31 / 49
目覚め
しおりを挟む
「ヒロ! 目覚めたか! 辛い思いをさせて悪かった」
金髪のヒトが話している。
ーー試練の半分が終わったんだ。
「ヒロ? 痛い……よな。悪かった」
ーー後半分かな。1泊して帰れば良いんだ。
「ヒロト様? 目覚めたばかりで申し訳ないですが、分かる事を教えてください」
茶髪のヒトが紙とペンを差し出している。
「ヒロ?」
ーー帰れば必要とされる存在になれる。嬉しいな。
裕人はニコリと微笑んだ。
「陛下……少し別室で話を」
「……」
♢♢♢
(クロード視点)
「陛下大丈夫ですか?」
「……あれは何だ?」
ルルガノーシュは分かっていても確認せずにはいられないようだ。
城内に運び込まれた裕人は明らかに凌辱された後と分かる酷い状態だった。
ただ、動けなくなるような大きな怪我はしていなかった為、1日休んでいれば動ける状態になるだろうというのが医者の見解だ。
裕人の側を離れないルルガノーシュに付き合う形で、裕人のベット脇で執務を行っていた所、裕人は昼過ぎに目を覚ました。
クロードは各関係者に口止めしたが、見つかった場所も悪く全ての噂を抑える事は出来ないだろう。
鼻が良い者、勘の良い者はあの精液に混じった、短い黒い毛が狼族の者である事を推測するであろう事が分かる。
人族とは言え、その愛らしい要望とルルガノーシュへの惜しみない愛情から受け入れ始められていた裕人。
“自国の神子が狼族によって凌辱された”と噂が広がれば、反狼族派以外でも狼族に対する敵意は上がってしまうだろう。
そして、クロード自身は狼族と対立させる為の策略だと思っているが、それが間違っていて本当に狼族が戦争を行うつもりだとしたら、明日は和平条約の継続ではなく破棄でこちらを責めてくる可能性もある。
一刻も早く情報を集める必要がある為、裕人に情報開示をお願いしたのだが……。
ニコリと微笑んだ顔は可愛いらしかったが、あの底知れない目は、ルルガノーシュもクロードも何も映してはいなかった。
ルルガノーシュも自分の母親で見た事がある目。
クロードは現実を認めたくないと思っているルルガノーシュに向けて淡々と事実を告げた。
「……心が壊れてしまっているようです」
ーー城内にルルガノーシュの吠え声が響き渡った。
♢♢♢
(ルルガノーシュ視点)
ーー許さない。
ーー裕人をあんな目にあわせた奴を。
ーー許さない。
ーー生きていることは分かっていた。だからといって無事かまでは保証されていなかったのに。国を上げて捜索すべきだった。
ーー許さない。
ーー裕人に少しでも危害を加えた奴を。
ーー許さない。
ーー助けなかった奴も。
ーー許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。
ーー裕人を壊したヤツら全員滅ぼしてやる!
このまま怒りで裕人の元へ戻ってしまえば、何をするか分からない為、執務室に向かう。
そして、黙って付いて来ていたクロードに指示を出す。
「ユタ王に明日の正午までには必ず、城に来て弁明するように伝えろ。正午までに来なかったら、和平条約は破棄したとみなし、明後日狼族を攻める」
「そ、そんな。いらっしゃる予定ですから大丈夫だとは思いますが、万が一なんて事もある可能性があります」
「弁明にくれば問題ない。それに裕人を凌辱した中に最低1匹は狼族が混じっていた。そんな下等種族等、全部滅ぼしてしまっても問題なかろう」
「そんな暴論です。陛下の決断で何千人という血が流れるんですよ。それを一時の感情で決めてしまう等」
「では、残虐王と呼ばれる俺の代わりの王を出せ。いくらでも代わってやる。俺は王になりたい等と言ったことは一度もないのだから」
「……」
ーー代わりをすぐ出す事が無理なことは分かっているし、くだらない事を言っているのも分かる。
覇王が王になるのは決まっているし、まだまだ全盛期の俺が王の座を誰かに譲った所で、その王は舐められ、俺の下に集ってしまうだろう。
獣人はどうしても強いリーダーに惹かれる。実力が僅差であればまた話は変わるが、覇王として生まれた俺と対抗しようとして生きている者は今は誰もいない。それが答えなのだ。
「分かったら通達しろ」
「……かしこまりました」
クロードはルルガノーシュに言われた事を手紙にしたため、手紙専用の転送魔道具を使用し、ラナン王国へ送った。
金髪のヒトが話している。
ーー試練の半分が終わったんだ。
「ヒロ? 痛い……よな。悪かった」
ーー後半分かな。1泊して帰れば良いんだ。
「ヒロト様? 目覚めたばかりで申し訳ないですが、分かる事を教えてください」
茶髪のヒトが紙とペンを差し出している。
「ヒロ?」
ーー帰れば必要とされる存在になれる。嬉しいな。
裕人はニコリと微笑んだ。
「陛下……少し別室で話を」
「……」
♢♢♢
(クロード視点)
「陛下大丈夫ですか?」
「……あれは何だ?」
ルルガノーシュは分かっていても確認せずにはいられないようだ。
城内に運び込まれた裕人は明らかに凌辱された後と分かる酷い状態だった。
ただ、動けなくなるような大きな怪我はしていなかった為、1日休んでいれば動ける状態になるだろうというのが医者の見解だ。
裕人の側を離れないルルガノーシュに付き合う形で、裕人のベット脇で執務を行っていた所、裕人は昼過ぎに目を覚ました。
クロードは各関係者に口止めしたが、見つかった場所も悪く全ての噂を抑える事は出来ないだろう。
鼻が良い者、勘の良い者はあの精液に混じった、短い黒い毛が狼族の者である事を推測するであろう事が分かる。
人族とは言え、その愛らしい要望とルルガノーシュへの惜しみない愛情から受け入れ始められていた裕人。
“自国の神子が狼族によって凌辱された”と噂が広がれば、反狼族派以外でも狼族に対する敵意は上がってしまうだろう。
そして、クロード自身は狼族と対立させる為の策略だと思っているが、それが間違っていて本当に狼族が戦争を行うつもりだとしたら、明日は和平条約の継続ではなく破棄でこちらを責めてくる可能性もある。
一刻も早く情報を集める必要がある為、裕人に情報開示をお願いしたのだが……。
ニコリと微笑んだ顔は可愛いらしかったが、あの底知れない目は、ルルガノーシュもクロードも何も映してはいなかった。
ルルガノーシュも自分の母親で見た事がある目。
クロードは現実を認めたくないと思っているルルガノーシュに向けて淡々と事実を告げた。
「……心が壊れてしまっているようです」
ーー城内にルルガノーシュの吠え声が響き渡った。
♢♢♢
(ルルガノーシュ視点)
ーー許さない。
ーー裕人をあんな目にあわせた奴を。
ーー許さない。
ーー生きていることは分かっていた。だからといって無事かまでは保証されていなかったのに。国を上げて捜索すべきだった。
ーー許さない。
ーー裕人に少しでも危害を加えた奴を。
ーー許さない。
ーー助けなかった奴も。
ーー許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。
ーー裕人を壊したヤツら全員滅ぼしてやる!
このまま怒りで裕人の元へ戻ってしまえば、何をするか分からない為、執務室に向かう。
そして、黙って付いて来ていたクロードに指示を出す。
「ユタ王に明日の正午までには必ず、城に来て弁明するように伝えろ。正午までに来なかったら、和平条約は破棄したとみなし、明後日狼族を攻める」
「そ、そんな。いらっしゃる予定ですから大丈夫だとは思いますが、万が一なんて事もある可能性があります」
「弁明にくれば問題ない。それに裕人を凌辱した中に最低1匹は狼族が混じっていた。そんな下等種族等、全部滅ぼしてしまっても問題なかろう」
「そんな暴論です。陛下の決断で何千人という血が流れるんですよ。それを一時の感情で決めてしまう等」
「では、残虐王と呼ばれる俺の代わりの王を出せ。いくらでも代わってやる。俺は王になりたい等と言ったことは一度もないのだから」
「……」
ーー代わりをすぐ出す事が無理なことは分かっているし、くだらない事を言っているのも分かる。
覇王が王になるのは決まっているし、まだまだ全盛期の俺が王の座を誰かに譲った所で、その王は舐められ、俺の下に集ってしまうだろう。
獣人はどうしても強いリーダーに惹かれる。実力が僅差であればまた話は変わるが、覇王として生まれた俺と対抗しようとして生きている者は今は誰もいない。それが答えなのだ。
「分かったら通達しろ」
「……かしこまりました」
クロードはルルガノーシュに言われた事を手紙にしたため、手紙専用の転送魔道具を使用し、ラナン王国へ送った。
15
お気に入りに追加
276
あなたにおすすめの小説
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる