死にたがりの”ドール”が幸せを掴むまで

あやまみりぃ

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本編

森の中

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 全身の痛みで目が覚めると、そこは森だった。

「(基地に帰ってきてた筈だけど……ここは何処だろう?)」

 辺りを見回してみるが、鬱蒼とした森でどうやら夜らしい。
 怠い体を起こし近くの木につかまりながら立ち上がる。
 と、尻からツーと液体が溢れてくる。

「(そうだ。基地でお偉いさんとヤッてたんだ。で、轟音と共に衝撃があったんだった。最近テロが多かったからうちの基地も標的にされたかな)」

 改めて周りを見回すが、爆発で吹き飛ばされた割には破片も何も無いし、俺こと紫音だけが森にいる。
 直前まで、ヤッていたので素足に白いネグリジェで当然パンツは無しだ。武器は何も持ってないし、全身怠いし今襲われたら何も出来ないな。

「(あーあ。何で爆破の時に死んでないんだろ? ……でもこのままここにいれば、獣に殺られるか餓死か)」

 紫音はズルズルと木の根本に背中を預け座り込む。熱も出ていて立っているのも辛かったのだ。

「(俺は頑張って”生きた”からもう良いよね)」

 紫音は目を閉じて意識を落とす。

ーー。

 どの位たったのか、近づいてくる人の気配に癖で意識は覚醒してしまう。ただ動く気力も無いので、ぼんやりと気配の方角を見ていると、随分野性味の溢れた服装の男達と幌馬車がやってきた。

 紫音は幌馬車を生で見たのは初めてだ。科学技術が発達した日本で馬車なんて遺物、昔の御伽話の絵本でしか見たことない。一体何処に飛ばされてしまったんだと表情は全く変わらないが心では驚愕する。

 そうこう思っているうちに、男達のうちの3人が警戒しながらやってきた。

「おい、コイツ逃亡奴隷じゃないか?」
「こんな森の中まで逃亡出来るか?」
「……なんか体調悪そうだし、ヘマやって主人に捨てられたんじゃね?」

 男達3人の中でも体格の良いのが近づいてきて、紫音の長い前髪を掴み無理矢理顔を上げさせる。

「「「……!?」」」

 黒いボサボサの髪に隠れていたのは、綺麗な紫の目と整った顔、色白でニキビも何もない思わず触りたくなるようなつるりとした肌、何処か諦めたような動かない表情も嗜虐心をそそる。

「こりゃぁ……。随分別品さんだな。この首輪も隷属の首輪か? 見た事ない形だが、まぁここに1人でいるって事は俺たちが貰っても文句はないだろ」

 そう言うと、男は紫音を担ぎ馬車の方へ連れて行き、足枷と手枷をつけ幌馬車の中に入れるとまた進み出した。

♢♢♢

 幌馬車の中には、今の紫音と同じような姿の者たちが多くいた。その中でも面倒見の良さそうな赤毛のそばかすのお姉さんが紫音に話しかけてくる。

「お前さん大丈夫かい? なんだか体調が悪そうだ」
「……少し熱がありまして。この馬車は何処へ向かってるのかご存知でしょうか?」
「あぁ。王都の娼館だよ。こんな所に捨てられてたなんて……。少しでもグレードの高い所に入れると良いな」
「(王都? 少なくてもやはり日本じゃないな、タイムスリップでもしたのか? でも、言葉が通じてる……)ありがとうございます。少し休みますね」
「あぁ、夜も長いだろうし、今のうちに休んでおきな」
 不穏な言葉だなと思いつつ、紫音は意識を落とした。

ーー案の定、その夜から男達の性の相手をさせられる事になった。
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