11 / 41
本編
穏やかな日々
しおりを挟む
カーテンの隙間から朝日が差し込む。視線を感じて起きると金髪碧眼の美形の顔がこちらを見ていた。
「おはようシオン」
「おはようライ」
紫音が久しぶりに泣いた日を境に、ライオネルは過保護になり、夜は一緒のベットで寝るようになって2週間ほどたった。
ライオネルが紫音の住居で寝るのは警備上良くないと言うことで、王宮のライオネルの寝室に連れていかれ、そこで初めてライオネルが第三王子という事を知った。
本来は身元不明な紫音が第三王子の住居で一緒に過ごす事は異常だが、紫音は”ライオネルが望むのなら”と気にしないし、周りの人間も”あの第三王子なら仕方ない”と黙認されていた。
あの日、言いたくない事は言わなくて良いから生い立ちを聞きたいと言われて、掻い摘んで生い立ちを話した。
ただ、訓練所の訓練内容、お母さんを自分の手で殺した事、戦争の事は話さなかった。
今迄は聞かれた事は全て特に何も思わず話していたが、この時は何故だか話したくなくて話さなかった。
今思うと、汚い部分を見せて嫌われたくないと、人にどう思われるかを初めて意識したのかもしれないと気がついた。
ライオネルは”どんなシオンでも”と言ってはくれたが、そんな事はないと知識上知っていた。
人は簡単に裏切るし、勝手に期待しては失望して裏切り者と言う。
ライオネルが必ずしもそう思うかは分からないが、紫音のしてきた事は普通は忌むべき事なのだ。
そして、どうにもライオネルは紫音を美化しているように見受けられた。
ただライオネルが綺麗な紫音を望むのであれば、それでも良いとも思っていた。
毎日囁いてくれる愛の言葉に温かい眼差し。
例え偽りの自分であっても、受け入れて貰えると言う事が、昔お母さんとしたひなたぼっこのような温かい気持ちになるという事を知った。
騙しているようで少しの罪悪感はあったが、出来ればこの温かい気持ちを少しでも長く、可能であれば死ぬまで味わいたいと思い、罪悪感を見て見ぬ振りをする事にしたのだ。
紫音の過去を知る人物もいない、戦うこともないこの平穏な今の生活で、知られてしまう要素など無いのだから。
あの日話したことで、紫音のライオネルへの想いは少し変わった。
ライオネルが望む事はしてあげたいし、ライオネルの役にたつのであれば何でもしたい、尽くしたいと思っていた。
もしかしたらこれが昔本で読んだ”好き”と呼ばれる感情なのかもしれないと思っている。
最近は昔読んだ心理学の本やお母さんと過ごした日々を思い出して、”人間”っぽくなってきているような気がする。
「どーした、ぼうっとして」
「いえ。特には……」
紫音がそう言うとライオネルは紫音の額にキスをして起き上がる。
因みに、一緒のベッドで寝てはいるが、ヤッてはいない。
ライオネルは身支度を整える。普通王子といえば侍従やメイドが多くつくのだが、第三王子は世話されるのが好きではないらしく、最低限の人数しかいない。その為、朝の準備も着替えも基本的には1人で行う。
「そーいえば、ルイスがシオンと話したがっていた。突然だが、今日の昼食後いいか?」
「大丈夫」
「俺は父上に用があって行けないが、俺の信頼する補佐官で味方だから、心配する事はない。……もし、いじめられたら報告しろよ」
「分かった。お仕事頑張ってね」
身支度を終えたライオネルは、紫音に応援されご機嫌で部屋を出て行った。
「おはようシオン」
「おはようライ」
紫音が久しぶりに泣いた日を境に、ライオネルは過保護になり、夜は一緒のベットで寝るようになって2週間ほどたった。
ライオネルが紫音の住居で寝るのは警備上良くないと言うことで、王宮のライオネルの寝室に連れていかれ、そこで初めてライオネルが第三王子という事を知った。
本来は身元不明な紫音が第三王子の住居で一緒に過ごす事は異常だが、紫音は”ライオネルが望むのなら”と気にしないし、周りの人間も”あの第三王子なら仕方ない”と黙認されていた。
あの日、言いたくない事は言わなくて良いから生い立ちを聞きたいと言われて、掻い摘んで生い立ちを話した。
ただ、訓練所の訓練内容、お母さんを自分の手で殺した事、戦争の事は話さなかった。
今迄は聞かれた事は全て特に何も思わず話していたが、この時は何故だか話したくなくて話さなかった。
今思うと、汚い部分を見せて嫌われたくないと、人にどう思われるかを初めて意識したのかもしれないと気がついた。
ライオネルは”どんなシオンでも”と言ってはくれたが、そんな事はないと知識上知っていた。
人は簡単に裏切るし、勝手に期待しては失望して裏切り者と言う。
ライオネルが必ずしもそう思うかは分からないが、紫音のしてきた事は普通は忌むべき事なのだ。
そして、どうにもライオネルは紫音を美化しているように見受けられた。
ただライオネルが綺麗な紫音を望むのであれば、それでも良いとも思っていた。
毎日囁いてくれる愛の言葉に温かい眼差し。
例え偽りの自分であっても、受け入れて貰えると言う事が、昔お母さんとしたひなたぼっこのような温かい気持ちになるという事を知った。
騙しているようで少しの罪悪感はあったが、出来ればこの温かい気持ちを少しでも長く、可能であれば死ぬまで味わいたいと思い、罪悪感を見て見ぬ振りをする事にしたのだ。
紫音の過去を知る人物もいない、戦うこともないこの平穏な今の生活で、知られてしまう要素など無いのだから。
あの日話したことで、紫音のライオネルへの想いは少し変わった。
ライオネルが望む事はしてあげたいし、ライオネルの役にたつのであれば何でもしたい、尽くしたいと思っていた。
もしかしたらこれが昔本で読んだ”好き”と呼ばれる感情なのかもしれないと思っている。
最近は昔読んだ心理学の本やお母さんと過ごした日々を思い出して、”人間”っぽくなってきているような気がする。
「どーした、ぼうっとして」
「いえ。特には……」
紫音がそう言うとライオネルは紫音の額にキスをして起き上がる。
因みに、一緒のベッドで寝てはいるが、ヤッてはいない。
ライオネルは身支度を整える。普通王子といえば侍従やメイドが多くつくのだが、第三王子は世話されるのが好きではないらしく、最低限の人数しかいない。その為、朝の準備も着替えも基本的には1人で行う。
「そーいえば、ルイスがシオンと話したがっていた。突然だが、今日の昼食後いいか?」
「大丈夫」
「俺は父上に用があって行けないが、俺の信頼する補佐官で味方だから、心配する事はない。……もし、いじめられたら報告しろよ」
「分かった。お仕事頑張ってね」
身支度を終えたライオネルは、紫音に応援されご機嫌で部屋を出て行った。
22
お気に入りに追加
316
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞


オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
愛しの妻は黒の魔王!?
ごいち
BL
「グレウスよ、我が弟を妻として娶るがいい」
――ある日、平民出身の近衛騎士グレウスは皇帝に呼び出されて、皇弟オルガを妻とするよう命じられる。
皇弟オルガはゾッとするような美貌の持ち主で、貴族の間では『黒の魔王』と怖れられている人物だ。
身分違いの政略結婚に絶望したグレウスだが、いざ結婚してみるとオルガは見事なデレ寄りのツンデレで、しかもその正体は…。
魔法の国アスファロスで、熊のようなマッチョ騎士とツンデレな『魔王』がイチャイチャしたり無双したりするお話です。
表紙は豚子さん(https://twitter.com/M_buibui)に描いていただきました。ありがとうございます!
11/28番外編2本と、終話『なべて世は事もなし』に挿絵をいただいております! ありがとうございます!
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる