死にたがりの”ドール”が幸せを掴むまで

あやまみりぃ

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本編

待てど暮らせど※

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 ーー更に1ヶ月が経ち、動かなくなって3ヶ月目になった。紫音が死ぬまでの折り返し地点。

 ーーシュッ、シュッ、シュッ
「うっ、はぁ、はぁ、シオン、シオン……」
「好きだよ……あ、ぁ、ん、愛してる、よ」
 紫音の顔元近くで、ライオネルは自分の陰茎をこする。

 ーーシュコ、シュコ、シュッ、シュッ
「う、うぅ、あ、ぁ、んーー!」
 ーードピュッ

 そんな効果音と共に、紫音の顔にライオネルの精液がかかった。

「(またか……。)」
「あーごめんね。目に入ってない? シオン。愛してるよ」

 そう言うと、ライオネルは顔にかかった精液を拭い、寝支度を整え一緒のベットに横になる。

「おやすみ。シオン。また明日お話ししようね」
 シオンを抱き込みながらライオネルは眠りについた。

 以前、庭園で聞いた紫音の暗殺計画とやらは待てど暮らせど、何もなく平凡な毎日を暮らしている。
 それより、ライオネルが壊れてきているのではないかという方が問題だ。
 魔法のせいなのか分からないが、ライオネルも最近、紫音が弱ってきていることに薄々勘付いているようなのだ。
 それから、ライオネルは寝てる紫音の隣で自慰をするようになった。
 そんな”人形”に欲情出来てしまうライオネルが心配になる。
 最近はその執着に俺が居なくなったら本当に壊れてしまうのではないかと思う位だ。
 俺の体を残して逝けたら良かったんだけど、流石に人間と同じなので、死ねば体は腐っていく。
 魔法でもその辺は何ともならないから、ライオネルは焦っているのだろう。
 寿命が1ヶ月切ったら、出て行ってあげようかなと最近は考えている。“紫音は何処かで生きている”という希望を持ったままの方がライオネルも生きやすいだろうと。

 そう、毎日愛を囁かれ、諦めないライオネルに紫音は結構絆されているのだ。

 ライオネルは馬鹿だなぁと思いつつ、嬉しいとも感じるようになってしまった俺も馬鹿だなぁと思う。

 本当かどうかは分からないけど、俺に向けてくる“愛”に紫音もまた”愛“を返したいと思うようになってきたのだ。

 お互い傷つくかもしれないのに、それでも近付きたい、触れ合いたいと思うようになってきた。

 本当に人間とは不思議な生き物だ。

♢♢♢

 いつもと変わらない執務室。

 ライオネルは紫音が弱ってきている事に気付いてからは本当にずっと一緒にいる。
 朝起きて、ライオネル自身の身支度を終えると適度に整えられた紫音の前髪にあのヘアピンをさし、こちらに来てから1度も切っていない後ろの髪を1つにまとめ、汚れや綻びのある部分は隠し綺麗な部分が表になるよう青いリボンを付け身支度を整え、紫音を抱えて執務室へ。
 お昼ご飯も紫音の世話をしながらライオネルは適当に済ませ、また午後の執務へとりかかる。
 少しの休憩時間で庭を散策したり、本の読み聞かせをしたりして、また執務をして夕食を紫音に食べさせ、入浴も全てライオネルが世話をし、夜一緒のベットに寝る。

 そんな毎日の繰り返しに、よく飽きないなぁと返答も何も返さない”人形”の面倒を見続けているライオネルを、紫音は心底尊敬していた。

 執務室では簡易応接のソファーが紫音の特等席となった。フワフワの毛布とクッションで周りが囲ってあり紫音が倒れても怪我しないように配慮しているらしい。
 あと誰の趣味か分からないが、何故か大きい熊の縫いぐるみが隣に置かれている。
 紫音の正面が執務室の出入り口となっており、こちらからは人の出入りがよく見えるから、1日ベットに寝ていた時よりも退屈は凌げる。

 執務室を訪れる客も、何も反応を返さない紫音に挨拶する者、置物の如く何も反応しない者、話しかけてくる者、様々な人がいて面白いと思った。

「あー、この領地の魔物の資料何処だっけ?」
「それは、資料室に返してしまったような」
「(いや、そこの右上の棚に無造作に置いてあるよ)」

「あそこの辺境伯領地のBランク以上の魔物の発生数は平均だっけか? なんか減ってる?」
「この間見たような。ちょっと調べます」
「(いやこの間2人で資料見てたでしょう。前年度の発生数Bランクが154体、Aランクが45体。今年度が今のところBランク112体でAランク28体だよ)」

 紫音は心の中で、回答しつつ実際には何も言わずにずっと見ている。近くでライオネルを感じられるこの穏やかな日々が、いつしか紫音にとって温かく楽しい日々になっていた。
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