せずじっとする。

 暫く抱えられるまま進んでいると、

「「ライオネル様!」」

 いつも頼りにしている腹心の声が聞こえた。助けられたのかと実感すると急速に意識を闇へ飛ばした。

 ーー早くシオンに会いたいなぁ。という思いを残して。


♢♢♢


「ん、ここは、、、」
 目覚めると自室のベットだった。

 ーーガタガタッ。
 ベット脇からアインとルイスが近寄ってきた。

「ライオネル様お加減はいかがですか?」
「何かお持ちしましょうか?」

「いや、大丈夫だ。2人とも心配をかけた。助けてくれた者は?」
「私達の手の者です」

 ルイスの回答にあり得ないとは分かっていたものの、やはり紫音では無かったのかと残念に思った。

「……シオンは?」
「大丈夫です。いつもと変わらずですので、今は私の部屋で横になられています」
「もう俺は大丈夫だから連れてきてくれないか?」
「いいえ! 傷は治癒の回復魔法で治しましたが、体と心の疲労は取れませんので暫く安静にしていてください。王や王太子様もご心配されています。シオン君の事は暫く私達にお任せください」

 ルイスはこんこんとライオネルに説く。確かに自分の落ち度ではあるので今はルイスの言う通りにする事にした。

「少し休む」

 そう言うと、ライオネルは眠り始めた。










 ルイスはドアの方に顔を向けると、
「これで良かったですか? シオン君」
 と、声をかけた。
 紫音は無表情で肯くと部屋から出て行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
第12回BL大賞奨励賞いただきました!ありがとうございます。僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して、公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…我慢の限界で田舎の領地から家出をして来た。もう戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが我らが坊ちゃま…ジュリアス様だ!坊ちゃまと初めて会った時、不思議な感覚を覚えた。そして突然閃く「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけにジュリアス様が主人公だ!」 知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。だけど何で?全然シナリオ通りじゃないんですけど? お気に入り&いいね&感想をいただけると嬉しいです!孤独な作業なので(笑)励みになります。 ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

処理中です...